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1学年当たり約400億円の流出  内定が取れないのは、自己責任?就職氷河期に職を探す20代男性
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/463.html
投稿者 tea 日時 2010 年 12 月 28 日 14:51:09: 1W1IXELjjF6i2
 

新卒採用システムのお陰で、これまで日本は
先進国の中では若年労働者の失業率が例外的に低かったのも
今は昔
そろそろ10%という立派な先進国の仲間入りを果たしつつある
その結果、
経済の実体以上の心理的なマイナス効果が
治安の悪化、社会の閉塞感、格差意識の拡大などを
増やしつつあるようだ


転載
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101224/217712/?ST=print
内定が取れないのは、自己責任なのか?
就職氷河期に職を探す20代男性のケース

* 2010年12月27日 月曜日
* 小林 美希

弱者  就職活動  富山県  リストラ  インターンシップ  Uターン  高校生  社会  氷河期  内定 

 来春卒業予定の大学生の内定率は、2010年10月時点で57.6%と過去最低を記録した。学生らは就職活動で苦戦を強いられている。

 「落ち続けて、なかば諦めモードに入っていた。年内の内定は無理かと思った」

 早稲田大学政治経済学部4年生の小峰裕也さん(仮名、25歳)は、12月中旬に内定を得たばかり。安堵のため息が出る思いだ。裕也さんは、現役で都内の有名私大に入学したが、政治や経済に興味を持ち、3年遅れで早稲田大学に入り直した。

説明会への交通費も重荷

 大学3年生の10月頃から不動産大手やデベロッパーを中心に就職活動を進めていた。エントリーだけでも200社に上る。そこから面接までこぎつけたのは約30社。エントリーシートを提出した段階で落ち続け、「3年の遅れが不利になっているのだろう」と思ったが、「けれど自分が選んだ道だから仕方ない」と気を取り直して就職活動を続けた。

 超就職氷河期に、競争は激化している。インターネットから会社説明会の参加を申し込もうとしても、告知が掲載されて1時間も経たないうちに満席となってしまい、門戸が閉ざされる。

 「これは情報戦だ」と確信した裕也さんは、いつでも情報をキャッチできるようノートパソコンを購入して持ち歩き、携帯電話もスマートフォンに買い替えた。パソコンに来るメールもタイムリーに受信できる。通信費は、月5000円ほどプラスでかかる。交通費も月2万円は必要になる。常に財布とにらめっこ。横浜や千葉の幕張で合同企業説明会が開かれると、思わず「交通費が高くつく・・・」とため息が出る。

 就職活動の初期に「中小企業なら受かりやすいのでは」と思ってはみたが、最盛期は大企業の企業案内が大量にネットで流されているため、中小企業の情報が埋もれてしまっていた。求人情報は流れていても、いったい、何人を採用するのか。裕也さんは企業の海外移転などのニュースを見るたびに「仕事そのものが国内からなくなっている」と肌で感じた。

 4年生の5月から6月にかけて大手の内定が出揃うが、裕也さんに「内定」の二文字はまだまだ遠い存在だった。焦りが出てくると同時に、「もう就職は無理なのでは」と弱気になった。いっそ公務員試験に切り替えようかとも思って、周囲の友人や社会人の先輩に相談したこともある。結局、自分には適さないと考え直して、粘って就職活動を続けることにした。

 夏を過ぎると、求人自体が大幅に減っていく。ようやく中小企業の求人が目に留まりやすくなった。カタカナの社名のベンチャー企業の求人も多く、「アルバイトから正社員へ」という謳い文句も目立つ。「最悪、バイトからでも正社員を目指せるか」と、自身を奮い立たせた。

 夏以降は1学年下の新卒採用の活動が始まってくるため、精神的に辛い時期を過ごした。それでも「この時期の求人になれば、年齢が不利にはならないだろう」と信じた。

 最終面接に漕ぎ着けた企業は6社程度。ダメモト精神でギリギリまで粘った甲斐があり、超大手ではないが、内定を得た中堅企業では希望通りのデベロッパー業務に携わることができることになった。

 筆者も超就職氷河期だった2000年に卒業。当時、大卒就職率が統計上初めて6割を下回り55.8%となった異常事態の最中での就職活動は裕也さんと同様に苦戦を強いられたが、あれから10年。不況は続き、小泉純一郎構造改革の頃から競うようなリストラがされ尽くし、人件費抑制が企業にとって当然の姿となった今の超就職氷河期はより厳しいものとなっているはずだ。

