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女性の労働参加率向上を素直に喜んでよいか?
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/423.html
投稿者 tea 日時 2010 年 12 月 22 日 09:43:29: 1W1IXELjjF6i2
 

最近のM字カーブ改善の背景には、実は貧困化が大きく影を落としている

XXXXXXXXXXXXXXX引用XXXXXXXXXXXX
http://diamond.jp/articles/-/10552
【第5回】 2010年12月22日
森田京平 [バークレイズ・キャピタル証券 ディレクター/チーフエコノミスト],熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト],高田創 [みずほ証券グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長/チーフストラテジスト]
女性の労働参加率向上は未婚化と性別格差のせい?
労働市場と少子化を結びつける「M字」のマジック
――森田京平・バークレイズ・キャピタル証券 ディレクター/チーフエコノミスト

 日本や韓国では、女性の労働力率(労働参加率)を年齢別に描くと、その形は「M字」となる。人口減少に直面して、日本では女性の労働参加を促し、「M字」の落ち込みを浅くすることの重要性が度々語られてきた。

 そして、今まさに「M字」の落ち込み部分が押し上がりつつある。はたしてこれを素直に喜んでよいのだろうか。

 実はそこには、日本経済が直面する2つの政策課題が反映されている。具体的には「未婚化の進行」と「労働市場における性別格差」だ。
労働市場から撤退する若い女性たち
韓国に次ぐ日本の「M字」の深さ

 日本については、女性の労働力率〔15歳以上人口に占める就業者(仕事をしている者)と失業者(就業していないが働く意欲があり実際に求職活動をした者)の割合〕を年齢別に描くと、その形が「M字」となることが良く知られている。20歳代後半から30歳代後半にかけて、女性が労働市場から撤退を余儀なくされる傾向が強いことの投影だ。

 M字となる主な理由としては「出産・育児のための離職」が挙げられる。あるいは「親の介護のための離職」も理由となることがある。しかし、年齢別に見たときに女性の労働力率が「M字」となる国はむしろ少数派だ。主要国では、日本と韓国ぐらいである(図表1参照)。
「M字」の落ち込み部分が
上昇し始めたことを喜ぶべきか?

 日本では、女性の労働参加を積極的にサポートし、「M字」の落ち込み部分を押し上げることの重要性が再三語られてきた。すでに日本の生産年齢人口比率(総人口に占める15-64歳人口の割合)の急落が始まっており、2010年にはG7諸国の中で最低になると予測されている(国連による予測)。


 こうした中、労働力確保の重要性は政策論議を待つまでもない。そして、今まさにその「M字」の落ち込み部分が押し上がりつつある(図表2参照)。

 はたして、これを素直に喜んでよいのだろうか。その裏にむしろ別の問題が見え隠れしていないだろうか。本稿の問題意識はここにある。

 結論を先取りするのであれば、日本の新たな政策課題が「M字」の落ち込み部分の上昇という皮肉な形で現れている。つまり、喜んでいる場合ではない。
「M字」の落ち込みが浅くなった背景(1)
意外な押し上げ効果を持つ「未婚化の進行」

 なぜ「M字」の落ち込みが浅くなり始めたのか。背景として(1)未婚化の進行、(2)労働市場の性別格差の2点が挙げられる。

 まず、未婚化の影響から見ておこう。図表3を見ると、未婚女性の労働力率が20-24歳から40-44歳にかけて既婚女性を大きく上回ることがわかる。一方、45-49歳以降では、婚姻関係は労働力率を左右しない。

 したがって、20-24歳から40-44歳の女性の未婚化が進むと、それだけで同年齢層の女性労働力率が押し上がる。その結果、20歳代後半から30歳代後半にかけて出現する「M字」の落ち込みが浅くなる。

 改めて振り返ると、2000年代は未婚化急進の時代だった。たとえば、平均初婚年齢は2000年代に戦後のトレンドを上回る形で上昇した(図表4参照)。特に男性の初婚年齢が過去100年間で初めて30歳を超えたことは象徴的だ。

 生涯未婚率も2000年代に上昇した(図表5参照)。とりわけ男性の生涯未婚率は1990年の6%から直近2005年には16%と、目もくらむようなスピードで上昇した。男性に比べたらスピードこそ緩やかとは言え、女性の生涯未婚率も7%と1920年以降の最高水準にある。こうした未婚化が「M字」解消の背景だとすれば、やはり喜んでばかりはいられない。


