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 日本のデフレ  人口増減と「物価」は実は関係がない VS インフレとともに消える造幣益(シニョレッジ) 日銀失敗指数
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/616.html
投稿者 tea 日時 2011 年 1 月 13 日 09:19:41: 1W1IXELjjF6i2
 

(回答先: デフレは悪? 投稿者 tea 日時 2011 年 1 月 10 日 19:01:24)

デフレの定義に注意すべきだということ
重要なのはGDPデフレータであって、個別物価ではない
そして金融・財政政策による通貨量増大が可能なら(副作用は大きいが)
デフレに対して効果はある

ただ問題は副作用の大きさや、時間軸上の効果だ

http://diamond.jp/articles/-/10728/
経済・時事高橋洋一の俗論を撃つ!【第5回】 2011年1月13日高橋洋一 [嘉悦大学教授]
日本のデフレは人口減少が原因なのか人口増減と「物価」は実は関係がない
 年末年始に「日本のデフレは金融緩和の効かないもので、その原因は人口減少による供給過剰である」という「デフレ人口原因論」が多くでている。
「デフレは金融政策で解決できる」(2010年11月11日、12月2日付け本コラム参照)という私のところへも、この意見について感想を求められることもしばしばある。かなり多くの人々が「デフレ人口原因論」に共感していているようなので、このコラム「俗論を撃つ!」にふさわしい話題だ。
二つの主張で異なる「デフレ」の意味
 まず二つの主張であるが、その代表的な出典を明らかにしておこう。「デフレ人口原因論」は藻谷浩介著『デフレの正体』(角川書店)、「デフレ金融政策原因論」は、私の『日本経済のウソ』(ちくま新書)である。
 その上で、両書を読み比べると、驚くことに肝心要の「デフレ」の意味が異なっている。異なった「デフレ」をそれそれで分析対象にしているので、異なった政策的インプリケーションがでてくるのだ。
 そもそもデフレとはdeflationの日本語訳で、その意味は一般的な物価水準の持続的下落である。国際機関などでは、GDPデフレータが2年 続けてマイナスの場合をいう。ここで一般的な物価水準というのは、個別品目の価格ではなく全品目の加重平均である「物価指数」を指す。この意味で 「deflation」は、一般物価というマクロ経済現象の話だ。「日本経済のウソ」では、この国際標準の「デフレ」の意味で、一貫して書かれている。
 その上で、デフレの問題は、デフレが雇用喪失や設備投資減少を引き起こすことが書かれている。そのロジックは、マクロ的な意味での名目賃金や名目 利子率には下方硬直性があるために、一般物価の下落に対して、名目賃金や名目利子率がうまく対応できず、結果として実質賃金や実質利子率(それぞれ名目値 から物価上昇率を引いたもの)が高くなるからだ。
次のページ>>プロでも時にミクロとマクロを混同
ところが、『デフレの正体』では「デフレ」の意味がはっきりしない。筆者自身が後から語ったところによれば、耐久消費財などの個別品目の価格の下落を意味しているという。その要因は人口減少なので、個々の企業はよほど創意工夫しなければいけないという主張のようだ。
 であれば、その「デフレ」は、「deflation」とはまったく違う、個別価格の現象である。要するに、ミクロ経済現象であって、マクロ経済現象ではない。ただし、しばしばマクロ現象とおぼしきところもあり、ミクロ現象とマクロ現象がしっかり区別されていない。
 ミクロ経済とマクロ経済というと、学生時代に経済学を勉強したことがあれば、すぐに思い出すだろうが、ミクロとマクロの区別がしっかりできていた かというと、そうでないかもしれない。実は、このようなミクロとマクロの混同はプロである経済学者でも時々見られる。高名な経済学者が公開の議論の場で、 一般物価と個別価格(相対価格)の混同を指摘され、一悶着あったことさえある。
 ちなみに、法律の世界でも、ミクロとマクロは言葉として書き分けられている。若干の例外はあるが、「物価」は法律用語としては一般物価を指してい る。その例外の代表的なものは「物価統制令」だろう。もっとも、戦後直後の混乱期に制定され、法律としては残っているが、事実上その機能はかなり失われて いる。また「物価」に対して、「価格」は個別価格を指す。
 ミクロの「価格」とマクロの「物価」の関係をあえてたとえれば、全国の学校で一斉テストをしたとき、ミクロとはあくまで個人のテストの成績であ り、マクロとは全国平均である。全国平均はテストの難易度によって基本的に上下する。全国の生徒の学力が、総じて低下している場合もあるが、それは国際比 較などでチェックするしかない。
 もし個人成績が下がっている場合、全国平均が下がっているのか、個人の全国平均との差が下がっているのかを見極める必要がある。このため、テスト では、成績の絶対値を見るだけでなく、相対的な位置づけを示す、たとえば偏差値のようなものが重要になってくる。ここで偏差値は、平均点の変動や生徒全体 の成績の偏りなどを「正規化」した結果の統計上数値であり、テストの難易度による成績の絶対値のブレを是正する指標だ。
次のページ>>ミクロの価格とマクロの物価を区別する意味
なぜミクロの「価格」とマクロの「物価」を区別するか
 ミクロの価格とマクロの物価といっても、物価は価格の平均なのだから価格が物価に影響するという程度の理解なら、両者をあえて区別する意味も少ない。なぜ両者の概念を区別するかと言えば、それ以上に物価の決まり方に特徴があるからだ。
 その理解のために、耐久財と非耐久財があるとして、耐久財の個別価格が下がる時をイメージする。ベースマネーが所与の場合、非耐久財の個別価格は 上がる。その理由は耐久財が安くなる分、余裕ができて非耐久財を買うからだ。こう考えると、ミクロの個別価格の変動がマクロの物価に影響を与えないことも わかるだろう。
 ミクロの個別価格の平均としてマクロの物価があると思い込んでいると、個別価格が上がればその平均も上がると考えがちであるが、それは少し短絡的である。マクロ物価はベースマネーから決まってくる。この点において、ミクロの価格とマクロの物価を区別する意味が出てくる。
 一方、個別価格が人口要因によって左右されていることは否定できない。個別価格は需要と供給との関係で決まるが、人口は需要の大きな要素になり得 るからだ。供給については短期的に調整できない。特に競争的な産業では、個別企業での生産量縮小は自らの収益減になるので、各社がカルテルでも結ばない限 り生産調整はできないから、需要減がそのまま価格低下に結びつくことはある。
物価の下落と人口増減は実は関係ない
 以上の点は、抽象的な思考の結果であるが、具体的なデータで確認しよう。
次のページ>>物価の下落と人口増減に関係はない

