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緊縮財政より有効な5つの財政赤字削減策
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/719.html
投稿者 tea 日時 2011 年 1 月 20 日 13:59:15: 1W1IXELjjF6i2
 

スティグリッツ教授の真説・グローバル経済 http://diamond.jp/articles/-/10815 
緊縮財政より有効な5つの財政赤字削減策
(Joseph E. Stiglitz)2001年ノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。イェール大学教授、スタンフォード大学教授、クリントン元大統領の経済諮問委員会委員長、世界銀行上級副総裁兼チーフエコノミスト等を歴任。現在はコロンビア大学教授。

 グレートリセッションの余波の中で、諸国は平時としては未曾有の財政赤字を抱え、増大する国家債務についてますます不安を募らせている。そのため 多くの国が新たな緊縮財政政策を採用しようとしているが、そのような政策はほぼ間違いなく当該国の経済と世界経済を弱体化させ、回復のペースを著しく鈍化 させるだろう。大幅な赤字削減を期待している人びとはひどく失望することになるだろう。景気の減速は税収を落ち込ませ、失業保険などの社会保障給付の需要 を増大させるからだ。
 債務の増大を抑制しようとする試みは、確かに意識を集中させるには役立つ。それは諸国に優先課題に的を絞らせ、価値を正確に評価させる。アメリカ は短期的にはイギリス流の大規模な歳出削減策を採用する可能性は低い。だが、長期的な見通しはかなり暗い――医療保険改革が医療費の増加を抑制する効果を あまり上げていないことで、見通しはとりわけ悲惨になっている――ため、何か手を打つべきだという機運が党派を超えて高まっている。バラク・オバマ大統領 は超党派の財政赤字削減委員会を設置しており、同委員会は先頃最終提言の委員長草案を発表して、公式の最終提言がどのような内容になりそうかを少し見せ た。
 財政赤字の削減は技術的には単純な問題で、歳出削減か増税のどちらかを行わなければならない。しかし、赤字削減政策は、少なくともアメリカではそ れを超えた動きであることがすでに明白になっている。それは社会的保護を弱め、課税制度の累進性を緩和し、政府の役割と規模を縮小しようとする動きなの だ。しかも、その一方で、軍産複合体のような確立された利益集団にはできる限り影響が及ばないようにするのである。
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長期的に高いリターンを生む公共投資を増やせ
 アメリカでは(他の一部先進工業国でもそうだが)、どのような赤字削減政策も、過去10年間に起きたことの文脈の中でとらえる必要がある。
●国防費の大幅な増大。二つの無益な戦争によって促進されたのではあるが、それをはるかに超える増大を示してきた。
●格差の拡大。最上層の1%の人びとがアメリカの総所得の20%以上を手にしており、それに伴い中産階級が弱体化している。アメリカの家計所得の中央値はグレートリセッションの前から低下しており、過去10年間で見ると、5%以上低下した。
●インフラ投資をはじめとする公共部門への投資の不足。これはニューオーリンズの堤防の決壊によって劇的なかたちで実証された。
●企業に対する福祉の増加。銀行の救済からエタノール生産に対する補助金、それにWTOによってルール違反と裁定されてからも継続されている農業補助金まで。
 こうした展開の結果、効率を高め、成長を促進し、格差を縮小する赤字削減パッケージを策定するのは比較的たやすい。柱として五つの要素が必要だ。
 第1に、高いリターンをもたらす公共投資への支出を増やす必要がある。これは短期的には赤字を拡大させるが、長期的には国家債務を減少させる。ア メリカ政府のように3%足らずの金利で資本を借りられるとしたら、10%を超えるリターンを生む投資機会に飛びつかない企業はないはずだ。
次のページ>>企業に対する“福祉”は廃止する必要がある
 第2に、軍事支出を削減しなければならない。無益な戦争のための費用だけでなく、存在しない敵を相手に威力を発揮しようのない兵器に対する支出も だ。アメリカは冷戦がまだ終わっていないかのように巨額の国防費を使い続けており、その額は他のすべての国の国防費を合わせた額に匹敵する。
 第3に、企業に対する福祉を廃止する必要がある。アメリカは人間のためのセーフティネットは剥ぎ取ってきたのに、企業のためのセーフティネットは 強化してきた。グレートリセッションの最中にAIGやゴールドマン・サックス、その他の銀行の救済で明白に示されたとおりである。アメリカの農業部門の一 部では企業に対する福祉が総収入の半分近くを占めており、たとえば何十万ドルもの綿花補助金が少数の豊かな農家に与えられている。そうした福祉は価格を低 下させて、途上国の競争相手の貧困を悪化させている。
 企業の特別待遇の特にひどい例が製薬会社に対するものだ。政府は医薬品の最大の買い手であるにもかかわらず、価格について交渉できないことになっ ており、それが過去10年間に1兆ドル近くに達したと推定される製薬会社の売り上げの増加――すなわち政府のコストの増加――を助長してきたのである。
 もう一つの例は、エネルギー部門、とりわけ石油・ガス部門に与えられているさまざまな特典で、これは国庫からカネを奪うと同時に資源配分を歪め、 環境を破壊している。さらに、放送事業者に与えられる無料の周波数帯域から、鉱山会社に課せられるロイヤルティの低さ、材木会社への補助金まで、国の資源 に際限がないかのごとく、ばらまきである。
次のページ>>それでも財政赤字削減パッケージが採用されない理由
財政赤字削減パッケージが採用されない理由
 第4に必要なのは、キャピタルゲインや配当に対する特別扱いを廃止することによって、より公正で、より効率的な課税制度を築くことである。生活の ために働いている人びとが、なぜ(往々にして他人のカネを使って)投機から利益を得ている人びとより高い税率を課せられなくてはならないのだろうか。
 第5には富裕層への増税。総所得の20%以上を最上層の1%の人びとが手にしているが、たとえば5%程度のわずかな増税でも実際に納付されれば、10年という年月のあいだには1兆ドル以上の歳入をもたらすことになろう。
 これらの方針に沿って作成された赤字削減パッケージは、最も強硬な財政タカ派の要求さえも満たして余りある結果をもたらすだろう。効率を高め、成長を促進し、環境を改善し、労働者と中産階級に利益をもたらすだろう。
 ところが、一つだけ問題がある。この赤字削減パッケージは、最上層の人びと、すなわちアメリカの政策策定を牛耳るようになっている企業や他の利益 団体には利益をもたらさないのである。その避けがたい結果こそが、このようなまともな提案が採用される見込みがほとんどない理由でもある。
I dissent: Alternatives to Austerity by Joseph E. Stiglitz: Copyright: Project Syndicate,2010
翻訳・藤井清美
 

