04. 2010年12月17日 20:44:38: Pj82T22SRI
wiki/外貨準備1960年代末ごろから日本や西ドイツの経済的躍進が続き、アメリカの国際収支は次第に赤字が続くようになった。これは翻って日本や西ドイツにおける外貨準備の増大と通貨発行量の増大を意味した(これ以降の日本の外貨準備高の変遷は右グラフを参照)。アメリカはドルの価値を保持することよりも経済政策の自由度を高めることを求め、ニクソン・ショックにより主要国は変動相場制へ移行した。以後、管理変動相場制を掲げてしばしば行なわれた為替介入により各国の外貨準備高は変動した。しかし、先進国の多くは自国の経済的パフォーマンスを裏づけとして通貨を発行するようになり、外貨準備の意味合いは相対的に失われた。 ユーロダラーが隆盛を極めるようになると、固定相場制かつ国際収支が赤字で通貨が過大に評価されていると思われる国々は次々に為替攻撃を受け、外貨準備を喪失して固定相場制を放棄せざるを得なくなった。こうした事例は1990年代に頻発し、ポンド危機、アジア通貨危機を引き起こした。 21世紀に入ってからは、固定相場制かつ国際収支が黒字の国々が、記録的な外貨準備高を保持するようになった。そういった国々には中国や産油国などが挙げられる。これらの国々はアメリカとの貿易が経済上重要であるため、安定性を確保する目的から事実上の固定相場制を採用している。結果的にアメリカの巨額の経常赤字を資本輸出によってファイナンスしていることになる。 日本の外貨準備高の変遷(1996年10月〜2007年12月) これと同様のことが、近年の変動相場制の日本などでも起きている。2003年から2004年にかけて、主に国内輸出産業の振興政策として急激な円高を避けたいために[要出典]、俗に日銀砲と呼ばれた溝口善兵衛財務官主導の史上空前のドル買い為替介入が行われ、ドル建て外貨準備が激増した(右グラフ)。このとき不胎化政策がほとんど行なわれなかったためにベースマネーが増加し、国内では記録的な自国通貨の発行が行われたためリフレーション気味な状況となり[要出典]、不況の底を打って2006年まで続く好景気のきっかけとなった[要出典]。 これに加え、本来の変動相場制であれば貿易黒字の膨張が為替レートで調整されるところだが、為替介入により実際の名目為替レートは円高にならず、実質実効為替レートの低下(円安)が進んで(こちらのグラフ参照)日本の資産が相対的に割安になったことと、同時期に行われていたゼロ金利政策が加わって、過剰流動性を背景にしたバブル経済が、日本だけでなく世界中に及ぶこととなった[要出典]。 また、日本政府は外貨準備の運用方法を開示していないが、大部分が米国債で運用されていると指摘されている[5]。 なお、平衡操作がおこなわれていない2004年度から2009年度にかけて日本の外貨準備高は増加傾向で推移しているが、これは外貨建て運用収入が外為特会の歳入に直接組み入れられず、外貨のまま運用された影響を受けている(『特別会計に関する法律』では運用収入を外為特会の歳入とする事が定められているが、実際には外貨建て運用収入の円換算相当額を為券で調達し、歳入に組み入れていた[6])。財務省が公表している「外貨準備等の状況」については、外貨準備のうち「証券」と「金」が時価評価されている影響も含む[7]。 ちなみに、日本の外貨準備の運用収入(外貨証券や外貨預金等に係る利息収入等)は、平成19年度(2007年度)には過去最高の4兆3086億円にのぼったが、翌年度には3兆6303億円まで減少している。[8]。 日本の外貨準備高は2006年度末現在で119兆8267億93百万円[9]であり、変動相場制を維持する上で必要とされる実務的な準備水準としては、過剰な水準である[10]。 過剰な外貨準備の問題は、対象国(日本の場合は主に米国)の通貨政策や財政政策により、自国の財政基礎が大きく損なわれるリスクを抱える点にある。対象国が低金利政策を採用し自国通貨安を志向した場合、日本の外貨準備運用(ドル建て米国債券価格)が下落し外貨準備が目減りする可能性がある。