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16歳で高校終了 既存産業向け人材製造システムは、もう機能しなくなっている
http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/401.html
投稿者 tea 日時 2010 年 12 月 18 日 12:30:59: 1W1IXELjjF6i2
 

今年の内定率は就職氷河期以上の厳しさになっている
それにもかかわらず若年層の新卒就職以外に、安定した正社員雇用の道は
ほとんどなく、非正規雇用との格差は、大きすぎる。
つまり既存産業向け正社員人材製造システムは、もう機能しなくなっている。

オランダなどでは、大学教育への需要は、大分前から低下しており、
英国でも学費大幅値上げと研究費カットで暴動があったが、大学の淘汰が進展することになるだろう
一方、米国では日本同様、子供の創造性の低下が問題になっている。
(こちらも中流層の没落の影響が大きいのではないか)

日本の教育システムも、もっと自由度を高めていく必要があるし
企業と学生も、もっと意識を変えていかねばならない
そのためには、雇用の柔軟化と、雇用保障の強化が必要になり
政治が例によってボトルネックになってくる


XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX引用XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

http://jp.wsj.com/Life-Style/node_161789
ウィリアム・アンド・メアリー大学(バージニア州ウィリアムズバーグ)のキュン・ヒー・キム教育心理学准教授は、米国で一般的に使われる創造的思考テストの点数が、1990年から2008年まで一貫して低下しており、その傾向が幼稚園から6年生までのグループに顕著に表れていると指摘する。これは、トーランス・テスト・オブ・クリエイティブ・シンキングと呼ばれる標準的な創造的思考テストから得られた、1966−2008年の30万人の米国人のスコアに基づいている。(キム氏の研究成果を学術誌に発表するかどうかは現在、専門家が審査中。)

 トーランス・テストは、米国のみならず海外でも数十年間、英才教育対象の生徒を判断するために学校で使われてきた。カリフォルニア州立大学の心理学准教授で創造性について著作のあるジェームズ・C・カウフマン氏によると、このテストは、拡散的思考――多くの普通ではない、新しい妥当なアイディアを生み出せる能力――を測るうえで、信頼できる手法とみなされている。しかし、生まれたアイデアを使って有益な新製品を生み出すといった、拡散的思考とは異なる分野の創造性を測定するためには、トーランス・テストでは不十分だとカウフマン氏は指摘する。  
 研究者によると、子どもは成長過程でパソコンやテレビを使い、学校で暗記学習や標準化されたテストを強いられるにつれ、型にはまらない創造性を育む活動から遠ざけられる。ジョージア大学で創造力の研究・英才教育を専門とするマーク・ルンコ教授は、生徒は創造力の可能性を十分秘めているものの、それを伸ばす教育について、米国の小・中・高等学校に与えられる評価は「せいぜいD」と手厳しい。ルンコ氏は、「特に大学より前の時期に、創造性を発見、支援することについて、われわれは極めて下手だ」と述べた。

XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX引用XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX引用XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX
「GCSEの彼方」
   □ 春 具 :ハーグ在住・化学兵器禁止機関(OPCW)勤務
( http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/9280811231/jmm05-22 ) 
■ 『オランダ・ハーグより』  

 先週、娘のいっているハーグのブリティッシュスクールで、高等学校の終了証書の
授与式がおこなわれました。 終了証書は「GCSE General Certificate of
Secondary Education 」といい、このお免状をいただくことで、正式に高等学校が終
わるのであります。

 娘は16歳であるが、16歳で高校終了などというと、日本と比べると2年も早い。
それはべつに我が家の娘が天才だからというのではなく、イギリスの高等学校は16
歳で終わってしまうのです。授業と最後の試験は昨年の夏にとっくに終わっていたの
ですが、イギリス本国の文部行政のとてつもないのろさのおかげで、最終試験から一
年以上経ったこの冬にやっとお免状が届いた、とこういうわけなのであります。

 高等学校のカリキュラムを終えた彼らには、これからの人生のオプションが待って
いる。すぐ世間に出て仕事についてもよし、あるいは専門学校へ進んでもっと技術を
身につけるのもよし、そうでなければ(ハーグのブリティッシュスクールの生徒がほ
とんどそうなのですが)さらなる高等教育を目指して、いわゆる「Aレベル」という
ユニヴァーシティ受験の準備をはじめてもよいのであります。