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コメント
 
01. 2011年1月20日 21:22:51: 5OSV8Up776
かくしてアダム・スミスに帰る。

02. 2011年1月20日 21:35:59: Pj82T22SRI
増谷栄一のアメリカ経済情勢ファイル
米12月住宅着工、再び減少=一戸建てが急減
2011/01/20 (木) 17:58

−建築許可件数は17%増=一時的要因で−

【2011年1月20日(木)】 − 米商務省が19日発表した昨年12月の住宅着工件数は、北東部と中西部を襲った大吹雪の影響で、前月比 4.3%減の年率換算52万9000戸と、急反発した前月(11月)の55万3000戸から一転して減少した。これは2009年10月以来の1年2カ月ぶり低水準だ。

 また、市場予想の55万戸も下回ったほか、前月の着工件数も前回発表時の前月比3.9%増の55万5000戸から同3.75%増の55万3000戸に下方改定されている。

 過去4カ月(9‐12月)の長期トレンドで見ると、月平均は55万4000戸で、11月までの4カ月間の同57万5000戸を3.6%下回っており、また、過去2年間の平均である57万5000戸も下回り、減少傾向にある。また、健全な着工水準といわれる年率100万戸を45%も下回っている。


■2010年は6.1%増にとどまる=依然、過去最低近辺に

 この結果、2010年全体の着工件数は前年比6.1%増の58万7600戸となったものの、同統計が始まった1959年以降では2009年の55万4000戸と並んで過去最低水準となっており、回復ペースは弱い。

 リセッション(景気失速)前の住宅着工のピークは2005年の207万戸だったが、それに比べて30%しか回復していない。また、1959年から 2009年までの住宅着工の年平均100万戸超と比べても60%しか回復しておらず、景気回復の足かせとなっている状況には変わりはない。

 2010年の住宅着工は、政府の住宅取得減税が4月末に終了したあと、4月に記録した今年最高の67万9000戸から5、6月は2カ月連続で減少したが、7月から盛り返し8月には61万4000戸まで戻した。しかし、9月以降は失速状態に変わっている。

