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国債格下げは治療不能な“慢性病”への警告、政府は消費増税前に無駄のカットを
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/861.html
投稿者 tea 日時 2011 年 2 月 07 日 18:55:44: 1W1IXELjjF6i2
 

メタボになっても、すぐに死ぬわけではない
愚かな肥満中高年が、血中LDLや血圧から、
運動や食事改善を言われても、なかなか実行できないのと同じで
悪いシグナルが少しづつ積み上がって、最後に、ひどい症状が出て
初めてうろたえて対策に走るというパターンになるのだろう

しかし、急激なダイエット(緊縮財政)や過剰な薬物療法(急激な増税)は
逆に命を縮めることが多いから要注意だ


小宮一慶の「スイスイわかる経済!“数字力”トレーニング」
国債格下げは治療不能な“慢性病”への警告、政府は消費増税前に無駄のカットを
2011年2月4日 コメント(8件) 総合RSS Twitter はてな
 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は2010年1月27日、日本の国債をダブルAマイナスへ 格下げしました。これまでも日本国債の格下げは何度か行われてきましたが、私は今回の格下げについては過去のものと性質が全く異なると考えています。日本 国債の格下げの背景に根深い問題があるからです。今回は、格下げの最大の原因である財政赤字の拡大に重点を置きながら、日本が今、どのような状況に陥って いるのか、お話ししていきたいと思います。
日本国債の格下げは“慢性疾患”によるもの
 皆さんもご存じのように、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は2010年1月27日、日本の国債をダブルAマイナスへ格下げしました。今回の日本国債の格下げについて、私は非常に懸念しています。
 これまでも、日本国債は何度か格下げされてきました。格下げと格上げを繰り返して来たのです。しかし、従来の格下げは、その理由のほとんどが金融 危機に起因したものでした。例えば、1997年、2003年に金融危機が起こり、金融システムの不安定さから日本国債のリスクが高まり、格下げが起こった のです。
 しかし、今回の格下げについては金融危機の影響を受けていません。むしろ、世界中で日本だけが、今のところ比較的安定した金融体制を維持できているのです。にもかかわらず、格下げが実施されました。
 この理由は、取りも直さず日本の財政赤字がずっと拡大し続け、もう名目GDPの200%に迫ろうかとしているという状況であるからです。
次の表は過去20年間の日本の名目GDPです。

 直近の数字である2010年7-9月は年換算で482.1兆円と出ています。これは、実は1993年の名目GDP481兆円とほとんど変わらない 水準なのです。1990年のバブル崩壊以降「失われた10年」と言われていますが、名目GDPで見る限りは実は「失われた20年」になってしまったので す。
 このように、1993年の水準と比較するとGDPは増えていないわけです。しかし、財政赤字だけはどんどん増えており、日本は先進国中、対GDP比では最悪の水準になっています。
歴代政権のツケが今回の格下げの原因
 従来の格下げは、金融危機が原因でしたから、言わば“急性”の病気でした。金融危機などに由来する“急性”の病気であれば、それに対処するクスリ (政策)を処方して、時間をある程度かければ、経済の体力が回復してきます。回復が遅れれば、違う種類のクスリを処方することも検討できます。現に日本 は、金融危機が来るたびに公共事業などに財政支出を拡大してきました。
 ただ、歴代の政権は一時的な治療を施すだけで、そのために財政赤字拡大という慢性病を引き起こしていたのですが、その治療には取り組んできませんでした。拡大する一方の財政赤字は放置してきたわけです。今回の格下げは、そのツケがやって来たのだ、と私は考えています。
 今回の格下げは“慢性病”に対する評価ですから、簡単には治らないでしょう。そもそも急に直せるような手立てがありません。今年は昨年より景気が回復していますから、昨年より税収が増えるとは思います。それでも赤字国債44兆円は昨年と同じペースで発行されるのです。
 先ほどもお話ししたように、近年では1997年と2003年と金融危機が二回やってきました。そして景気低迷も長引きました。そこで財政赤字をど んどん拡大しました。そのおかげもあって、2002年から2007年にかけては戦後最長の景気拡大をしたのですが、実はその間も財政赤字は全く減らなかっ たのです。この当時は比較的景気がよかったこともあり、2011年度の予算(これは、たまたまですが現在の国会で審議されている予算です)でプライマリー バランス(国の基礎的財政収支)を均衡させると当時の政府は公約していました。
 しかし、今ではそれが「2020年度の予算までにバランスさせる」という話になりつつあるのです。逆に言いますと、「2020年までは財政赤字が増え続ける」ということです。
プライマリーバランスでは財政は好転しない
 さらに言えば、プライマリーバランスは、企業で言うと営業利益に相当します。つまり、歳入のうち国債など借金による収入を除いた部分と、歳出のうち国債費を除いた部分とで収支がバランスするということです。ここには利払い分は含まれていません。
 今でも約10兆円の利払いをしていることを考えると、プライマリーバランスの均衡を実現したところで(その時点で財政赤字が増えず、かつ金利が上 がらないとしても)、毎年10兆円以上の財政赤字が増え続けるわけです。企業で言えば、営業黒字はようやく確保するものの、経常赤字は続くという状態で す。そして実はそのめどさえまったく立っていないのです。そして、この4月から始まる2011年度予算でも40兆円以上の財政赤字が増えている前提に立っ て予算を組んでいます。そして繰り返しますが、このままではこの状況が改善されるめどはまったくないと言ってもいいでしょう。

