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今度は、地方の暴走か
日本列島改造の地価暴騰の規模を10倍にしたようなものだろうか
今年でバブル崩壊という売り手の予想が外れる可能性もでてきたが
これだけ巨大な国で実質2桁成長が続くことは資源制約から考えればありえない
いつまで続くのやら。。
日経ビジネス オンライントップ>投資・金融>肖敏捷の中国観〜複眼で斬る最新ニュース
地方政府の“暴走力”は健在 中央が目をつぶり、過熱景気が続く「役割分担」の構造
* 2011年2月7日 月曜日
* 肖 敏捷
中国 ハードランディング 科学的発展観 不動産価格 経済成長 景気減速
サッカーAFCアジアカップ2011での優勝を除くと、依然として明るい話が少ない日本では、2010年10〜12月期の上場企業の決算発表が経済紙などをにぎわせている。過去最高の業績を記録した好決算が相次ぎ、2011年3月期の業績予想を上方修正する会社も増えている。
日本国内のエコポイント制度やグローバル規模のスマートフォン需要などの寄与効果が小さくないが、その快進撃の背景にはやはり中国をはじめとする新興国の旺盛な需要がある。例えば2010年、中国での自動車販売台数が、日本のみでなくアメリカすら抜いてしまったメーカーが現れたのはその好例だ。足元では、日本企業による中国シフトが加速しているため、今後このような日中逆転が幅広い業種で実現していく可能性が高い。
最大の関心事は深刻な干ばつがいつ収まるか
しかし、中国市場への依存度が高まれば高まるほど、中国需要の失速に対する懸念も高まってくるのは当然のことだ。最近では、リーマンショック以降導入された景気対策が次々と打ち切られる一方、インフレや不動産バブルを抑制するため、金融引き締め策が矢継ぎ早に導入された。これらを受け、中国景気がハードランディングに向かうのではないかとの緊迫感が一気に強まってきた。
中国では2月3日から春節(旧正月)連休に入り、その数週間前から延べ28億人ともいわれる民族大移動が始まるなど国民的な祝賀ムードが広がっているが、日本では、春節後に中国当局が追加的な利上げをするのではないかと神経を尖らせている関係者が少なくないようだ。
2011年はまだ1カ月あまりしか経過していない。チュニジアやエジプトの動乱を事前に予測したエコノミストがいるという話を聞かないのと同様に、中国の金融政策も「一寸先が闇」で、あと何回の利上げがあるのか、それを予測するのは無意味なことである。
目下、政策担当者にとって最大の関心事は、不動産価格の高騰が沈静化するかというより、広範囲に起きている深刻な干ばつがいつ収まるかであろう。しかし、いつ慈雨に恵まれるのか、政策担当者も固唾を飲んで見守るしかない。
ハードランディングの可能性はほとんどない
中国景気の話に戻ると、春節後、ハードランディングの可能性はほとんどなく、むしろ、第2四半期から再加速するのではないかと考えられる。景気の過熱を懸念する中央政府とは対照的に、地方政府の成長意欲が一向に衰えを見せない。
中国では、3月5日から全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開催されるまでの間に、地方政府の「全人代」が開催される仕組みとなっているが、各地の「全人代」から伝わってきたのは高成長に対する変わらない熱意だった。
「アジアをはじめ好調な新興国経済の恩恵をもってしても、日本のマクロ経済が成長軌道になかなか乗らないのは、地方都市の活力低下も原因」(日本経済新聞2011年2月1日付け、細野助博氏)との指摘があるが、地方が“暴走”する中国はその好対照であると言える。これは、中国の金融引き締めがなかなか功を奏しない最大の理由だと考えられる。
そもそも、中国景気が減速するというコンセンサスが出来上がっている背景には、省エネや環境保護を優先するため、経済成長をある程度犠牲にしても構わないという、いわゆる「良い景気減速」に対する関心が高まっていることがある。過剰な金融引き締めによる「悪い景気減速」ばかりではないという考え方だ。
2010年10月に開催された中央経済工作会議では、2011年から始まる「第12次5カ年計画」の中心テーマとして、経済成長方式の転換というスローガンが大々的に掲げられた。
投資・輸出依存型の高成長から、投資と消費をけん引役とする内需主導の持続成長へ。成長率至上主義から、成長と環境との調和へ。低付加価値の「中国製」から高付加価値の「中国創造」へ――。といった転換がこのスローガンの意図ではないかと考えられる。
この会議の声明文の中では、2011年の経済成長率に関する政府見通しが盛り込まれなかった。これをもって「今度こそ、経済方式の転換に取り組む中国政府の決意は本物だ」と受け止めた関係者は少なくないようだ。
今年、重慶市は13.5%成長を目指す
ただし、経済成長方式の転換は、胡錦濤氏が2002年に共産党総書記に就任する前から打ち出していた「科学的発展観」そのものである。2003年春の「胡錦濤〜温家宝政権」発足後から、政府は「毎年8%成長」という見通しを掲げ続けたにもかかわらず、中国の実質GDP成長率は5年連続で2ケタ成長を達成した。改革・開放の加速を呼びかけたケ小平氏の「南巡講話」を起爆剤に始まった2ケタ成長記録(1992〜96年)と肩を並べる成長ぶりである。
リーマンショックの影響で、2008年、2009年の実質GDP成長率はいったん9%台に鈍化したものの、2010年になると再び2ケタ(10.3%)成長を記録。2012年秋に胡錦濤氏が任期満了を迎える予定だが、それまで2ケタ成長が続く可能性は排除できない。その根拠は地方政府の「人民代表大会」から見つけることができるかもしれない。