 米金融コンサルティング大手IHSグルーバル・サイトは、今年も住宅着工件数は68万5000戸と、低迷が続くと見ている。これは、米不動産調査会社リアルティトラックによると、中古住宅の銀行差し押さえ件数が今年は120万件と、昨年の100万件を上回る見通しで、住宅購入者は住宅価格がどこまで低下するのか様子見にならざるを得ないからだ。

 ただ、2012年には109万戸、2013年には143万戸と徐々に回復するが、景気が健全な状態に戻ったときの150万戸超の水準に達するのは2014年以降になると予想している。

■主力の一戸建て、9%の大幅減=1年7カ月ぶり低水準

 特に、12月の統計では、全体の75%を占める主力の一戸建ての着工件数が前月比9.0%減の41万7000戸と、前月の同5.8%増の45万8000戸から大幅減に転じ、全体を押し下げている。これは2009年5月以来1年7カ月ぶりの低水準となる。

 また、昨年4月のピーク時の56万3000戸を26%下回っており、前年比は14.2%減と、依然、前年割れが続いている。

 一戸建ては、6-10月の過去の実績を見ると月42万7000‐45万戸のレンジで安定的に推移しており、11月は45万8000戸となって、このレンジの天井を突き抜けていたが、12月はレンジの底を抜けてしまっている。

 エコノミストは、事前の予想では集合住宅の着工件数が12月に本来の姿に戻れば、一戸建ての着工件数が安定的に推移していることをあわせて考えると、12月の着工件数は60万戸の大台を突破する可能性もあると楽観的に見ていたので思惑が外れた格好だ。予想以上に一戸建てが悪かったことが分かる。

 一方、月ごとに変動が激しい2世帯以上の集合住宅は同17.9%増の11万2000戸と、4カ月ぶりに増加に転じた。集合住宅は、8月が同48%増の18万2000戸に急増した反動で、前月の11月(前月比5%減の9万5000戸)まで3カ月連続で減少していたが、ようやくその悪影響を脱した格好。

 集合住宅のうち、5世帯以上の集合住宅は同26%増の10万2000戸と、前月の同8%減の8万1000戸から増加に転じている。

 また、12月の住宅着工を地域別で見ると、軒並み減少し、西部が前月比45.8%減と、最も減少幅が大きく、次いで、中西部の同38.4%減、北東部の同24.7%減となっており、全体の半分を占める南部も同2.2%減少している。

■建築許可件数、16.7%増=急増は一時的

 一方、住宅市場の先行指標である建築許可件数が増加に転じた。同件数は前月比16.7%増の63万5000戸と、増加に転じ、市場予想の56万戸を大幅に上回った。昨年3月以来9カ月ぶりの高水準だ。

 しかし、この建築許可件数の増加は、今年1月1日からカリフォルニアやペンシルベニア、ニューヨークの3州で新しい建築基準に切り替わるため、建築業者が旧基準の低コストで建築できるよう駆け込み申請した特殊要因によるものだ。

 中古住宅や新築住宅の売れ残り在庫が依然高水準にあることを考えると、今後、住宅着工が急回復に転じる兆候とはならないと見られている。反対に、1月の建築許可件数はこの反動で急減すると見られている。

 主力の一戸建ての建築許可件数は、前月比5.5%増の44万戸と、3カ月連続の増加となった。また、集合住宅も、大半を占める5世帯以上のアパートが同60.7%増の17万2000戸と、2009年1月以来約2年ぶりの高水準となっている。また、2-4世帯のアパートも同15.0%増の2万 3000戸となった。

■建設中の住宅着工件数、依然、過去最低

 住宅建築業界は新築販売の低迷で高水準の売れ残り住宅在庫を減らすため、着工を抑制している。今回の12月の着工統計でも、建設中の住宅件数は前月比0.7%減(前年比16.7%減)の42万8000戸となり、依然、1970年の同統計開始以来の過去最低を更新している。

 ちなみに、商務省が先月23日に発表した11月の新築住宅販売件数(季節調整値)は前月比5.5%増の年率換算29万戸と、前月(10月)の 8.1%減から2カ月ぶりに反発したものの、過去6カ月中で3回目の増加で、依然として27万4000‐31万戸の低水準を脱せず低迷が続いている。

 また、11月の新築住宅の売れ残り住宅在庫(着工前や建築中の住宅も含む)は、前月比2.0%減の19万7000戸と、6カ月連続の低下となり、 11月の販売ペースで計算した在庫水準は8.2カ月分相当と、前月の8.8カ月分(改定前8.6カ月分)相当から大幅に低下(改善)した。しかし、住宅建築業界が容認可能な水準6カ月分相当を依然、大幅に上回っている。

