23. 2011年1月28日 19:13:22: Pj82T22SRI
残響か【コラム】格下げは日本の「スプートニク」になり得るか−Wペセック 1月28日(ブルームバーグ):これは日本にとっての「スプートニクの時」だ。旧ソ連の1957年の人工衛星打ち上げが米国にとっていかにショックだったかを想起させるこの言葉は、オバマ米大統領の今週の一般教書演説で使われ、再び流行している。大統領はこのフレーズを通じて、インドや中国の台頭が米国の競争力向上を促すことは自明の理だと指摘した。 そうしたショックを必要とする国があるとすれば、それは日本だ。国内総生産(GDP)で中国に追い越され、世界3位に後退したという昨年のニュースは大したことではなかった。しかし、豊かな日本の信用力が、まだ比較的貧しい中国と同じレベルに後退したことはどうだろうか。 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の27日の日本国債格下げは、大きな出来事であり、菅直人首相にとっては喜べないものだ。2002年の前回の格下げ以降、眠ったようなままの状態にあった政府を覚醒させるものでもある。ただ、日本がそれで目覚め、1000兆円に向かっている公的債務残高を抑制するようになるだろうか。それほど楽観的にはなれない。 緊縮財政の発動は期待できそうにない。それには政治的意思が必要であり、問題はその意思があまりにも弱いことだ。 皮肉なことに菅首相は「ミスター債務削減」であり、日本のルービン元米財務長官にほかならない。首相就任前に財務相を務めていた菅首相は、ギリシャ型の日本の債務危機については決して語ろうとせずに、1990年代にクリントン政権のメンバーだったルービン氏と同じように債務削減に向けた増税を打ち出している。S&Pは大胆な行動が必要だと指摘している。 歓迎すべき検査 スタンダードチャータード銀行の世界為替調査責任者、カラム・ヘンダーソン氏(シンガポール在勤)は日本国債格下げについて「構造的債務と財政赤字は引き続き対処すべき課題であることを再確認させる歓迎すべき検査にほかならない」とみている。 やっかいなのは、菅首相が支持率20%台半ばと政治的に傷を負っていることだ。首相の座を維持することに躍起となっている首相には、世界最悪の水準にある債務削減に向け議員をまとめるどころではない。支持率を上げようとすれば、欧州のような危機を阻止するための消費税引き上げを訴えるのは、難しくなるだろう。 日本に残された時間は少ない。高齢化が急速に進み出生率も低下傾向にある。すでに日本の人口の23%が65歳以上で、15歳未満は12%にすぎない。労働力人口が減り、債務返済額が急増する一方で、課税対象は縮小する。 危険な道 だから「AA」から「AA−(ダブルAマイナス)」への今回の格下げは少し遅すぎたと考えている。日本は危険な道をたどっている。危機を回避できているのは、家計貯蓄が高水準で、公的債務の約95%が国内で保有されているためだ。アイルランドやポルトガルが影響を受けやすい資本逃避のリスクはほとんどない。 日本のバランスシートはますます身動きが取れなくなっている。資産家ジョージ・ソロス氏の手法で投機家からの攻撃を受け始めるのは時間の問題だ。S&Pの行動やそれに続く動きは、ヘッジファンドが運だめしをするきっかけになるだろう。 それでも10年債利回りは約1.2%と、非合理なほど低水準だ。利回りがじわじわと上昇し始めれば、政府の借り入れコストは急激に上昇し、銀行、年金基金、ファンド、保険会社、さらに家計、つまり基本的に全員が多額の投資損失を被ることになる。 市場関係者にとって、この20年の大きな疑問は日本が1989年のバブル崩壊からいつ完全に立ち直るかということだった。それは決して起こりそうにない。デフレ下にある日本は1930年代の米国ほど落ち込んではいないが、どちらも1%を超える成長が長い間実現していない。 日銀は動けず 米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げの検討を始めても日本銀行はなお動けないだろう。今後5年、あるいは10年でも日銀の大幅な利上げを真剣に予想するエコノミストはいない。 実際、日銀の白川方明総裁に対して、銀行システムへの流動性供給拡大や国債の大量購入を求める圧力は増すだろう。しかしそれも役立たない。この10年余りの金融政策は成長拡大にほとんど寄与していない。 それでも政治家が中銀に措置拡大への要求をやめないだろう。それが肝心な点だ。議員は日本の有権者に緊縮財政を訴えたくないし、大胆な改革実行に縛られたくもない。 私は自分の予想が当たらず、この「スプートニクの時」が日本の背中を押して行動につながることを願っている。日本はあと数年間、どうにかやっていけるだろうが、それは重大な過ちとなろう。 日本が過去の実績をふりかざして、最終的に行き着く先から投資家の注意をそらすことはもはや不可能だ。