★阿修羅♪ > 経世済民70 > 500.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
強い経済と社会保障をどう両立? スウェーデンの「改革」
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/500.html
投稿者 tea 日時 2010 年 12 月 30 日 22:04:22: 1W1IXELjjF6i2
 


強い経済と社会保障をどう両立するのか−スウェーデンの「改革」に学ぶ−
北欧と日本は経済規模や国民性、地政学的な環境など、多くの違いがあるので、簡単に社会保障システムを移植できるものではないが、それでも学ぶ点は多いようだ

特に
「スウェーデンが1990 年代に成功した秘密は、産業構造を大きく変えたから」
「産業構造の転換をするためには、国民に安心して冒険させなくてはいけない。そのためには、今までのような社会保障、つまり安全のネットだけではなく、活動保障をも含める必要がある。」
「生活保障だけではなく、activation、先ほどのソーシャルブリッジ、日本語で言うと「社会の架け橋」、それに通じることを「強い社会保障」」
「つまり安心して新しい産業構造に変えていくために、チャレンジさせなくてはいけない。そういう新しい産業構造にチャレンジするためには、強い保障が必要なのだけれども、そのためには、強い財政が必要だ」
というのは示唆的だ

転載
http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/other/pdf/5295.pdf
1
日本総研主催シンポジウム