 また、NAR(全米不動産業協会)が先月22日に発表した11月の中古住宅販売件数は、前月比5.6%増の年率換算468万戸と、住宅取得減税の適用期間が続いていた6月以来5カ月ぶりの高水準となった。

 この結果、売れ残り在庫は、前月比4%減の371万戸となり、11月の販売ペースで換算した在庫水準は9.5か月分と、4カ月連続の低下となった。しかし、依然として、過去25年間の平均値7.1カ月分を大幅に上回っており、適正水準の6-7カ月分も上回っている。

■1月業況判断指数、16で変わらず

 一方、住宅着工統計の前日(18日)に発表された、住宅業界の業況判断を示す今年1月初旬のNAHB(全米住宅建設業者協会)住宅建設業者指数は前月と変わらずの16だった。

 同指数は2009年1月の過去最低の8からは改善傾向にあるものの、依然、好不況の分かれ目となる50を2006年4月以来57カ月連続で下回り続けている。同指数は50を下回ると、大半が業況の悪化を感じていることを示すが、同指数のピークは2005年6月の72。

 この結果を受けて、エコノミストは、新築住宅市場は回復が本格化するには今年末までかかると依然、慎重だ。

■住宅業界、資金調達難や弱い雇用回復で様子見状態

 NAHBのボブ・ニールセン会長は、「昨年暮れのホリデー・シーズンが終わったあと、建築業者は依然として景気の回復や住宅資金の調達環境の改善に期待を寄せている状況に変わりはない」と悲観的な見方だ。

 また、同会長は、「多くの建築業者は依然、住宅建築に必要な資金調達が困難なため、今年、新築住宅に対する需要が盛り返しても対応できない」とし、住宅市場の回復のタイミングが大幅に遅れることへの懸念を示している。

 また、NAHBの主席エコノミスト、デイビッド・クロウ氏は、「消費者も建築業者も雇用や景気が持続安定的に回復してきたという兆候が現れるのを待っており、住宅業界は依然として様子見の状態にある」と指摘している。

■12月フォークロージャー件数、2カ月連続で30万戸割れ

 一方、住宅着工を抑制する最大要因となっているフォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)は2カ月連続で30万戸割れとなった。

 しかし、2010年全体では前年比1.7%増の287万1891万戸と、過去最高を記録、依然、最悪の状況は脱していない。

 米不動産調査会社リアルティトラックが13日発表した昨年12月のフォークロージャー件数は前月比2%減(前年比26%減)の25万7747戸と、2008年6月以来2年7カ月ぶりの低水準となった。また、前年比26%減は同統計が始まった2005年1月以来過去最大の下落幅だ。

■フォークロージャー、25万件が積み残し="robo-signing"で

 内訳は、新規のデフォルト通知件数が前月比4%減(前年比35%減)の7万5718件、競売通知件数も同3%減(前年比20%減)の11万2182件だった。また、銀行差し押さえ件数は、同4%増(同24%減)の6万9847件と、やや増加に転じた。

 フォークロージャー件数が減少しているのは、いわゆる、"robo-signing"という、専門家の監査を受けずに融資担保物件を差し押さえた問題で、一部の大手金融機関がフォークロージャーの書類審査が適切だったかどうかを確認するための見直し作業に入っており、その間は、フォークロージャー手続きやデフォルト物件の売却が停止されるためだ。

 同社のジェームズ・サカシオCEO(最高経営責任者)は、「昨年第4四半期(10-12月)のフォークロージャー件数が"robo-signing"の影響で前期比14%減となったが、この影響がなければ、2010年全体の件数は300万件を超えていた」と話す。

 また、同CEOは、第4四半期に"robo-signing"によるフォークロージャー手続きが停止となった件数は最大で25万件に達していると推定しており、「これは25万件の手続きが再び動き出せば、この分が2011年のフォークロージャー件数に上乗せされることになる」と、指摘している。 (了)


03. 2011年1月21日 02:13:41: wkaNHYnjDo
この教科書書きは何度も改訂を繰り返してきたが、調子がいいというよりもう信用できない。

04. 2011年1月21日 14:30:23: cqRnZH2CUM
経済政策や教科書は、信用するものではなくて
自分でデータや理論から妥当性を検証するものに過ぎない

05. 2011年1月21日 19:13:00: cqRnZH2CUM
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米12月中古住宅販売、520万戸台に回復=金利上昇で駆込需要
2011/01/21 (金) 17:18