 大学向けの準備は、素早くやるならば一年で終る。一年で「Aレベル」を終え、行
きたい学校を決めてしまうことが出来るのです。そうすると大学入学までにまるまる
一年自由な時間をもつことができますね。さっさと大学を決めた若者たちはその「空
白の一年」を使って旅行をしたり、どこかの組織でインターンをしたり、あるいは会
社にいれてもらって仕事をし、学費を貯めるとか、一年間をいろいろに使います。こ
れをギャップイヤーとよぶ。

 オランダの教育制度もこれに似ています。オランダの義務教育は5歳からの11年
間で、16歳で終わる。16歳は一区切りでありまして、この国の若者たちはここか
らそれぞれの人生の道を選んで進む。オランダではこの年齢に至るまでにいろいろな
試験があって、それらの成績により、義務教育を終えるころには本人の適性がほぼ客
観的に理解されているのであります。ですから彼らは小中学校を終えた段階で、修理
工とか料理士とかの技術を身につけるコース(Voorbereidend Wetenschappelijk
Onderwijk VMBOという。専門学校ですね)に行くか、あるいは高校一般教育コース
(Hoger Algenmeen Voortgezet HAVOという高等職業学校)にすすむか分けられる。
HAVOの生徒たちはHoger Beroeps Onderwijk HBOという4年制の高等職業学校にすす
んで、学士BAあるいはビジネス修士MBAを取得する。そしてごく平均的な勤め人にな
るのであります。

 さらにもっと限られた(選ばれた)生徒たちはVWOというユニヴァーシティ進学コ
ースへすすむ。オランダに大学は13しかなく、大学の卒業生はドクターの称号をも
ち、法律家になったり政治家になったり役人になったりする。医者もこの過程で資格
を取れるのでありまして、すなわち、このコースへ進む若者たちは自他共に許すエリ
ートということになる。彼らは男女とも生涯、ドクターの称号で呼ばれるのでありま
す。

 というわけで、娘のクラスも全員高等学校を終え、ではこれからユニヴァーシティ
への準備でもはじめるか、というのが彼らのこの冬なのであります。

 ブリティッシュスクールですから論理的に言うならば、彼らはイギリスの大学にす
すむことを目指しますね。彼らはイギリスの大学を目指すために、オランダにおいて
アメリカンスクールでなくブリティッシュスクールを選択した・・・、はずでありま
しょう。だが昨今、イギリスの大学はおおきな問題を抱えており、話はそう簡単では
なくなってきております。

 イギリスの大学はここ数年、教授の質が下がっているとか学生の質も同じように下
がっているとか、寮ではドラッグが蔓延しているとか、キャンパスでも暴力犯罪が増
加しているとか、イギリス社会の諸問題がいみじくも鏡に写すがごとく、大学に反映
していると言われたりするのですが、その大学が抱えると言う問題の底辺に、おどろ
おどろしく低く重苦しく鳴ってきていた音は、財政難というベースノートであった。

 象牙の塔たるアカデミアにお金がなくなってしまったのにはいろいろな理由があり、
理由の理由もあるらしいのですが、とうとう政府は大学の学費を値上げすることをき
め、その法案が先週、議会にかけられたのであります。

 そして、その値上げ案の採決をめぐって、ロンドン(だけでない、イギリス中の大
都市)で、値上げに反対する学生たちが大きなデモをひらいて騒いだ。議会が値上げ
法案を審議するというその日には、学生のデモがほとんど暴動と化して、市内が大混
乱したのでした。たまたま演劇を鑑賞に出たチャールス王子とカミーラ夫人の自動車
が、暴動化したデモ隊が暴れている通りを通過してしまい、窓ガラスにヒビを入れら
れるなどの嵐となった。これは、デモが荒れると予想されているのに王室の僥倖にな
ぜこのルートを選んだのかとセキュリティの迂闊さが笑われ、ニュースでおおきく報
道されましたね。

 値上げ法案は夜のうちに可決され、朝になったら暴動は物理的には収まってはおり
ましたが、キャメロン政府がおこなおうとしている高等教育改革は、本質的には制度
の改革ではなく、財政危機による財政のつじつまを合わせるための改造ということの
ようであります。ですから、この改革によってイギリスの教育が世界に比して競争力
をつけるということではない。