後援/スウェーデン大使館

講演「スウェーデン・モデルを考える」
神野 直彦氏(東京大学名誉教授、政府税調専門家委員会委員長)
1.オムソーリとラーゴム―個人尊重主義と連帯主義のバランス
このような席にお招きをいただきましたことに、まず御礼を申し上げます。ヌーデルさんの教えを受け
る機会を得たことに深く感謝しますが、先ほど大使から過分なお言葉をいただきました。私はスウェーデ
ンの研究者のエキスパートではなく、全くの素人です。素人なのですが、ただスウェーデンが好きだとい
うだけの話です。
私はドイツの財政学を学んでおりまして、ドイツの財政学という観点から、スウェーデン・モデルを考え
てみたいと存じます。スウェーデン・モデルを解説するようにというお話だったので、ドイツ財政学の観点
からそうした話を最初にさせていただきます。
お手元にあるレジュメに、冒頭に「『スウェーデン・モデル』を考える」とあるレジュメを見ていただけれ
ばと思います。
私は、最近『「分かち合い」の経済学』という本を書いて、この中で今の歴史の大きな変換期を越える
ための重要なキーワードは、スウェーデン語で言っている「オムソーリ(omsorg)」と「ラーゴム(lagom)」で
あると。「オムソーリ」というのは、社会サービスという意味で、同時に「悲しみの分かち合い」がもともとの
意味だと聞いています。もう一つ「ラーゴム」は、日本で言うと「中庸の徳」と言った方がいいかもしれませ
ん。つまり、個人主義の尊重と連帯主義をうまくバランスさせていくことが鍵になるだろう。これは財政学
の立場から言いますと、私の財政学の講座の前の担当者である大内兵衛先生が言われた有名な言葉、
「人間は自立すれば自立するほど連帯する」という言葉を意味しています。こうした自立と連帯のバラン
スが、スウェーデン・モデルの基本にあると考えます。
2.「希望の島」としてのフォルクヘメット
スウェーデン・モデルはいつできたのか。私の考えでは、1932 年にハンソン首相が掲げた「フォルクヘ
メット(Folkhemmet)」、「国民の家」のヴィジョンです。1929 年の世界恐慌があった後、社会民主労働党
が初めて単独で政権に就きます。そのときに国民に対してハンソンは「国民の家」というヴィジョンを出し
ます。「国家は家族のように組織化されなければならない。家族の構成員はどんな傷害を負っていようと
も、家族のために献身しようと思っている」。誰もが国民のために貢献したいと思っている切なる願いを
残酷にも打ち砕く、それが失業なのだという考え方に立っていると理解しています。
しかも、こうした政権ができ上がる背後にあるのは、1931 年に起きた「オーダレンの血の代償」です。
先ほどのヌーデルさんの議論では、スウェーデン・モデルの重要な特色は、強い労働組合ということにあ
2
り、それは連帯の組織化を示していると思います。これは、日本とは全く違うということです。スウェーデン
の労働組合の組織率は98%にも達するのに、日本では20%を切り、影響力が全く異なっています。日
本の労働組合は、血の代償を払っていない。「オーダレン」というのは、町の名前です。
同時に、「ロンドン・エコノミスト」は、この1932 年から取った政策に対して、「世界恐慌という絶望の海
に浮かぶスウェーデンは希望の島である」とたたえました。私はそのために、『「希望の島」への改革』と
いう本を書いたことがありますが、実は1929 年の世界恐慌から脱出する過程が、ほかの先進国と違って
いた国が2 カ国あります。
一つはスウェーデンですが、もう一つはスイスです。どこが違うのか。ほかの国々は戦争の準備と戦争
によって、1929 年の世界恐慌から脱出したのです。この2 カ国だけ違った。これがあとのスウェーデン・
モデルに決定的な影響を与えると考えています。それは、中央集権的ではないのです。総力戦を戦お
うとすると、どうしても中央集権的に経済動員をせざるを得ない。そこが完全に履歴効果として違ってい
ます。つまり、スウェーデン・モデルの第二の特色は、分権的組織にあります。
3.19 世紀後の大不況における三大国民運動、協働組合運動、国民教育運動
さて、実はその前からスウェーデンは、このスウェーデン・モデルの原型を作る努力をしています。新し
い時代は、必ず危機のときに生まれます。危機の乗り越え方で、次の社会ができ上がるということです。
1929 年の世界恐慌の前には、19 世紀末の1873 年、ウィーン株式市場が暴落して以来、26 年間にわ
たって、世界的に物価が下がり続けるという、Great Depression が起きました。先ほどのヌーデルさんの
お話では、そのときにはスウェーデンは大変貧しい国家になってしまった。私の記憶が正しければ、スウ
ェーデン国民の3 分の1 が、貧しさに耐え兼ねてアメリカへ移民をしてしまいます。そのときに、スウェー
デン国民は、国民運動を起こしてくるのです。労働組合運動もそうですし、生活協同組合、さらに重要な
のは、日本人はできないだろうと思いますが、禁酒運動、それから教会運動、そして教育運動です。み
んなで勉強し合おうということは、現在でも生きています。学習サークル、それから国民大学、国民高等
学校という制度を、働く者たちが働いた後、勉強するために作り上げていく。この時点で、世界で義務教
育の非常に進んでいた国というのは、スウェーデンと日本です。
その後が違います。高等学校の教育、つまり後期中等教育ですが、高等学校の進学率を上げていく
ことは、日本は上から政府がやりますが、スウェーデンは、先ほども言いましたように、下からの運動で引
き上げていった。この極貧の中から、スウェーデンはノーベル賞を作っていくということです。信じられな
いことです。こうした下からの運動ということを三番目にスウェーデン・モデルの特色として指摘したいと
思います。
4.総力戦の体験なき「黄金の30 年」
そして、第2 次世界大戦後に、世界の国々は経済発展をしはじめますが、ここでは第2 次世界大戦と
いう総力戦をどうやって戦ったのかというのが決定的になります。国内的には経済統制、そしてあの第2
次世界大戦の悲劇を起こさないために、世界的に自由に多角的な貿易構造を作ろうとして、ブレトン・ウ
ッズ体制を作るわけです。しかし、中央集権的な所得再分配を国内ではやりながら、資本が自由に動く
3
ことは統制して、固定為替相場制度ででき上がっていた通貨制度が、つまり世界的な自由貿易と国内
における所得再分配国家を両立させるための制度が、ブレトン・ウッズ体制だと申し上げていいかと思い
ます。
フランスの経済学者の言葉で、第2 次世界大戦後を「黄金の30 年」と言っていますが、スウェーデン・
モデルの「黄金の30 年」は、他の国と違って、総力戦の体験なき「黄金の30 年」だった。この履歴効果
が、この次にお話ししますが、中央集権的ではなくて、地方分権的に、国民の下からの運動によって作
り上げていく、お金をただ単に配ることではない社会保障制度ができ上がった要因なのではないかと思
っています。
先ほどの「強い経済」「強い社会保障」「強い財政」は、ほかの人も言っているのかもしれませんが、私
が作った言葉です。今日ご出席いただいた峰崎副大臣と一緒に、菅総理の前で説明していますが、私
が説明したのは、「強い財政」と「強い社会保障」というのは、1997 年だったと思いますが、私が著書をま
とめる時に、スウェーデンの予算書を調べると、「強い財政」と「強い社会保障」という言葉が出てきたの
です。「強い経済」は出てきません。出てこないのですが、私はスウェーデンが1990 年代に成功した秘
密は、産業構造を大きく変えたからで、「強い経済」とは産業構造の転換を意味しています。
産業構造の転換をするためには、国民に安心して冒険させなくてはいけない。そのためには、今まで
のような社会保障、つまり安全のネットだけではなく、活動保障をも含める必要がある。生活保障だけで
はなく、activation、先ほどのソーシャルブリッジ、日本語で言うと「社会の架け橋」、それに通じることを
「強い社会保障」と呼んでいます。つまり安心して新しい産業構造に変えていくために、チャレンジさせ
なくてはいけない。そういう新しい産業構造にチャレンジするためには、強い保障が必要なのだけれども、
そのためには、強い財政が必要だという論理になっているというのが私の主張です。ですから、「強い経
済」と言ったときに、量的な「強い経済」を意味していません。
日本は、皆さんもご存じのとおり、1902 年から1980 年まで、「いざなぎ越え」、日本の歴史が始まって
以来、空前の、大田大臣が責任者でいらっしゃったときもあるので、大田大臣に怒られるかもしれません
が、空前の経済成長の持続をするのだけれども、結局は賃金の減少と格差と貧困をあふれ出させただ
けだった。そういう経済成長は必要はないということを主張していますので、今言ったような論理で、私の
場合には使っているということを、最初にお断りして、あとでおいおいご説明したいと思っています。
以 上


