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http://www.bbc.co.uk/news/10162176
2010年12月7日最終更新11:10GMT
EU、緊縮財政が国々に攻勢をかける
新たな緊縮政策の攻勢がヨーロッパを席巻しつつある。いま、各国政府は、膨大な財政赤字の削減に格闘しており、ユーロ経済圏16カ国は、懐疑的な市場の信任を取り戻すために競争している。
EU加盟国の財務大臣は、財政の諸規則を破った参加国は自動的に制裁されるという規則に、合意している。
EUは全加盟国に対し、2014-15年の会計年度までに、財政赤字を最大でGDPの3%に抑えることを要望しているが、各加盟国はどのような引き締め策をとっているのだろうか?
アイルランド
11月21日、政府は金融・財政危機に立ち向かうために、EUと国際通貨基金(IMF)に対し、十億("billion"です:投稿者注)ユーロ単位の救済資金を求めた。その総額は850億ユーロ(720億ポンド、1140億ドル)[9兆2310億円]相当になると予測されている。
ユーロ圏内でこのような救済措置が実施されるのは、ギリシャのために準備された救済措置についで、この6カ月で2度目だ。さらに、イギリスとスウェーデンは、アイルランド経済の底上げのために二国間借款の供与を申し出ている。
アイルランド政府はかなり躊躇したが、この申し出を受けることにした。負債に苦しむ同国の銀行が、金融市場からの借り入れに苦闘しているからだ。国はすでに大手銀行の株式を大量に買い入れ、預金の保護を約束している。
政府は9月に、負債を抱えた国内の銀行を救済するためのコストは450億ユーロ[4兆8900億円]に上昇し、政府の財政に巨大な穴を開けたと発表した。
このコストの上昇により、政府は本年GDPの32%に相当する財政赤字に追い込まれることが見込まれている。政府はこれを2015年までに2.9%まで縮小させる考えだ。
政府は2011年に財政赤字を60億ユーロ[6520億円]削減すると発表した。アイルランド史上最も過酷な予算だ。その厳しい詳細は12月7日に発表される。
政府はすでに、2014年までに150億ユーロ[1兆3000億円]の経費節減を発表している。しかし、その後政府は、その40%を2011年に前倒しして実施することを決定した。10年物国債の金利が上昇し、国の債務返済能力について投資家がより懐疑的になったため、信用を失わないようにしたいのだ。
政府支出は、40億ユーロ[4340億円]削減された。全ての公務員給与が最小5%削減され、社会福祉も切り詰められた。
2万4750人の公務員削減などの、より厳しい緊縮財政措置が11月24日に発表された。
政府はまた、次のことを計画している。280億ユーロ[3兆4000億円]の社会福祉費節減。所得税増税による190億ユーロの歳入増。最低賃金を1ユーロ[109円]引き下げ、時給7.65ユーロ[831円]とする。付加価値税(VAT)を現在の21%から、2013年には22%、2014年には24%に上昇させる。
児童手当は月16ユーロ[1740円]削減され、ひと月の支給額が最小150ユーロ[1万6100円]、最大187ユーロ[2万300円]となった。
炭素税が導入され、二酸化炭素1トン当たり15ユーロ[1630円]と設定された。
イギリス
保守−自民連立政権は、第二次大戦以降最大の国家財政削減を発表した。
今後4年間で、約830億ポンド(950億ユーロ、1310億ドル)[10兆5000億円]の経費節減を行うことが確実視されている。
ジョージ・オズボーン大蔵大臣は、今後4年間に、国から「お金がなくなった」ために、公共部門で49万人の雇用が削減される見込みだと、国会で答弁した。専門家の予測では、民間部門でもほぼ同じ数の雇用が失われる。
ホワイトホール(ロンドンの官庁街:投稿者注)の官庁の大部分は、平均19%の予算が削減され、防衛予算も8%削減される。定年は2020年までに、65歳から66歳に引き上げられる。
就労不能者給付金の一部は期限付きのものに改められ、他の給付金も税額控除や住宅給付金といった形で回収される。銀行に対する新たな課税制度も導入される。
削減提案の発表を前に、産業界に不安が広がることはなかったが、UNISON(公務員を中心とした、イギリス最大の労働組合:投稿者注)のデイヴ・プレンティス書記長は、イデオロギー的な理由で公共サービスに「チェーンソーを持ち込んだ」として、政府を非難した。野党労働党は、政府の「削って燃やす」政策を非難している。