−2010年は4.8%減と低迷=13年ぶり低水準−

【2011年1月21日(金)】 NAR(全米不動産業協会)が20日発表した昨年12月の米中古住宅販売件数は、前月比12.3%増の年率換算528万戸と、昨年5月以来7カ月ぶりの高水準となった。

 これは住宅取得減税の終了した6月以来5カ月ぶりの高水準となった前月(11月)の同6.1%増に続いて2カ月連続の増加で、持続安定的な回復に必要とされる520万戸台に戻ったのは昨年6月(526万戸)以来6カ月ぶりだ。

 市場予想の480万戸も大幅に上回っており、11月のデータも前回発表時の前月比5.6%増の年率換算468万戸から同6.1%増の470万戸に上方改定されている。

 また、長期トレンドで見ると、過去6カ月間(7‐12月)のうち、7月と10月を除けば4回目の増加と、増勢が続いており、エコノミストは、中古住宅は底打ちした可能性があると見ている。

 ただ、2010年全体の中古住宅販売件数は、フォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)件数が過去最高となる中、前年比4.8%減の490万8000戸と、1997年以来13年ぶりの低水準となった。

 2008年も491万3000戸と、1997年以来の低水準を記録したが、2010年はさらにその水準下回っている。2009年は同4.9%増の515万6000戸と、回復の兆しを見せたものの、結局、長続きせず回復は不発に終わったといえる。

 NARの主席エコノミスト、ローレンス・ヤン氏は、12月の販売件数が急増したのは、長期金利の上昇傾向が寄与したと見ている。

 米MBA(抵当銀行協会)によると、昨年12月24日で終わった週の住宅ローンの30年固定金利は4.93%と、5月7日以来7カ月ぶりの高水準となったほか、フレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)の調べでも、住宅ローンの30年固定金利は、12月は平均4.71%と、11月の4.30%から上昇しており、1年前の4.93%まであと22ベーシスポイントに接近したことで、駆け込み需要が起きたと見ている。

■保留指数、2カ月連続で改善=2011年は緩やかな回復へ

 これより先、NARが先月末に発表した昨年11月の中古住宅販売保留指数が、前月比3.5%上昇の92.2と、前月(10月)が過去最大の上昇幅(10.1%)を示したあと、さらに上昇し、2カ月連続の上昇となったことで、12月の中古住宅販売件数も高い伸びになることは予想されていた。

 中古住宅販売統計は、契約後の住宅の引き渡しの完了時点での販売件数を示すのに対し、同指数は、購入契約書に捺印した時点での販売件数を示すので、中古住宅市場の先行指標と見られている。同指数の上昇はその後1‐2カ月後に中古住宅販売統計に現れてくる。

 同指数の大幅上昇について、NARのヤン氏は、「中古住宅の販売活動が活発化しているのは、国内経済が着実に回復する中、住宅購入の環境が大幅に改善しているためだ」としている。

 しかし、同氏は、「今後、適正な販売水準に戻るには、もう一段の住宅購入環境の改善が必要だ」と、クギを差す。

 その条件として、同氏は、2011年に新規雇用者数が200万人増加すること、また、住宅ローン金利の水準が今後も緩やかな上昇にとどまること、資金調達が困難な状況が続いているが金融機関が住宅購入者への貸し出し基準を適正な水準に戻すことなどを挙げている。

■住宅販売、健全な水準に戻るにはあと2‐3年か

 昨年の中古販売件数の動きを見ると、3月の536万戸(前月比7%増)、4月の579万戸(同8%増)と、2カ月連続して増加したが、4月末に住宅取得減税が終了した直後の5月は566万戸(同2.2%減)と、3カ月ぶりに減少に転じ、6月も526万戸(同7.1%減)となり、5-7月は3カ月連続の減少となった。

 その後、8-9月は2カ月連続の増加となり、盛り返す兆しを見せていた。しかし、10月の住宅着工件数が前月比11.7%減の年率換算51万 9000戸と、2009年5月以来の1年5カ月ぶりの低水準となったように、10月の中古住宅販売は前月比2.2%減と、ブレーキがかかった。

 しかし、11‐12月は2カ月連続で増加、再び増勢を取り戻した。水準的にも、単月で40年の統計史上で最大の下落幅、また、15年ぶりの低水準となった7月の384万戸(前月比27%減)から528万戸に急回復しており、急落前の6月(526万戸)の水準に戻っている。