 先日、S&Pによる日本国債の格下げの発表で、格下げ後の見通しは「安定的」とありました。これはどういう意味かといいますと、当面は下がった格付け(ダブルAマイナス)のままで推移する見通し、ということです。
 ただし、このまま財政赤字が増えれば格付けはさらに下がる可能性が高くなります。先ほども述べたように、プライマリーバランスが均衡するまで政府の言い分通りだとしても10年近くかかりますし、そのめどは全く立っていないように私には見えます。

 さらに、もし長期金利が1%でも上がってしまったら、ますます苦しい事態になってしまいます。政府は国債や他の借り入れなどで約1000兆円もの 借り入れがありますから、1%の金利上昇で中長期的には年間で約10兆円もの利払いが増えるわけです。すると、格付けの見通しが「安定的」から「ネガティ ブ」に変更され、さらにまた格下げされる恐れがあります。そして格下げされますと、さらに金利が上昇する、という悪循環に陥ってしまう可能性があるので す。
 もう一つ考えなければならないことがあります。日本と米国の長期金利を見てください。
 日本の2010年12月の「新発10年国債利回り」は1.110%。同月の米国の「10年国債利回り」は3.28%。トリプルAに格付けされてい る米国債の金利が3.28%で、ダブルAの日本国債の金利が1.110%(この数字が出た当時の日本国債の格付けはダブルAでした)となっています。基本 的に、格付けが高い方が金利は低くなりますが、日本と米国の金利を比較すると、米国の方が金利は高くなっていますね。
 これはなぜでしょうか?


長期金利の上昇により、財政赤字が加速的に悪化する可能性も
 しかし、このまま日本の財政赤字が拡大し続け(そしてその可能性は高い)、日本国内で国債が消化できなくなってきますとどうなるでしょうか。ま ず、金利が上昇し始めます。海外の投資家は今の金利水準では格付けの劣る日本国債を買わないからです。すると、先ほどもお話ししたように、それでなくとも 悪化傾向にある財政赤字が、金利上昇により加速的に悪くなる可能性があるのです。
 日本国債はほとんどが国内で消化されているということですが、日本国債を一番多く買っているのは、ゆうちょ銀行です。ゆうちょ銀行は、約200兆 円の資産を持っていますが、その約8割が日本国債です。大手行も各行20兆円前後の日本国債を保有しており、大手の銀行だけで約220兆〜230兆円の日 本国債を持っているのです。つまり、皆さんの預貯金で国債を買っているのです。
 しかし、日本国債を国民の預貯金で賄っていては早晩限界が訪れます。高齢化の進展で、5年後くらいからは高齢者の預貯金の取り崩しが顕著となり、 貯蓄率がマイナスになるという意見もあります。国内で国債を消化できなくなると、海外で消化してもらわないといけなくなります。しかし、先ほども述べたよ うに海外の投資家は、このままの金利で為替リスクがあって格付けの低い日本国債を買ってくれるでしょうか?その際にはさらに金利を高くしなければ売れなく なるという悪循環に陥ります。(このあたりの内容については、拙著『日本経済このままでは預金封鎖になってしまう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をお読みください。)
 そこで議論となってくるのが、国民新党の悲願である郵政改革法案です。具体的には、ゆうちょ銀行の預金限度額を2000万円にしようというもの。預金限度額を2000万円にすると、ゆうちょ銀行はそれだけ国債を買うことができます。ただし、ここで問題があります。
 もし、ゆうちょ銀行の預金限度額を2000万円にしたとしても、日本の預貯金自体が増えるわけではありません。もしかしたら、一部のタンス預金が ゆうちょ銀行に流れるかもしれませんが、大多数は民間の金融機関、特に地方の金融機関からゆうちょ銀行にお金が流れるだけです。


まず取り組むべきは無駄のカット
 増税も仕方ないとは思いますが、まず本来取り組むべきは、無駄のカットではないでしょうか。そもそも、税金を払っている一般の国民より、なぜ公務 員の給料や退職金、年金などの方が高いのでしょうか。これはあり得ない話です。まずはその部分をカットしてから、増税を行うべきではないでしょうか。そう すれば、国民も納得はするでしょう。それを、このまま消費税を上げるだけなのであれば、民主党がこの先の選挙で惨敗するだけです。そしてさらに政治の混迷 が続くという悪循環となるだけです。
 以前、民主党は公務員の人件費を2割削減すると言っていました。有力な支持母体が自治労だからでしょうか、今も全く手つかずの状態です。
 また、自民党も戦略が間違っています。自民党は「民主党はマニフェストを守っていないから衆議院を解散した方がいい」と非常に短絡的な論法を繰り 返しているだけです。大事なのは、マニフェストを一つずつ検証していくことではないでしょうか。マニフェストの中にも、いいものもあれば悪いものもありま す。その一つ一つに対して自民党が対案を出さないから、議論がまったくかみ合わないのです。
 マニフェストの中にも、当然、守るべきものと見直すべきものがあります。民主党のマニフェスト自体、拙速に作ったものですし、自民党に業を煮やし た国民がそれに乗っかっただけなのです。そこで、民主党のマニフェスト一つひとつに対し、自民党は「自分たちだったらどうやっていたか」という案を出さな いといけません。

