http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/627.html
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TPPのメリットは一度に多くの国とFTAを結べること、特に世界GDP1位の米国への関税0輸出が可能になることだ。
多くの試算が示すとおり、トータルでは国益に寄与し、大部分の国民生活水準を(加入しない状況よりは)改善する。
ただし、輸出企業と従業員、そして低価格の輸入品で利益を得た企業と消費者から、利得の一部を適正に課税(所得税、資産課税、消費税、外形標準課税・・)し、失業者や貧困層(元農業者など)に再分配が行われればの話だ。
また、試算ほどの利益が得られないことも(多分、間違いなく)ある。
他者不信の日本では、政治的になかなか難しいだろう
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2011/01/12/011639.php
第84回 TPPの現実
2011/01/11 (火) 12:57
管直人政権、あるいは民主党という政党は、本当に「スローガン」が大好きである。とにかく「響きの良いフレーズ」を好み、中身につい ては吟味することなく政策を推し進めようとする。スローガンやフレーズを中身よりも優先してしまうため、大抵のケースでは泥縄的な対応に陥り、最終的には 何も前に進まないままに終わる。
そもそも、管政権にしても民主党にしても、ビジョンや戦略が全く不明確である。民主党に至っては、党の綱領さえないわけであるから、 政策が「人気取り」のためのスローガン先行に陥り、政策や対応が泥縄式になるのも、仕方がない話なのかも知れない。泥縄内閣により引っ掻き回される日本国 民としては、たまったものではないが。
以前取り上げた「法人税」の引き下げ問題も、まことに泥縄的であった。「国際競争力を高めるには、法人税を引き下げなければならない」 といった論調で、管首相が実際に法人税の5%引き下げを宣言してしまったわけだが、
果たして「国際競争力」とは何を意味するのか、筆者は今ひとつ理解できない。
日本企業の「国際競争力」の話をしているのであれば、一括で法人税を引き下げる必要は特にない。日本企業が高い法人税のために利益が相対的に小さ く、投資を拡大が困難だというのならば、別に法人税を全面的に引き下げずとも、「国際競争」の分野で競合している企業に対し、投資減税を実施すれば済む話 だ。
あるいは、外国企業が高い法人税率が原因で、日本に投資(国際収支上の直接投資)してこないことが問題なのだろうか。すなわち、日本が国家とし て、外資系企業を呼び込むという意味における「国際競争力」がないという話である。その場合は、そもそも我が国が外国からの直接投資を必要としているのか どうかを、きちんと吟味する必要があるだろう。
90年代後半のアイルランドは、法人税を引き下げることで、外国からの直接投資を呼び込んだ。外資系企業の技術や資本に依存する形で、その後のア イルランドは経常収支黒字を拡大し、「ケルトの虎」と呼ばれたわけだ。だが、当時のアイルランドと現在の日本では、経済の成熟度が全く違う。少なくとも現 在の日本は、「外国からの直接投資依存で、経済成長達成」などという芸当ができるほど、発展度合が低い国ではなく、規模も大きすぎる。
また、現在の日本は未だにデフレから脱却できずにいる。デフレが深刻化している一つの要因は、民間企業が投資(GDPの一部)を増やさず、国内の 供給能力と現実の需要(=GDP)との乖離である、デフレギャップが拡大してしまっているためである。デフレ下では実質金利が高くなってしまうため、民間 企業は投資よりも「借金返済」に努めたほうが、資金運用上も有利である。
法人税が高かろうが安かろうが、デフレ深刻化で需要が低迷している日本に、わざわざリスクを取って投資をしてくる外資系企業など、数えるほどしかいないだろう。無謀にも投資をしてきたとしても、世界で最も厳しい市場で、過当競争に苦しめられるだけの話である。
(2/3に続く)
そもそも法人税減税とは、政府から民間企業への「贈与」そのものだ。そして、企業利益とは「消費にも投資にも回らなかった所得」すなわち貯蓄であ る。利益が企業に残った場合は内部留保に、配当金として株主に「贈与」された場合は、株主の銀行預金になるわけだ。あるいは役員賞与として、経営者の報酬 になるケースもある。
現在の日本が過剰貯蓄に悩んでいる状況にも関わらず、何ゆえに政府がわざわざ企業の貯蓄を増やしてあげなければならないのか。全くもって、理解に苦しむ。
少なくとも、デフレ環境下においては、法人税の引き下げが正当化されるのは、労働分配率が高まっているときか、あるいは国内投資が拡大していると きのみだろう。それこそ「国際競争」で苦労している大手輸出企業は、簡単には労働分配率を引き上げられない。そうであるならば、尚のこと国内投資を活性化 させる投資減税をすれば済む話で、「法人税を全面的に引き下げる」などという政策には結びつかない。
それとも民主党は、企業の貯蓄すなわち「内部留保」「株主への配当金」「役員賞与(経営者報酬)」を引き上げるために、法人税引き下げを決断した のだろうか。そうだとしたら、「国民の生活第一」などと「スローガン」を掲げて政権を取ったこと自体が「国民を騙した」ということになってしまう。スロー ガンやキャッチフレーズが大好きな割に、中身を考えない(後から泥縄式で考える)民主党らしいと言えば、それまでの話だが。
さて、「スローガン」「キャッチフレーズ」そして「泥縄式」と言えば、まさしくTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)関連も同様である。