就職できても、安心はできない

 「まさかリストラに遭うなんて・・・」

 就職氷河期を潜り抜けて就職した寺田琢磨さん(仮名、24歳)は、社会人経験わずか1年で解雇された。

 就職活動はリーマンショックが起こる直前だった。不動産会社の賃貸保証を請け負う会社の大手に就職した。家賃の滞納などについてバックアップする仕事だ。居住者が家賃を滞納して家財道具を置いたまま行方不明になるケースなどで、残留物の撤去や明け渡し訴訟、引っ越しなどの費用などを保障する。

 新人研修では、不動産会社に営業の日々。朝8時頃から終電まで電話をかけ続けた。仕事のハードさから就職先の企業はいわゆる“ブラック会社”で有名で、新人の8〜9割が入社1年以内で離職する。琢磨さんはそれを承知で、「鍛えられるはず」と入社を決めた。

 督促のための訪問も経験した。夏頃からは訴訟担当となった。法学部出身の琢磨さんにとっては、大学時代に得た知識も活かせる部署となり、意気揚々と仕事にまい進していた。

 ところが入社してから、グループ会社の1つが破産することが分かった。会社側は事業を整理縮小。それに伴い、1割程度の社員がリストラされることとなった。2010年1月、まず他部署の社員が退職勧奨を受けた。社員の間ではリストラについて何の予兆もなく、突然の解雇に社員らは動揺したが、この時点で、琢磨さん自身、自分までクビになるとは思ってはいかった。

 ところが3月上旬、いつものように残業で居残っていると上司から「ちょっといい?」と声をかけられた。そして、「3月末で辞めてもらうことになった」との通告――。

 あまりに唐突なリストラ宣告に、思わず言葉が詰まる琢磨さん。それでも、「私は会社に残りたい」「なぜ残れないのか、理由が聞きたい」と主張してみたが、取りつく島もなかった。ものの10〜20分程度で面談が終わり、退職金1カ月分を受け取って会社を去ることになった。同期は15人いたが、残ったのはたった1人だけだった。

 それでも、琢磨さんは「会社では徹底的に仕事を教えてもらえたから感謝している」と、自分を見つめ直し、新たな気持ちで第二新卒の枠での就職活動をしている最中だ。

就業を意識させる富山県の取り組み

 大学生の就職戦線も厳しいが、高校生の新卒採用も厳しさを増している。文部科学省によると、高校生の内定率は2010年10月で57.1%。前年より 1.9ポイント上回った程度だ。その中で、地域格差が出ており、富山県では78.3%、岐阜県では75.1%、三重県で72.5%となっている一方で、沖縄県は24.7%、北海道33.6%、宮城県39.8%など大きな差が出ている。

 富山県立商業高校では、3年生(約230人)のうち61人が就職希望者で、1人が公務員試験の結果待ちという以外、全員が内定を得ている。さすがに、1回の採用試験では決まらない生徒もいたようだが、2〜3回受ければ内定は出ているという。

 3年生の担任の安田隆教諭は「県内でも当校の就職率は高いほうではないか。富山の子は勤勉だからと、名古屋から求人の連絡までくることもある。厳しい部活動や生徒指導、OBやOGとのつながりもあって言葉遣いや礼儀作法がしっかりしていることが評価されているのではないか」と話す。

 また、富山商業では、生徒指導や年間の授業の一環として模擬株式会社「TOMI SHOP」を毎年11月に開催。企業理念は「幸せの追及、社会貢献」。年間を通じてオリジナル商品を開発するなど、11月のイベント時に向け、販売戦略を練る。

 オリジナル商品は実際に協賛企業との間で商品化し、一般市場でも流通している。企画や商品開発にとどまらず、売り上げや利益の管理、決算、株主総会まで企業の一連の流れを模擬体験する。毎年、業績は伸長しており、第10期を迎えた2010年のTOMI SHOPでは8700人の来客数があり、売上高は1600万円と過去最高を更新した。

 そうした取り組みが、生徒の仕事に対する意識の高さを養っている。安田教諭はTOMI SHOPの責任者でもあり、「実際に企業の力を借りながら、マーケティングや企画、仕入れ、営業、売り上げや利益の管理、チームワークの大切さを学びとるため、子どもたちはビジネスに純粋に興味を持つ。人の幸せを考えた事業、つまり仕事を通して社会貢献することが商人の道だということを実体験するため、就職活動の時にも活き活きと受け答えできるのではないか」としている。

 内定率や就職率の差には、地域の雇用情勢もあるが、行政の取り組みによるものも少なからず影響していそうだ。実際、富山県は、正社員率が70.7%(全国平均は64.4%)、15〜34歳の若年層の正社員率は76%(同66.4%)と共に全国1位を誇っている(総務省「就業構造基本調査」2007年)。大学生の新卒就職率も2009年度で94.7%とリーマンショックの影響知らずという勢いだ。

