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株式日記と経済展望
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アイルランド危機の根は根深い。政府・民間をあわせてGDPの約8倍と
言う資金をかき集め、これをディリバティブや不動産投資につぎ込んだ。
2010年11月17日 水曜日
◆アイルランド、支援要請を近く判断=1000億ユーロとの観測も 11月17日時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010111700159
【ブリュッセル時事】ユーロ圏財務相会合が16日開かれ、アイルランド政府は同国銀行部門の再建に向け、欧州連合(EU)に緊急融資を要請するかどうか集中的に検討することを決めた。早ければ数日内に結論を出す。ユーロ圏諸国は同国から支援要請があれば、ユーロ圏の安定のため速やかに対応することを確認した。
アイルランド政府は金融危機の影響で経営難に陥った銀行の国有化などに乗り出し、財政が悪化している。必要となる支援規模は不明だが、融資額は1000億ユーロ(約11兆2000億円)との観測も出ている。今春のギリシャ支援は1100億ユーロだった。
今後アイルランドは、銀行部門の再編をめぐるEU欧州委員会や欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)との協議を加速。近く詳細を固める健全化計画に、支援要請の必要性を盛り込むか決断する。
◆ケルトの猫が泣き出した アイルランドの財政危機 11月16日 おゆみ野四季の道
http://yamazakijirou.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/221116-b6bb.html
リーマンショック前までIT産業と金融業でわが世の春を謳歌していたアイルランドが悲鳴をあげている。
かつては「ケルトの虎」とまで言われヨーロッパ中の羨望の的だったが、今は「ケルトの猫」とさげすまれている。
ヨーロッパでは昨年来のギリシャ危機が小康状態になっていたら、今度はアイルランドが火を噴き始めた。
EUに対し金融支援措置による600億ユーロから800億ユーロ(7兆円から9兆円)規模の融資を要望したからだ。
市場はびっくりして国債利回りが急騰し一時は9%を越えてしまった。これより上はギリシャの11%台だから、ギリシャの次はアイルランドと見られている。
アイルランド危機の根は根深い。政府・民間をあわせてGDPの約8倍と言う資金をかき集めたといわれ、これをディリバティブや不動産投資につぎ込んできたが、リーマンショックでいっぺんに焦げ付いてしまった。
注)アイルランドのGDPは約20兆円で、その規模で海外から約160兆円の資金をかき集めた。延滞率は不明だがアメリカのサブプライムローンの延滞率約50%、プライムローンの延滞率10%から推定すると最低で16兆円、最大で80兆円の不良債権を抱えていることになる。
リーマンショックが起こると政府は6大金融機関をすばやく国有化し、預金の全額保護措置を発表し、さらに政府資金をつぎ込んできたのに、ここに来て再び政府資金をつぎ込まざる得なくなった。
アングロ・アイリッシュ・バンクに約1兆円の資金の投入が必要になったからである。
しかもこの金融機関だけでなく他の金融機関にも資金投入が必要だ。
「どうやらアイルランドの資金ショートは近いらしい」市場から見抜かれている。
注)アングロ・アイリッシュ・バンクには過去に3兆円近くの公的資金が投入されている。アイルランド版長銀だと思うとイメージがわく。
アイルランドの経済危機がリーマンショックから2年たって発覚してきたのは借り入れに長期資金が多く、しかもその返済期限がせまって来たからだ。
「不動産価格が上がって、何とか不良資産を隠せるかと思っていたが、もうだめだ・・・・・」
日本のバブル崩壊後の金融機関と同じで、いつまでたっても不良資産の処理をしきれない。
一方で政府はEUの緊縮財政に呼応して、年金保険料徴求の強化や教育費を含めた政府支出の削減に取り組んでいるので財政支援はできない。
EUの中ではユーロ安によってドイツだけが経済が好調でドイツに支援要請が殺到し始めたので、ドイツは逃げ腰になった。
「欧州版IMFを設立するとしても投資家にも相応の負担を求めるべきだ」
欧州版IMFの創設には時間がかかりそうだ。
残された道はECB(欧州中央銀行)によるユーロの印刷だけになってしまい、またユーロ安が始まった。
結局欧州も日本の失われた20年と同じで、不良資産問題で経済が失速し、完全な低成長時代に入ったと思ったほうがよい。