 改革にはふたつの柱がある。ひとつは学費の値上げ、もうひとつは研究助成金のカ
ットであります。

 学費の値上げは、これまでの4千ポンドから8千ポンド、ところによっては1万2
千ポンドほどまでの上昇だと言う。

わたくしは知らなかったのですが、イギリスの大学は、1980年代まで国営で、学
費は只だったそうなのですね。「今回学費の値上げに賛成している(とくに労働党系
の)政治家たちはみんなそのころに貧しい学生で、ロハで学生生活を送ったクチだろ
う。そんな連中がなにをいまになって大学の民営化と称してぼくたちの学費をあげる
のだ?」、そんな声が学生のあいだからあがっておりました。彼らはさらに言う:
「大学に行けば将来有利だぞと言うからぼくたちは高校を終えてきた。だが月謝がこ
こまで高くなるなら投資としても不効率じゃないかな。わかっていたらさっさと社会
に出ていたよ」

 一挙に三倍の値上げといえばずいぶん過激ではあるが、世界的にみれば、こういっ
ちゃあ申し訳ないかもしれませんが、1万2千ポンドは大学の学費としてはたいした
額ではない。アメリカの大学なんて田舎の大学でさえこの倍くらいはするでしょう。
アイヴィーリーグだったら4万ドルくらいですから、このほぼ4倍であります。

 学費の値上げが生徒の減少につながるならば、そのことで不必要な大学が淘汰され、
もともとなくてもよかったような大学が消えていくということはありましょう。それ
とともにわけのわからない教授や講師も淘汰されるというメリットもありますな。そ
してオランダのように、若者が身の丈にあった職業と技術をはやくから身につけると
いう、かつての徒弟制度(ギルド。Zunft と言いましたかね、ドイツ語では)と教育
制度とがうまく連携されていくかもしれません。(おっと、間違えられないようつけ
加えるならば、今の就業制度はもちろん中世の頃のオランダやドイツとは違い、一度
就いた職業だからといって手につけた技術を一生続けなければならないようなシステ
ムではない。あたらしいことにチャレンジしようと思えば、学校にまた戻って教育を
受け直す道もひらけているのであります)。

 もっとも、3倍の値上げを一気に実施するというと、そのインパクトが大きすぎま
すから、学費をローンで貸与するというバッファーも考えられております。おります
が、ではそのローンは無利子なのか、利子がつくとすればどれくらいか、返済は何年
くらいなのか、返済にはどういう条件をつけるのか・・・、そのあたりはまるで闇の
中であります。それも学生たちがデモをした理由の一つであった。

 ですが、イギリス政府のこの改革でいちばん恐ろしいとわたくしなどが思うのは、
学費の値上げよりも研究に関する助成金のカットである。

 このたびの改革は財政的なつじつまを合わせるのが目的ですから、やろうとするこ
とは即物的である。役に立たない(と政治家たちが短絡的に思う)学科や教科や学問
は犠牲になっていただく。文学とか哲学とか語学(ギリシャ語、ラテン語などの古典
語をふくむ)とか歴史とか文化人類学など、すぐに今日明日の役に立たない学問は避
(よ)けてしまおうというのであります。社会学とか美術,音楽、演劇なども、贅沢
な学問であるからいまはいらない。政府のお金は使わせない。そういうことになるよ
うなのであります。

 カットの対象にならないのは、IT関連の科目(物理、工学)、医療、ビジネス(商
学)など、それといくつかの戦略的に必須と思われる外国語などという。「戦略的に
必須・・・」とはどういうことを言っているのか、そのへんの定義はあいまいで、わ
たくしは聞いてもまるでわからないのですが、きっとEU諸国の言語のほかに中国語と
かヒンズー語などをいうのでしょう。日本語が入っているかどうかは知りません。

(わたくしがこれらの議論を聞いて不思議に思ったのは、これだけ大学に犠牲を強い
ながら、大学や教授蓮からの意見が聞かれなかったことであります。もっとも、わた
くしはしばらくオランダを留守にしておりましたからその間に喧々諤々の有効な議論
があったのかもしれない。聞き落としていたら、乞許。)

 効率化だけを眼中においたようなこの仕分けぶりは、なにやら「歌うクジラ」にい
われる「文化経済効率運動」と、即戦力だけを念頭に置いた「最適生態化」という社
会の不気味さを彷彿とさせますね。いうまでもなく、即物的な効率だけに重点を置い
たこのような分類は不幸であります。そしてこういう仕分けについて、かつて世界を
凌駕した大英帝国の政治家たちが、21世紀のいまに寄ってたかって論議したという
ところに、わたくしなんぞは驚いてしまうのですね。

