http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/801.html
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この投稿には次の三つの報道記事を引用する。
1.ガイトナー米財務長官が日本は「貯蓄率の高い国だ」と言ったと言う記事
2.現在では、日べ地の貯蓄率は逆転していてアメリカのほうが高いことを示す記事
3.日本同様高齢化が進むドイツやフランスは日本ほど貯蓄率が低下していないことを示す記事
なお、この投稿の先頭に表示されている折れ線グラフは上の3の記事のものだ。
言いたいことは非常に単純だ。ガイトナー米財務長官は本当のことを言っていない。なぜかと言うことだ。2008年にはほぼ日米の貯蓄率は逆転している。2010年は確実に逆転しているはずであり、それをガイトナーが知らないはずがないし、日本のマスコミも知らないはずがない。明確にウソなのだが、それを日本のマスコミは誰も指摘しない。まあ、これも日本が植民地化している一つの証拠だ。
では、なぜ、ガイトナーはウソを言ったのか?それは、ずばり、国債のリスク資産化が狙われているのだ。イギリスがかなり強引に財政再建しているのはそういった背景があるからだ。どの国の銀行も自国や外国の国債をかなり多く抱えている。現在のところ、銀行の自己資本比率規制(別名ビス規制)の計算の時、国債はリスク資産にみなされないように決まっている。だからこそ、日本の銀行はほぼ無制限に日本国債を買い入れている。しかし、現実的に言って、日本政府が日本国債をきちんと償還できる見込みはない。だから、そのうち必ず日本国債の暴落が起こる。ただ、投資、投機をするためには、その暴落がいつ起こるか、時期をコントロールできないと投資、投機はやりにくい。まずは、投機、投資の準備をする期間を確保する必要があり、日本の市民が貯金の取り崩し、又は銀行からの取り付けをやらないように、ウソを言って安心感を日本市民へ与えようとしたのだ。
国債のリスク資産化は多分2段階で行われる。まず、アメリカのFRBが保有する米国債などの公債比率が急激に高まり、これを憂慮すると言う理屈でビス規制の内容が変わり、国債などの公債をリスク資産化する条件を決める。現在は無条件で安全資産としてカウントするので、大きな変化だ。
その条件は多分、時価評価と額面価格の差がどの程度になったらリスク資産化し、そのリスク係数をその差によって決めるというものだ。例えば、額面100万円の日本国債が評価額60万円になったらリスク資産として評価し、リスク係数は時価÷額面で求めて、0.6となるというようなものだ。このこと自体は至極論理的で、特に反論はできないはずだ。しかし、61万円まではリスク係数は1でいいことになり、安全資産として計算できるのだから、一定程度以上時価が落ちるのは大きな影響を与えることになる。
その次に、第二弾として、オペレーショナルリスクの評価を厳しくするのだ。オペレーショナルリスクは例えばテロや地震などによって、事業が継続不可能になることも含まれる。たとえ継続不可能にならなくてもある程度の影響があるものなら、それをリスクととらえて、事前に評価しそれをリスク係数化しなければいけない。
これだけ準備すれば、あとはいつでも投機ができる。北朝鮮にちょっとしたテロをやらせれば、日本のリスクは簡単に高くなり、国債の評価額はがたんと落ちる。ましてや、大きな地震や原発震災の可能性のある日本国債は、とても大きな投機対象になるだろう。
(1)ガイトナー米財務長官のウソの発言を乗せている報道記事:
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110129/t10013714001000.html
米財務長官 国債格下げに言及
1月29日 8時34分
日本の国債の格付けが引き下げられたことについて、アメリカのガイトナー財務長官は「日本の主要な課題は、将来の成長をどう確かにするかだ」と述べ、少子高齢化に伴って予想される今後の税収の落ち込みなどへの対策が重要だという認識を示しました。