自民党もただ反対するだけの野党ではダメ
 今の自民党はただ反対するだけの野党に成り下がってしまっています。そして、民主党は正しいと言っていたことすらやらない嘘つきに成り下がってしまっているわけです。公務員改革も、やると言っていたのに根幹部分ではほとんど手つかずです。
 マニフェストを全て守れとは言いませんが、この財政状況の中で、守るべきマニフェストは実行しなければいけません。やることをやらずに、増税ばかりに先走っているのは、おかしな話ではないでしょうか。
 確かに、この現状では増税はやむなしだとは思いますが、まずは財政削減などやるべきことをやるのが筋です。でなければ、国民の信任は得られないと 考えるべきです。4月の統一地方選ではその結果が出るでしょう。このままでは民主党は惨敗し、菅内閣は退陣です。また、政治の混迷です。これではさらに財 政は規律を失います。国の将来ビジョンも描けません。
 このまま何の対策も立てなければ、日本国債の格付けは、当面安定的だとは言え、さらに下がらざるを得ないでしょう。また、もう一つ注意すべきことがあります。
 皆さんもご存じのように、欧州では金融危機が起こっています。それは世界同時不況で多額の財政支出をしたため、経済危機が財政危機に転化されてしまったことが発端です。ギリシャから始まり、アイルランド、ポルトガルまで飛び火しようとしている状況です。
 このように、財政危機が欧州でクローズアップされれば、日本の財政に対して世界中がより神経質になる可能性があるのです。そうなると、余計に日本国債の消化が難しくなったり、日本に対する見方が厳しくなることも当然ありうるわけです。
 次回は、日本がこの状況を打開するためにはどのような政策を取るべきか、そして、財政赤字が膨らみ続けるとどのような事態になるのか、考えていきたいと思います。
(つづく)
小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント。小宮コンサルタンツ代 表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。81年京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。84年から2年間、米国ダートマ ス大学エイモスタック経営大学院に留学。MBA取得。主な著書に、『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講 座』(以上、ディスカバー21)、『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本』、『日経新聞の数字がわかる本』(日経BP社)他多数。最新刊『日本経済が手にとるようにわかる本』(日経BP社)――絶賛発売中!小宮コンサルタンツBlog:komcon.cocolog-nifty.com/blog