 反面、この改革には、なぜ人文をやらないのか、歴史はどうなのか、心理学はどう
なのか、人文社会学を研究のプライオリティからはずすとはどういう理由なのかとい
う、それらについての説明がまるでなされておりません。そのこともデモの学生を苛
立たせていることで、そこのところはわたくしも聞きたいと思うのであります。

 即戦的な科目の集中的な勉強は、たしかにすぐに使えるビジネス戦士をつくるには
いいかもしれません(ほんとはそれだってダメだとわたくしは思うのですが、長くな
るので今は述べない。第一そんなことを大学でするべきかともいますが、それも述べ
ない)。だが、その兵隊たちもいずれは管理職になるでしょう。そのときに、哲学や
異文化への理解や素養がないというのは、人間として寂しいだけでなく、じつは組織
をマネージしていく上にも危険だとわたくしは思っているのであります。管理職にお
いて哲学的思考、弁証法的思考、異文化への理解、外国語(文学を含む)の知識と素
養がいかに大切かについて、わたくしは以前このコラムで書いたことがあり(第51
回「巻き寿司、あるいは哲学の不在」)、その考えは今でも変わらない。無教養な
(とわたくしははっきり言おう)管理職に使われる部下は不幸だし、組織というもの
もそういう無教養なマネージメントのもとではどんどんやせ細っていくのであります。

 外交や社会科学を勉強しようとする学生さんたちに、外国語だけではなく国語(こ
の場合は英語ですね)、地理、世界史、すなわち人文のもろもろを教えておかないで、
ま、よその国のことですからわたくしの知ったことではないが、イギリスはどこへ行
こうというのだろう。

 というわけで、高校課程は終わったものの、ブリティッシュスクールの若者たちは
イギリスのにおける高等教育の現実とはなにか、大学のキャンパスはこれからの数年
を過ごす価値のある場所であるか、そういう問題を抱え込むことになってしまった。

 ですが聞くと、彼らはすでに合理的な回答をみつけているようであります。少なく
ともこれから数年は冬の時代に入るであろうイギリスの大学なんぞに行かなければい
いのであります。幾人かはアメリカの学校へ行こうかなあと話しており、ほかの同級
生たちはオランダの大学を目指すつもりだと言う(これは着想である。オランダのブ
リティッシュスクールを終えてオランダの大学へ進む・・・)。アメリカもヨーロッ
パも教育制度はイギリスとは違う。ですから、またあらたに、アメリカの場合にはSA
Tという共通テスト、ヨーロッパならばインターナショナル・バカロレアなどという
試験をとおらねばならないが、ま、いずれにしたって人生はチャレンジの連続だから
ね、やってみましょうかね、と彼らは言うのであります。

 繰り返しますが、若い人たちは哲学とか文学とか歴史とかの、時間にとらわれず時
代に流されない、悠々とした科目を学んでおくとよろしいかとわたくしは思う。騙さ
れたと思って哲学をやっておいてごらん、組織の役員になったり管理職になって部下
がついたときなんかに、「ひとをわかる、知る」という学問がどれほど役に立つこと
か・・・。

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春(はる)具(えれ)
1948年東京生まれ。国際基督教大学院、ニューヨーク大学ロースクール出身。行政学
修士、法学修士。78年より国際連合事務局(ニューヨーク、ジュネーブ)勤務。2000
年1月より化学兵器禁止機関(OPCW)にて訓練人材開発部長。現在オランダのハ
ーグに在住。共訳書に『大統領のゴルフ』(NHK出版)、編書に『Chemical Weapons
Convention: implementation, challenges and opportunities』(国際連合大学)が
ある。
 

