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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5292
(2011年1月19日付 )
米国の地方自治体の幹部や債券投資家たちが間違いなく震え上がる将来の街の姿を垣間見たいというのなら、道路の穴ぼこや窓に板を打ち付けた住宅が点在するカリフォルニア州バレーホ市に勝るところはない。
この街の道路の修復に31年間携わってきたフランク・カバレロ氏によれば、同市の道路課では3分の2の職員が削減された。道路のメンテナンス担当者は、今では3人を数えるのみだ。バレーホ警察署の刑事、マット・マスタード氏は、この5年間で警察の職員が40%減ったと話している。
「事情はほかの顧客サービス業の会社とそんなに変わらない。やらなきゃいけない一定量の仕事があるから、それをやるだけだ」とマスタード氏は語る。
この発言は、この街に残っている90人の警察官が殺人、強盗、レイプ、暴行といった事件の解決に主に投入されていることを意味している。つまり、住宅など不動産に対する犯罪まで捜査の手が回らないことが少なくないのだ。
サンフランシスコ湾の北東部に接し、ブルーカラー労働者が多く住む人口11万5000人のバレーホ市が、地方行政にかかわる人々には考えられないようなことをして破産を申請してから2年余りになる。
【破産したバレーホ市は大きな氷山の一角】
といっても、この破産申請が長期にわたって特殊な事例であり続ける公算は小さい。固定資産税の課税ベースの縮小、衰える生産活動、数十年間続いている市職員への手厚い給与支給と年金給付の約束は、カリフォルニア州の多くの都市に打撃を与えつつある。
「バレーホは最初に破綻したにすぎない。(組合との)契約が最も異常な内容だったから、いち早く行き詰まったのだ」。バレーホ市の破産手続きを担当するマーク・レビンソン弁護士はこう語る。
バレーホの凋落はかなり前からささやかれていた。住宅ブームが時折やってきたり、州内のほかの自治体と同様に人口の着実な増加で課税ベースが拡大したりして、懸念が薄れた時期もあった。
しかし、隣接するメアアイランドの海軍基地が1990年代に閉鎖され、バレーホ市は経済活動の重要な源泉を失った。それまでの20年間で急増していた人口も、ここ10年間は減少している。
【財政を苦しめる公務員の手厚い給与・年金】
企業誘致で地方税収の基盤を強化できなかったことから、バレーホは数々の厳しい選択に直面している。市職員の組合から譲歩を引き出したり退職した職員の医療給付を月1500ドルから300ドルに減額したりするなど、破産申請後に予算面で様々な策を講じたが、厳しい状況に変わりはない。
「増税でこの現状を脱することはできないだろうし、支出を減らして脱することもできない」と刑事のマスタード氏は見ている。
スタンフォード大学で公共政策を研究しているジョー・ネイション教授は、バレーホはカリフォルニア州公的部門の膨大な赤字という氷山の一角にすぎないと指摘している。
手厚い給付はカリフォルニア州全体に共通する問題(写真はロサンゼルスの街並み)〔AFPBB News〕
教授によれば、多くの市や州政府機関は、過去10年余りの間に約束した年金給付が将来もたらし得る影響にまだ正面から向き合っていない。給付額を大幅に引き上げる州法が1999年に施行されてから、一部の職員は50代前半で退職して給与の90%相当の年金を受給できるようになっているという。
多くの市がこの新しい基準に歩調を合わせたことから、教授の試算では、年金の積み立て不足は計6000億ドルに達している。
たとえ破産しても、こうした約束から逃れることは難しい。民間の年金プログラムとは異なり、公務員の年金プログラムを無効にすることはできない。このため、バレーホは不人気な先例を作ってしまうことになるだろう。
今月18日に破産裁判所に提出される予定だった市当局の開示文書では、市議会が昨年後半に採択した財政再建5カ年計画をどのように達成するかが詳細に示されることになっていた。
【法的手続きにも多大なコスト】
これにより、債券投資家は米地方債への投資による損失を被るよう請われるという異常な状況に置かれ、ほかの自治体や公的機関の債券発行にも暗雲が漂う恐れがあると見られている。一方、市職員の労働組合は、自分たちの年金支給契約を担保している労働関係法令に優先する判断を破産裁判所が下そうとするのではないかと身構えている。
財政再建計画がバレーホ市の債権者全員に認められれば、今夏までに破産状態から抜け出せるかもしれないとレビンソン氏は言う。ただ同氏は、組合や退職した職員たちは今のところ、破産状態からの脱出を可能にするような譲歩を行う姿勢を全く見せていないと付け加えている。
同氏はまた、破産という法的手続きに絡む経費が1000万ドルに達しようとしていることから、バレーホの事例は少なくとも、破産申請を容易な問題解決策と捉えたかもしれないほかの自治体への警告になると述べている。
「破産申請なんて正気じゃできない。消防士や警察官の給料にすべきお金を弁護士に払わなければならないのだから」
労働問題を手がける地元の弁護士の1人が警告しているように、バレーホが早期に破産状態から脱出できるなどと約束するのは「強風の中で口笛を吹くようなこと」であり、恐らく無駄な努力に終わるのだろう。
【不安定な地震地帯での消火能力削減】
バレーホの消防署には消防車が8台あったが、ダグ・ロバートソン署長によれば、このうち2台は既に第一線を退いており、そのほかにも2台が売りに出されている。また、バレーホ市は3年近く前に破産を申し立てて以来、122人いた消防士の半分近くを削減してきたという。このため、緊急出動要請が入った際に消防車をどういうタイミングで出動させるかという判断が難しくなったとロバートソン署長は話している。
ただ、署長はそれ以上に、大災害がこの街を襲ったらどうなるかが心配だという。バレーホ市の地下にはヘイワード断層という断層が走っており、同市はこの地域で最も不安定な地震地帯の1つに数えられるためだ。「現在の消防職員では手に負えない火災が発生したことも過去にはあった」と署長は言う。
バレーホ市の職員は約半分が警察と消防の職員であるため、同市としては市民の安全を守る手段への支出を大幅に削減せざるを得ない状況になっている。
主要な組合――消防士、警官、一般職員の組合――はすべて、破産申請以降は給与カットを受け入れている。マット・マスタード刑事によれば、職員の雇用契約からは職員数の下限を保証する条項が削除されており、職員削減がいつ終わるかは全く見当がつかないという。
By Richard Waters
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