http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/815.html
Tweet |
News Spiral
山田正彦(元農水大臣):TPPは農業だけの問題ではない! ── 日本は米国の51番目の州になる
今回のTPPインタビューは前農林水産大臣の山田正彦氏です。山田氏はTPPを農業だけの問題に矮小化されないよう注意を呼びかけます。
国会議員、大臣、牧場経営者、弁護士と多様な視点を持つ山田氏から、TPPが他分野に及ぼす影響を伺うことができました。
* * * * *
山田正彦氏(元農水相・民主党衆院議員)
「TPPは農業だけの問題ではない!」
TPPは"国の形が変わる"かどうかの大きな問題です。
TPP交渉では貿易はもちろん金融や知的財産などが協議されており、参加国は共通の制度で揃えるという動きのようです。制度を変えるということは国の形がかわるということです。極端にいえば、日本は米国の51番目の州になりかねない問題で、国民的議論が不可欠です。
しかし国民どころか、菅総理も実情をよくわかっていないように思えます。首相と動いている民主党議員が本当のことを伝えられているのでしょうか。
━国民に情報を出すはずの大手新聞社は「農業vs輸出産業」という対立構造で報じました
大新聞、何を考えてるんだという気分です。TPP交渉は24の作業部会で協議されており、人・モノ・金・サービスを自由にしていくものと考えられます。
例えば24作業部会には「政府調達」が入っています。地方自治体の公共事業は23億円以上の案件のみ外国企業が参入できます。TPPへの参加で公共事業の参入を自由にすれば、地方の土木会社は致命的な打撃を受けます。
「労働」について言えば、平均賃金1万5,000円のベトナム人労働者が自由に来れるようになったら日本の雇用状況はどう変化していきますか。
大手新聞が「農業が足を引っ張っている」と書いたことは大変残念です。インドとの2国間交渉では労働者の問題が最後まで残り、EUとのEPA交渉は自動車の安全基準が問題で進んでいません。ちなみに協定を結んでいるメキシコとの間でも、最後までもめたのは車の問題でした。それでも農業が自由貿易の足を引っ張っていると言えますか。国民は「TPPは農業の問題」と思い込んでしまいました。
─「自由化に反対するのは農業界」という報道の視点は相変わらずです。今回のTPP報道では毎度のことながら高関税率で「鎖国」する農業界というイメージが流されました
日本の農業は開国しています。EUの平均農産物関税率は19.5%ですが、日本は約11%で韓国の62.2%と比較しても相当低い方です。マスメディアがコメの関税だけをとりあげるので、国民は日本の農産物の関税は高いと思い込んでいます。
━農業政策と関税ゼロのTPPを同時に進めるべきだという意見があります
日本の農業は昨年から初めて戸別所得補償に取り組むことになりました。モデル事業を開始し、ようやく今年から本格実施という時に、TPPで関税をゼロするなんて誰が考えてもおかしいでしょう。
戸別所得補償と関税を下げるTPPはセットではありません。
現在世界中で食料危機が起こると言われており、ロシアやウクライナでは小麦など穀物の輸出を制限しています。一部の国では食料をめぐって暴動が起きているという時代です。食料は関税で守る部分は守り、自給率を確保することは当然のことです。
<米国の本当のねらい>
─TPP加盟国+日本のGDPを見てみると約9割が日米で占めます(参考:中野剛志氏インタビュー)。TPPは日米貿易の色が強く、「アジアの成長」との直接関係は薄いことがわかります
日本はTPP参加表明9国のうち、すでに6カ国と2国間協定を結んでいます。結んでいない国はニュージーランド、豪州、そして米国です。
米国の本当の狙いはどこにあるのでしょうか。日米の2国間で交渉するのであれば、お互いにセンシティブ品目を設けてFTAやEPAで進めた方が両国にとって利益になります。
1,200兆円とも言われる民間預貯金やゆうちょ預貯金が米国の狙いではないでしょうか。米国は民間の医療保険を日本に押しつけようとしているように思えます。このことも24の作業部会で話されているはずです。
─1月13日、14日にワシントンで日米協議がありました
今まで民主党内で16回の議論を経てTPPへの見解をまとめました。TPPの協議は情報収集協議にとどめることとしました。事前交渉でありません。
協議の内容は催促しても出してくれません。われわれにとってみれば今、大事なことは交渉の中身です。政府はどういうことが話されているのか、情報をオープンにして国民的議論にしてもらいたいです。
内閣府が10月に出した試算の根拠についても「出せません」と言ってきました。TPPに参加すればGDPが増えるという試算で、輸入がどれだけ増えるのか、国内の生産構造がどれだけ変わるのかなど、"国家機密"か知りませんが根拠を出せないようです。
━山田議員は9月まで農水省の大臣でした。TPPを初めて聞いたのはいつのことですか
私がTPPの文言を初めて見聞きしたのは2010年の夏頃です。私が農水大臣だった時の閣僚懇で、アメリカや中国などとの間で関税が撤廃されたらどうなるかAPECに向けて議論していました。その時の配布資料で初めて目にしました。
私はTPPについて反対の立場でした。農業にとっては2国間交渉であるFTA・EPAを進めるべきだと思ったからです。2国間であれば除外品目を設けた上での交渉が可能です。当時はインドとのEPA交渉が進んでおり、私自身が大臣として中国・韓国とのEPA交渉に臨んでいました。
米国のいいなりになるんじゃなくて、中国とのEPA・FTAを進める方が農業、中小企業を含めた産業界にとってメリットが大きいのではないでしょうか。私はある学者を通じて日中と日米でどちらの方がメリットがあるのかGTAP方式で試算してもらっています。日中間で協定を結ぶ方が得ではないかと思います。
政府が根拠としているTPPのメリットと試算。山田氏はこの試算根拠の公表を求めたが断られた(EPAに関する各種試算(内閣官房)より)
中国には牛肉、コメ、野菜、果物を輸出でき、中国からは安いものが入ってくるので互恵関係がとれます。すべての品目を自由化することは中国が許しませんよ。しかし菅首相は施政方針演説で中国のことに一切触れていません。おかしいと思っています。
─民主党はかねてから東アジア共同体をスローガンに掲げてきました。日米基軸のTPPに参加表明するということは、路線の転換と考えていいのでしょうか
ガラッと新自由主義に舵を切ったかに見えます。私は東アジア共同体の路線に戻り、中国とも仲良くやっていくべきだと思います。我々は小泉時代の新自由主義との戦いから始めてきました。貧富の格差をなくそうと取り組んできました。民主党の立党精神に戻ってもらわないと困ります。
(取材日:2011年1月24日 構成:《THE JOURNAL》編集部・上垣喜寛)
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_8.html
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。