皆さまからお寄せいただいたコメント(8件)
S&Pなど、米国の格付け会社って、サブプライムローンを高く評価してバブルを煽っていましたよね?なぜ、こんな詐欺まがいの会社の格付けを、いまだに金科玉条のように扱われるのか理解に苦しみます。しかも、格付け会社というのは、依頼主の求める方向で格付けする傾向にある事を考慮に入れるべきであり、おそらく今回は、増税不可避論者の意志が見え隠れしますね。財政赤字は深刻な問題であることは認識しているが、容易にネガティブな情報に飛びつき危機煽りをする記事のために、議論が、解決すべき問題の本質からかけ離れてしまう事を危惧します。(2011年02月04日・憂国志士)
 少子高齢化の世の中、新入社員よりも退職する社員の方が多くなっていますが、公務員だって減るのは確実なので、人件費2割減は確実に実行してもらわなければなりません。  消費税に関しては、上げるしかないでしょう。現状では、儲かっている企業の法人税やサラリーマンからの所得税などの直接税にあまりにも頼りすぎです。農民 が納める年貢に頼りすぎた江戸幕府は財政状況が悪く徳政令まで出しましたが、結局つぶれてしまいました。一方、付加価値税(国内増値税)を17%も納めな ければならない隣の中国では、GDPの額が日本と同じ500兆円であっても、国の財政収入が100兆円にも達します。41兆円しか税収が上がらない日本とはえらい違いです。 生活に最低限必要な衣食住費の税率を据え置くことを条件にして、速やかに対応してもらいたい。(2011年02月05日・匿名) more
年金生活者です。最悪のシナリオはハイパーインフレですがどうも避けられないような感じがします。現役世代はそれ なりに給与も上がるでしょう。しかし年金生活は確実に破綻します。(1965年に国債が発行された時には将来このような事態を招こうと予測した人は少数で した。安定を望み自民党政権をずっと支持してきたツケが回ってきた訳です。)規制緩和やTPPによる経済成長の成果が出て、44兆円もの国債発行分の歳入 を税収でまかなえるようになるまでにはかなりの年数を要すると思います。やはり短期的には消費税のアップが現実的な対応策ではないでしょうか。(2011 年02月05日・森 英一郎)
「増税も仕方ないとは思いますが、まず本来取り組むべきは、無駄のカットではないでしょうか。そもそも、税金を 払っている一般の国民より、なぜ公務員の給料や退職金、年金などの方が高いのでしょうか。これはあり得ない話です。まずはその部分をカットしてから、増税 を行うべきではないでしょうか。そうすれば、国民も納得はするでしょう。」このご意見が、会社の景気に合わせ給与が減ったり横ばいであったりし、人事異動等で厳しく評価されている一般企業に勤める納税者の考えを、全て言い表しています。(2011年02月05日・Yasu)
小宮さんの解析と予測は、いつも経済統計の解析に基づき、米欧各国の状況も勘案してあるので、信頼性が高いと思う。日本財政の危機的状況、金利上昇の背景、民主・自民のだらしなさなど、全て賛同できる解説だ。衆 議院選挙で国民が民主党に期待したのは、政官業が組んだ利権構造打破で、その証拠に前原大臣が「コンクリートから人へ」を掲げたとき、支持率は高かった。 しかしその後民主党内で「政治と金」の内紛が激しくなり、仕分けられた事業も官僚の抵抗で復活し、国民は民主党を見放してしまった。菅首相は、自分のやり たい庶民向け政策を実行するため、官僚を抱き込もうと公務員改革をあきらめてしまったようだ。民 主党の菅政権は、支持率低下理由を「政治と金」にかこつけるが、官僚の情報に踊らされていると思う。センセーショナルな取り上げ方で読む人が多い森永氏の ブログで、盛んに官僚擁護のコメントを書く人がいるが、菅家・村木と検察が筋書きででっち上げた事件を見て「政治と金」の事件化に官僚の悪あがきを感じる のは私だけではないだろう。この先の見えない財政状況を打ち破るに方法について、次回の小宮さんの提案を期待して待つ。(2011年02月06日・富士 望) more
政権交代によって多少は変わるかとも思いましたが、55体制の自民党時代と何等変わっていない。民社党も、小沢派・反小沢派で如何のこうのと言う前に行うべき事は山ほどある。現 在の国債残高に至ったその原因は、自民党政権時代の政治家の自己利益優先による地元への利益誘導・支援をしていた業界・団体への利益誘導と官僚癒着という バラマキ政治の結果ではないのか。先の衆院選挙において野党に転落しても、以前の自社時代と何等変わっていない体たらく、国会中継を見ても、汚いヤジには 辟易としている。国債残高が このような状態に至るのは既に 分っていた筈で 自己の利益誘導ばかりに目を向け手を打たなかった自民党政権には憤りを覚える。政 治家は自己利益追求のバラマキ政治ではなく 国家・国民にとっての政治という観点で政治をして頂きたい、同様に 官僚も省益追求・自己保身ではなく 国 家・国民にとっての政治を行なう必要が有る。我々国民も 政治家の選出に当たっては 世襲議員や芸能人・スポーツマン・マスコミ等からの転身者の 人気投票でなく真の政治家を見抜く力が必要ではないのか。(2011年02月07日・にゃんちゅう) more
またまた、ステレオタイプの破綻論ですかですか。米国の格付け会社なんて金融危機の戦犯であり、その評価なんて全く当てになりません。現に、国債の金利は格付けの変更の影響を全く受けてません。国債を国内で消化できなくなる要因として、高齢者の貯蓄の切り崩しや貯蓄率の低下を挙げていますね。高齢者が貯蓄を崩したら、その預金は無くなるのでしょうか?別の個人か法人の預金になるだけです。貯蓄率の低下も、給与の大半を使えば貯蓄率が減るが、使ったお金は消えるのでしょうか?これも違います。財やサービスの売買を通して別の誰かの預金になるだけです。また、金利は債権の需給で決まるのは確かですが、需給を決定する大きなプレーヤーである日銀は無視ですか?日銀はお札を刷って国債の需給を調整できるんですよ。ゆうちょを出すくらいなら日銀を出して議論して下さい。別に今の日本に問題ないとは言いませんが、あなたの論はまず財政破綻という結論があってその結論に都合のいい要素を原因として並べているだけです。(2011年02月07日・TY) more
財政が悪化した原因は景気が回復しないままに社会保障の必要経費が膨らんだ事にある。増税や無駄削減の前に、景気浮揚が最大の課題と考えるが、現在の政府とマスコミには、この景気浮揚の考え方が殆どない。このままでは、増税しても財政は悪化の一途をたどって大きな混乱に落ち込んでいくと予想される。(2011年02月07日・門馬)
 

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コメント
 
01. 2011年2月07日 19:28:39: ibwFfuuFfU
日本が率先して欧米各国や金融機関の独自格付けを行ったらどうか?

