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歴史的使命を終えた「事業仕分け」 「悲惨な弱者」と「巨大な格差」を忘れてはいないか
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/464.html
投稿者 tea 日時 2010 年 12 月 28 日 14:55:16: 1W1IXELjjF6i2
 

民主党による政治主導と事業仕分けの限界が明確になれば
次は官僚主導の増税という流れになるわけか(苦笑)

転載
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101226/217740/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>企業・経営>ニュースを斬る
「悲惨な弱者」と「巨大な格差」を忘れてはいないか
来年度予算案から見えてくる本当に考えるべき課題

* 2010年12月28日 火曜日
* 小峰 隆夫

平成23年度予算案  政治  世代会計  埋蔵金  機会の不平等   基礎的財政収支  プライマリーバランス  年金積立金  社会保障費  格差 

 12月25日、平成23年度予算案が閣議決定された。本稿では、この予算案をどう評価するかについての私の考えを述べ、その中からどのような長期的な課題が浮かび上がってくるかを考えてみたい。

 私の見るところ、今回の予算には二つの大きな課題があった。一つは、限られた財源の中から、成長と雇用につながるような政策を進めていくことであり、もう一つは、財政再建を進めることによって、将来世代への負担の先送りを避けるための道筋をつけていくことであった。

成長と雇用は生まれるのか

 まず、成長と雇用のための政策の実現のための選択と集中は十分に行われただろうか。この点については、「選択と集中を進めるための財源配分の枠組みをどう評価するか」という問題と、「政策の中身をどう評価するか」という問題がある。

 枠組みから始めよう。成長と雇用のための予算配分の仕掛けとして考えられたのが「元気な日本特別枠」である。これは各省が当初予算の1割を供出して財源とし、各省は別途この枠に対して新規施策のための予算要求を行うというものだ。

 この枠組み自体は適切なものだったと評価できる。縦割りの予算配分を打破するための工夫となっているからだ。というのは、元気な日本にするための予算は省の垣根を越えて配分に濃淡をつける必要がある。しかし、要求の段階で特定の部局に手厚い要求を認めるのは難しい(「なぜ特定の部署だけに手厚い要求を認めるのか」という文句が出るから)。しかし、この枠組みの中で省にこだわらずに要求を査定していけば、結果的に省ごとに濃淡をつけた予算が実現することになる。

 もちろん、本来は政治主導で最初から省の壁にこだわらずに必要な予算を付けていくことが理想であり、それができるのであれば、こうした枠組みは必要ない。つまりこの枠組みは「縦割りではなく」かといって「純粋の政治主導でもない」という妥協の産物だということになる。

 しかし今回の査定結果を見ると、その狙いが十分に実現しているとは言えない。なぜなら、在日米軍駐留経費負担などの、どう考えても日本を元気にするための特別の政策だとは言えないようなものが含まれているからだ。これは明らかに防衛省の作戦勝ちである。つまり、防衛省には、日本を元気にするような予算要求のタマはない。すると、単に予算を1割カットされるだけに終わってしまう。そこで「これは削られないはずだ」というタマを特別枠の要求として出してきたわけだ。いかに趣旨に反するとはいえ、政権としては在日米軍の駐留経費を削ることはできない。こうして防衛省はまんまと予算のカットを免れたわけだ。

 しかし本来の筋から言えば、在日米軍の駐留経費は、経常的な予算として計上すべきものだ。これが特別枠を「食べてしまった」ので、本来の趣旨に沿った他の経費がその分削られたことになる。こうした抜け道を防ぐような制度設計の見直しが必要である。

 中身はどうか。残念ながら成長と雇用を生み出す力が大きいとはいえない。その理由の一つは、マニフェスト実現のための経費が相当含まれていることだ。

 特別枠で認められたものの中には、戸別所得補償の畑作交付金、高速道路無料化の社会実験経費などが含まれている。戸別所得補償は、規模の拡大を阻害するから農業の競争力の強化にはつながらない可能性が高い。また、最低賃金を下回る賃金しか払えない中小企業を支援する予算なども入っているが、税金で最低賃金を補てんしていたら、いつまでたっても競争力のある企業は出てこないだろう。残る成長政策は、研究開発、首都圏空港の整備、若年層の雇用対策などだが、他のあまり役に立たない分野にかなり枠を取られてしまっているので、とても十分な成長と雇用が実現するとは思われない。

歴史的使命を終えた「事業仕分け」

 次に財政再建について考えよう。政府は2010年6月に「財政運営戦略」を閣議決定している。この戦略では国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を、2020年度までに黒字化するという目標を掲げた。この目標達成のため、平成23年度については、政策経費、国債の新規発行額を前年度以下にすることとしていた。今回決定した予算案はこの目標をクリアしているから、まずは合格ということになる。しかしこれについても、「枠組みの問題」と「中身の問題」がある。

