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救済は企業や組織ではなく、困窮する個人レベルで行うべきであり、
競争力の衰えた企業に対するバラマキ政策は、麻薬のように、経済全体を蝕んでいく。
そんな当然のことも、既得権者と結びついた政治家には理解できない。
それがこれまでの日本の衰退の大きな原因である。
引用━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏━■〜大前研一ニュースの視点〜
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┗━┛『時限爆弾を抱えた「モラトリアム法」延長
〜中小企業は銀行の思惑にのらずに自立せよ!』
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中小企業支援
金融円滑化法を1年延長
金融庁
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▼ モラトリアム法を積極的に活用したのは、銀行側だ
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中小企業などの借入金の返済猶予を金融機関に促す「金融円滑化法
(モラトリアム法)」について、金融庁は14日、1年延長すると
発表しました。中小企業の経営環境は依然として厳しいと判断した
模様です。
以前にも、私はこのモラトリアム法の問題点や危険性について触れま
した。その際、2011年の3月時限立法の期限を迎えたときに悲惨な
状況が明らかになると述べましたが、今回「延期」が確定したので
ここで改めてポイントをまとめておきたいと思います。
中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)は2009年12月、亀井静香
元金融相がゴリ押しで通した法案です。
2011年の3月を期限として「金利が払えない」「元本が払えない」と
いう中小企業に対して全面的にそれらの支払いを猶予するという、
とんでもない法律です。
現在ではこのモラトリアム法の下、30兆円近い金額が「貸付条件変更
実行額」として積み上がっています。実はこれほど大きな金額にまで
膨らんでいるのは、借り手側の中小企業というよりも、貸し手側で
ある銀行の意向が強く反映された結果だと私は見ています。
当初、中小企業はこの法案を積極的に活用するべきかどうか二の足を
踏んだはずです。銀行に対して支払い猶予の申請をするということは、
経営が行き詰まっていると見なされてしまうからです。
銀行に睨まれてしまったら、モラトリアム法の期限が切れた後、二度
と融資してもらえない可能性があります。
ところが、ここに金融庁は1つの「麻薬」を注入しました。それは、
今回のモラトリアム法を施行した貸出先については「正常先」と
見なして良いというものです。
例えば本来、経営が危ない状況に陥っている「破綻懸念先」への融資
について、無担保部分に対して銀行は70%の貸倒引当金を計上する
必要があるため、その分利益が圧迫されます。
しかし今回の法律を利用すれば、本当ならば「破綻懸念先」に該当
する企業をより破綻リスクの低い融資先と見なせるため、引当金を
積み増す必要がなくなります。
このメリットを享受したいために、銀行が敢えて中小企業に応募させ
て貸付条件変更へと促したのだと私は思います。
全国銀行協会の奥正之会長(三井住友銀行頭取)は今回の法律に一定
の効果があるとしたうえで「返済猶予に慣れてしまい、一種のモラル
ハザードの懸念もある」と指摘したとのことですが、私に言わせれば、
銀行側にこそ「モラルハザード」があると思います。
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▼ モラトリアム法の期限が来たら、何が起こるのか?
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いずれにしても、現時点において経営的に問題があると思われる
ボーダーラインの企業に対して、すでに約30兆円の金額が貸し付け
られている状態です。
もしもこの状況で2011年の3月にモラトリアム法が解除されたら、
どのような事態を招くでしょうか?
第1に、銀行は融資先を本来の基準で区分し直して、それに相当する
金額を引当金として積み増す必要が出てきます。
全体で仮に50%とすると15兆円になりますから、影響はかなり大きな
ものになると思います。おそらく地方銀行では破綻に追い込まれて
しまうところも出てくるでしょう。
第2に、支払い猶予がなくなり金利と元本の返済に追われた中小企業
が続々と倒産することになると思います。
倒産件数の対前年同月比の推移を見ると、11月時点で15ヵ月連続して
前年同月を下回っており、モラトリアム法が解除された場合、一時的
にどっと倒産件数が上がることは間違いないでしょう。
民主党にはこの現実を受け止める力はなく、1年間の延長を決定した
のでしょうが、結局1年後にも悲惨な状況が待ち受けているとしか
私には思えません。
そうするとまた再来年には別の理由で延長させる可能性もあると私は
見ています。
日本経済の実態は、30兆円という莫大な金額を無理矢理カンフル剤
として注入することで成り立っているに過ぎないと言えます。この
現実から目を逃さないで欲しいと思います。
そしてもう少しマクロな視点で見れば、経済の国際化・大企業の海外
進出に伴い、製造業の空洞化などが叫ばれています。こうした状況の中、
私は21世紀の日本の中小企業には3つの道があると思っています。
1.死に絶える
2.地場密着型・地域密着型企業として、昔ながらの技術で生き残る
3.かつての日本の技術が活かせる新興国に向けて、世界進出する
世界進出というと「ハイテク技術」というイメージがあるかもしれま
せんが、必ずしもそうではありません。日本の20年前の技術で
あっても、当時の日本と同じ状況にある新興国では十分に通用します。
人材を集められるかどうかという問題がありますが、留学生を積極的
に活用するなど方策はいくらでもあるでしょう。
中国・韓国では難しいでしょうが、その他の国では日本企業で働きたい
という人はまだ沢山いるからです。
こうしたことを考えていけば、モラトリアム法を利用して問題を先送り
にするという小手先の方法ではなく、中小企業に対して支援できることは
沢山見つかるはずです。ぜひ日本の政治家にも真剣に考えてもらいたいと
思います。
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この大前研一のメッセージは12月19日にBBT757chで放映された
大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
再構成しております。
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▼ 今週の大前の視点はいかがでしたでしょうか。
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このモラトリアム法における問題点は、その施行時から
指摘されてきましたが、今回の延長を受け、大前はさらに
銀行側の実態や、中小企業の今後を踏まえた指摘をしています。
特に銀行については、利益を享受したであろう事とともに
今後に迫る大きなリスクに対して強い懸念を持っています。
根本にある経済対策として、このような的外れな法律の期限を
ずるずると先延ばしにしていくだけでは事態が好転しないことは
私たちも感じています。
しかし他人任せではいけないことも事実。
本質を掴み適切な解決策を講じる。
そんな当たり前のことを私たちもできるようになる必要があります。
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