「平成の開国だ!」「TPPに参加しないと日本は孤児になる」「開国か、鎖国か」 などなど、まさしくイメージ優先のスローガンやキャッチフレーズばかりが飛び交い、TPPに参加しないと、日本がまるで世界から閉じこもるかのごとき論 調が蔓延している。正直言って、意味不明だ。TPPに参加している国々、あるいは参加を検討している国々の経済規模を見れば、一発で分かる。
【図84−1 09年におけるTPP関連諸国のGDP(単位:十億ドル)】出典:IMF
今回のTPPに関わっている国々のGDPを比較すると、アメリカ一国で全体の67%を占めている。二番目に経済規模が大きいのは、もちろん日本で、全体の24%である。何と、日米二カ国だけで、TPP関連諸国の前GDPの九割を占めているのである。
ちなみに、三番目に経済規模が大きなオーストラリアのGDPシェアは4.3%だ。残りの七カ国(マレーシア、シンガポール、チリ、ペルー、ニュー ジーランド、ベトナム、ブルネイ)に至っては、合計してもわずかに3.8%のシェアでしかない。結局のところ、TPPなどとは言っても、実質的に「条件が 極めて厳しい、日米FTA」と何ら変わりがないのである。
心底から理解できないのは、このTPPに日本が参加しなければ、「日本は完全に世界の孤児になる。政府関係者には国益をよく考えてほしい」 などと発言する財界人(日本経団連 米倉会長)が存在していることだ。なぜ、日本を含めてもわずかに十カ国、日米を除くとGDPの総計が2兆ドルにも満 たない経済連携協定に参加しないと、我が国が「世界の孤児」になるというのだろうか。この発言における「世界」とは、一体どこのパラレルワールドの世界な のだろうか。
経団連会長は、尖閣諸島における中国漁船衝突事件の際にも、「日中関係という国益を優先することが最も重要」 などと発言したが、現在の日本の経済界の重鎮の方々は、「国益」について大きく勘違いをしているとしか思えない。しかも、この手の発言は、結局のところ印象ベースのスローガンやフレーズに過ぎないわけだ。民主党同様に、中身が全くないのである。
少なくとも、図84−1を自らの目で確認していれば、「日本は完全に世界の孤児になる」 などという発言は出てこないはずだ。
(3/3に続く)
(2/3の続き)
さて、経団連会長の「国益をよく考えて欲しい」に触発されたためというわけではないだろうが、菅政権は年明け早々、環太平洋経済連携協定(TPP)の2国間協議をアメリカと開こうとしている。
『TPP日米協議、13・14日に http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110108-OYT1T00412.htm
日米両政府は7日(日本時間8日)、環太平洋経済連携協定(TPP)の2国間協議を13、14日に米ワシントンで行うと発表した。
日本政府から関係省庁幹部が訪米し、TPP交渉の中心国である米国当局から、貿易自由化などの交渉状況について情報収集する。日米間の事務協議の開催は初となる。
日本政府は昨年11月、TPPの交渉参加に向けた協議開始を表明し、菅首相は今月4日の年頭記者会見で、参加の是非について6月をめどに結論を下す考えを示している。米国との協議をきっかけに、交渉参加の前提となる国内農業改革の議論を加速させる方針だ。
TPPは米国や豪州など9か国が11月の妥結を目指して交渉している。
日本はTPP交渉参加の判断を先送りしているため、昨年12月にニュージーランドで行われた第4回交渉にはオブザーバー参加も認められなかった。その後、豪州、シンガポールなど交渉参加国から個別に情報収集しており、米国との協議もその一環となる。』
この手の外国との経済連携の話になると、日本国内ではすぐに「農業問題」がクローズアップされる。だが、それ以前に、今回の「ふって沸いたような」TPP交渉には、危うい点が少なくない。
そもそもの問題は、日本がTPPに参加する「メリット」が全く見出せないことである。例えば、TPPより日本の輸出が飛躍的に増えるというのであれば、もちろん我が国が参加を検討する価値はあるだろう。しかし、現実的には、そんな甘い話は有り得ない。
何しろ、図84−1からも分かるように、そもそも日本の輸出拡大に貢献できる経済規模を持つ国が、アメリカただ一国なのだ。そして、日本企業の多くは、現在はアメリカにおける現地生産を拡大しており、日本からの輸出はここ十年間で全く増えていない。
【図84−2 日本の対米輸出の推移(単位:千ドル)】出典:JETRO※2010年は11月までの数値
例えば、大手自動車メーカーのホンダに至っては、09年にアメリカで販売された新車に占める現地生産の比率が、何と83.8%にも達した。無論、この比率は過去最高値である。
TPPにより関税が撤廃されたところで、日本からアメリカへの自動車の輸出は増えない。何しろ、アメリカが日本車にかけている関税は、わずかに2.5%である。2.5%程度の関税が撤廃されたところで、為替レートの変動により即座に吸収されてしまう。
そもそも、アメリカは日本の主力産業である工業製品に対し、高めの関税を設定しているわけではないわけだ。さらに、日本企業はアメリカにおける現 地生産の比率を高めていっている。加えて、アメリカのQE2(量的緩和第二弾)により、中期的な円高ドル安傾向は続かざるを得ないだろう。この状況で、 TPPにより日本の対米輸出が増えると予想するのは、かなり困難だ。
そして、TPP関連の国々を見渡すと、アメリカ以外には、日本の輸出を増やせる可能性がある経済規模を持つ国が存在しない。農業問題や関税問題など細かい話に入る前に、まずは図84−1を見た上で、「大きな話」から始めるべきではないだろうか。そうすることで今回の「TPPの 現実」が、ようやく見えてくる。結果、「平成の開国」や「世界の孤児になる」などと、印象ベースのキャッチフレーズを使うことが、恥ずかしくなってくるこ と間違いない。
本ブログの「TPP」関連記事はこちら。
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