残された対応策としてアメリカも日本もEUもお金のたたき売りを始め、通貨価値引下げの競争をしている。
結局は世界的なインフレーションが起こり、それが借金の棒引きにつながるのだろう。
「160兆円の借入、それが何ですか。私の給与はインフレで1兆円です」そうした時代が近づきつつある。
注)今朝(16日)のNHKのニュースでギリシャの財政赤字に改ざんがあり(当初13%台といっていたが、実際は15%台)、またポルトガルがアイルランドと同様にECBに対し融資を依頼したと報じていた。
(私のコメント)
不動産バブルの崩壊は、日本の例をあげるまでも無く、少しぐらいの景気対策で収まるものではない。昨日もアメリカの金融政策を述べましたが、ドルをばら撒けばインフレが発生して借金が軽くなると思うのは間違いだろう。日本の金融当局もまた景気が良くなれば不動産市況も回復して元に戻れると楽観していた。
しかし不動産市場は、いったん頂点を打つとズルズルと10年20年と下げ相場が続く。住宅ローンなどは30年以上の長期ローンが主力であり、再び不動産ブームが起きるにはそれだけ長い期間がいる。だから数年もすれば住宅市況が持ち直して銀行も一息つけると言う事は無く、年数が経てば経つほど不良債権の額が大きくなっていく。
アメリカはそれに対してFRBが50兆円の国債の買いオペでインフレにしようと言う事ですが、商品相場の高騰や金利の高騰などの副作用がある。それで住宅市況がバブルの水準にまで戻るかというと無理だ。銀行も不良債権の増大で苦しんでおり、新たに住宅ローンを拡大しようとは出来ないだろう。
アイルランドの金融危機は、アイスランドやギリシャの金融危機で想像はできましたが、国の規模がだんだんと大きくなり金融破綻の規模も大きくなりEUだけで支えきれるのだろうか? アイルランドはGDPの8倍もの資金をかき集めて、デリバティブなどの金融商品に資金をつぎ込んだ。それがサブプライムローンなどの焦げ付きやリーマンショックで一気に焦げ付いてしまった。
数年も経てば、それらの債券の償還期限が次々やってくるからデフォルト騒ぎが起きる。ECBなどからの融資で先送りにする事は出来るが、借金の中身が変わるだけだ。アイルランドもこれといった産業が無く、金融立国もいったん破綻してしまうと借金返済の目処が立たない。
金融立国とは、カネを借りてそれをまた貸しして利ざやを稼ぐ事を国の産業政策にすることですが、国家的な規模でそんな事が出来るはずもない。シンガポールや香港などの規模の国家でも中継貿易や精密加工品などの非金融業も無ければ成り立たない。
アイルランドばかりで無くポルトガルも金融危機が表面化するかもしれませんが、ドミノ倒しのように金融危機は規模が大きくなり、それらの国に資金を貸し込んだ国も焦げ付きで足元にも火がつくようになるだろう。ドイツだけがEUの中では経済力がありますが、ドイツなどで支えきれなくなればユーロはどうなるのだろうか?
解決方法としては意図的にインフレを起こして借金を軽くしていく方法ですが、その前に金利の高騰が起きて国債がパンクしてしまう。日本でも国債の残高が1000兆円だとして1%も金利が上がれば10兆円の財政負担が増える。アメリカやヨーロッパでも同じであり通貨のばら撒きでインフレを起こしても金利が高騰してやられるからそれも無理だろう。
日本は20年間もゼロ成長を続けているのも、金利をゼロにして銀行に金利分を資金援助して体力の回復を待っているのですが、20年経っても不良債権の処理の後始末はまだ克服できていない。企業も借金減らしに邁進して内部留保を大きく溜め込んでいる状況であり、200兆円も溜まっている。
日本の場合は金融がガタガタになっても国内産業は強力であり、中国やアジアとの貿易で経済は堅調であり、金融も国内だけで処理することが出来た。経済学者やエコノミストの中には物作りは止めて金融立国を目指せと言う無責任な意見もありましたが、実物経済がなければ金融だけで稼ぐ事がいかに危険かはアイルランドやアイスランドを見れば良く分かる。
金融で稼げなければ輸出で稼ぐしか方法はありませんが、アイルランドに輸出できるものは農産物と人間しかない。国内には産業らしい産業が無く、仕事の出来る優秀な人は海外に移民して行った。イギリスやアメリカとの関係が深く英語を話す国民であるにもかかわらず、これといった産業が育たないのはなぜなのだろうか?
アイルランドは人口が360万人ほどで、北海道くらいの国土面積で土地は貧しく、第二次大戦後の1949年になってイギリスから独立した。EUとユーロに加盟する事は一躍巨大経済圏の一員となることであり、無理を重ねた事が今回の金融危機の元になっているのだろう。つまりアイルランドはヨーロッパにある新興国とも言える。
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