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GDPと生産性の奇跡的な増加か、歳出抑制が無ければ、日本は社会保障給付のみでGDP比4割超という人類史上歴史的に未知の領域に入り、現役世代と企業の負担も歴史的な水準になる
現実には、そのような負担率では、投資が行われない(雇用減、生産性減)ため、
需給ギャップの反転とともに、税収の伸びを上回る高インフレによる名目歳出急増、そして日銀によるコントロールも効かない長期金利上昇により、実質的に財政が破綻することになる
http://diamond.jp/articles/-/10678
【第12回】 2011年1月7日 野口悠紀雄 [早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授]
人口高齢化によって社会保障給付は自動的に増える
日本の国債発行は今後10年程度の間に行き詰まるであろうことを、前回示した。そこでの大前提は、国債発行額が今後も縮小しないことだ。そう考える基本的な理由は、今後人口高齢化に伴って社会保障給付は増大せざるをえないことだ。
その一方で、税負担をそれを上回る率で引き上げるのは、極めて困難である。現実には、税負担の引き上げ率は、社会保障給付の増加率に及ばない可能性のほうが高い。そうであれば、国債発行額は現状よりさらに増加し、したがって財政破綻が前回の推計よりは早く生じることになる。以下では、この点をもう少し詳細に検討してみよう。
社会保障給付費は65歳以上人口数と密接に関連している
最初に、社会保障給付費の推移を【図1】に示す。ここで「社会保障給付費」とは、ILO(国際労働機関)が定めた基準に基づき、社会保障や社会福祉等の社会保障制度を通じて1年間に国民に給付される金銭またはサービスの合計額である。「医療」「年金」「福祉その他」に分類して示されている。
その推移を見ると、1985年度に35.7兆円であった総額は、98年度にはその2倍に増加し、2007年度には2.5倍にまで増加した。08年度では94兆円を超えている。
項目別に見ても、あらゆる項目が増加を続けている。とくに増加が著しいのは年金である。08年度の額は、85年度の3倍近くまで増加している。そ の結果、社会保障給付全体に占める年金の比重も高まった。85年度には47%であったが、89年度に50%を超え、90年代の末からは53%程度になって いる。
ところで、社会保障給付は、人口構造と密接な関係がある。とくに年金は、制度的に65歳以上人口とほぼ比例する関係にある。上述のように現在の社 会保障給付の過半は年金なので、年金制度の抜本的な改革が行われない限り、今後も社会保障給付費が増加することは避けられない。また、医療費や介護費も、 高齢者が増えると増える。
次のページ>>社会保障給付費はどのように賄われているか
65歳以上人口数の推移は、【図2】に示すとおりだ。1990年には1490 万人だったが、2008年には2820万人になり、2倍弱に増加した。他方で社会保障給付費総額を見ると、90年度の47.2兆円から08年度の94兆円 へと、ほぼ2倍に増加した。この間に社会保障制度に大きな改革は行われなかったので、65歳以上人口数とほぼ比例して増加したのは、いわば当然の結果だ。
社会保障給付費と高齢者人口の関係をもう少し詳しく見るために、65歳以上人口一人当たりの社会保障給付の推移を示すと、【図3】のとおりである。
社会保障給付費総額は、90年代の中ごろまでは増加を続けたが、その後は33−35万円程度で、ほぼ一定である(細かく見れば、01年度以降は、 若干の減少が見られる)。このことから、先に見た社会保障給付費の増加は、高齢者の増加によって生じた自動的なものであることが分かる。
費目別に見ると、医療費は90年代半ばまでは増え続けたが、その後は減少傾向にある。08年度では、65歳以上人口一人当たり10万円程度である。
年金は85年ごろには医療費とほぼ同額だったが、その後増加し、08年度では17.5万円程度で、医療費の約1.7倍、福祉その他の3.3倍になっている。詳しく見れば01年度以降低下しているが、医療費ほどの大きな変化ではない。
社会保障給付費はどのように賄われているか
社会保障給付費は、いくつかの財源によって賄われている。各財源の構成比の推移は、【図4】に示すとおりだ。
次のページ>>今後10年間程度が正念場
2000年度以降構成比が変動しているが、これは資産収入の変動による。それを除外してみると、全体の55−60%程度は社会保険料によって賄わ れている。これはさらに、本人負担分と事業主負担分に分かれる。かつては事業主負担分のほうが多かったが、01年度ごろからは、両者はほぼ等しくなってお り、それぞれ全体の3割程度を負担している。
全体のほぼ3分の1が公費負担だ。これはさらに、地方負担と国費に分かれる。国費の構成比は、かつては30%近くあったが、最近では20%程度 だ。国費分(08年度で23兆4670億円)が、国の一般会計予算の「社会保障関係費」に対応している。したがって、毎年度の予算で示される一般会計の社 会保障関係費のほぼ5倍が社会保障給付費と考えてよいわけだ。
2011年度予算における一般会計の社会保障関係費は、28兆7079億円である。したがって、11年度の社会保障給付費は144兆円程度になるものと考えられる。
今後10年間程度が正念場
人口については、将来の姿をかなり正確に予測することができる。したがって、それと密接に関連している社会保障給付の将来の姿も、かなりの程度分かる。そして、財政全体の将来像を考えるには、これが重要な手がかりとなる。
国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計(中位推計)によれば、65歳以上人口数は今後も増加し続ける。【図2】に見るとおり、2020年ごろまでかなりの増加が続くのだ。減少に転じるのは、40年代の中ごろになってからのことである。
これから考えると、今後10年程度の期間は、人口高齢化が財政に引き続き大きな圧力であり続けることが分かる。この期間において人口高齢化にいかに対処するかが、日本の財政にとって極めて重要であるわけだ。
65歳以上人口数は、20年には、10年に比べて、ほぼ22%増加する。そして30年には、ほぼ25%増加する。したがって、社会保障給付費も、 ほぼその程度の率で増加するだろう。したがって、負担もそれに見合って引き上げざるをえないわけだ。上で見た財源別のウエイトを変化させないとすれば、国 税による負担も、同じような率で上昇させることが必要になる。
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