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霞が関埋蔵金物語
2011年01月11日(火) ドクターZ ドクターZは知っている Small Size
年末の恒例行事がまたも繰り返された。史上最高額の92兆4000億円に積み上がった予算編成を巡る霞が関埋蔵金論争である。
霞が関埋蔵金についてマスコミは、特別会計などにある剰余金や積立金の俗称などと解説しているが、初歩的な簿記の知識も持たない記者が書く記事は不正確である。しかも、役所の説明を鵜呑みにしているのでわかりにくい(剰余金、積立金といっても役所ごとにその定義が微妙に異なる)。
正しくは、特別会計のバランスシートにある資産負債差額を指す。この差額は特別会計の運営には必要のない資金なので、余分なカネなのだ。財源不足を嘆くなら、遠慮せずにどんどん活用すればいい。
埋蔵金の存在が注目されたのは、07年11月に自民党財政改革研究会の与謝野馨会長が、いわゆる上げ潮派の主張する成長路線による財政再建手法を「霞が関埋蔵金伝説のたぐい」と批判したのが始まりとされるが、これも違う。
小泉政権下の05年4月、構造改革の一貫として経済財政諮問会議に特別会計のバランスシートの試算が提出され、40兆円もの余剰資金の存在が公表された。これこそが埋蔵金デビューの正史だ。そしてその年の12月、小泉総理の決断で埋蔵金の取り崩しが決まり、06年度以降に約20兆円が予算に組み入れられたのである。
07年は、埋蔵金はないと言い切った財政再建派の与謝野氏と、存在すると主張する上げ潮派・中川秀直氏の間で激しい論争が起こった。結論を言えば、予算編成大詰めの12月に12兆円に上る埋蔵金が出現した。財務省の言いなりに発言してきた与謝野氏ははしごを外された格好になり、中川氏の主張の正しさが裏付けられたのである。
この論争がきっかけで「霞が関埋蔵金」は08年の流行語大賞のトップテンに選ばれた。そして、09年、10年にも、合わせて10兆円程度の埋蔵金が予算に繰り込まれている。
このように、埋蔵金は06年度予算から毎年12月の予算編成期になると話題になる。もはやいつもの見慣れた光景と言っていい。12月までは財務省が「もうありません」と存在を否定し、12月末になると「やっぱりありました」と前言を翻すパターンが、何とかのひとつ覚えのように繰り返されている。そうして累計で40兆円以上が"発掘"されてきた。
11年度の予算編成を巡っても、財務省は「ない」と言い、それを財研クラブ(財務省内の部屋で官僚から話を聞いて記事にする御用記者クラブ)の記者たちが、なんの検証もしないまま垂れ流してきた。ところがまたしても12月になると、埋蔵金が出てきたのである。
目新しかったのは、財務省関連の特別会計ではなく、国交省所管の鉄道建設・運輸施設整備支援機構から発掘したことくらいだ。
今回の鉄建機構のような独立行政法人やその他の天下り法人のバランスシートも調べれば、特会分と合わせて埋蔵金はまだ30兆円ほど出てくると見られている。政治家たちが今のままの意識でいる限り、まだ数年は毎年12月にバカげた議論が繰り返されるのだろう。
マスコミの責任も見過ごせない。毎年毎年、同じ議論と同じ結末を見続けているのに、なぜ財務省の言い分を鵜呑みにした記事を書き続けるのか。もうそろそろ事実に目を向けて、真面目に取材するべきだろう。今のままでは、記者クラブは役所の広報に過ぎない。財研クラブは「財務省のポチ」と言われても、何も反論できないはずだ。
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