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去年の転職市場は、プロも予想外の活況で、特に地方の伸びが大きかったらしい
新興国バブルのパワーと、国内の産業構造の転換が進んでいるせいらしい
中小企業の求人倍率の増加が不思議だったが、その理由がこれか
ただ生産性の低い中小企業ばかり労働需要が増えても、ブラック労働環境の増加や賃金の低下圧力となるから、そう素直に喜ぶわけにもいかないだろう
TOP経済・時事DOL特別レポート
【第127回】 2011年2月4日
中国、韓国の台頭で「日本の雇用」が変わる!?予想外の復活を遂げた転職市場にかかる期待と不安
“転職ブーム”も今はいずこ――。「新入社員の3割が3年以内に会社を辞める」と言われ、「第二新卒」がもてはやされた時代はもはや過去のものとなっていた。
実際、2008、09年の転職市場は、“転職バブル崩壊”とともに氷河期を迎えていた。09年の1社あたりの中途採用実績数(正規社員)は対前年 比▲49.9%、電機・機械系製造業に至っては▲69.4%(リクルート『ワークス中途採用調査2010』)と大きく下落。これは、1974年の第一次オ イルショック時(▲18.9%)や86年の円高不況時(10.1%)(厚生労働省『雇用動向調査』)を大きく下回っており、データがある比較可能な期間の 中では最大の落ち込みで、2010年も同様に厳しい状況に置かれる可能性が高いと思われていたのだ。
しかし意外なことに、昨年の転職市場は、過去最低の内定率となった新卒市場を尻目に順調な回復を遂げたという。
「2010年は、我々の予想をはるかに上回る回復を見せた」
そう語るのは、リクルートエージェント フェローの海老原嗣生氏だ。海老原氏によると、リクルートエージェントの2010年度の転職決定人数は、4〜12月まで前年比約20〜30%増で推移し、 同社の通年予測を大きく上回った。同じく転職支援サービス「DODA」を運営するインテリジェンスも「2010年1月以降順調に回復し、各業界の有効求人 倍率は右肩上がり」(美濃啓貴・DODA編集長)と、回復の兆しが転職市場全体に広がりつつある。
2010年6月にワークス研究所が発表した「2010年度中途採用計画の状況(正規社員)」の結果では、「中途採用予定がない企業」は09年 (48.4%)並の47.7%ととなり、もともとの求人意欲が低調だったのは確かだ。にもかかわらず、予想外の回復を遂げた背景には、いったいどのような 出来事があったのだろうか。
世界経済の中心は今やアメリカではない?中国・韓国台頭で関西・東海は活況に
まず、海老原氏は“意外な回復”の理由をこう語る。
次のページ>>“予想外の回復”の背景にある新興国・発展途上国の台頭
「今まで我々は『欧米がビジネスの中心』という考え方が強く、これらの地域で早期の回復が見込めないために、10年の日本経済見通しも厳しいもの になっていた。しかし、その一方で非常に好調に推移したのが、中国を含むアジア、中南米、アフリカなどの発展途上国だ。これらの地域はリーマンショック前 を上回る株価をたたき出すほど我々の予想を超えた回復を遂げ、今や日本経済をも牽引しはじめている」(海老原氏)
つまり、世界経済の中心が欧米から、中国を含むアジアやその他の発展途上国へと変化しつつあり、それらの力が日本経済の回復を招き、転職市場にも跳ね返ってきているというのである。
こうした世界経済の構造変化の影響は、個々の業界の転職状況にも現れはじめている。その代表的な業種が、電機や自動車をはじめとした製造業だ。
冒頭でも述べたように、08年、09年の製造業の中途採用実績数の落ち込みは激しく、「リーマンショックによって、求人は4分の1にまで落ち込んだ」(リクルートエージェント・関野光剛キャリアアドバイザー)ほど。ただ、昨年初めからは順調な回復を見せている。
もちろんよく知られているように、電機業界は家電エコポイント、自動車業界についてはエコカー補助金・減税による効果や、100年に1度とも言わ れる電気自動車などの技術革新による影響も少なくない。ただ、それ以上に大きな要因になっているのが、「中国や韓国の最終製品メーカーの台頭」(関野氏) だという。
中国や韓国メーカーの台頭がなぜ日本の転職市場を回復させるのか、少し疑問を持たれるかもしれない。しかし、求人意欲が高まっているのが「部品サ プライヤー」を中心とした企業といえば、その理由はお分かりだろう。部品メーカーが多く集まる関西や東海地方では、中国や韓国の最終品メーカーからの需要 が高まっており、求人が上向き始めているというのだ。関野氏は、「10年の電機・自動車など製造業における求人倍率は、首都圏1.6倍に対し、関西は 3.2倍、東海は5.8倍となった」と、その活況ぶりを語る。
総合電機メーカーをはじめとした完成品メーカーの苦境は、様々なメディアも伝えているところから周知の事実だが、部品や中間品といった「技術のコア」に関わる“ニッチトップな企業”にとっては、中国や韓国企業の台頭が追い風となっているようだ。