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コメント
 
01. 2010年12月18日 18:04:45: cqRnZH2CUM
【第119回】 2010年12月17日
スウェーデンはいかにして経済成長と強い社会保障を実現したか〜日本そして世界への教訓(第1回)――元スウェーデン財務大臣 ペール・ヌーデル 
「強い経済、強い財政、強い社会保障」を掲げて誕生した菅政権だが、いまやその姿は全く見えない。一方、世界に目を凝らせば、高い成長と充実した社会福祉を実現している国がある。その一つが北欧のスウェーデンである。
 スウェーデンは、1990年代にバブルの崩壊で、日本をも上回る金融危機を経験した。日本との違いは、その90年代に税制、財政、福祉、年金制度について、「世紀の大改革」と呼ばれる構造改革を敢行したことだ。
 もちろん、社会保障も含めた国民負担率は65%と日本の39%を大きく上回るが、国民はこのスウェーデン・モデルを支持している。いまや同国は高福祉・高負担の停滞した国ではない。
 スウェーデンはどのような改革を行い、競争優位を確立していったのか。2004年から06年に、財務大臣を務めたペール・ヌーデル氏の特別寄稿を掲載する(※本寄稿は11月中旬に日本総合研究所主催で行われたシンポジウムおけるキーノートスピーチを要約した)。
民主主義、情報技術、市場経済という三つの大変革が地球を飲み込んだ
ペール・ヌーデル/1963年生まれ。法務省勤務を経て、94年国会議員に初当選。97年〜2002年社会民主労働党政権で首相筆頭補佐官、02〜04年政策調整担当相、04〜06年財務相を歴任
 過去20年間において、三つの大きな波、あるいは革命と呼んでいいかもしれない変化が、地球全体を飲み込みました。
 第1は、民主主義の波です。1989年、これはベルリンの壁が崩壊した年ですが、米国のNGOの統計によれば、当時は、実質的な民主主義国家は、 世界の中でも69ヵ国しかありませんでした。それが今日では120カ国以上の国々が民主主義と認められています。今や人類が共存していく一つの標準が、民 主主義であると考えられています。
 2番目の変化は、大量の情報伝達という目に見えない波です。私たちのほとんどが、いまポケットの中に携帯電話を持っています。しかも、この携帯電 話は単なる携帯電話でなく、強力なコンピュータです。IT革命はわれわれの日々の生活を、劇的に変えました。情報技術によって、人々はつながり、それと同 時にどんどん市場が大きくなってきました。
 このことが3番目の変化につながります。市場経済原則の上に構築された、巨大な新規市場の台頭です。つまり、非効率な計画経済はもう時代遅れとなってしまいました。共産主義の衰退とともに、新たに生まれた市場経済が、過去20年間に世界を席巻してきました。
次のページ>>世界レベルで見れば、民主主義はまだ弱い
その結果、世界経済の規模は、1999年の31兆ドルから、2008年の62兆ドルへと倍増しました。このように大きな成長があったにもかかわら ず、インフレ率は低く、06年、007年の2年間は、124カ国が4%以上の経済成長を達成しました。これが過去20年間における、素晴らしい経済成長の ピークであったと言えるでしょう。
 この民主主義、情報技術、市場経済という三つの大変革は、個人、産業、国家それぞれに、大きな変化がもたらしました。例えば、中国だけでも、経済成長によって、実に5億人が貧困から抜け出したのです。
 成熟した市場経済の国々、例えばスウェーデンなども、強力な経済発展の恩恵を享受することができました。輸出主体の国々は、急速な世界市場の拡大 によって、大きなメリットを得ました。スウェーデンのGDPに占める輸出の比率も、1990年の30%から昨年には50%にまで高まりました。
環境、不均衡、国際レベルの民主主義という三つの新たな課題
 しかし、20年間の素晴らしい世界経済の発展の結果、三つの大きな問題が発生しました。
 まず第1点目が環境問題です。新興国は富においても社会福祉の面でも、先進国に追いつくために、成長を追い求めています。CO2の排出量を削減することと、この成長をバランスさせる難しさは、皆さんご存じのとおりです。
 2番目の問題は、急速な経済成長によって、非常に大きな世界経済の不均衡が生まれたということです。もっとも顕著な不均衡は、アメリカと中国との間の貿易不均衡でしょう。
 3番目の問題は、国家のレベルでは、民主主義は間違いなく勝利を果たしましたが、世界レベルでは、民主主義はまだまだ弱いということです。実は国 連のシステムは、1945年当時の世界を反映したものです。08年に金融危機が発生し、世界的な協調が必要とされたときに、OECDよりも、あるいはブレ トン・ウッズ体制よりも、G20の方が現在に適合した機関として、機能することができました。