今年に入ってから相次いで開催された各地の人民代表大会を見ると、2011年の成長率見通しは、さまざまな意味で話題となっている重慶市の13.5%が最も高く、半数以上が10〜13%に集中している。2ケタ未満の成長率見通しを掲げているのは、河北省、浙江省、広東省、北京市、上海市くらいである。
ちなみに、中央経済工作会議は2011年の全国の成長率見通しを公表しなかったが、国家発展改革委員会の張平主任は「8%前後」と従来通りの目標を維持すると述べた。そうすると、中央政府と歩調を合わせているのは北京と上海くらいだ。
このような現象は今さら始まったわけではないが、中央政府が経済成長方式の転換を強調しているにもかかわらず、地方政府がなぜそれに対抗して2ケタの高成長にこだわり続けるのか。
10項目に及ぶ「恵民政策」の実施を約束
ちまたでは、成長率が高ければ高いほど地方政府の幹部が中央政府へ出世しやすいとの見方が定着している。これもあながち間違っているとは言えない。経済成長の著しい沿海地域の地方トップの存在感が高いのは事実である。
しかし、民間会社の成果主義という発想で、中央政府の幹部登用制度を単純化してはいけない。成長競争に勝ち抜くため、不動産開発や無駄な投資を繰り返すなど、地方政府の暴走がよく指摘されているが、地方政府が中央政府から強いプレッシャーをかけられていることは意外に知られていないだろう。
具体的には、以下のような内容だ。
日本の地方自治体とは異なり、中国の地方政府のトップは所轄の自治体を1つの「独立国」として治めなければならない。言い換えると、本来、国あるいは中央政府がやらなければならない仕事を地方政府が肩代わりしている。
例えば、広東省の黄華華省長が行った政府工作報告には、経済成長率のほか、都市部と農村部の可処分所得の伸び率、消費者物価の上昇率、失業率などの目標値も盛り込まれていた。ちなみに、各地の経済成長率の目標値はばらばらだが、消費者物価及び失業率の抑制目標はほぼ中央政府の目標と一致している。
また、広東省政府は、2011年のうちに、低所得者層向けの生活補助支給や、医療や教育、公団住宅など公共サービスの強化など、10項目に及ぶ「恵民政策」を実施すると約束した。
どれが中央政府の仕事なのか、どれが地方政府の仕事なのか区別が付きにくいが、いずれにせよ、地方政府はこうした目標や約束を実現するために財源を確保しなければならない。従って、高成長を追求するインセンティブが高い。逆に、インフレや失業など、国民の不満が高い課題に地方政府が責任を持って対処すれば、不動産開発や成長競争が少々いき過ぎたところで、中央政府は容認の姿勢を取るはずだ。
中央政府と地方政府の駆け引きが注目点
3月5日に開催予定の全人代では、「第12次5カ年計画」が採択される見通しだ。今後の中国経済について、中国政府はどのような青写真を示すのか、その中身に対する関心が高まっている。肝心な中身については、発表された地方政府の「5カ年計画」を見ればその一端をうかがうことができる。
例えば、広東省の「5カ年計画」の主要目標について、広東省政府は、
[1]GDP成長率が年平均8%以上
[2]1人あたりGDP成長率が年7%以上
[3]経済成長方式の顕著な転換
[4]ソフトパワー(軟実力)の顕著な上昇
[5]民生の顕著な改善
などを取り上げている。いずれも新味のない内容だが、従来以上のスピードでこれらの課題に取り組もうとするその決意は「顕著」という表現に表れているといえる。
また、インフラ整備をはじめ、大規模な都市再開発計画を打ち出している地方政府も少なくない。しかし、そのプロジェクトが中央政府から認可されなければ、資金調達が難しくなる。従って、自分たちのプロジェクトをいかにして中央政府の「5カ年計画」に盛り込んでもらうかが重要になる。春節(旧正月)後、続々と北京に集まる各地の代表団による熾烈なアピール合戦が繰り広げられるだろう。
経済成長方式の転換を優先する中央政府は、5カ年計画のスタートに伴って始まる地方政府による「新たな成長競争」にどう対処するのか。全人代に向けた中央政府と地方政府の駆け引きが注目点となる。
ただし、「5カ年計画」の初年度や政権交代といった季節要因に加え、最近、チュニジアやエジプトなどで起きた大規模な反政府デモを背景に、中国では「経済成長方式の転換より高成長を優先すべき」という「成長率至上主義」が再び台頭する可能性が排除できない。
所得格差や腐敗、大学生の就職難など、社会秩序の安定を脅かしかねない不安要因は、高成長だけでは解消できない。だが、これらの不安を和らげるには、「高成長」が非常に有効であるのもまた事実である。中国政府の政策決定者もよく分かっているはずだ。従って中国の景気減速を懸念する必要はない。
このコラムについて
肖敏捷の中国観〜複眼で斬る最新ニュース
これまで20年間、東京、香港、上海における生活・仕事の経験で培ってきた複眼的な視野に基づいて、 中国経済に関するホットな話題に斬り込む。また、この近くて遠い日本と中国の「若即若離(つかず離れず)」の距離感を大事に、両国間のヒト・モノ・カネ・情報の流れを追っていく。中国情報が溢れる時代、それらに埋没しない一味違う中国観の提供を目指す。随時掲載。
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著者プロフィール
肖 敏捷(しょう・びんしょう)
肖 敏捷ファンネックス・アセット・マネジメント代表取締役社長、チーフエコノミスト。中国武漢大学卒業後、国費留学生で来日。筑波大学大学院博士課程修了後、 1994年に大和総研入社。2010年3月、同社を円満退職した。6月から現職。専門は中国経済、日経ヴェリタス人気ランキング(2010年)のエコノミスト部門では第5位。著書に「中国経済事情」(日本経済新聞出版社、2010年)人気中国人エコノミストによるなどがある。
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