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2011.1.17
アウトサイダー頼みの経済政策
高橋清隆
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/YU82.HTML
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マスメディアは情報による支配装置であるというのがわたしの確信である。賢明な読者なら、とうにご承知のことだろう。経済政策をめぐる新聞の論調は、そのことを如実に表す。
わが国経済の優位性は風前のともしびにある。1997年度に約514兆円あったGDP(国内総生産)は2009年度に474兆円台まで縮小。地方経済は破壊され、商店街はシャッター通りと化した。仕事があっても、失業に脅えながら低賃金労働に甘んじる国民がもはや多数派だ。
このような非常事態にありながら、日本新聞協会に加盟する新聞社やテレビ局は緊縮財政と増税を訴え続ける。「国の借金」がその理由にされている。「国債及び借入金現在高」は2010年9月末時点で909兆円弱。しかし、日銀に国債を引き受けさせれば、いくらでも予算を組むことはできる。
しかも、政府が問題にしているのは、GDPに比べての国債や借入金の残高である。内閣府はそのことを答弁書で何度も示している。つまり、政府支出が増えればその分だけ分母であるGDPが大きくなるので、「借金」の比率は小さくなる。だから、緊縮予算や事業仕分けで政府支出を減らすのは逆効果である。地道に返そうとするなら、なおさら財政出動によって景気をよくし、税収を増やすしかない。
「財政危機」の脅迫キャンペーンは、29年前の鈴木善幸内閣のときから行われてきた。これによって、国を富ませ、国民所得を引き上げる財政出動をくじいてきた。そもそも、日本国債は94%が国内で消化されている。「国の借金」は正確には政府の借金のことで、国民は債権者である。財務省はありもしないことを問題にし、自国の経済を衰退させてきた。危機はバランスシートではなく、生活そのものだ。
このようなことを言うと、「そんなばかな」という人もいるだろう。正論を述べる論客はマスメディアから排除されているからである。
積極財政を提言する「日本経済復活の会」(小野盛司会長)が2010年12月、京都大学工学部の藤井聡(ふじい・さとし)教授を講師に招き、建設国債による徹底的な公共投資を訴えた。同年11月3日付の本ホームページ「森田実の言わねばならぬ【1054】」にも著書『公共事業が日本を救う』(文春新書)が紹介されているから、ご存知の方も多いはずだ。
講演で藤井氏は、「公共事業不要論」をまん延させる元になった統計数字が誤っていることを指摘。公共事業費の縮小は活力どころか安全も損なうことを説明した。その上で、1990年代に財政出動によるデフレ対策を講じなかったことで逸した富は、およそ4000兆円との試算を示した。
藤井氏は最後に興味深いことを漏らした。同氏の論考やインタビューが掲載された媒体は、一部ローカル紙のほか、幸福実現党の機関誌や公明党の政党紙『公明新聞』くらいだとのこと。
積極財政を訴えている新聞としては、ほかに『世界日報』がある。これまで亀井静香国民新党代表の積極財政発言を好意的に紹介してきた。2011年元旦号では「提言 2011年日本経済再建への処方箋」と題し、元経済企画庁研究員で筑波大学名誉教授の宍戸駿太郎(ししど・しゅんたろう)氏や日本金融財政研究所長の菊池英博(きくち・ひでひろ)氏、元日銀理事で鈴木政経フォーラムの鈴木淑夫(すずき・よしお)代表らの意見を紹介している。いずれも積極財政こそが100兆円ともいわれるデフレギャップを埋める唯一の方法だとの主張だ。
特定郵便局を主な購読層にした業界紙『通信文化新報』も積極財政に理解がある。菊池英博氏の筆による「日本再考 社会に正義と光を」と銘打つ経済解説コラムを連載。1月10日号で53回目を数えた。一貫して自由放任主義の経済政策を批判し、政府の一定の関与が豊かな国民経済をつくると主張する。郵政民営化を冷ややかに見るのもそのためだ。
こうした当たり前の主張が一般紙に載らないのはなぜだろう。マスメディアが言論統制されている証ではないか。藤井教授のような正常な論客が経済学部に見当たらないのも、その結果ではないか。「アウトサイダー」と見なされる新聞でしか、まっとうな経済政策が論じられないのは皮肉だ。
理想からすれば、『公明新聞』や『世界日報』などが韓国や米国を差し置いて日本国の繁栄を主張するのは妙なことだ。仏教を基調とする創価学会は「韓日友好」をうたい、世界的なオルグ活動を展開する。公明党は郵政米営化と緊縮財政を支持してきた。『世界日報』の経営母体である統一教会は、朝鮮半島生まれの文鮮明氏を教祖とし、世界政府の誕生を追求しているはずである。まともな経済政策が展開されるのは、経済政策が組織目標の主眼でないからではないか。
『しんぶん赤旗』1月4日付は胸のすく評論の載せた。元旦の全国紙の社説が、どれも同じ主張であることを批判している。すなわち、『読売』、『朝日』、『毎日』、『日経』、『産経』とも日米同盟の強化、消費税の増税、太平洋連携協定(TPP)参加を説くとの指摘だ。「それぞれ数百万部規模で発行される全国紙が、これで独立した言論機関の役割を果たしているといえるのでしょうか」と問い掛けている。
説得力あるマスメディア評だが、『赤旗』が強大な力から自由だとは思わない。同紙が日米同盟に批判的なのは共産主義を唱える立場として当然。消費税増税に反対するのは積極財政を旨とするからでなく、軍事ブロックの切り崩しや大企業の内部留保の活用を想定してのはず。TPPは世界共産主義が実現すれば反対する理由も消えると理解する。理論的には革命過程の段階的な措置、政治的にはそれまでの集票策と勘繰る。
いずれにしても、万人に信用されているとは言い難い新聞だけが正しい経済論を載せる現状はいびつだ。すべての国民がこの倒錯した事態に気づかない限り、日本経済に未来はない。
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