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ドイツ財務大臣らしい発言だが
部分最適が全体最適と一致しないのが経済の問題だ
http://diamond.jp/articles/-/10682
ドイツ財務大臣 ヴォルフガング・ショイブレ「欧州財政危機克服の青写真を語ろう」
ドイツは経済成長を重視しながら、同時に債務の削減も行ってきた。財政規律を憲法にまで盛り込んだ厳しさは欧州の他の国も学ぶべきところがあろう。ドイツの現財務大臣が提言する。
Wolfgang Schäuble(ヴォルフガング・ショイブレ)
ドイツ財務大臣。1942年フライブルク生まれ。98年から2000年までドイツキリスト教民主同盟(CDU)の党首を務めた。メルケル政権の下で05年内相。09年より現職。
Photo:REUTER/AFLO
国際通貨基金(IMF)によれば、金融危機をきっかけにG20諸国が2009年に提供した金融部門への支援措置が合計でGDPの1.7%(9050億ドル)に達した。それに対し、裁量的な財政刺激策は09年、10年ともGDPの2%に達しているという。ユーロ圏では、ルクセンブルクとフィンランドを除くすべての国が、09年に対GDP比3%を超える財政赤字を計上している。ギリシャ、スペイン、アイルランドでは10%を超える赤字となっている。単年度で、ユーロ圏各国政府の抱える債務は、約10%ポイントも増大したことになる(08年は対GDP比69.3%、09年は同78.7%)。
ドイツの場合、10年の連邦予算では500億ユーロを優に超える過去最高の赤字を計上している。公的部門の累積債務は1.7兆ユーロを超え、GDPの80%近くに達する見通しだ。ドイツの連邦予算の10%以上を食いつぶしている国債利払いは、債務の拡大に伴い増加する。金利が上昇すれば、その増加ペースはさらに加速する。
だが、金融危機とその後の景気後退は、こうした債務比率の高さを説明するにはほど遠い。欧州諸国・G20諸国の国民の多くは、収入に見合わない暮らしをしている、というのが真実である。財政規律の手本とまでいわれたドイツでさえ、その例外ではない。
好況期においてさえ、各国政府はあまりにも長期にわたって、歳入以上の支出を続けた。おそらくさらに悪いことに、いくつかの国では、高齢化ゆえに長期的な成長ポテンシャルが低下していることを考えれば容易には返済できないほどの歳出を続けてしまった。こうした浪費が、手をこまねいていては持続不可能な状態に陥りそうな債務水準をもたらしてしまった。
次のページ>> たとえば、公務員は昇給を諦め、産業界は増税を受け入れ、福祉の受益者は負担増を覚悟する必要がある
公務員も企業も民間人も
犠牲を分かち合う覚悟が
財政再建には不可欠
ドイツが2009年、憲法に厳格な財政規律を盛り込む決定を下した背景には、こうした状況がある。この「債務ブレーキ」は、2016年までに構造的債務をGDPの0.35%以下に抑えることを連邦政府に義務づけている。州レベルでは、2020年の時点であらゆる構造的債務を抱えることが禁止される。現行の連邦政府は確実にこのルールを遵守することになるだろう。
これはつまり、2016年までに構造的債務を約100億ユーロまで削減することになる。年70億ユーロの削減ペースだ。
2010年、ドイツの連邦予算のうち、半分以上が福祉予算である。したがって、少なくとも小幅ではあれ、福祉予算を削減する以外の選択肢は乏しい。だがこうした財政再建が実現できるのは、国民の過半数がそれを社会的に公平であると認める場合に限られる。社会保障・企業による福祉の受益者、そして公務員が皆、犠牲を分かち合わなければならない。
そこでドイツ企業は、補助金の削減や、主要エネルギー企業・航空会社・金融機関に対する増税などを受け入れ、財政再建に貢献しなければならない。同様に、公務員は約束されていた昇給を諦めなければならない。また政府は、連邦軍の構造改革を通じて最大年間30億ユーロの支出削減を模索している。