 物価の下落(本来の意味での「デフレ」)と人口増減は、実は関係がない。日本の物価上昇率と人口増減率を1990年から2008年までの時系列で みよう。その場合、両者の関係を示す相関係数は0.4程度でやや相関があり、物価と人口増減とで関係があるようにみえる。しかし、データを2000年から 2008年に絞ると、相関係数はマイナス0.7となって、むしろ人口減はインフレと負の関係があることになる(図1参照)。

 また、各都道府県を横断的に見て、人口増減率と物価上昇率を2000年から2008年まで平均してみよう。その場合の相関計数はマイナス0.3程度であり、このデータからも人口減はデフレの原因とはいえない(図2参照)。
 では、世界ではどうだろうか。世界各国を横断的に見るために、世界銀行のデータベースによって、人口増加率と物価上昇率を2000年から2008年まで平均してみる。173ヵ国の中でジンバブエの物価上昇率は異常に大きいので、相関係数を計算するときに除外しておく。

 すると相関係数は0.1程度とほとんど相関はない(図3参照)。なお、人口増減だけでなく、人口構造にも関係するかもしれないので、非生産人口比率(15歳未満、65歳以上の人口の比率)の増減をとっても、物価上昇率との相関係数はほぼゼロで相関はなかった。
次のページ>>個別価格の下落をデフレと言い換える意図

