http://www.asyura2.com/10/hasan70/msg/146.html
Tweet |
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4788
(2010年11月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
大手商社、三菱商事の年金基金の大部分は日本国債に投資されている。10年物国債の利回りが現在の約1%という水準まで低下してきたため、国債は長年、利益の出る投資だった。
だが、日本国債の長い上昇相場は今後も続くのだろうか? 現時点では、これ以上の価格上昇余地はあまりない。そして、利回りが低下するに従って、潜在的なマイナス側面が大きくなっている。
三菱商事の年金運用に携わっているある人物によれば、国債利回りの低下によって同基金は多額の利益を享受してきた。だが、将来は利益を上げるのが非常に難しくなると同氏は認める。
多額の利益を生んできた国債投資だが・・・
実際、日本国債への投資は先々、以前よりずっとリスクが高いものになると懸念する市場参加者が増えている。
外国人投資家は長らく、日本の国債市場を疑ってかかってきた(もっとも、彼らはそのおかげで損をしてきた)。しかし今初めて、日本人投資家の間でも懐疑的な向きが増えている。一部の財務省、日銀関係者さえも、警戒の言葉を口にするようになった。
三井住友銀行は投資戦略を変え始めた〔AFPBB News〕
ある日銀関係者は、今は国債利回りが低位で安定していると指摘する。しかし、日本はこの状況が永遠に続くことを当てにしてはならないと警告し、人々が日本には財政赤字に取り組む意思がないと考えるようになれば、国債利回りに影響が出るとつけ加える。
例えば、厳格なリスク管理文化を持つ三井住友銀行は最近、投資戦略を変え始めた。今では同行が保有する日本国債は、ほぼすべてが1年ないし2年の短期保有となっている。今のような国債の低利回りは永遠には続かないと考えてのことだ。
ある政府高官は、国債市場は今後1〜2年間は安定した状態が続くと考えているが、数年後には財政状況が崩壊すると警鐘を鳴らす。
【5年後には民間貯蓄で財政赤字を埋められなくなる】
数字を見ると、真剣にならざるを得ない。JPモルガン証券のチーフエコミスト 菅野雅明氏によれば、日本の債務残高は今年末までに国内総生産(GDP)の約200%に達し、2014年までに約300%に膨れ上がるという。ただ、これまでは、家計と企業の貯蓄がこうした憂慮すべき数字を埋め合わせてきた。
だが、2015年までには国内の民間貯蓄が不足して財政赤字を埋められなくなると菅野氏は言う。実際、現在の貯蓄率は2%と、伝統的に浪費家の米国家計の貯蓄率を下回っている。さらに菅野氏は、(かつて米国との大きな摩擦の原因となっていた)日本の経常黒字がその後間もなく完全に消滅すると予想している。
現在、日本国債の外国人保有比率は5%程度にすぎない。しかし今後、日本はついに赤字埋め合わせのために国外に助けを求めざるを得なくなり、資金を巡って諸外国と競うことになる。
バブル崩壊を防ぎたいのであれば、日銀は今利上げすべきだと菅野氏は言う。だが、日銀の責務はデフレ退治であり、今金利を引き上げることは、その責務に反するという。
【大量の国債を抱える銀行】
大半の国の政府と同様、日本政府も自国の債務が魅力的に見えるようにゲームを操作する。ソブリン債については保有高に見合う自己資本を持たなくてもいいため、銀行は国債に投資するよう促されている。折しも、ほかの投資に関する資本要件が大幅に引き上げられようとしている時に、これは大きな誘引となる。
日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の元幹部は、政府の優先事項はお金が政府の証券に流れ込むようにすることだと説明する。政府も中央銀行もリターンは重視しないという。
一方、多くの年金基金や銀行はまだ、膨れ上がったポートフォリオの潜在リスクに対処し始めていない。菅野氏によれば、日本国債はすべての銀行資産の65%を占めているという。20年前に日本のバブル期が終わって以降、銀行は国債保有高を5倍に増やしてきた。
アナリストらの見るところ、国債利回りが大幅に上昇すれば、日本の国債市場に200兆円のエクスポージャー(投資残高)があるゆうちょ銀行にとっても惨事となる。金融庁の関係者らは、特に地方銀行のポートフォリオ運用能力について危惧している。
銀行の国債保有の度合いからして、利回りが突然上昇し始めたら、こうしたポートフォリオの損失も拡大する。そうなれば、金融の安定性が損なわれる恐れがある。
【失われた20年の後は、これまでよりはるかに悲惨な事態に?】
一方、GPIFは残存期間が平均6〜7年の日本国債を60兆円ほど抱えている。つまり、国債がポートフォリオの圧倒的大部分を占めているわけだ。GPIFの関係者らは、何年もの時間がかかるものの、現在の保有国債で生じる償還差損は利回り上昇によって相殺されると話している。
だが、菅野氏をはじめ一部のアナリストにとっては、この悲惨な結末は事実上、既定路線だ。そして、このことは、日本の失われた20年が近く、これまでよりはるかにひどい事態に発展しかねないことを示唆している。
By Henny Sender
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。