http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/694.html
Tweet |
社会保障の問題は、資源の最適配分問題ではあるが
よく世間にあるような、企業を懲罰するようなやり方ばかりで
経済成長への考慮が無ければ、貧困の輸出により
縮小均衡で貧困スパイラルに陥ることになる
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/sakuin/kikan/4602.htm
最低生活保障のあり方 季刊社会保障研究 1009
「生活保護」に関する公的統計データ一覧
http://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.asp
最低生活費裁定の難しさ:研究の窓...−11-01-19
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19360301.pdf
高齢期の新たな相対的貧困リスク
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19360304.pdf
低所得世帯と被保護世帯の生活実態〜消費パターンとウェル・ビーイング −11-01-19
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19360302.pdf
消費の社会的強制と最低生活水準:最低生活保障のあり方:データから見えてくるもの−11-01-19
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19360303.pdf
世帯収入による貧困測定の試み〜1999-2005年の貧困率と世帯主の特徴との関連につい...−11-01-19
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19360305.pdf
低所得者に対する社会保障のあり方〜住宅と生活満足度:最低生活保障のあり方:データから見えてくるもの.−11-01-19
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19360306.pdf
http://diamond.jp/articles/-/10806
【第7回】 2011年1月19日
熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト]
大きな文字小さな文字
医療・介護・福祉の低生産性問題
サービス業に雇用を集める「成長戦略」に潜む罠
――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部主席エコノミスト
強まっていく生産性上昇の要請
サービス業は理想的な「雇用の受け皿」か?
高齢化する日本経済にとって、経済成長戦略はことのほか重要な政策である。日本が成長しなければ、勤労者の所得増によって高齢者の社会保障負担を賄うことができないからである。
本稿では、成長戦略を立てるときに見誤りやすい罠があることを指摘したい。それはサービス業を雇用拡大の受け皿と考えて、そこに雇用を集めるだけでは逆効果になる可能性があることである。
サービス業は他業種に比べて、1人当たり所得が低く、低生産性である。生産性を高めにくいから、就業者の賃金上昇が鈍いという性格もある。
確かに、現状、サービス業は全業種中で雇用拡大に大きく寄与する数少ない業種である。失業対策として、雇用の伸びが期待できるサービス業への雇用シフトは歓迎されやすい。
しかし、過去のデータを調べると、就業者が生産性の低いサービス業に集まった結果、就業者全体の平均的な生産性は低位に抑えられることとなった(図表1参照)。
サービス業の1人当たり生産性は654万円と、産業平均の926万円よりも3割方低い(2009年平均)。その一方で、2000年から2009年にかけて、サービス業の就業者の割合は28.9%から35.7%へと高まっている。
経済学者やエコノミストの常套句に、「低生産性部門に資源配分が固定化される」という批判の言葉があるが、サービス化の流れは、文字通り、低生産性部門への労働力の固定化に見える。
次のページ>> 「非正規化」が進む医療・福祉・介護は、本当に成長分野なのか?
サービス化という「非正規化」
非正規社員の約5割が広義のサービス業に
サービス業の拡大には、非正規化によって雇用が増える側面がある。たとえば、ある企業が、事務フローの一部をアウトソースして、別の事業サービス業者に業務委託をすると、形式的にサービス業の雇用が増えることがある。
業務委託を受けた先では、これまで正社員がやっていた仕事を非正規労働者が担う。これは実質的に非正規化によって、人件費が抑制されたに過ぎない。その代表格に労働者派遣業がある。
1990年代後半以降は、こうした流れが強まった。2010年7-9月で見ると、非正規労働者の約5割が広義のサービス業に属する結果になっている。
意外なほど低いサービス業の付加価値
医療・福祉・介護は本当に成長分野か?