 一方、世界各国の通貨量増減率と物価上昇率の関係をみると、相関係数は0.7程度とかなり相関がある(図4参照)。これほどの相関になるような他のものは見あたらない。
 以上のことから、デフレは人口とは無関係で、通貨量と関係があることが確認できる。
個別価格の下落を「デフレ」と言い換える隠れた意図


 一方、個別の価格、例えば耐久消費財の価格は平均の物価に比して、最近時点でより価格低下が大きくなっており、これは需要減のためと思われるが、 その原因として人口要因は否定できない。もっとも、その場合、理論が想定するように非耐久財価格が、平均の物価より高めになっている。(図5、図6参照)
 こうした経済分析にとどまるならば、個別価格の下落にすぎないことを「デフレ」といっても、そう目くじらをたてることもないと思うが、社会問題を論じる際には、こうした言葉のすり替えの裏に、分析者当人の本当の意図とは関係なく、関係者のいろいろな思惑が隠されている。
次のページ>>言い換えは二重の意味で問題を引き起こす
一つは、金融政策のベースマネーで対処できる「デフレ」が、人口要因で規定されて、金融政策で対処できないものだという印象を広く一般に振りまくことだ。二つ目は、個別価格へも政策関与したい官僚主義・権限拡大を許すことになることだ。
 これは、本来やらなければいけない仕事をさぼって、別の余計な仕事を作り出すという二重の意味で悪い。そもそも金融政策はマクロの物価へ働きかける政策であって、個別の価格決定に関与しないのがメリットである。
 一般の人が個別価格に関心があるのは理解できるが、個別の価格に政策として関与すると、個別のビジネスに大きな影響があるので、政策論としては個別価格への関与はしてはいけない。
 こうした政策論の基本が犯されるという点で、個別価格の下落にすぎないことを「デフレ」というのはまずい。
 なお、あまりに難しいテストを出し平均20点になって多くの生徒を落胆させるより、平均60点のテストで少数の生徒を叱咤激励するほうがいい。平均20点より60点のほうが生徒のやる気が出る。この意味でも、金融政策で平均点を上げる本来の仕事をすべきだ。
質問1 デフレの原因は人口減少による供給過剰(需要不足)が主因だと思いますか?
65.6%
そう思わない
23%
かなり影響していると思う
8.2%
そう思う
3.3%
わからない

http://news.livedoor.com/article/detail/5196950/
インフレとともに消える造幣益(シニョレッジ)

池尾和人提供:池尾和人/アゴラ
2010年12月09日15時37分
1ツイート
現金需要に関しては、「財政的支援が欠かせない信用緩和」という記事の中で簡単に説明したことがあり、その際に造幣益(シニョレッジ、seigniorage)についても言及した。しかし、現金需要といったことを全く無視した議論をする人がいるようなので、改めて現金需要について解説しておきたい。お 金はいくらでもほしいのが人情であるけれども、現金の形態のままでずっと持ち続けようとする額には上限がある。この「現金の形態のままでずっと持ち続けよ うとする額」のことを経済学では「現金需要」と呼んでいる。現金に関しても需要と供給があり、いくら供給したいと思っても、需要がついてこなければ実現す ることはできない。むしろ現行の制度的な仕組みの下では、現金供給は現金需要に受動的になされざるを得ない。例えば、各世帯に10万円ず つ5000万世帯に現金を配ったとする。すると、その時点では5兆円の現金供給が追加されることになる。しかし、中にはその10万円をそのまま保有し続け る(タンス預金する)世帯もあるかも知れないが、すべての世帯がそうするわけではなく、消費したり、預金したりするあろう。消費された分は、小売店などを 通じて民間金融機関に還流してくる。預金された分は、もちろん民間金融機関の手に移る。5兆円の現金配給の結果として経済活動水準が上がれば、それに伴っ て手元に置いておこうと思う現金の額は増える可能性があるので、5兆円丸まるではないが、そのかなりの部分は民間金融機関に還流してくる。民 間金融機関は、還流してきた現金をそのまま手元に置いておくことはせず、中央銀行にある自らの当座預金(準備預金)口座に入金する。したがって、現金のか なりの部分は中央銀行に還流してくることになり、5兆円分の現金を配ったからといって、5兆円の現金供給増が実現できるわけではない。最終的に実現できる 現金供給額は、現金需要額に規定されることになる(注)。(注)準備預金についても、その残高が民間金融機関が保有したいと望む(あるい は、保有しなければならない)額を超えたならば、超過分は引き出されて国債の購入等に充当されることになる。すなわち、準備預金の供給額は、準備預金の需 要額で規定されることになる。したがって、現金残高と準備預金残高の合計をベースマネー(あるいは、マネタリーベース)と呼ぶが、ベースマネーの供給額 も、ベースマネーの需要額によって規定されることになる。ただし、予想インフレ率がゼロあるいはマイナスで、名目金利がゼロ近傍にあると きには現金需要はきわめて弾力的になると考えられる。すなわち、この場合の現金需要曲線は、次の図1のえんじ色の曲線のようになると想定できる。こうした 状況では、供給側のイニシアチブで現金供給を増やせるようにみえる。

