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http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201012260430.html
中国13億人の胃袋狙え パン・お茶…日本式食習慣提案2010年12月27日0時38分
.敷島製パンが、中国の既存合弁工場で生産したパン。「パスコ」ブランドでファミリーマートに置くと、パンの売り上げが倍増したという=中国・上海
「中国13億人の胃袋を狙え」とばかりに、日本のパン、飲料メーカーなどが中国での事業拡大に走り回っています。仕掛け人は伊藤忠商事。現地の大手食品グループと結んだ提携を、進出する日本企業に「発射台」として使ってもらい、同時に自らの食料事業も広げる戦略です。この分野では他の商社を引き離しています。
■伊藤忠が進出地ならし
敷島などと頂新との提携を橋渡ししたのが、伊藤忠商事だ。このほかにも伊藤忠の仲介で、ファミリーマートやカゴメ、日本製粉などが頂新と組み、中国進出を果たした。
パンだけでなく、日本の食品市場は人口減や少子高齢化で今後も縮み続ける。メーカーが中国市場の攻略に躍起なのも、巨大な中国内需を取り込み、次なる成長を狙いたいためだ。
国内需要の縮小でダメージを受けるのは商社も同じ。伊藤忠は総合商社のなかでも早くから中国市場に目を付けた。02年に頂新と包括提携し、09年には頂新株の20%を約700億円で取得する大規模投資に踏み切った。
頂新グループは台湾系の民間企業で、中国の即席麺最大手「康師傅」など約140社を傘下に持つ。年間売上高は約5千億円。中国全土に物流網を張り巡らせ、地場の小売業者との関係も深い。
頂新は、省ごとに異なる規制や小売りの商習慣の違い、日本人との味覚の違いなどで、進出する日本企業に助言、支援する。逆に伊藤忠は、日本企業が持つ製品開発や品質管理といったノウハウを、頂新側に紹介する。
進出企業のある幹部は、「信頼できる相手でもトラブルはありえる。間に入ってくれる伊藤忠のような存在は大きい。一種の保険」と語る。
「保険」といわれるほど信頼される背景には、伊藤忠と頂新の人的つながりがある。
頂新の魏応州会長は台湾生まれで、兄弟は4人。80年代に中国に移住し、「即席麺王」と呼ばれるほどの成功をおさめた。00年にファミリーマートの合弁相手に名乗りを上げ、魏会長と伊藤忠首脳との家族ぐるみの交流が始まる。
魏会長は、伊藤忠を「5人目の兄弟」と呼ぶ。ここまでがっちりと中国側と組む関係を作り上げた日本の商社は、まだ少ない。
伊藤忠で食料部門を担当する青木芳久専務は「今後も年に数社のペースで頂新との橋渡しをして、日本企業の中国進出を後押ししたい」。食料部門の15年度の純利益は、09年度の1.4倍の400億円を計画。増加分の多くを中国で稼ぎ出す青写真を描く。
■人的つながりが強み
上海市の郊外、約3万平方メートルもの敷地で今、来年6月の稼働を目指し、パン工場の建設が急ピッチで進んでいる。敷島製パンと中国の食品大手、頂新グループ傘下の味全との合弁工場だ。
敷島はインドネシアなどに工場を持つが、海外で工場を建てる際には通常、生産ラインは「一つ」から始めている。今回は約30億円を投じ、食パン、菓子パンなど五つのフルラインを一気に設ける。
敷島の盛田兼由専務はいう。「高度成長による生活様式の変化でパンの需要が増えた日本のように、中国にはもっと伸びる余地がある」
農林水産省によると、2009年の国内向けパン生産量は117万トンと、この10年で約8%減った。中国は09年で約300万トンで、日本の3倍余りの市場規模だ。中国はまだ1人当たりパン消費量が少ない。市場拡大の可能性を確信してのフルライン建設だ。
中国らしい課題もある。
中国の電器店ではトースターを置いていない所が多い。人々が固定電話を経ずに携帯電話を持ち始めたように、トースターを飛び越して電子レンジに。つまり、食パンを焼いて食べる習慣が根付いていないのだ。盛田専務は「パンの食べ方を提案して、中国の人たちの食習慣を変えていきたい」と話す。
中国には確固たるパンの全国ブランドがない。敷島は日本で展開するブランドと合弁相手を組みあわせた「味全パスコ」ブランドで、商品は「超熟」を中心に攻め込む。
アサヒビールも中国市場の開拓を急ぐ。11月、頂新グループに約430億円を出資した。
アサヒは04年に、頂新と清涼飲料の合弁企業を設立。技術者を派遣し、品質指導などにあたっている。頂新側は積極的な設備投資で工場を次々に新設。茶系飲料やミネラルウオーターの販売シェアで、中国トップに躍り出た。中国事業はアサヒの業績に大きく貢献している。09年度の連結純利益476億円のうち、中国事業での利益は約80億円で、2割近くを占める。(神谷毅、本田靖明)
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