アメリカのガイトナー財務長官は28日、スイスで開かれている世界経済フォーラムの年次総会、いわゆる「ダボス会議」に出席しました。この中で、ガイトナー長官は、大手格付け会社が27日、日本の国債の格付けを8年9か月ぶりに引き下げたことについて、「公的債務が多いのは確かだが、一方で日本は貯蓄率も高い」と述べ、高い貯蓄率を背景に、主に国内の金融機関によって国債が購入されている日本の現状に一定の理解を示しました。そのうえで、「日本の主要な課題は、高齢化のなかで将来の成長をどのように確かにしていくかだ」と述べ、日本にとって、少子高齢化に伴って予想される今後の税収の落ち込みなどに対応した成長戦略が欠かせないという認識を示しました。一方、アメリカの財政赤字については、長期的に維持できる水準ではないという認識が広がっているして、経済成長を妨げないよう赤字削減に取り組む姿勢を強調しました。
(2)現在では日米の貯蓄率は逆転していてアメリカのほうが高いとする報道記事:
http://www.nli-research.co.jp/report/econo_eye/2009/nn090708.html
日米家計貯蓄率の逆転
2009/07/08号
エコノミストの眼
1.昔の話となった日本の高貯蓄率
2007年度の日本の家計貯蓄率は2.2%に低下しており、日本の家計貯蓄率が高いというのは、今や昔ばなしになってしまった。一方、家計貯蓄率が低いことで有名だった米国の方は2005年には0.4%にまで低下していたが、5月は6.9%にまで上昇している。日本の家計貯蓄率がその後急上昇しているとは考え難いので、日米の家計貯蓄率では米国の方が日本よりも高いという、これまで見られなかった逆転現象が起こっていることになる。
おなじような日米の経済統計の逆転現象は、かつて失業率でも見られたことがある。日米の失業率は日本の方が米国よりも低いというのが長年続いた姿だった。バブル崩壊による長期の低迷に加えて97年の消費税率引き上げなどによって景気が悪化したことから日本の失業率が上昇し、米国経済がITバブルに沸いていた1999年から2001年頃にかけ米国の失業率の方が日本より低いという逆転現象が見られた。こちらの方は、ITバブルが崩壊して米国の失業率が上昇すると、再び米国の失業率が日本を上回るという昔からの姿に戻った。果たして貯蓄率の方はどうなるのだろうか。
2.誤解が多い日本人特殊論
日本の家計貯蓄率が高いのは日本人が貯蓄好きだから、と言われたこともあるが、人々の行動について日本人特殊論的な解釈をすると、後に間違っていたということになることが多い。そういう意味では、日本人は勤勉だとか手先が器用だとかいう話もかなり怪しい。一口に日本人とひとまとめで語る方が無理であり、まじめな人もそうでない人も、器用な人も不器用な人もいる。人種や国籍による違いよりも、個人差の方がはるかに大きいからだ。
日本の家計貯蓄率の高さは、老後生活のために貯蓄に励んでいる現役世代の割合が高かったという人口構造に由来するところが大きかった。高齢化が進んだことによって65歳以上人口の割合が22.1%に上昇し、老年人口割合が最も高い国のひとつとなったことで、日本の家計貯蓄率は大きく低下している。一見、日本人の特殊性に起因するように見えることも、多くの場合には制度やそのときの経済・社会構造によって説明できることが多い。
3.日米逆転の意味するもの
貯蓄率の日米逆転は、どのような意味があるだろうか。サブプライム・ローンに代表される借入れ拡大に依存した消費を続けたことによって、米国家計のバランスシートは大きく傷ついており、問題を改善するためには消費を抑えて貯蓄に励み債務を削減する必要がある。米国の貯蓄率は、2000年代半ばのほぼゼロという状況が異常だったと考えられるので、それ以前の2%程度に戻るはずだ。一時的にはそれよりかなり高い水準となるだろう。米国の消費が住宅バブルの頃のように活発になることは難しく、貯蓄投資バランスの考え方からは、貿易収支の赤字幅が縮小すると予想される。
一方日本の貯蓄率の方は、景気が回復して家計所得が増加したり金利が上昇したりすれば多少上昇することが期待できるものの、老年人口割合が2023年には30%に達するなど、高齢化によってさらに低下していくと考えられる。日本の貿易収支の黒字が縮小し、近いうちに赤字が定着するということになるだろう。
櫨 浩一
(3)日本と同じく高齢化が進展しているドイツ・フランスは日本のようには貯蓄率が低下していないことを示す記事
この部分にこのページの先頭に表示されている折れ線グラフがある。主要国の家計貯蓄率の折れ線グラフ。