例 えば、中央銀行がケチャップを大量購入して、その代金を現金(銀行券)で支払うことによって、現金供給をMS1からMS2まで増大させたとしよう。この時 点では、ケチャップの代金はすべて造幣益(シニョレッジ)でまかなわれたかのようにみえる。しかし、こうした中央銀行のヘリコプターマネー政策が成功し て、正のインフレ予想が発生するようになると、現金需要曲線は当然にシフトとする。予想インフレ率が正であれば、たとえ名目金利がゼロに なっても、その予想インフレ率の分だけ現金保有には機会費用が伴うことになるので、供給側の望むだけ現金を保有してくれるといったことは起こらなくな る。(予想インフレ率の高まりと同時に経済活動規模が急拡大して、相殺する効果が生じる(注)というのでなければ)現金需要は減少し、例えば次の図2のえ んじ色の曲線のようになると想定できる。このとき、予想インフレ率と整合的な名目利子率の水準が実現するためには、現金供給は例えば図のMS0まで減少し なければならなくなる。

(注)ヘリコプターマネー政策による支出拡大がもたらすGDP増加の乗数γと現金保有に関するマーシャルのkの積の値γ・kが1を下回る限り、現金配布に見合う現金需要が生じるとは言えない。現実的な数字の範囲では、γ・k<1であるといえる。要 するに、予想インフレ率が高まると、人々はそれまで手元に置いていた(タンス預金していた)現金を金利の付く金融資産(例えば、国債)に交換しようとする ので、最終的には大量の現金が中央銀行に還流してくることになる。そして、中央銀行は現金の還流に対応するために保有の資産(例えば、国債)を売却しなけ ればならなくなる(還流してくる現金の代わりに国債を渡す必要が生じる)。そうしたことの結果は、それまでマネーファイナンスでまかなわ れていた「MS2マイナスMS0」の分の(中央銀行と政府を連結してみた統合政府の)財政赤字が利払いを必要とする国債でファイナンスされることになると いうものである。換言すると、恒久的に期待できる造幣益(シニョレッジ)の大きさには限度がある。(MS0を超える分については)永久に利払いが節約でき るわけではなく、利払いが節約できるのはデフレ脱却までの期間に過ぎない。したがって、ヘリコプターマネー政策がデフレ脱却に有効だというのであれば、造 幣益(シニョレッジ)はほとんど期待できないとしないと、論理整合的な主張ではない。以上の意味で、ベースマネーの供給を増やせば(現在価値合計では)それと同額の造幣益(シニョレッジ)が増える、といった単純な(あるいは、スッ呆けた) 話は少なくとも成り立たない。ヘリコプターマネー政策によって生じた財政赤字は、いずれ国民負担になる。フリーランチは存在しない。したがって、何を買っ ても構わないわけではなく、その購入対象が国民負担に見合う価値のあるものかどうかが常に問われなければならない。ケチャップは、消費者(や食堂経営者) が必要な分だけ買えばよい商品であろう。