02. 2011年2月08日 06:12:55: y4efMCmcIo
>>01
同意w 欧米では銀行は資産査定もしてないらしい(ストレステスト)し、時価会計も一部見直したんだとか。

03. 2011年2月08日 10:12:21: lqOPOFnyLE
この投稿は、格付けシステムというものを問題視しているわけではない。システムがどうであれ、それが及ぼす影響を分析しているのだから、システムの問題を指摘したところで、問題が解消するわけでない。現在国内では変化があまり生じていないのは国内調達で済んでいるからで、本論は今後のことを示唆している。
 調達における日銀引受は、次の分析課題であろうから、さらなる論考を待ちたい。

04. 2011年2月09日 11:43:19: Pj82T22SRI
国債格下げでも金利安定の謎

* 2011年2月9日 水曜日
* 松村 伸二

S&P  IMF  日本国債  格付け 

突然の日本国債格下げ。それでも長期金利の安定は崩れない。銀行、保険など債券市場を席巻する国内勢に守られた構図だ。だが海外投資家は水面下で日本売りの機会をうかがっている。

S&Pによる主な国・地域の信用格付け

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が1月27日、8年9カ月ぶりに日本国債の格付けを引き下げた。従来の「AA(ダブル A)」から1段階低い「AA−(ダブルAマイナス)」は財政不安に揺れるスペインより「格下」。昨年の名目GDP(国内総生産)で日本が世界第2位の地位を譲った中国に信用力でも並ばれたことになる。

 しかし、格下げ発表後の10年物国債利回り(312回債)の上昇は発表前日の終値に比べて0.015%高い1.250%までで終息。翌1月28日は早々と低下に転じ、その週の最低水準(1.210%)をつける落ち着きを見せた。

 日本人に寝耳に水の印象を与えたS&Pの行動。だが、投機のプロ集団である海外投資家はこのシナリオをある程度、織り込んでいた。「発表直後には先物市場で債券をむしろ買い戻した」(欧州系証券会社)という。

 先読みを暗示させる証左がある。S&Pの格下げと歩調を合わせたように同日、日本財政に警鐘を鳴らした国際通貨基金(IMF)の財政見通しだ。日本の財政赤字はGDP比で2011年に9.1%。2010年の9.4%から減少するが、昨年11月時点のIMF見通しに比べると改善幅は0.2ポイント縮小する。

 歳出の増額を警戒するIMFは昨年9月にも日本の財政出動余地の乏しさを指摘。同10月には金融安定性報告書で、日本の国債を大量に引き受けている銀行部門の保有姿勢が「反転するリスクがある」と警告した経緯がある。

 実は、海外投資家は格下げに先んじて日本売りを仕掛けていた。世界の様々な金融商品を組み合わせた投資を手がける「グローバル・マクロ・ファンド」。大手ファンドの担当者たちは昨年末から今年にかけて相次いで密かに来日していた。財政事情を直接肌で感じて運用判断を下していたわけだ。

国内勢が海外勢の売り崩し封殺

 日本証券業協会によると、外国人が昨年11〜12月に売り越した長期利付国債の金額は1兆2022億円。しかし国内勢は逆に1兆6981億円を買い越し、債券相場の売り崩しを封じた。

 海外勢はこれまで何度も日本国債の売りを仕掛けたが、ことごとく失敗に終わってきた。国内勢が95%を保有する特殊な市場構造を崩すことはできなかったのだ。世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、ティモシー・ガイトナー米財務長官も国債格下げを受けた日本について「確かに債務比率が高いが、貯蓄率も高い」と指摘した。

 「海外勢は国債取引よりも、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場で個別企業の信用低下を見込んだ取引に動いている」(外資系証券)との指摘もある。例えば内需依存型で、長期金利上昇の影響を受けやすい有利子負債が大きい銘柄が投機の標的になっているという。個別企業の保証料の平均値(5年物、QUICK算出)を見ると、近畿日本鉄道は昨年末に比べ30%強、阪急阪神ホールディングスも17%上昇した。日本の長期金利が本格的に上昇する機会を虎視眈々と狙っているのだ。

 市場が注目する次の転換点は6月。米国では量的金融緩和の第2弾(QE2)に終止符が打たれるかどうか。日本では菅直人首相が掲げた社会保障と税の一体改革案の取りまとめが実現できるのか。いずれも長期金利上昇のきっかけになり得る。海外勢が待ち構える「隙」はまだまだ多い。


05. 2011年2月09日 12:04:31: Pj82T22SRI
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>大竹剛のロンドン万華鏡
経済危機、解決に向けムーブメント起こせ!
「フォールト・ラインズ」著者、ラグラム・ラジャン教授に聞く

* 2011年2月9日 水曜日
* 大竹 剛

米国  欧州・中東・アフリカ  フォールト・ラインズ  不均衡  財政問題  WTO  中国  民主主義  不平等  IMF 

 英フィナンシャル・タイムズと米ゴールドマン・サックスが選んだ2010年のビジネス書でトップに輝いた「フォールト・ラインズ」の日本語訳が、先月、新潮社から発売された(『フォールト・ラインズ 「大断層」が金融危機を再び招く』)。

 著者であるシカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は、米国は中所得者層における不平等の拡大という深刻な問題を抱えており、それを解消するために政府が意図的に住宅ローンを拡大する政策を推進。FRB(連邦準備理事会)もそれを間接支援したことが金融危機の背景にある、と指摘して論争を巻き起こした。

 さらに、国際不均衡を解決するには、世界規模で民主主義をより良く機能させ、市民の中から政治家・国家を突き動かすムーブメントを起こす以外に方法がないと説く。国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストだったラジャン教授に、現在の世界経済の状況分析から、その処方箋まで聞いた。

(聞き手は大竹剛=日経ビジネスロンドン支局)