成長戦略として語られている内容に、医療・介護・福祉分野の将来性という話がある。財務省『法人企業統計年報』(2009年度)で、医療・福祉の1人当たり名目付加価値を計算すると、全業種中で、飲食サービスに次いで二番目に低水準である。驚くのは、労働者派遣業よりも付加価値額が低いことだ。これは、成長分野というイメージからほど遠い。
ここまで「医療・介護・福祉」と総称してきたが、その内訳を調べると、総務省「事業所・企業統計調査」では従業員559万人(2006年)のうち、医療が327万人(59%)で、保育所51万人、介護施設・事業者49万人、老人ホーム37万人となっていた。雇用の変化で言うと、保育所と老人ホームの増加寄与が大きい。
福祉分野の生産性が低い背景には、職種の特性が極端に労働集約的であり、機械化などの効率性上昇がなじみにくいという事情がある。顧客から高い利益をもらうことが敬遠され、公的介入が採算性を制限する働きも加わっている。
こうした医療・介護・福祉がサービス業の中核になっていることが、サービスの低生産性の原因でもある。
次のページ>> 生産性上昇の寄与が高い製造業を発展させることこそ、成長戦略
不思議なのは、そうした医療・介護・福祉分野が、成長分野を担うと語られていることである。しばしば「日本はさらに高齢化が進むので、医療・介護・福祉の需要が高まる」とか、「保育所が恒常的に足らないので政府に増設を望む」といった提言めいた話が聞こえてくる。
筆者は、この種の話では「潜在ニーズ」が「有効需要」と混同されていると考える。有効需要とは、消費者が金銭的負担をいとわない需要を指し、潜在ニーズとは区別される。潜在ニーズのことを大雑把に「需要がある」と称するところに錯誤がある。
かつて日本の津々浦々で、「住民の声」という潜在ニーズに基づき、鉄道や空港や他の社会インフラ建設に税金投入が行なわれた。医療・介護・福祉には需要があるという様々な政策提言にも、潜在ニーズをできるだけ税金でサポートしてほしいという隠れた思惑があるように感じる。
誤解のないように言っておくと、筆者は生産性が低いから、政府の医療・介護・福祉の予算を削った方がよいなどとは思っていない。むしろ、医療・介護・福祉について、高齢化社会に不可欠だからこそ、事業の労働生産性を高めるための質的改善が強く要請される。
成長分野という名を借りて、公費負担を容認する姿勢に流されれば、財政負担が膨らみかねないと警鐘を鳴らしたい。
理想論を承知で言うと、福祉に従事する1人の就業者が、より多くのサービスを供給できるようになれば、相対的に同じサービスを低コストで受給できる。つまり、生産性上昇の余地を探ることが、ひいては公的負担の節約になる。そうした供給サイドの体質改善が、財政面での需要サポート以上に大切だ。
製造業の発展こそ成長戦略
人口減少下では雇用量でなく生産性を重視せよ!
医療・介護・福祉については、それを成長分野として扱うのは無理があると言いたい。前掲の図表1からは、製造業の方が生産性上昇の寄与が圧倒的に大きいことがわかる。
次のページ>> 人口減少下では、雇用量でなく「生産性」を重視すべき
反面、就業者数の推移で見ると、民間サービス業は1992年に製造業を抜いて、その後も増加傾向にある(図表2参照)。この状況を見て、多くの人が「製造業における雇用拡大は見込めない」という判断をすることが多い。
筆者は、この発想に誤解があると言いたい。今まで「雇用拡大しているから雇用を増やせ」と考えていたから、雇用重視の姿勢は当該業種の生産性に注意が払われることなく、低生産性部門に労働力が固定化する弊害を伴った。
本当は、「労働生産性が上昇しているから、その分野を成長産業として支援せよ」という方が、結果的に雇用者を富ませ、国家を繁栄させる。雇用吸収は、国民所得が増えていく規模効果(所得効果)によって目指すべきものだろう。
労働生産性を問わないで、どんどん雇用量を増やせばよいという発想は、悪しきケインズ主義に基づく、量的拡大志向の発想である。「失業している人がいれば、税金を使ってでも雇った方が国民所得が増える」というのは、持続性のない条件設定である。人口減少に向かっていくわが国には、もはや時代遅れの発想である。
限られた労働力人口で国家の繁栄を支えていくには、1人1人のスキルを高め、イノベーションを誘発することが不可欠だ。生産性を高めることで、貿易取引を拡大させて、人口制約に縛られずに国民所得を向上させることができる。
必要とされる医療・介護・福祉サービスは、そこで働く就業者が、成長分野で所得を増やした人々を顧客にして、より多くの対価を受け取ることで、生産性上昇の恩恵を還流させることを目指せばよい。
成長戦略の「そもそも論」を、再検討してどうだろうか。
質問1 政府の成長戦略に足りないものは、何だと思う?
46.2%明確な理念23.1%能力や見識の高い人材14.3%現実的な政策14.3%効果の具体的な分析手法1.1%潤沢な資金1.1%その他
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。