次のページ>> 夫の失業増加と妻の労働参加で、労働市場に広がる「性別格差」
「M字」の落ち込みが浅くなった背景(2)
夫の失業増加が招く「労働市場の性別格差」

 次に、労働市場の性別格差に注目する。もう一度、図表3を見ておこう。1990年以降、既婚女性の労働力率が25-29歳と30-34歳で上昇していることがわかる。つまり、20歳代後半から30歳代前半の既婚女性の労働参加が進んでいる。これも直接的に「M字」の落ち込みを浅くさせることとなった。

 もちろん、女性の労働参加が進むことは経済的にも社会的にも望ましいことであり、さらなる促進が求められる。しかし、素朴な疑問をぬぐえない。なぜ「既婚」女性なのか。実際、未婚女性に限ると、1990年以降、20歳代後半から30歳代前半で労働参加が進んだという証左は得られない。

 この点を考える上で、日本の労働市場における「2つの性別格差」に触れなくてはならない。具体的には「失業率の性別格差」と「労働力率の性別格差」である。

 男性−女性で定義した失業率の性別格差は足元で戦後最大となっている(図表6参照)。すなわち男性の失業率は戦後最大の幅で女性の失業率を上回っている。しかも、2000年代以降、こうした失業率の性別格差が定着してしまったようだ。

 こうした状況をあえて言い換えると、女性と比べて男性は「狩りに行っても(=労働市場に参加しても)手ぶらで帰ってくる(=就業できない=失業)」確率が高い。

 それどころではない。労働力率を性別に見てみよう(図表7参照)。1990年代初頭をピークとして、男性の労働力率は足もとまで延々と下がっている。これに対して、女性の労働力率は2003年以降、非常に底堅く推移している。

 もちろん男女の労働力率の絶対水準には依然、大きな差がある。しかし、変化の方向という点では、明らかに男性労働力率の落ち込みが目立つ。どうやら最近の男性は「狩りにも行かない(=労働市場に参加しない)」ようだ。
次のページ>> 男性の未婚化も進むため、労働政策は少子化対策にとっても重要に

 こうした状況が特に既婚女性の労働参加を促した可能性がある。夫が失業あるいは労働市場から撤退する中、妻(つまり既婚女性)が家計を守るため労働市場に参加する構図だ。しかも、高齢化を背景に、医療・介護での女性の就業者数は安定して増えている。ここに既婚女性の労働力の需要(=就業)と供給(=労働参加)が同時に伸びる背景を見て取れる。

 既婚女性の労働参加が促された背景に、こうした労働市場の「2つの格差」があるとすれば、やはりこれも喜んではいられない。
さらに厄介な「男性の未婚化」問題
労働市場政策こそが少子化対策の軸に!

「M字」が解消された背景として、未婚化の進行と労働市場の性別格差に注目してきた。これら2点はそれだけで十分厄介な課題だ。しかし、さらに厄介なことがある。それは、これら2つの問題が互いに深く絡み合っているということだ。

 男性の平均初婚年齢と失業率の性別格差を比べてみよう(図表8参照)。男性の失業率が女性を上回ると、男性の平均初婚年齢が上昇(=晩婚化)する傾向を見て取れる。

 男性の失業率が女性を上回ると、女性にとって結婚がかえって人生のリスクを増やすことになりかねない。つまり、結婚のリスク分散機能が毀損する。結果的に、男性が晩婚化を余儀なくされ、未婚化の進行につながる。婚姻と労働市場がいかに密接に関わり合っているかが痛感される。

 さらにこれが少子化の背景だとすれば、労働市場政策こそが少子化対策の軸として明示的に含まれる必要がある。子ども手当てを少子化対策と位置付けられないと筆者が考える理由がここにある。


次のページ>> 女性の労働参加率向上を押し上げる、「未婚化」の意外な効果
質問1 企業が女性の労働参加を促すうえで、重要だと思うことは?
描画中...
47.7%
育児休業などの子育て支援
31.8%
ワークシェアリングの導入
11.4%
採用の門戸を広げる
4.5%
介護休業などの家事支援
4.5%
その他
昇進の機会を増やす
パワハラやセクハラの防止
業務教育の機会を増やす
 

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