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変わらないな
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第5回】 2011年1月25日
ヌリエル・ルービニ
ニューヨーク大学スターン経営大学院教授
「先進諸国が演じる財政を巡る愚行。高まる債務デフレと無秩序なデフォルトリスク」
Nouriel Roubini(ヌリエル・ルービニ)
ニューヨーク大学スターン経営大学院教授 1959年イスタンブール生まれ。経済学博士(ハーバード大学)。リーマンショックを予言したことで知られる。著書に『大いなる不安定』(ダイヤモンド社)。
Photo:REUTER/AFLO
2008〜09年の景気後退時に先進国・新興国が実施した財政刺激策、金融緩和と金融システムへの支援措置により2010年は大不況から大恐慌へと陥ることは防げた。民間需要の全要素が崩壊するなかで、政府支出の増大と減税は、グローバル経済のフリーフォールを防ぎ、景気回復の足場を生み出した。
残念ながら財政刺激策による支出と、関連する金融システムの救済、景気後退による歳入への悪影響が複合した結果、先進国における財政赤字は対GDP比10%台となった。IMF等によれば先進国の公的債務の対GDP比は危機前の70%に比べ、15年までに110%を超える。人口高齢化を考えれば、積み立て不足の年金制度や医療費上昇で長期的には公的債務がさらに増加するだろう。
先進国では今後の財政破綻を回避するために財政赤字の削減が必要だ。だが、IMF等の最新調査も含む多くの研究では、政府支出の削減や増税は短期的に総需要に負の影響を与え、デフレ・景気後退に拍車をかけ、財政再建を骨抜きにする。
中長期的な財政調整について政治家の公約が信頼できるような理想的世界では、今後10年、景気回復に合わせて段階的に歳出削減・増税の計画を描くのが最適かつ望ましい道だろう。そうであれば再び短期に的を絞った刺激策を必要とする場合でも、金融市場が負債コストを高めるという反応を示すことはないだろう。
だが、先進諸国の財政政策は、信頼性の高い中長期的な財政再建と短期的な追加刺激策の組み合わせからは乖離する。
最悪は米国だ。景気刺激策は、中間選挙での共和党の大勝で、第2期の景気刺激策の可能性が排除されるはるか前から、政権内部でさえ禁句になった。他方、党派性が強まり共和党が増税に反対し、民主党が社会保障など給付金制度の改革に抵抗する現況では財政再建はほぼ不可能。債券市場からは政治家の意識を財政赤字に集中させようという圧力はまず見られない。
次のページ>> ユーロ圏の周縁部では問題は正反対の様相
ユーロ圏の周縁部では問題は正反対の様相だ。「債券自警団」(インフレ誘導と見られる政策に反対し債券の売りで金利上昇を狙う投資家)は、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアに対し財政再建の前倒し実施を求める。さもなくば負債コストが際限なく上昇し、債券市場は利用できなくなり債務危機に陥ると警鐘を発す。市場は、財政再建の前倒しが景気後退を深刻化させ、対GDP比の債務・財政赤字削減という目標をほぼ達成不可能にしてしまうことなど気にしていない。
持続的・破壊的な景気後退を回避するには、債券自警団が押し付ける財政改革・構造改革と併せて、他のユーロ圏諸国で成長を回復させ債務問題の悪循環を防ぐ政策の実施が必要だ。欧州中央銀行(ECB)はユーロ引き下げと周縁諸国の成長を刺激する金融政策を緩和すべきだ。ドイツは増税ではなく一時的に減税を行い、可処分所得を増大させて、周縁諸国の財・サービスに対するドイツ国内の需要を刺激すべきであろう。
だが、両者ともユーロ圏周縁諸国の持続的成長の回復に適した政策を採らない。ECBの金融政策はタイト過ぎ、ドイツは財政緊縮を前倒し。周縁諸国は破壊的デフレと景気後退を伴う調整を逃れられず、支払い不能、債務不履行、おそらくはユーロからの離脱というリスクが増大する。
次のページ>> 英国は財政緊縮を徐々に進め調整を先送りするほうが良かった?
英国では新政権が財政再建を前倒しで進める理由が複数ある。早めに進めないと債券自警団が動く可能性があった。財政赤字が巨大で公的部門が肥大。厳しい政策の実施には政権初期がよい(有権者の支持が高く次の選挙は先)等の理由だ。
英国の財政状況は危機的で、早期の財政緊縮等の公約が必要だが、財政緊縮を徐々に進め調整を先送りするほうが、財政再建に向けた公約の信頼性を確保しつつ経済回復をリスクにさらす可能性が低下しただろう。だが、プランA(財政緊縮の前倒し)が二番底の景気後退につながった場合のプランBを用意できない可能性がある。
大概の国で財政緊縮に向けた最適の道は先送りだが信頼性の高い中期的な財政再建を公約し、必要に応じて市場が許容する短期的追加刺激策を講じ、デフレと景気後退のスパイラルが生じるのを避けるというもの。だが、主要先進国の歩みはバラバラ。2011年に反対の方向に導かれる国もあるだろう。
債務デフレとその結果として無秩序な国家・民間部門の債務不履行のリスクが高まりつつある。
翻訳・沢崎冬日(エァクレーレン)
Fiscal Follies by Nouriel Roubini: Project Syndicate, 2010
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