―― 現在の世界経済の状況をどう見るか。
シカゴ大学のラグラム・ラジャン教授

 ラジャン 危機前の状況に戻っているか、戻ろうとしているように見える。米国は景気後退から抜け出すために、多額の財政出動を行い財政赤字を長引かせた。さらに、量的緩和を実施しており、かなりのインフレでも起こらない限り、近い将来、金利を引き上げる可能性は極めて低い。一方、中国は人民元の上昇を抑えているし、外貨準備も2.8兆ドルと巨額だ。つまり、米中の両サイドで、金融危機以前の状況に戻りつつあるかのようだ。

 これはあまり良い状況ではない。米国ではこれまで、政府が家計の肩代わりをしてきたが、財政の悪化で中期的にその余地が残されているのか疑問だ。皆、こうした問題に対処するのは景気後退を乗り越えてからと言うが、景気後退の時こそ問題に取り組む良い機会だ。もし、これらの問題に対処せしないまま景気が回復したら、その時にはもう、問題を解決しようという意欲は失われてしまう。
保護主義より過去の成長モデルへの執着が問題

 深いフォールト・ラインズ(大断層)は依然として存在している。米国の問題である、不平等や不十分なセーフティーネット、景気刺激への願望という問題は、まだ残っている。一方の中国は、(輸出頼みという)古い成長パターンから脱却したがらないことに問題である。おそらく、指導体制が変わるまでは、あまり大きな動きは起きないだろう。

 もちろん、米・中以外の国も改革が必要だ。例えば、日本は成長を取り戻す道を見つけ出す必要がある。景気後退から多少ではあるがうまいこと抜け出してきたが、それには輸出が大きな役割を果たしてきた。日本がいかに内需主導で成長を取り戻すかは、今後、極めて重要な課題になってくる。

―― 米国も中国も自国経済優先で保護主義的になっているという見方もある。

 自国経済を保護しているというよりも、むしろ米中ともに、過去に成功した経済成長のモデルに固執することが短期的には優先されるべきだと認識している。例えば、米国ではかつて、景気刺激策、特に金融政策を通じた刺激策は成長を維持する上で上手く機能してきたから、その手法を今回も再び利用している。確かに、景気刺激策は米国内の消費を増やし、それは米国にとっても世界にとっても都合のよいものだった。問題なのは、それが今回も有効かどうかということだ。

 同様に中国にとって、輸出を再び増やすことは戦略上、重要な一部分だ。(保護主義というように)他国を犠牲にして競争に勝とうとしているわけではない。彼ら自身が成長に必要なことだと考えているから、それを実行しているに過ぎない。
オバマにも胡錦濤にも不均衡を解消する力はなし

―― 1月の米中首脳会議は、米中間の不均衡を解消するための糸口を見い出せなかった。

 こうした会合は、大きな合意は得られなくても、定期的にお互いが会い、対話を続けることに意味がある。米中の首脳が大きな合意に達するとは思えない。もちろん、形式的な合意はできるだろうが、胡錦濤国家主席が米国を訪問し、「私たちは成長戦略を変更することにした。それを確かめる方法もある」と言うことはあり得ない。バラク・オバマ大統領も胡国家主席に会って、「私たちは財政赤字を半減することを決めた」とは言えない。

 彼らには、そうした解決策を実行する力はない。形式的に「海外直接投資のフローや貿易のフローは上手くいっている。少し対立する部分はあっても、対話を続けており両国の関係は問題ない」という合意文書に署名はできる。しかし、こうした会談は周囲の期待を醸成することはできても、ほとんど間違いなく、そうした期待は打ち砕かれるものだ。
EUでダメなことは世界でも機能しない

―― 著書の中で、IMF(国際通貨基金)やWTO(世界貿易機関)など、既存の国際機関の限界を指摘している。
ビジネス書で昨年、欧米でベストセラーとなった「フォールト・ラインズ」

 私が主張したのは、全世界をカバーする1つの政府を持たずに、世界規模の民主主義を機能させる方法だ。(IMFやWTOなどで結んだ)国際合意をトップダウンで各国に強制しようとしても上手くいかない。なぜなら、政治家にはそうした合意に署名する能力がないし、国民はそのような合意を好まない。

 ユーロ圏で起きていることを見れば、一目瞭然だろう。欧州の市民は、「(EU=欧州連合の本部がある)ブリュッセルがこれをやれ、あれをやれと命令する」と不満を言い続けている。彼らに、「ブリュッセルが好きか?」と問えば、「ノー」と答える。

 EUでさえうまくいかないのだから、国際機関がルールを決めて、それを世界の各国に押しつけることができるとは思えない。もし合意しても、各国はそれを拒絶するだけだ。なぜなら、それは民主主義と衝突するからだ。
財務省と中央銀行とだけ話すIMFの限界

 現時点で私たちが持ち得る最大の希望は、各国が自らの行動結果を受け止め、国民に何をすべきなのかを真摯に語りかけていくことだ。これは、時間のかかる解決策かもしれないが、重要な第一歩だ。

 例えば、IMFのような機関は、各国にその国の政策の何が間違っているかという分析を、基本的に財務省や中央銀行に説明するだけで帰ってしまう。それでは不十分で、私たちは国民をより広く巻き込む新たな組織を作ることを考える必要がある。