「日銀失敗指数」−−池尾和人(@kazikeo)
池尾和人(@kazikeo) / 記事一覧
クルーグマン教授が、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言のあった7月21日付けの『ニューヨークタイムズ』紙のコラムで、FRBがその使命の達成に失敗している程度を示す分かり易い指標として「連銀失敗指数(The Fedfail Index)」を提案し、その算出結果を次のようなグラフで示している。
FRBの使命は、一般に2つある(dual mandate)とされており、「物価の安定」と「雇用の最大化」である。そこで、1つには、FRBの暗黙のインフレ目標値である2%(厳密には、FRB の暗黙のインフレ・ターゲットは1.7%から2%の間とみられている)から実際のコア消費者物価上昇率がどの程度乖離しているのかの絶対値を考える。もう 1つには、米国の自然失業率のレベルである5%から実際の失業率がどの程度乖離しているのかの絶対値を考える。これら2つをテーラー・ルールの係数をウェイトにして加重合計したものが、クルーグマン教授の提案する連銀失敗指数である。具体的なウェイトとしては、イ ンフレ率に2、失業率に1.3が用いられている。これは、金融政策の議論で一般に「損失関数(loss function)」と呼ばれているものの一例である。乖離の絶対値の代わりに、その2乗がもちいられることも多い。それでは、同様の失敗指数を日本に関して計算したらどうなるか、いわば「日銀失敗指数(The BOJfail Index)」を 試算してみた。日本銀行の「物価安定の理解」は、「消費者物価の前年比上昇率が2%以下のプラスの領域」で中央値は1%ということなので、日銀の暗黙のイ ンフレ目標値は1%であるとする。また、日本の自然失業率水準は、OECDの推定を丸めて4%とする。加重合計を求める際のウェイトは、クルーグマンと同 じとする。データは、いずれも総務省統計局のHPから消費者物価上昇率としては「生鮮食品を除く総合・前年同月比の推移(全国)」をとり、失業率としては「完全失業率(季節調整値)総数」をとった。試算結果をグラフ化したものが下の図である。

水準そのものを直接比較しても、あまり意味がないと思うが、変化方向には多少の意味があろう。リーマン・ショック以降、日米ともに損失の拡大が起こる。ク ルーグマン教授は、米国が依然として悪化のピーク近辺にあることを示すために(にもかかわらず、バーナンキ議長には危機感が乏しいと指摘するために)連銀 失敗指数の結果を提示したのに対して、日本はまだ高止まりしているとはいえ、悪化のピークからはかなり改善してきているといえる。[付記]2010.8.2、8.3日本銀行が「「物価安定の理解」で念頭においている消費者物価は、CPI(総合除く生鮮食品)[以下、コアCPIと呼ぶ]なので、その上昇率を用いた。し かし、米国のコアCPIとは定義が違い、エネルギー価格が含まれており、それを除いたコアコアCPIを使うとイメージが違ってくるとの指摘があったので、 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数[以下、コアコアCPIと呼ぶ]を使った図も下に載せておく。なお、元の図にも係数の取り違いのミスが あったので修正した図に差し替えた。ただし、コアコアCPIは、わが国において目標と考えられている物価指数ではないので、その上昇率に関する目標値は存在しない。したがって、実績と目標の 乖離も定義できない。ここでは、目標値を1%と仮置きして計算したが、この1%というのは、あくまでもコアCPI上昇率に関するものである。こうした「コ アコアCPI上昇率の実績−コアCPI上昇率の目標」の値にどのような意味があるのかは不明というしかないので、下の図は、単なる参考程度のものに過ぎな い。要するに、中央銀行の目標達成度を評価しようという議論をしているのであるから、それぞれの中央銀行が目標としている物価指数を取り上げるのが当然であ る。それは、米国は米国基準のコアCPIであり、日本は日本基準のコアCPIである。それ以外の目標とされていない物価指数をもってきて目標達成度を議論 するというのは、おかしな話である。