また対象国が積極財政により国債増発に動く場合にも同様の問題を抱える。加えて、新興国は一般に自国通貨金利が高いことから、金利の低い先進国通貨での外貨準備はネガティブキャリーとなる(国内で高金利で政府短期証券などを発行して自国通貨を調達し、介入原資にあて低金利の米国債などで保有することになるため。日本の場合、円金利がドル金利やユーロ金利よりも一般に低いことから、キャリー収益はプラスとなる)。このため逆サヤ国では外貨準備の積極運用への動因がつよく、韓国ではABS(不動産担保証券)に外貨準備の10%を越える投資をおこなうなど国庫の安定性に問題を抱えることとなる。 過剰な準備高を減らすためには外貨(ドル)売りをする必要があるが、ドル売りや運用しているドル建て米国債を売却したりするとドル安円高を誘導してしまうので、この蓄積された準備高の取り扱いは難しく、いわゆる「霞ヶ関埋蔵金」の一つとされている[要出典]。 2008年11月のG20金融サミットで麻生太郎首相は、日本の保有外貨準備高からIMFに10兆円を支出し世界経済を支えると宣言した。IMF出資は外国為替資金特別会計の項目の一つであり、この支出に対しては返済等見返りがあるはずなので、死に金になってしまっている日本の外貨準備運用の多角化と活用、国際貢献の手段としては有効かもしれない[要出典]。 日本と同様に巨額の外貨準備を米ドル建てで保有してきた中国では、米ドルの長期低落傾向に対し、外貨準備の運用先を多様化するなどでリスク分散を図る[11]とともに、米国住宅バブル問題(サブプライムローン#問題点を参照)などで疲弊した米国金融資本に資本参加する[12]など戦略的な運用がされているが、2008年の金融危機でこの出資は損失を出した。このことは外貨準備高運用の難しさを示している。しかし中国の場合は、日本と異なって、その豊富な米ドル準備高を米国に対する有効な政治・外交カードとしても使用できる[要出典]。 脚注 [編集] 1. ^ 対外ファイナンスが困難になった場合の当該年に支払期限が来る債務。 2. ^ 通商白書2005年度版 第1章第5節[1] 3. ^ 平成10年6月15日廃止 4. ^ 金および外貨資産の一部は日銀が保有。なお1980年に外為法改正が行われ外貨取引は原則自由化(事前許可・届け出必要)され、MOF勘定は日銀に戻された。1998年の第2次改正により完全自由化。 5. ^ 2000年度以降に大まかな内訳が開示されるようになった(外貨準備等の状況(財務省)を参照)。またその運用は、実質的に米国債、預貯金、金などに限定される方針が財務省から出されている(外国為替資金特別会計が保有する外貨資産に関する運用について(財務省)を参照)。 6. ^ 「会計検査院 平成18年度決算検査報告 第6章第1節第4ー1外国為替資金特別会計の状況」[2] 7. ^ 『外貨準備等の状況』の(注1)[3] 8. ^ [4] 平成20年度 外国為替資金特別会計財務書類 9. ^ 外国為替資金特別会計(平成18年度)財務省HP[5] 10. ^ 通商白書2005年度版 第1章第5節[6] 11. ^ 再送:中国国家投資ファンドが業務開始、外貨準備2000億ドルを運用(Reuters, 2007年10月01日) 12. ^ 米モルガン・スタンレー、中国政府系が5700億円出資(日本経済新聞、2007年12月19日) 文献情報 [編集] * 「為替制度」財務省HP[8] * 「外国為替資金特別会計」(平成14年度)財務省HP[9] * 「外国為替資金特別会計」(平成18年度)[10] * 「外国為替資金特別会計の現状と課題」渡瀬義男(国会図書館レファレンス2006.12 国立国会図書館調査及び立法考査局)[11] 関連項目 [編集] * 国際収支統計 * 準備通貨 * 各国の外貨準備高一覧 * 金本位制 * 米国債 * 為替レート * ソブリン・ウエルス・ファンド * ヘッジファンド * ロンドン金融市場 * ニューヨーク金融市場 * 為券 |