 枠組みについてはいわゆる「事業仕分け」があった。これは国会議員、民間の有識者が公開の場で予算の中身を議論し、その場で「廃止」「縮減」などの判定を出していくものだ。2009年はこれが大変な評判になり、多くの人に支持された。しかし、この仕組みはもはや限界であり、歴史的使命を終えたと言えるだろう。それは次のような理由による。

 第1は、今回は民主党が決めた予算を仕分けていることだ。2009年の仕分けは、従来の自民党政権時代の予算の中身を洗い出すという意義があった。しかし、今回仕分けているのは、当の民主党が決めた予算である。自分が決めた予算を自分で仕分けているわけだ。予算を決めてから仕分けるのであれば、最初から仕分けた予算を出せばいいではないか。

 第2は、2009年の仕分けは閣議決定前の段階の仕分けだったが、今回は閣議決定後だということだ。日本の制度では、閣議が政府の最終意思決定機関である。閣議で決まったことは全閣僚が合意した重みのあるものだ。それを閣議の構成員でない仕分け人が判定し直すというのはどういうことだろうか。これでは、仕分けのプロセスが閣議より上位となってしまうではないか。

 第3は、仕分けの効果そのものが小さいことが分かってきたことだ。もともと2009年夏の民主党のマニフェストでは、既存予算の無駄をなくすことによってマニフェスト実行のための財源は出てくることになっていた。その無駄を洗い出す作業が事業仕分けだったわけである。

 しかし、やってみるとそれ程の財源は捻出できなかった。要するに、無駄の削減ではそれほどの財源にはならないことが分かってきたのである。

 このことは、実効ある財政再建を目指すのであれば、無駄の削減では全く足りず、かなりの国民負担を求める必要があることを示している。これは、国民の意識を変えるという観点からも重要なことだ。いつまでも「無駄をなくす」と言っていると、国民は「そうか、自分の懐を痛めないでも、無駄をなくせばいいんだ」と思い続けてしまうだろう。

財政再建の道筋は付いたのか

 では、財政再建という見地から、今回の予算の内容はどう評価されるか。ここでは問題点として、歳入については、相変わらず税外収入(いわゆる「埋蔵金」)頼みになっていること、そして歳出については相変わらずマニフェストへのこだわりが続いていることを指摘したい。

 まず、埋蔵金についてだが、今回の予算案では、独立行政法人や特別会計の剰余金を中心に約7兆円の税外収入が計上された。この埋蔵金で歳入を穴埋めするというやり方には、次のような問題がある。

 第1に、埋蔵金を取り崩すことは、要するに国民の資産を取り崩すことになるので、その分国の資産が減る(純負債が増える)。それを国債で賄ったとすると、同じだけ債務が増える(純債務が増える)という点で全く同じである。将来世代の負担になるという点でも同じである。多分、国民の多くは、国債を増発すると「将来世代への負担を増やしている」と実感するのだろうが、埋蔵金の取り崩しについては将来世代への負担を増やしているという意識を持ちにくいのではないか。だとすると、国債を出した方がまだましということになる。

 第2に、埋蔵金は一回取り崩すと終わりだから安定財源にはならない。使えば使うほど、同じ手は使えないという状況になっていく。全くのジリ貧と言うしかない。

 この点に関連して、今回の予算編成過程で私がひどく驚いたのは、基礎年金の国庫負担の財源として年金積立金を取り崩すという案が出てきたことだ。これは一般にほとんど知られていなかったようなので、解説しておこう。

 基礎年金については、平成21年度から国庫負担の割合がそれまでの36.5%から50%に引き上げられた。これについては消費税などの安定財源を確保すべきだったのだが、それが出来なかったため、これまでは埋蔵金の取り崩しでしのいできた。

 ところが今回の予算でいよいよ困った財務省は、「国庫負担率を36.5%に戻す」という案を出してきた。そうなると、年金基金特別会計は資金繰りがつかなくなるので、必然的に年金積立金を取り崩すことになる。これは結果的に、年金のための積立金を埋蔵金として使うということを意味する。

 年金の積立金は現在約120兆円もの規模に達しているが、これは将来の年金の支払いのために長期的・計画的に使うことになっている。これを埋蔵金として取り崩すという案を聞いた時は、私は「そこまでやるか」と暗然とした気持ちになったものだ。幸い、この財源としては別の埋蔵金を使うことになったので、結局、年金積立金は無傷で済んだ。しかし、安定財源が存在しない以上は、来年度も同じ議論が繰り返されることが懸念される。
一刻も早く新しいマニフェストを策定すべき

 次に、歳出とマニフェストとの関係を考えよう。私は、民主党政権が発足した当初の段階から、民主党のマニフェストは財政面から過大な約束となっており、無理にこれを実現しようとすると将来に禍根を残すと主張し続けてきた。現時点ではさらに強くそう思う。平成21年度予算で、早くも財源難が露呈したが、それでも子ども手当の支給、高校授業料の無償化などが行われた。その結果財政の姿は、埋蔵金と巨額の国債頼みの無残な姿になってしまった。