このような緊縮財政の攻勢にもかかわらず、イギリスはアイルランドに対し、70億ポンド[8860億円]の借款を計画している。政府は、アイルランドはイギリス経済にとって非常に重要なので、苦境に置いたままにはできないと主張している。
フランス
フランスは、財政支出削減目標を達成するため、今後3年間に450億ユーロ(390億ポンド)[4兆8900億円]の支出を削減する計画を発表した。
この金額の一部は、税の抜け穴をふさぎ、現行の経済刺激策を中止することで節減される見通しだ。
定年を60歳から62歳に引き上げ、国家年金の完全受給年齢を65歳から67歳に引き上げるというニコラ・サルコジ大統領の計画は、大規模な抗議デモとストライキを引き起こした。
デモでは、100万人以上の人々が路上に出ることが常態化した。デモ行進はおおむね穏やかだが、デモ隊が封鎖したガソリンスタンドを再開するために、機動隊が動員された。
政府はこの計画を押し通し、国会はすでに、これに盛り込まれた諸措置を承認している。
追加的な緊縮措置として、最高所得階層にも、所得税の1%追加が求められる。
ギリシャ
ギリシャ政府は、EUと国際通貨基金から1100億ユーロ(950億ポンド)[11兆9000億円]の救済資金を得る見返りに、抜本的な支出削減と税収増加を行い、経済危機を収束させることを約束している。
政府はすでに救済資金を引き出しつつある。国債の格付けが急落し、借入コストが急上昇したからだ。
ギリシャは資金の一部である200億ユーロ[2兆1700億円]を5月に、さらに、90億ユーロ[9770億円]を9月に受け取った。
次の90億ユーロ[9770億円]も支払われるだろうと、融資者たちは語る。2010年の赤字削減目標として予想された1.5%は達成できなかったが、ギリシャは確実な進歩をしていると、彼らは考えている。
政府の目標は、GDPの13.6%となっている財政赤字の削減だ。
国は、脱税や税務署・税関内部の汚職に対する取り締まりを強化しはじめている。広く普及している早期退職の諸制度にも制限を加える予定だ。退職年齢の平均は61.4歳から63.5歳に引き上げられることになっている。
この3年間で予算を300億ユーロ(260億ポンド、370億ドル)[3兆2000億円]削減する計画に基づき、ギリシャは次の目標を設定している。公務員へのボーナス支給の停止。最小3年間の、公務員給与と年金支給額の凍結。付加価値税(VAT)の19%から23%への引き上げ。燃料・酒類・タバコ税率の10%引き上げ。
この厳しい措置が引き金となり、アテネの路上で公務員たちがストライキと暴力行為を行った。次の大規模デモは12月15日に予定されている。
オランダ
数カ月の交渉の末に成立した中道右派連立政権は、10月8日、180億ユーロ(240億ドル、150億ポンド)[1兆9500億円]の予算削減を2015年までにしたいと語った。
しかし、新政権は法案を成立させるために、急進的な自由党に頼らなければならず、長期的に見た実現の可能性は疑わしい。
スペイン
スペイン政府は、富裕層に対する増税と8%の支出削減を盛り込んだ、2011年度の緊縮予算を承認した。
政府は、他の欧州諸国に、昨年はGDPの11.1%だった財政赤字を、来年は6%に削減することを約束している。
政府職員の賃金は、6月より5%カットされており、2011年の給与も凍結される。
たばこ税が28%増え、また、スペイン政府は国有宝くじ会社株式の30%と、国内の空港を運営する公共企業体の少数持ち株を売却する計画だ。
12万ユーロ[1300万円]を超える個人所得に対して、1%の増税が適用される予定だ。
「ベビー・チェック」として知られる、新生児の母親への2500ユーロ[27万2千円]の現金支給の中止など、いくつかの少額支出も節減される。
失業は、2007年から2倍以上に増加し、約20%となった。
ルーマニア
政府は、国の財政赤字を削減するため、7月に、賃金の25%カットと年金の15%カットを提案した。
ルーマニア経済は2009年に7%以上収縮しており、この賃金法案の財源手当てのために、IMFによる救済が必要だった。
政府によれば、200億ユーロ[2兆1700億円]のIMF融資の次回借り入れ分を承認してもらうために、新たな緊縮措置の実施が必要だ。