次のページ>>リーマンショックの影響はゼロ?求人倍率3倍超の医療・医薬
順調に回復しているのは製造業に関する転職だけではない。それ以外の業界でも求人は回復傾向にある。
その最たる分野が、医療・医薬などのメディカル関連職で、リーマンショックの影響を受けなかったといっても過言ではないほど。DODAの転職求人 倍率のデータによると、「メディカル」は、同社の求人倍率が最も落ち込んだ09年4月でも2.8倍、10年6月には3.45倍と高水準を保っている。特に 製薬業界の営業職であるMRに関しては、「異業種からの採用も積極的に行っており、知識よりも営業センスを問う傾向がある。教育体制が整っていることから も、異業種からの転職でも問題はない」(リクルートエージェント・鈴木商乃キャリアアドバイザー)というほど、採用に積極的だ。
また、IT・通信業界も「10年の求人は昨年の1.5倍にまで回復した」(リクルートエージェント廣瀬洋平コンサルタント)ほど、企業の大小を問 わず回復傾向にある。リーマンショック後に採用を抑えた分の反動が起きているうえ、フラッシュマーケティングやスマートフォンの台頭によって、採用は活発 化しはじめている。
“バブル”は二度と来ない!?2011年、転職市場は好調か
こうした状況から2011年以降、“転職バブルの再来”を期待する人もいるかもしれない。ただ、その可能性はあまり高くはなさそうだ。「11年の下半期は一変して、求人が減少する可能性がある」と、海老原氏は警鐘を鳴らす。
「家電エコポイント、エコカー減税が終了するとはいえ、輸出産業を中心に好調だ。またその影響を受けて、内需系の業界も回復するため、11年上半 期の求人は保たれるだろう。しかし下半期は、(いくら中国などの発展途上国が台頭してきたとはいえ)6月末に終了するアメリカの過剰な金融緩和政策の余波 が現れはじめ、“バブル崩壊”とともに求人が減少する可能性がある」(海老原氏)
また、今後の経済状況だけが11年以降の転職市場を玉虫色にしているわけではない。鈴木氏は、「07年頃の転職バブル当時は、企業側に『迷ったら 採用する』という傾向があった。しかし今は、確実に優秀な人材を採りたいという機運が高まり、『迷ったら採らない』企業が増え始めている」と語っており、 以前よりも採用のハードルが上昇しているのは間違いないようだ。
次のページ>>環境が厳しくとも転職を成功させる条件
「なぜ、この求人があるのか」を理解し、自らを“グローバル化”することがカギ
では、環境が相変わらず厳しいなかで、転職を成功させるためにはどのような条件が必要だろうか。
総務省が発表する完全失業率が5%前後と高止まりしているなかで、正規社員の転職希望者も殺到している。実際、「(転職での)書類通過率は 17%」(関野氏)と非常に厳しい状況だ。そこで重要となるのが、(1)スピード、(2)量、(3)勤務地の選定、(4)英語力、(5)先入観の排除だ。
まず、スピード感を持って、多くの採用に挑むのはもちろんだが、勤務地にも柔軟に対応する必要がある。先ほど紹介したように、製造業の求人が首都 圏では1.6倍に対し、関西や東海では軒並み2倍〜3倍。また、多くの企業が海外進出をするなかで、日本以外の国や地域で勤務する可能性もゼロではない。 「勤務地は東京や地元で」といったこだわりを持つ人は少なくないだろうが、それでは転職のチャンスをみすみす見逃しているようなものだ。
また、海外進出に伴い英語公用化を打ち出す企業もあるなかで、英語力がある人材への需要はやはり増加している。以前なら英語は必要ないというイ メージがあったIT系の職種でさえ例外ではないため、どんな分野の仕事であれ英語力は転職機会を広げるためにも身につけるべき要素だろう。
企業経営のグローバル化、世界経済の構造変化によって、私たち労働者を取り巻く環境は大きな変化の時を迎えている。「10年ほど前であれば、『3 回転職したら負け。がまんが足りない』といった神話があったが、今は転職を前向きに捉える動きが出ている」(美濃氏)というほど、転職は我々にとって遠い 出来事ではなくなりはじめている。
転職をする際、自分に近い業界ほど先入観を持ってしまいがちだが、それではせっかくの機会を見逃すことにもなりかねない。先入観に惑わされず、世 界で今、何が起きているのか、そして「なぜ今、この求人があるのか」という採用背景をよく理解し、それに対して自分は何ができるのか、常に棚卸ししておく ことが、どんな時代でも転職を成功に導く必須条件ではないだろうか。
(ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
質問1 あなたは転職をしたことがありますか?
32%
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1回
17.6%
4回以上
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2回
9.8%
3回
0.5%
その他
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