 しかし今回の予算でも、マニフェストへのこだわりは健在で、子ども手当の増額、戸別所得補償の拡大などが行われている。多くの国民は、民主党のマニフェストが破綻していることにとっくに気が付いているのだから、これ以上マニフェストにこだわるのは止めるべきだろう。マニフェストへのこだわりは、今後、税制改正、年金改革などで必要となる野党との協力関係の構築を難しくするだろう。国政を担った経験や最近の経済社会情勢の変化を踏まえて、一刻も早く新マニフェストを策定すべきではないか。

将来世代の負担はなんと1億946万円

 こうした予算の姿を見ていて改めて感じるのは、我々は最も大切なことを忘れているのではないかということだ。それは、現世代と将来世代との格差を是正することだ。

 これに関して最初に衝撃的な計算を紹介しておこう。これは、秋田大学の島澤諭氏の世代会計の計算である(簡単な紹介としては、文藝春秋『日本の論点2011』所収の同氏の論文「世界一大きい日本の世代間格差」がある)。

 世代会計というのは、国民と政府との間の受益と負担を年齢別に金銭換算するものだ。詳しい紹介は省略するが、驚くべきことに、現在生まれたばかりの新生児世代は、生まれた瞬間に1658万円の負担を負う運命にあることが示されている。これは、現在の社会保障制度(年金・医療・介護など)が賦課方式(現在の勤労世代が現在の高齢者に支払いをする方式)であるためだ。賦課方式の下で高齢化が進むと、必然的に後から生まれた世代の負担が重くなってしまうのだ。

 これには過去の国債を返済する分は入っていないのだが、その後の世代が国債を返すとすると、なんと将来世代の負担は1億946万円になるという。新生児世代とその後の将来世代との負担率を比較すると、日本は560%(6.5倍)となる。島澤氏の指摘によると、この比率は日本が他の国に比べて飛び抜けて大きい。例えば、高い順に挙げていっても、イタリア132%、ドイツ92%、オランダ76%、ノルウェー63%、アメリカ51%という具合である。日本がいかに並はずれた大きさであるかが分かる。

 私はこの格差是正こそが、我々現世代にとっての最大の責務だと思う。民主党は「弱者への配慮」と「格差の是正」をスローガンとしているはずだ。では本当の弱者とは誰か。私は、将来世代こそが本当の弱者だと考えている。将来世代は、自らが意思決定に参画することなく、いわば強制的に重い負担をさせられることになるからだ。

機会が不平等の下で現れる格差こそ本当に問題

 さらに、本当に是正すべき格差とは何か。私は現世代と将来世代との格差だと思う。経済学的には、しばしば「結果の平等」と「機会の平等」という議論が出る。機会が不平等の下で現れる格差こそが本当に問題になる格差だということである。この点で考えてみると、世代の格差は、全く機会の不平等によるものだ。我々はいつ生まれるかを選択することはできないからだ。

 この将来世代との格差を是正するために必要となるのが、財政再建と社会保障制度の見直しであることは言うまでもない。財政再建は出来るだけ現世代の負担によって進めなければならないし、社会保障制度は出来るだけ勤労者の負担を小さくする方向での制度設計が必要となる。

 これを進めるためには、我々はいろいろな政策を評価する際に「それが将来世代との格差にどう影響するか」を常に考える癖をつけておくことが必要だ。

 今回の予算編成の中でもいくつかの例を示すことができる。例えば、年金の支給額を物価の下落にスライドさせて引き下げるべきかという議論があった。世代間格差の観点からは、疑問の余地なく引き下げるのが当然である(結局引き下げられたが)。

 後期高齢者医療制度の廃止については、高齢者の負担は引き下げられ、勤労者の負担が増えるという方向での提言が出ている。これは明らかに世代間格差を拡大させる。税制については、消費税の議論は始まらないまま、高所得者層への負担を増やすことになった。世代間の格差という点からは、高齢者も負担する消費税が望ましいということになる。

 多くの人が、弱者保護と格差是正の必要性を主張する。にもかかわらず、将来世代という悲惨な弱者を救おうとせず、現世代と将来世代という巨大な格差を是正しようという議論が盛り上がらないことは、私にとって謎としか言いようがない。
このコラムについて
ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、NBonline編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

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著者プロフィール

小峰 隆夫(こみね・たかお)
小峰 隆夫

法政大学大学院政策創造研究科教授。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。著書に『日本経済の構造変動』、『超長期予測 老いるアジア』『女性が変える日本経済』、『最新日本経済入門(第3版)』、『データで斬る世界不況 エコノミストが挑む30問』、『政権交代の経済学』、『人口負荷社会』ほか多数。
 

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コメント
 
01. 2010年12月29日 23:40:40: WWM4J88S3Y
>多くの人が、弱者保護と格差是正の必要性を主張する。にもかかわらず、将来世代という悲惨な弱者を救おうとせず、現世代と将来世代という巨大な格差を是正しようという議論が盛り上がらないことは、私にとって謎としか言いようがない

大部分の人は、目先の自分の利益や損失しか考えていないから
高齢者が多い日本では、特に不思議はないでしょう。


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