次のページ>>今なぜスウェーデン・モデルが有効なのか
 さらに、グローバルレベルで、どうやって、こうした民主的な制度を打ち立てていくかという問題は、国家レベルでも挑戦を受けています。ヨーロッパにおいては、現在、この民主主義がポピュリズムや左派・右派からの批判といった形で、さまざまなチャレンジを受けています。
 これまでの経験を鑑みると、これから先の数年間は、政治的にも経済的にも、相当の試練が待ち受けていると思います。新たな地政学的勢力図が、姿を 現しつつあります。政治的なパワー・バランスは東、西、北、南との間で調整されなければならないでしょう。財政赤字、債務、高失業率に苦しむ国々も出てき ます。デフレや弱い国内需要に苦しむ国も出てくるでしょう。それによって、多くの政府は政治不信に直面することになるでしょう。金融危機の余波によって も、政治的な危機が起きるかもしれません。
 しかし、私は金融危機が起きる前よりも、現在の方がスウェーデン・モデルから学ぶ教訓は多いと信じています。水晶玉を見て占うより、バックミラーを見て、歴史から学ぶ方が私の好みです。そこでスウェーデンの改革の歴史を振り返ることから始めましょう。
スウェーデンの歴史から学べること1990年代の構造改革とその結果
 19世紀後半、スウェーデンは欧州における最も貧しい国の一つでした。しかし、その後スウェーデンは、急速に近代の産業国家へと変貌を遂げることができました。
 つまり国、企業、労働組合との間の暗黙の三者協定が、スウェーデン・モデルを完成させたのです。市場経済と高い税率、収益性の高い産業と強い労働 組合、そして活力ある民間部門と質の高い公共セクターの組み合わせは可能であるということを、スウェーデン・モデルは証明しました。
 スウェーデン以外の多くの人々は、スウェーデンをモデルとするか、それを拒否するかのどちらかでした。1994年には、スウェーデン・モデルは大 混乱をきたし、そのときにさまざまな疑問が出てきたからです。1990年代の初頭、スウェーデンは1930年代の大恐慌以来、最悪のリセッションに陥って いました。その当時、3年間で政府債務が倍、失業率は3倍、公的赤字が10倍になりました。
次のページ>>スウェーデンは本当のところ何を実行したのか?
94年の政府予算の赤字はOECD諸国中最大であり、GDPの10%にも達したのです。実質金利ショックというものが起こり、国内需要は低迷しまし た。90年代初頭の問題の一部は、80年代の政策、しばしば自国通貨クローネを切り下げていたことに、関係していました。通貨の引き下げによって、本来な ら必要な構造的な変化が行われなかったからです。
 94年に誕生した新しい社会民主党政権は、この通貨切り下げ戦略は失敗だ、だから決然とした行動が必要だと考えました。つまり、財政赤字を大幅に削減することによってのみ、スウェーデンは安定的で持続的成長ができると、判断したのです。
 それで何をしたかというと、われわれは増税を実施し、歳出削減をしました。苦闘の4年を経て、98年にはなんとか財政黒字を達成しました。
 財政再建プログラムを実施すると同時に、いくつもの構造改革を実行しました。主のものは次の四つ点です。
@ EUに加盟して、域内市場にアクセスしました。
A 年金制度の大改革を実施しました。年金制度を持続不可能な賦課方式から、一部、積立方式を取り入れた、定額拠出制度に変えました。
B 新しい予算策定プロセスを設定しました。歳出に上限を付けて、黒字目標を設定するというシステムです。
C 中央銀行に独立性を与え、インフレ・ターゲティング政策を採用しました。
 結果はどうだったでしょうか。
 第1が高成長の実現です。この10年で、スウェーデンはEUあるいはOECD諸国の平均よりも、高い成長率を記録しました。
 第2が高い雇用率です。雇用率はEUの中では第2位であり、直近の金融危機の前で、失業率は4%程度にまで低下しました。
 第3が低いインフレ率、第4が強い財政です。私が財務大臣だった2006年には、財政黒字はGDPの3%に達しました。
次のページ>>構造改革の結果得られた6つの競争優位性
構造改革の結果得られた6つの競争優位性
@ 強力な国家財政 この過去の実績から何が言えるでしょうか。ほかの国が学ぶことのできる競争優位性はあるのでしょうか。私の答えは次の通りです。
 第1は強い国家財政が、規模が小さくて、開かれた経済における脆弱性を低下させるだけでなく、低インフレと高い実質賃金を可能とする、機能性の高い経済の基盤となるということです。
 重要なことは経済政策のために、財政目標の枠組みがきちんとできるということです。