削減案に反応して怒りの抗議行動が発生した。また、25%の賃金カットに反対して数千人の警察官がデモを行ったため、バジル・ブラガ内務大臣が辞任した。
イタリア
イタリア政府は、2011-12年の2カ年で、240億ユーロ[2兆6100億円]相当の緊縮財政措置を承認した。この削減額は、イタリアのGDPの1.6%に相当する。
イタリアは、公務員給与の削減と新規採用の凍結を目標にする。公務員年金と地方政府支出も対象とされ、脱税の取り締まり強化も計画されている。
市や地方自治体への交付金は、130億ユーロ[1兆4100億円]以上削減される見込みだ。
今後3年間、公務員の昇給が停止される。公務員の採用も削減され、5名の退職者に対して1名しか補充されなくなる。
閣僚や国家議員といった高所得の公務員に対しては、10%を上限として、段階的に給与が削減される計画だ。
2011年に定年を迎える人は、6カ月を限度に退職日が延長される。
人口が22万人に満たない県は廃止される。いくつかの公共機関出資のシンクタンクも廃止される。
ドイツ
ドイツ政府は、2014年までに、GDPの3%に当たる800億ユーロ[8兆6900億円]を削減する、過去最大の財政赤字削減計画を提案している。
2009年赤字総額のGNP比は3.1%だったが、今年は5%以上に上昇する見通しだ。
「ドイツは、良い手本を示す格好の機会を得た」と、アンゲラ・メルケル首相は語った。
その計画には、児童手当のカット、今後4年間で1万人の公務員削減、原子力発電への増税が含まれる。バロック様式のベルリン王宮を、市の中心地に再建することも延期される。
ポルトガル
ポルトガルは、アイルランドやギリシャと同様に、ユーロ圏内で最も財政が脆弱な国の一つであるとの認識を投資家たちが見せるにつれ、同国の借入コストも上昇した。
ジョゼ・ソクラテス社会党政権は、財政赤字を今年は7.3%、2011年には4.6%に削減するための、さまざまな緊縮財政措置を発表している。
11月24日にゼネストが実施され、空運やゴミ収集などの公共サービスが麻痺した。主要な労働組合が合同してこのような抗議行動を行ったのは22年ぶりだ。
緊縮財政の攻勢により、政治家など最高所得の公務員は、給与の5%が削減される予定だ。
付加価値税は1%増税され、15万ユーロ[1630万円]以上の高額所得者の所得税率が引き上げられる。2013年までに、税率は45%となる予定だ。
2013年までに軍事支出は40%削減され、政府はリスボン−ポルト線、ポルト−ビーゴ線の、2路線の高速鉄道の開通を遅らせる。
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(投稿者より)
昨年10月に投稿させていただいた、BBCが欧州各国の緊縮財政事情をまとめた記事が昨年12月に更新されましたので、それを日本語に直したものを改めて投稿いたします。誤訳があるかもしれません。ご容赦下さい。
更新前の記事は下記のリンクのものです。
http://www.asyura2.com/10/hasan69/msg/872.html
為替レートは、1ユーロ=108.60円、1ポンド=126.62円で計算し、上から4桁目を四捨五入しています。
昨年12月に発表された記事なので、年についての記述は適宜読み替えてください。なお、本年1月1日より、エストニアがユーロ圏に加入しましたので、ユーロ圏は17カ国になっています。エストニアは、旧ソ連構成国で初のユーロ圏入りです。
更新前の記事を投稿したとき(10月24日)、フランスの大規模デモの真っ最中でしたが、この記事で言及されているように、それ以降も緊縮財政に反対する動きは各国で起きています。
スペインでは、最低賃金を1.3%引き上げ、が、年末の30日に発表されています。ザパテロ首相は記者会見で、スペイン経済は危機にあるが、政府は「国民の結束のために特別な努力」をすると表明しています。スペインの失業率は現在約20%で、OECDの見通しでは、2011年は19.1%、2012年は17.4%とのことです。
(Spain minimum wage to rise, says Zapatero: BBC NEWS BUSINESS)
http://www.bbc.co.uk/news/business-12092577
やはり、「2009年マニフェスト」に立ち返る政策を望みたいです。
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