OECD Economic Outlookの付属統計表から、主要国の家計貯蓄率の推移をグラフ化した。
家計の可処分所得は、一方で、消費に回され、他方で、貯蓄される。消費に回される分の比率を消費性向と呼び、貯蓄に回される比率を貯蓄率と呼ぶ。消費性向と貯蓄率は足して1となる性格のものである。貯蓄に回された部分は、銀行預金を通じて、あるいは直接的な社債や株式の購入によって、企業の投資原資となるので、産業の発展を国内で支える基盤となるものとして重要視される。
ここで算出のベースとなっているSNA(国民経済計算)では、家計の所有する持ち家について、自分で自分に家賃を払っている形となっており(いわゆる帰属家賃)、所得にも消費にもこれが含まれている(賃貸住宅であると消費のみ)。貯蓄率は貯蓄を所得で割った値なので、帰属家賃が大きく評価されると、貯蓄率自体は低くなる。また純貯蓄率の純は家計資産の減価償却を差し引いているという意味である。また年金基金に対する持ち分(equity)の純増も貯蓄に含まれている。
貯蓄率を左右する要因として以下のような要素が指摘される。
(1)高齢化
退職者が増えれば貯金を取り崩し貯蓄より消費が上回る者が多くなる筈であるので、高齢化は貯蓄率の低下を招くとされる。近年の日本の家計貯蓄率の低下は高齢化によるものとされるのが一般的である。ところが、日本と同様、高齢化が進んでいるドイツ、フランスでは貯蓄率が必ずしも減っていない(イタリアは日本と同様貯蓄率低下傾向)し、それほど高齢化が進んでいない韓国で貯蓄率が低下しているのも理解できない。また家計に対する調査からは年齢別の貯蓄率を計算しても必ずしも高齢者の貯蓄率が低いと言いきれないという研究結果も出ている。
(2)社会保障への政府の関与
老後の備え(老齢年金)、あるいは失業、病気への備えに対して政府の財政支出の占める部分が多ければ、個人は貯蓄する必要がないため貯蓄率は低くなるはずである。確かに変動が大きいもののスウェーデンの貯蓄率は以前から低水準である(社会主義的な国柄で国民自らは余り貯金などしていないので国の財政危機には敏感であるそうだ−図録4740参照。変動の激しさもこのためかもしれない)。従来、日本の貯蓄率の高さは、安定を望む国民性や社会保障への期待薄から説明されてきた。そうであるとすれば、近年の貯蓄率の低下は、日本における社会保障への財政関与の拡大で説明しても良さそうであるが、そうした見解は余りきかない。本来不安定雇用である派遣労働者が派遣切りにあってパニックに陥ったのは、個人的な貯蓄を行っていなかったからだろうと考えられる。社会保障制度が充実して一般的に貯蓄する気風が衰えたのに伴って、保障制度に守られていない派遣労働者までその気風に染まってしまったのが悲劇の原因とは言えないであろうか。
(3)消費性向
貯蓄率は消費性向と裏表の関係にあるので、消費性向が上がれば貯蓄率は下がる。米国における貯蓄率の低水準及び近年の0へと近づく貯蓄率の低下傾向は、クレジットカードや自動車ローン、住宅ローン(サブプライムローンなど)で借金してでも消費する家計行動によるものとされる。
(4)景気要因
景気が悪くなると将来不安から消費を手控え貯蓄率が上昇する。アジア金融危機で大きなダメージをうけた韓国では1998年に貯蓄率が跳ね上がっている。1997年秋の三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券と立て続けの大型金融破綻事件、また1998年末の日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の国有化といった金融危機に見舞われた日本では、1998年に貯蓄率が上昇している。こうした変化は一時的であり、韓国でも日本でも2〜3年ほどすると、一般的な貯蓄率低下傾向に立ち戻っている点が印象的である。
(2009年4月30日収録、9月28日更新)
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図録書籍 内容・目次
関連図録
4400 経済成長率の推移(日本)
4500 経済成長率の推移(各国比較)
4690 年齢別の資産額と収入額
4692 年齢別有価証券保有率
4740 たばこ価格の国際比較
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