―― 具体的にはどんな組織か。

 「これが、あなた方の政策のあるべき姿だ」というメッセージを、広く伝えていくような組織だ。今、いったいどこの国が、IMFの主張が正しいと受け止めるだろうか。多くの国で、「政権はIMFの言いなりだ。そんな政権は追い出そう」となる。「IMFの主張を実行することが、世界経済のために必要なことだ」とは誰も言わない。

 しかし、「世界のため」と主張して成功した事例もある。最貧国の債務免除を債権国に働きかけるキャンペーンや、地雷撲滅キャンペーンなどがそれだ。自国のための短期的利益が、世界のための長期的利益に反することを理解させることはできる。そのためには、世界規模で民主主義をより良く機能させることが必要だ。
解決策は市民レベルのムーブメント

―― 世界規模の民主主義に期待するというのは、少し楽観的ではないか。地球温暖化では世界規模で関心が高まっていても、各国の足並みは乱れ国際協調とは程遠い。

 例えば、米国で温暖化対策法案が成立しなかったのは、誰もそれが世界と米国にとって必要なことだと主張しなかったからだ。そう言ったところで、政治家の票集めにはならない。

 だからこそ、私たちは民主主義をより良く機能させることに、エネルギーを注がなければならない。国際機関にゲームのルールを決めさせるという手法は上手く機能しない今となっては、ほかに選択肢がないからだ。

 もし、政治家が自分で自分を説得し、自分の国に合意内容を持ち帰って実行できるのなら、全く問題がない。しかし、それは極めて難しい。政治家の背中を押す一助、つまり、市民の中からムーブメントを巻き起こすことが必要だ。

 世界銀行や国連は、少しずつだがそのこと理解し、市民に開かれた存在になろうとしている。しかし、もっと大がかりな取り組みが必要だ。(インターネットやツイッターなど)コミュニケーション技術を上手く使えば、民主主義を世界規模で活性化させることに成功する可能性は大きいはずだ。
経済問題はセクシーじゃない

―― 具体的には、どうやって世界規模で経済問題を解決するためのムーブメントを起こしていくのか。温暖化対策や捕鯨反対などと比べて、経済問題は複雑で国民には分かりにくい。

 まず、1つはムーブメントを起こすための組織を作ること。おそらく、自然発生的にはそのムーブメントは始まらないだろう。

 地雷やイルカ、クジラなどの問題では、人々が協力し合って問題解決に取り組む動機となるような強烈な争点がある。しかし、経済の国際不均衡の問題は、あまりエキサイティングなテーマではないし、セクシーでもない。だから、意図的にムーブメントを作り出していくような、多数の国が参加する組織が必要となる。

 その時、最初の課題は、各国がこうした組織に自由を与え、コミュニケーションや分析などの活動を許すかどうかだ。分かりやすく言えば、各国政府が、こうした民主主義の一部を担えるかどうかである。一部の国は、そうした活動を許すことに消極的かもしれないし、外国の組織が介入してくることを嫌うかもしれない。

 特に、新興国にそうした傾向がある。東アジアにおけるIMFの評判を思い起こしてほしい。決して、良い評判ではない。
言論の自由こそ重要

 2つ目はルールだ。それは、これをやれ、あれをやれ、と言うルールではない。この組織に、経済問題を自由に論じることを認めることだ。政治的な革命を奨励したり、政府を転覆させたりすることはできないが、経済問題がいかなるものであろうと、政府を批判する言論の自由を与えることだ。

 このムーブメントを起こすには新しい組織が必要になるかもしれないが、新しい組織をゼロから作るにはかなりの費用がかかる。だから、まずは既存の組織を使うことを試してはどうだろうか。既存の組織は少し古い認識を持っているが、それを上手く使わない手はない。

―― ムーブメントを引き起こすには、非常に長い時間がかかりそうだ。

 確かに長期的な取り組みとなるが、どこかの時点で始めなければならない。これから数年間は、対話の必要性が飛躍的に高まる。例えば、水資源の問題を思い浮かべてほしい。もし、水不足が深刻になったら、私たちはどうやって交渉したら良いのか。それには、何らかのメカニズムが必要だろう。

 大国が1つだった時は、各国にルールを割りあてる国際機関を持つことは簡単だ。しかし、大国がいくつもある多極化した世界では、そうした国々にルールを受け入れさせることは困難だ。

 唯一、私たちが得られる国際協調の方法は、ボトムアップしかない。国際機関が各国の国民にルールを押しつけるようなトップダウンは無理だ。政治家を、国際問題に立ち向かわせるように、国民の側から突き上げていくしかない。

 次の10〜15年を考えた場合、我々が良いと思っていることは、各国にとっても良いことのはずだ。例えば、中国にとって現在の外需に依存した成長路線から抜け出すことは、より持続的な成長に向けて必要なことで、合理的なはずだ。米国にとっても、消費に頼りすぎないようにすることは、経常赤字の削減につながる。

 中期的には、自然とそうした方向に向かうはずだ。各国が対話を継続し、経済、政治的に平和な関係が持続する限り、いずれは改革を実行する方向に向かっていくと思う。必要なことは、大がかりな合意をすることではなく、対話が決裂することなく、ほんの少しでもいいから前進させていくことだ。私は、我々が必要なことをいずれ実行できるという希望を、捨ててはいない。
金融危機回避の4つの処方箋