こうしたドイツの拘束力ある財政ルールは、他のユーロ圏諸国にとって前向きな実例である。だが、市場の信頼を(そして国民の信頼を)回復するには、ユーロ圏各国の政府すべてが独自の財政再建公約を示す必要がある。最近の調査によれば、政府の債務負担が持続不可能と思われる水準を超えると、さらに債務を重ねても経済成長を刺激するどころか阻害することがわかっている。
次のページ>> 欧州金融安定化機構は根本解決までのその場しのぎの措置
欧州金融安定化機構(EFSF)は
根本的な欠陥を修正するまでの
その場しのぎの措置にすぎない
ギリシャの債務危機は、欧州政界にとって、公的債務が際限なく拡大するまま放置してはならないという明確な警告だった。
EUがユーロの安定性を確保するため、ギリシャへの緊急支援を提供し、欧州金融安定化機構(EFSF)を設立するという決然たる対応を取ったのは正しかった。だが、EFSFは信頼回復に向けた必要なステップではあるものの、ギリシャ危機によって、欧州通貨同盟の財政政策枠組みが、問題国に他国の資金を日常的に投入することによって解決できない(またそのような解決策を取るべきではない)構造的な弱点を抱えていることが明らかになった。
じつのところ私は、EFSFは私たちが「安定成長協定」の根本的な欠陥を修正するまでのその場凌ぎの措置にすぎないと考えている。
安定成長協定の財政ルールは、実体的にも形式的にも鋭さが欠けている。だからこそ、協定の予防的・修正的規定を強化するような、ユーロ圏に関する、より効果的な危機予防・危機解決フレームワークが必要だ。欧州経済通貨統合(EMU)のルールを大きく逸脱するようなユーロ圏国家に対する制裁は、もっと迅速に、かつ政治的な裁量なしに発動すべきであり、さらに厳しいものにすべきである。
ドイツとフランスは、不遵守国の政府に対する半自動的な厳しい制裁に裏づけられた、債務・歳出に関するより厳格なルールを提案している。過剰な債務の削減を求める勧告を繰り返し無視してきた国、公式統計を改竄した国については、EU基金を凍結し、議決権を停止すべきである。
次のページ>> 「成長重視の債務削減」こそ欧州の経済ガバナンスの青写真
通貨同盟が意図していたものは、ユーロ圏諸国にとっての万能薬でもなければ、金融投機家が富を得るための仕組みでもない。共通ユーロ債や直接的な財政移転を通じた低コストな政府借り入れにより、富裕国から貧困国への富の再配分を意図したシステムでもない。一部の国が、ユーロの安定性にあぐらをかいて、恒常的に債務を抱え競争力を弱めているようでは、通貨同盟の成功はないだろう。
EMUの狙いは、構造改革の促進にある。
浪費国は、安定成長協定により、また他の加盟国により、歳入に見合った財政運営を行い競争力を高めるよう強制される。だが、ドイツの社民党系前政権は、政治的な思惑によって安定成長協定を弱体化させ、競争力の弱いユーロ圏諸国は、賃金の上昇・公的部門の肥大化を放置し、債務と資産バブルの双方により刺激された安易な信用供与から目を背けていたのである。
欧州では(それ以外のどこの地域であっても)、債務を重ねることで持続可能な成長を育むことはできないし、国家債務危機を予防することもできない。欧州諸国は、経済成長に適したかたちで財政赤字を減らしていく必要があるが、ともかく財政赤字の削減は絶対だ。
不可能ではない。
ドイツは長期的な成長見込みを強化しつつ、持続可能な水準まで債務負担を減らしつつある。成長重視の債務削減というドイツの道は、欧州の財政枠組みの強化に向けた提言と併せて、欧州の経済ガバナンスの青写真となる可能性がある。
(翻訳/エァクレーレン 沢崎冬日)
Conquerintg Europe's Debt Mountain by Wolfgang Schäuble: Project Syndicate, 2010
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