http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/125134/

* 講演録 ペール ヌーデル氏(元スウェーデン財務大臣):強い経済と社会保障をどう両立す...−10-12-30
* スウェーデン・モデルを考える:神野 直彦氏(東京大学名誉教授、政府税調専門家委員会委...−10-12-30
* スウェーデンの環境に対する市民意識と環境関連政策(2010年12月)−10-12-29
* 北欧リッチの謎−10-12-21
* エストニアのユーロ導入までカウントダウン 〜導入目前に早くも収斂基準を満たさなくなる...−10-12-15
* 【スウェーデン】スウェーデンの外国人政策と立法動向−10-12-15
* スウェーデン:科学技術・イノベーション政策動向報告−10-12-09
* フィンランドの地方自治体とサービスの構造改革−10-12-02
* 環境ビジネス、ストックホルムの挑戦(2010年11月)−10-11-25
* スウェーデン経済と制度〜Mighty Triangleを実現した国家【2010年11...−10-11-17


 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2010年12月31日 00:26:25: PIvCcYcOwA
スウェーデンに限らず、どこの国でも(EU諸国でもアメリカでも)公務員の人件費単価は働いている人の平均値とかけ離れてはいない。国民の平均が年収300万ならせいぜい400万までくらいか。500万を超す国はない。日本は退職金も年金も恵まれており実質で1000万に迫る。

消費税率とか、法人税率の国際比較をよくやるようだが、この人件費比較が新聞に載ることはない。都合のいいところだけとって比較しないこと。


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

このページに返信するときは、このボタンを押してください。投稿フォームが開きます。

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民70掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民70掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