 それでも、前年比では2.9%減と、依然、落ち込んだままだ。4月直近のピーク時の579万戸と比べても8.8%、また、2005年9月のピーク時の725万戸を27.2%も下回っている。

 ただ、今回の12月の結果については、住宅取得減税が導入される前の水準に戻っており、ヤン氏が指摘した、住宅市場が持続安定的に回復していると呼べる520万戸の水準に達している点は明るい材料だ。

 ヤン氏は、12月の統計結果について、「中古住宅販売は過去半年間の販売傾向をみると、明らかに回復傾向を示している」と楽観的な見方を示している。その上で、同氏は、「12月の販売件数は、我々が2011年に予想している販売件数に近いもので、今後、中古住宅販売は持続可能な適正水準に近づいていく」と、指摘している。

 しかし、他のエコノミストは、2010年が1997年以来13年ぶりの低水準となったことから、米投資分析大手ムーディーズ・アナリティクスの主席エコノミストのマーク・ザンディ氏のように、2011年は500万戸台にやや回復すると見られるものの、健全な600万戸の水準に戻るのは2-3年後の 2013-2014年からという厳しい見方もある。

 特に、目先の懸念材料は、昨年12月の住宅購入目的のローン申請件数が11月末時点から8.9%減少している点だ。通常、住宅購入者は1カ月前にローン申請するため、この減少は1月の中古住宅販売件数が減少する可能性を示す。

 また、依然、高水準の失業率(現在9.4%)やフォークロージャー件数が過去最高となっていることを考えると、今後数カ月は販売件数の伸びは鈍化するか、あるいは減少に転じる可能性があるとの見方もある。

■中古住宅在庫、8.1カ月分=5カ月連続の低下

 中古住宅市場の供給過剰感を示す12月の売れ残り住宅在庫は、前月比4.2%減の356万戸となった。これは同月の販売ペースで換算した在庫水準で見ると、8.1か月分に相当し、11月の9.5カ月分を下回り、5カ月連続の低下となる。また、1999年以来11年ぶりの高水準となった7月の 12.5カ月分を4.4カ月も下回っている。

 しかし、2009年11月の6.5カ月分を除けば、依然、過去25年間の平均値である7.1カ月分を上回っており、適正水準とされる6-7カ月分(2005年の住宅ブームのピーク時は4.5カ月分)も上回っており、依然として高水準だ。

■中古住宅販売価格、1%低下=うち、一戸建ては0.2%低下

 販売の内訳は、主力の一戸建ては前月比11.8%増の年率換算464万戸と、2カ月連続の増加となった。しかし、前年比は2.5%減と、依然、低下している。

 一方、分譲住宅と集合住宅は合計で前月比16.4%増の64万戸となり、3カ月ぶりに増加に転じたが、前年比は5.2%減となっている。

 また、中古住宅の販売価格の中央値(季節調整前)は、低価格のディストレスト物件の比率が11月の33%から12月は36%に上昇した結果、前年比1.0%低下の16万8800ドルとなった。ディストレスト物件は、通常、10‐15%の割安価格で12月全体の販売価格を押し下げたが、ヤン氏は販売価格の横ばい傾向が続くと見ている。

 一戸建ての中央値は前年比0.2%低下の16万9300ドル。分譲住宅は同7.4%低下の16万5000ドルとなっている。

 前月との比較では、全体の販売価格は11月の17万0200ドルから0.8%低下しており、住宅購入者は住宅価格が底を打つまで様子見になる可能性もあり、1月の販売件数が減少する要因にもなりうると見られている。

 また、地域別の販売件数は、すべての地域で増加した。北東部は前月比13.0%増(前年比5.4%減)、中西部は同11.0%増(4.3%減)、西部は同16.7%増(1.5%減)、南部も10.1%増(2.5%減)となっている。

■2010年フォークロージャー件数、過去最高に

 "もう一つの住宅在庫"といわれるフォークロージャー物件の中古市場への流入は住宅価格の下落圧力が高めるが、昨年12月のフォークロージャー件数(デフォルト通知や競売通知、銀行差し押さえ件数の合計)は2カ月連続で30万戸割れとなった。しかし、2010年全体では過去最高を記録し、依然、最悪の状況は脱していない。

 米不動産調査会社リアルティトラックが13日発表した昨年12月のフォークロージャー件数は前月比2%減(前年比26%減)の25万7747戸と、2008年6月以来2年7カ月ぶりの低水準となった。しかし、2010年全体では前年比1.7%増の287万1891万戸と、過去最高となっている。 (了)


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