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http://jp.wsj.com/US/Economy/node_148104
これほど、米国の大統領と財務長官が世界の経済サミットで総スカンを食った例がかつてあっただろうか。ソウルで開かれた今回の20カ国・地域(G20)首脳会議のような例は一つも思い浮かばない。オバマ大統領は、主要な目標を一つも達成できずに終わる一方、米国の政策のつまずきと経済成長の遅れを各国首脳からたたかれる羽目になった。
この不面目の根本原因は、政治面と知性面にある。オバマ大統領とガイトナー財務長官は、強い立場から世界を引っ張るどころか、ソウルにやって来て米国の経済不振を諸外国のせいにした。両氏の見方では、米国の問題は、ドイツ、中国、ブラジルの輸出、為替政策によるものであり、米国の解決策はといえば、ドル安になるくらい連邦準備理事会(FRB)にドルを刷らせ、諸外国から需要を横取りすることで米国が成長できるようにするというものだ。
しかし、米国のこの繰り言に誰が耳を貸すだろう。ドイツは2009年に、米国の大規模財政出動による景気刺激に足並みをそろえるよう求めたガイトナー財務長官の助言をはねつけて以降、急成長している。中国もやはり、米国の3代の政権による為替改革要求をはねつけて、順調に成長している。英国や、フランスですら、一層の財政引き締めに取り組んでいる。財政と通貨の両方の蛇口を大きく開きっぱなしにする決意を固めているのはオバマ政権だけだ。その一方で、国内の経済不振を諸外国のせいにしている。
米国の失政は、貿易面で最も深刻だ。米国と韓国は、両国が3年前に調印済みの二国間協定について合意できなかった。オバマ大統領は2008年の選挙運動でこの協定に反対し、大統領在職中の2年間、協定をなおざりにした。そして今になって唐突に新たな条件への同意を韓国に求めている。
しかし、韓国もそれほどお人よしではない。見返りに米国から新たな譲歩を引き出そうとしている。韓国からすれば、米国との貿易協定を緊急に結ぶ必要性はない。オバマ大統領が時間を空費している間に、韓国は諸外国と貿易協定の交渉を重ねてきたからだ。とりわけ欧州連合とは、ブッシュ政権が2007年に取り決めたものとほぼ同じ条件の協定を締結済みだ。オバマ政権の交渉担当者は手ぶらでソウルをあとにした。
一方、中国をはじめとするアジアの経済国は、米国の金融緩和が、(アジアの輸出業者が依然頼りにしている)米国の成長拡大に拍車をかけるより、むしろ途上国の経済を吸収しきれないドルであふれさせ、アジアの輸出に不利益をもたらす為替レート不安を生み出すとともに、世界のドル建て商品相場を高騰させてきたことを、身をもって認識している。
オバマ大統領は、こうしたFRBの政策と距離を置くどころか、一度ならず、それを擁護した。オバマ大統領はソウルで次のように語った。「あらゆる点から見て、この決定は、ドルに影響を及ぼすことを意図したものではなく、経済を成長させることを意図したものだった」
しかしこの擁護は、米国の金融緩和の目的がもっぱら国内的・政治的なものであることを諸外国に向けて追認するものでしかない。米国の中央銀行たるFRBは独立しているはずではないのか。商品相場の高騰が消費者物価へと波及し、米国民が今以上に貧しさを実感するようになれば、オバマ大統領はバーナンキFRB議長の政治的擁護を悔やむことになるだろう。
オバマ政権の怪しげな通貨理論は、元高・ドル安を目指した、中国との見込みのない交渉への取り組みに貴重な政治的エネルギーを浪費することにもつながった。オバマ大統領はむしろ、中国の資本勘定の改革を訴えることができたはずであり、そうするのが本当にためになることだろう。中国の為替レート自体は、世界的不均衡を助長してはいない。それを助長してきたのは中国の資本勘定規制だ。
とりわけ、中国政府が、資本のより自由な出入りを許さず、資本流入を不胎化し、それを米国債投資に還流させている現状は、世界的な資金誤配分を助長する。だが、為替問題に気をとられたガイトナー長官は、こうした状況に気付いていない。ドル安による混乱を非難する中国政府に資本規制の緩和を求める余裕もない。
諸外国は、対外収支の不均衡に国内総生産(GDP)比4%の限度を設けるというガイトナー長官の声高な要求もはねつけた。この要求は、貿易や資本移動に対する新たな政治的統制に等しい。これは、カネとモノの流れに障壁を設けることに反対してきた、少なくとも30年前からの米国の政策に反するものだ。米国の財務長官が諸外国からこれほどこてんぱんにされるのは見たくないが、これほど明白な見当違いをしているとなれば話は別だ。
***
これは決して喜ばしいことではない。なぜなら、米国の指導力を欠いた世界は、一層危険な場所になるからだ。米国は依然、世界最大の経済大国、世界の準備通貨の発行国にして、軍事超大国だ。ほかのいかなる国にも、米国が過去70年間主導してきた道を主導する意志や能力はないだろう。米国の影響力低下は、あらゆる国が僅差の優位を追求できる危うい空白を生み出す。
オバマ大統領は、国内外で経済的指導力を取り戻したいのなら、優先事項を至急切り替える必要がある。減税延長問題で共和党に歩み寄り、大統領自身の財政赤字削減委員会が提言した支出削減に取り組み、米国のやる気をそいできた規制熱に終止符を打ち、「グリーン雇用」などの政治的幻想に資本を振り向けることをやめ、韓国などとの貿易協定の批准を議会に迫るべきだ。
米国のたくましい経済成長を回復する政策を打ち出してこそ、諸外国は再び米国の指導力に従うだろう。
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