―― 短期的に見た場合、次に起こり得る金融危機や混乱の衝撃を軽減するには、何をすべきか。

 次の危機が起こるとしたら、予想もしなかったところから起きてくるだろう。危険だと思っているところには、より多くの対策が実施されるからだ。次の危機は、もう1度サブプライムの不動産担保証券から起こることはなく、何か新しいものから起こる。

 危機を回避するには、4つのことが必要だろう。1つは、金融機関が過剰なリスクを取ることをやめ、適切なリスクをとれるように、インセンティブの仕組みを改善することだ。2つ目は、もし失敗したら、その衝撃を吸収する大きなセーフティーネットを作ることだ。3つ目は、もし、インセンティブを濫用し、間違いを犯して、セーフティーネットを食い潰したら、その金融機関を破綻させるべきだ。そして最後が、システムの多様性を構築することだ。銀行が破たんしても、投資銀行やヘッジファンドは存続するというような、破綻が連鎖しない仕組みが必要だ。
米国中所得者層の不平等が危機を招いた

―― 著書「フォールト・ラインズ」では、米国の金融危機の深淵には、所得や教育、雇用機会などの不平等の拡大が潜んでいると指摘し、反響を呼んだ。一部には反論もあったようだが、どのような議論が巻き起こったか。

 ある教授は、「低所得層の不平等は1980年代には拡大したが、1990年代には縮小している」と反論してきた。しかし、私の議論は、低所得者における不平等ではない。彼らは大きな声で主張しないし、誰も彼らの声に耳を傾けない。問題なのは、中所得者層の不平等拡大だ。

 低所得者層の不平等が拡大した1980年代、誰が大統領だったかを思い出してほしい。レーガン政権で、その後がブッシュ(父)政権だ。つまり、共和党政権では、不平等は大きな争点にはならなかった。その後のクリントン政権は対策を講じようとし、おそらく低所得者層の不平等を減らすことには成功した。それが、その教授が指摘したところだ。

 しかし、中所得者層の不平等を減らすことは、低所得者層のそれよりも難しい。なぜなら、中所得者層の不平等は、教育格差によって作られるもので、それを修復することは困難だからだ。

 低所得者層では、最低賃金を引き上げることで、ある程度、問題に対処できる。低所得者層の不平等は、最低賃金による所得の再配分によって改善可能だ。しかし、中所得者層ではそうはいかない。政治家は中所得者層の声には敏感だ。だから、中所得者層の不平等を解消するために、あの手この手で誰もが家を買えるような環境を作り出していった。
不平等による危機の芽、日本にもある

 2つ目の反論は、政府は私が指摘するような政策を実施していないというものだ。私の論点は、1992年以降、大きな政策転換があったというものだ。議会は、(サブプライム問題の元凶とも言われる政府系住宅金融機関の)ファニーメイとフレディマックを住宅都市開発省の傘下に位置付け、支払い可能な住宅ローンの提供を着実に増やすように要求した。米政府による、この2つの金融機関の審査基準がより柔軟になったことなどを歓迎する報道発表もある。

 これらすべてが、貸し出し基準を引き下げることにつながった。私の著書への批判は公正なものだが、私は今も、多くの証拠は私が指摘した事実を裏付けていると信じている。

―― 中所得者層の不平等は、米国だけに限った話ではない。不平等の拡大は、ほかの国でも危機の原因になり得るか。

 まず、指摘しておかなければならないのは、不平等は決して悪いことばかりではなく、良い側面もあるということだ。

 もし、不平等が才能に応じた異なる報酬を反映したものだったら、それは全く悪いことではない。例えば、あなたが素晴らしい才能の持ち主で、起業家として大成功を収めた結果としてお金持ちになったのなら、問題はない。しかし、不平等が(教育などの)資源や人脈へアクセスする機会が生み出すものだと、問題となる。

 米国では、貧しい地域で生まれたら、良くない学校に行くことになり、人生に悲観的になる。その状況を克服することは極めてまれだ。しかし、良い地域で金持ちの家庭に生まれたら、アイビーリーグ(アメリカ合衆国東部の名門私立大学8校の連盟)の大学に行き、良い人生を送ることができる。

 こうした不平等は克服することが難しい。この状況は、市民に根本的な不公平感を持たせ、社会システムに対する反感を抱かせる。それこそ、私が心配している事態で、解決に向けて取り組まなければならない。それは、日本においても、インドにおいても当てはまることである。
このコラムについて
大竹剛のロンドン万華鏡

ギリシア危機を発端に、一時はユーロ崩壊まで囁かれた欧州ですが、ここにあるのは暗い話ばかりではありません。ミクロの視点で見れば、ベンチャーから大企業まで急成長中の事業は数多くあるし、マクロで見ても欧州統合という壮大な実験はまだ終わっていません。このコラムでは、ロンドンを拠点に欧州各地、時にはその周辺まで足を延ばして、万華鏡をのぞくように色々な角度から現地ならではの話に光を当てていきます。

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