格付け会社はもう、それにはだまされない。ヘッジファンドも同様だ。(ウィリアム・ペセック) (ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です) 更新日時: 2011/01/28 14:57 JST 日本株は反落、資源や輸出中心売り−国債格下げ影響じわり(Update1) 1月28日(ブルームバーグ):日本株相場は反落。原油など海外商品市況の下落を受け、鉱業や非鉄金属、海運など資源関連株が安く、電機など輸出関連株も売られた。また、米格付け会社による日本の長期国債格下げの影響で銀行株が下落したのをはじめ、証券、不動産といったこれまでの上昇相場をけん引してきた業種の下げも目立った。 TOPIXの終値は前日比9.97ポイント(1.1%)安の919.69、日経平均株価は同118円32銭(1.1%)安の1万360円34銭。東証1部33業種はゴム製品、機械を除く31業種が安い。 ばんせい投信投資顧問の廣重勝彦調査部長は、「昨秋から上昇してきたため、調整してもおかしくはない。中国は旧正月入りする上、新興国の金融引き締めも警戒されており、上値は追いにくい」との見方を示した。米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)による日本国債の格下げに関しては、「これをきっかけに、世論が増税の流れに傾いてしまうとマイナスだ」と話している。 きょうの日本株は徐々に下げ幅を拡大。シカゴ先物市場(CME)の日経平均先物3月物(円建て)の27日清算値は、同日の大阪証券取引所の通常取引終値を20円上回り、米株式相場も終値で高値を更新していたものの、週末を控えた日本株は終日売り圧力に押される展開となった。きっかけの1つが、S&Pによる日本国債の格下げだ。 海外勢買い鈍化への懸念も S&Pは27日、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けを「AA(ダブルA)」から「AA−(ダブルAマイナス)」に1段階引き下げた。財政問題などを格下げ理由としている。立花証券の平野憲一執行役員は、「日本株にとって格付け引き下げは織り込み済み」としながらも、「12週連続で買い越した海外投資家の買い一服のきっかけになる可能性はある」と指摘していた。 国債を大量に保有する銀行株が安く、銀行指数がTOPIXの下落寄与度1位。TOPIXが直近安値を付けた昨年11月2日から直近高値の1月13日までの業種別上昇率上位は、1位証券(35%)、2位石油・石炭製品(28%)、3位その他金融(28%)、4位銀行(25%)。11月以降の上昇相場をけん引したこれら金融や資源株がきょうの下落率上位に並んだ。資源株については、ニューヨーク原油先物が27日の取引で1.9%安と反落したことも、売り要因の1つとなった。 新興国の金融引き締め懸念を背景にした前週後半の大幅安を受け、今週は戻りを試したが、結局その下げ分を埋め切れず、上値の重さを感じる1週間となった。東証1部の騰落状況は値下がり銘柄数1318、値上がり263。売買代金は1兆5589億円と前日から6%増えた。 アドテストやフォスタ電急落、富士電やコマツ高い 国内企業の決算発表が本格化する中、個別銘柄を選別投資する動きが強まった。これまで未発表だった2011年3月期の連結業績予想を示し、営業利益が市場予想に届かなかったアドバンテストが急反落。生産人員増で、昨年4−12月期の連結純利益が前年同期比26%減となったフォスター電機も急落した。 貸倒引当金の計上で、11年6月期の連結純利益が一転して減益予想となったアルバックは反落。国内のIT投資の回復遅れなどが響き、昨年10−12月期の連結純損益が265億円の赤字に拡大したNEC、10年10−12月期業績が市場予想を下回ったキヤノンも安い。 半面、10年10−12月期に費用削減効果などから連結営業黒字を確保した富士電機ホールディングスが反発。今期利益計画を増額したコマツは続伸した。計器関連の売上高増加で、今期営業利益予想が減益から増益に一転した東光電気、午後2時30分に11年3月期業績予想の上方修正を発表した日本精線も高い。 国内の新興市場はまちまち。東証マザーズ指数は前日比2.4%高の470.94、ジャスダック指数は同0.4%安の54.26。 個別では、光通信と資本・業務提携してスマートフォン(多機能携帯端末)事業に参入すると発表した新星堂がストップ高(値幅制限いっぱいの上昇)。高価格帯の基幹パーツなどが好調で11年3月期の利益予想を上方修正したMCJが高く、10年10−12月期の連結営業利益が前年同期比68%増となったサイバーエージェントも急騰した。半面、みずほ証券が投資判断を「ニュートラル」に引き下げたテラが続落。