「日銀失敗指数」・補足−−池尾和人(@kazikeo)
池尾和人(@kazikeo) / 記事一覧
先日の「日銀失敗指数」の記事に 関しては、(一部においてだけかも知れないが)意外に大きな関心(あるいは反発)を呼んだようである。しかし、元のクルーグマンの記事にあるように 「You can make up your own version」だから、私の提案が気に入らなければ、もっと良いと思う指数を作って、議論すればよいだけである。ただしその際に、わが国において多少とも根拠を もってターゲット水準を語れるのは、「CPI(総合除く生鮮食品)」(以下、コアCPIと呼ぶ)のみであることについては留意しなければならない。すなわ ち、FRBも日本銀行も公式にはインフレーション・ターゲットの枠組みを導入していない。しかし、FRBが「PCE(個人消費支出)連鎖基準物価指数(食 料品・エネルギーを除く) 」を実質的に目標としているとみなせるのと同等に(あるいはそれよりやや強い意味で)日銀はコアCPIを目標にしているとみなせる。この資料の図表6(7頁)を参照のこと。日銀の公表している「中長期的な物価安定の理解」においては、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考 えている」とされている(注1)。FRBのターゲット水準は、その見通しから逆算されるものであって、この程度にも明言されてはいない。したがって、ク ルーグマンのようにFRBについて目標を語ることが許されるなら、日銀については同等以上に許されるはずである。(注1)先の記事では、機械的に中心値の1%を実績値から差し引いて乖離幅としたが、目標は0〜2%の幅をもって設定されていると解釈できるので、その ゾーン内であれば乖離はないとし、上振れたときには2%との差、下振れたときには0%との差をもって乖離幅とみなすべきだという考え方もあり得よう。また、日本銀行の使命に関しては、日本銀行法の第2条に規定から「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」だと考えられる。それ ゆえ、日本銀行の使命が十全に達成された状態は、(インフレ目標、自然失業率)の状態が実現されたときだとみなした。インフレ目標だけが達成されていて も、自然失業率を上回る失業が発生しているならば、「国民経済の健全な発展」は損なわれているといわざるを得ない(注2)。そもそも社会厚生に雇用や所得 が関係しないわけはないので、金融政策について論じる際の評価(損失)関数はインフレ率と失業率(またはGDPギャップ)を変数とするというのが経済学で は一般的である。(注2)念のために付言すると、中央銀行の使命がその中央銀行の努力だけで十全に達成されるというものでは、通常ない。他の政策・施策や外部環境条件と組み合わさって結果は決まるものである。日銀が本当に雇用に対して全く責任を負っていないのであれば、日銀の役職員は楽であろうが、そうは考えない。雇用の確保は政府が第一義的な責任をもつ課題 であるとしても、日銀にも応分の責任があるとみるべきである。そこで、(インフレ目標、自然失業率)の状態をベンチマークとして、そこからどれだけ乖離し ているかという形で現実を要約したのが、先の「日銀失敗指数」である。もちろん、日銀失敗指数の「失業率を考慮しない物価だけのバージョン」も考えられる。それを図にしたのが、下のものである。コアCPI上昇率の実績値から 1%を控除したものの絶対値を2倍したものをプロットしている。ただし、1変数の場合には、ウエイトは作図上の都合だけで、それ自体にとくに意味はない。 この場合も、「まだ高止まりしているとはいえ、悪化のピークからはかなり改善してきている」とみてとれる。

なお、生鮮食料品の価格やエネルギー価格は変動しやすいので、インフレの基調的なトレンドを確認したいときには、それらを除いたコアCPIやコアコア CPIの方がCPI総合よりも優れた指標であるといえる(クルーグマンも10年にわたる年変化率を論じる文脈で、そういっている)。しかし、それでは CPI総合に意義がないかというと、全くそうではない。われわれは、現実に生鮮食料品を消費しているし、エネルギーも消費する。したがって、国民生活への 直接的な影響という点では、CPI総合の方が重要である。多くの国の中央銀行がCPI総合をターゲットにしているのは、こうした事情からだと考えられる。

 

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