 90年代の財政再建の過程で、長期的な目標は政府と議会により設定されました。最初からそういう長期目標設定がプロセスに入っているわけではなかったのですが、目標設定が、歳出削減を行うのに有効な道具となりました。
 ターゲットを設定したことで、政策を測定し評価することが可能になり、政治家や公務員の削減への動機付けとなり、説明責任も果たされるようになり ました。つまり、長期目標設定はパワフルなコミュニケーションのツールであり、政府がその優先事項について、はっきりとメッセージを出せるようになったの です。
 1996年から2000年の間に、失業率を8%から4%にするということが、政府の最も重要なターゲットであり、まさにこれが雇用に関しての論議 の争点になりました。そして社会民主党は、自らが達成したい目標――すべての人のための公平さと富、経済の回復と社会的正義に焦点を当てた財政再建――を 明確に掲げました。
 加えて、政府は財政的な目標も設定しました。1998年には予算は均衡させる。もう一つは1回の景気循環を通して、平均すれば財政黒字をGDPの1%にするということです。
 財政黒字の達成には、いくつかの動機付けがありました。まず、21世紀には、高齢化の進展によって、財政は非常に圧迫されます。財政黒字によって、この問題への首尾一貫した対応が可能になるということです。
 次がリセッションが訪れたときに、公的セクターで経済を安定させる余力を確保しておくということです。GDPの1%の黒字があれば、財政赤字拡大 の脅威にさらされずに、対策を取ることができます。また、外国からの借金を増やさずに、民間セクターが高水準の国内投資を行う余地を生むことになります。
次のページ>>われわれは、フェアな貿易主義者である必要がある
 不景気のときに、財政黒字がスウェーデンの脆弱性を抑えることができることは、疑いようがありません。強い財政と持続可能な財政黒字によって、リーマンショックなど昨今の金融危機に際しても、その悪影響をより小さいものにとどめることができたからです。
A 開放的な経済政策
 二つ目の競争優位性は、スウェーデンがオープン・エコノミーだということです。スウェーデンには、いろいろな国際的企業があります。世界中でよく 知られているのは、例えばABB、エリクソン、H&M、IKEA、スカニア、サーブ、ボルボなどです。われわれの輸出のレベルはGDPの50%を占め、輸 入はGDPの42%を占めています。小さな、そして開かれた国として、スウェーデンは長い間、自由貿易を支持してきました。
 しかし、私どもは決して、その自由貿易が当然だと思ってはいません。最近でも、いろいろな国で、保護主義が台頭し、多くの人々は激しくなる国際競争を恐れています。しかし、保護主義というものは、問題の解決策にはなりえません。
 逆にこの20年間、自由貿易が世界経済の成長を牽引してきました。将来にわたっても、自由貿易は高い成長を実現するために必要です。したがって、 われわれは自由貿易に対する支持を、国際的な場でしっかりと訴えていかなければいけません。同時にわれわれも自国の産業を守るために、他国の産業に来ても らっては困るというような態度ではいけないわけです。
 われわれは自由貿易主義者ですが、それだけでは十分ではありません。われわれは、フェアな貿易主義者である必要があります。
 依然として、世界には豊かな国と貧しい国の間に、非常に大きな貧富の格差があり、そのプレッシャーが、より豊かな国にかかっています。スウェーデ ンは、その責任を果たすということで、国民総所得(GNI)の1%を、ODAとして拠出しています。われわれはG8のメンバーではありませんが、この 「G1」を、非常に誇りに思っています。
 豊かな国々が、完全に市場を開放しない限り、ODAを拡大して支援していくことは必要です。私たちは富と市場を分け合わねばなりません。支援ばかりでなく、われわれは国内市場を開かなければなりません。
 豊かな世界は、1日当たりに10億ドルを農業の補助金につぎ込んでいるのですが、ODAはすべて合わせても、1日当たり3億ドル以下です。われわ れは、世界の上位10%の人々があらゆるものの85%を所有しているという世界に生きているのです。こういう世界は維持できるものではないのです。(以 下、後篇に続く)

02. 2010年12月18日 19:08:27: ibwFfuuFfU
日本でもアメリカでも英国でも大学作りすぎとちゃう。基本的な読み書きもできない大学生を量産する大学はスクラップして、職業訓練校でも作ればいい。月並みだけどさ

03. 2010年12月18日 19:16:01: GDaS0zYyCs
いつの時代でも馬鹿は月謝を払い、だな。

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