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 常冨浩太郎 Kotaro Tsunetomi ktsunetomi@bloomberg.net 更新日時: 2011/01/28 16:29 JST 長期金利は一時1.21%、米債高や株反落で−国債格下げ前の水準に戻る 1月28日(ブルームバーグ):債券市場で長期金利は一時1.21%に低下した。27日夕に米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本国債を格下げする前の水準まで戻した。前日の米国債相場が上昇したほか、国内株式相場の反落が支えとなったほか、投資家が中長期ゾーンの現物債に買いを入れたことが相場を押し上げた。 JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、きょうの相場上昇について、「株価が下げているほか、新発10年債利回りが1.2%を上回っているので、買いが入りやすかった」と述べた。 現物債市場で長期金利の指標とされる新発10年物の312回債利回りは、前日比1ベーシスポイント(bp)低い1.24%で始まった後、徐々に水準を切り下げ、午前9時40分過ぎには4bp低い1.21%と21日以来、1週間ぶり低水準を付けた。その後は1.21−1.22%のレンジで推移している。 S&Pが27日午後4時50分過ぎに日本国債の格下げを発表した時点の長期金利は1.225%付近だった。朝方の取引から同水準を下回って推移しており、前日の格下げの影響は限定的となっている。 みずほ信託銀行債券運用部の吉野剛仁チーフファンドマネジャーは、「昨日夕は売りが出たが、1年前にネガティブ見通しになっていたため、意外感はない。市場参加者は冷静で、長期的な金利に対する影響はあまりないという経験則が効いている。売られたところで買いを入れようという投資家もいるようだ」と説明した。 格下げのインパクトは限定的 また、農林中金総合研究所調査第二部の寺林暁良研究員は、「やはり日本の債券を買っているのは日本の金融機関なので、インパクトは限定的だと思う。これだけ財政悪化が言われる中での格下げは驚きではなかった」と話した。 S&Pは27日夕、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けを「AA」から「AA−」(ダブルAマイナス)に格下げしたと発表した。格下げの理由について「日本の政府債務比率がさらに悪化するとのS&Pの見方を反映している」と説明した。 JPモルガン証の山脇氏は、今回の日本国債の格下げについて、ダブルAマイナスであればそれほど関係ないが、シングルAに格下げとなれば売却しなければいけない投資家も出てくるとの見方を示した。 中期債が堅調。5年物の93回債利回りは一時3.5bp低い0.475%まで低下した。また、新発2年物の301回債は前日終値の0.205%を下回る 0.20%で推移している。前日に実施された2年債入札結果が順調となり、投資家の潜在需要の強さが示された流れが継続した。 株式相場が反落したことも債券先物の支えとなった。資源や金融、輸出株中心に売りが優勢になり、日経平均株価は前日比118円安で引けた。 CPIの低下続く 農林中金総合研究所の寺林氏は、消費者物価指数(CPI)の低下や昨日の2年入札が好調だったことを挙げた上で、「デフレはしばらく続くと思うし、入札好調も続く」との見方を示した。 総務省が 28日発表した12月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比0.4%低下と22カ月連続低下となった。1月の東京都区部コアCPIは同0.2%低下だった。ブルームバーグ調査予想中央値では、全国が0.5%低下、東京は0.3%低下が見込まれていた。 先物は3日続伸 東京先物市場で中心限月3月物は3日続伸。前日比9銭安の139円69銭で始まった後、いったん139円60銭まで下落した。しかしその後は買いが優勢となり、午前9時半過ぎに24銭高の140円02銭まで上昇。2週間ぶりに140円台に乗せた。午後は139円90銭付近で推移して、結局14銭高の 139円92銭で引けた。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊債券ストラテジストは、「先物は格下げ発表後こそ外国人の売りが優勢だったようだが国内市場参加者にとって明確な売り材料になっておらず、米債相場上昇なども追い風となって買われている」と述べた。 27日の米国債相場は上昇。一時は下げたが、この日の7年債入札で最高落札利回りが市場予想を下回ると反転。米10年債利回りは3bp低下の3.39%程度となった。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 池田祐美Yumi Ikeda yikeda4@bloomberg.net 更新日時: 2011/01/28 16:43 JST |