 若者の間で長年問題視されている、入社3年以内の早期離職率は、全国平均が34.2%であるのに対し、富山県は28.8%と低い。早期離職には、就職活動期に十分な企業情報を得られないまま内定が出た企業に就職したケースなどでリアリティギャップが生じ、早期に辞めてしまう背景がある。

 こうしたミスマッチに関しても、富山県では県の事業として解消に向かう施策を実施している。

 例えば、富山県は中学2年生を対象とした全県あげての5日間のインターンシップ「14歳の挑戦」の先駆けでもあり、就職に対する意識や地域が学生の成長を見守ることが根付いている。

 若者の就職には、大手志向から起こるミスマッチも問題で、人材を欲する中小企業と出会う機会がないことがネックとなっている。そこで、若者と中小企業を結ぶ機会を作ろうと、富山県は2005年度から大学生を対象にしたUターンセミナー「元気とやま!就職セミナー」をスタート。毎年、10月から東京や名古屋、大阪などでセミナーが開催され、地元の優良中小企業が紹介される。
2010年11月に東京で開催された「元気とやま!就職セミナー」の様子

 秋口の都市部でのセミナーに続き、年末年始の帰省時を狙って富山県内でもセミナーが実施される。学生に対してだけではない。中小企業への就職に難色を示しがちな保護者に優良企業が多いことを知らせるため、父母向けセミナーを実施している。地域の企業には、「一言PR」を寄せてもらい、現在340社が参加している。

1学年当たり約400億円の流出

 Uターンセミナーを本格実施する前に、富山県はある試算をしていた。県内で育った高校生が大学進学などで5000人が県外に出て、うち3000人が戻ってこない。これを出生から高校を出るまでの県の投資に換算すると、1学年当たり約400億円が流出したことになる。

 優良企業とのマッチングや県の将来を考えれば、Uターンは必至となる。セミナーでは、前述したような雇用環境の良さはもちろん、物価や住宅に関する指標(地価や家賃)、可処分所得の高さ、女性の就業率の高さ、保育環境などの優位さが示される。筆者は毎年のようにUターンセミナーを取材し、集まった学生らに話を聞くが、特に女子学生は「一生働きたいから富山に帰る」と口を揃える。男子学生も「将来、結婚したら家族を大事にしたい」とUターンを決める傾向が強い。

 「元気とやま!就職セミナー」の参加人数は年々増加。2005年度では東京や大阪などで行われた全3回のセミナーに参加したのは学生110人に過ぎなかったが、2010年度には全8回で740人と増えた。富山県内で行われるセミナーの参加人数については、2005年度の396人から2009年度は 1800人と4倍以上となった。

 このほか、インターンシップ事業として、インターンシップ推進協議会に専任職員を配置し、県外大学からの参加を促進。2000年度は125人(県外は0 人)だったものが、2010年度には917人(同57人)と、地元の企業をより深く知る機会が増えている。Uターン人財マッチング促進事業は人材派遣大手のパソナに委託しており、県内の求人開拓や就職相談を実施。東京でもミニ企業説明会を行うなど、同事業を通じたUターン就職者は2006年度の33人から 121人に増えた。

 これらの取り組みが奏功し、大卒Uターン就職率は2006年3月卒の51.3%から2010年3月卒は55.7%と上昇。大学卒業時における県外流出数は、2006年3月卒の3423人から2010年3月卒は2790人に減っている。

 超就職氷河期の中でも、学生、企業、行政の3者の姿勢が就職状況を変えていくのではないか。
このコラムについて
守るべき弱者はどこにいる?

「派遣切り」「名ばかり正社員」・・・。日本の労働環境の悪化に伴う雇用不安が人々の生活を脅かす。社会がきしみ、変化に揺れている中で今、何が必要なのか。個々の働き方や生き方を通して、国、企業、個人ができることは何かを探っていく。

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著者プロフィール

小林 美希(こばやし・みき)

労働経済ジャーナリスト。1975年茨城県生まれ。明治学院大学中退、神戸大学法学部卒業。株式新聞社、毎日新聞社エコノミスト編集部で記者として働く。2007年2月よりフリーになり、若者の雇用、出産・育児と就業継続などのテーマに取り組む。主な著書に『ルポ 正社員になりたい ――娘・息子の悲惨な職場』(影書房)、『ルポ “正社員”の若者たち 就職氷河期世代を追う』(岩波書店)
 

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