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負の乗数(借金乗数)と財政出動(公共投資)
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投稿者 一言主 日時 2010 年 11 月 05 日 18:52:23: AlXu/i8.H/.Es
 

負の乗数(借金乗数)と財政出動(公共投資)

デフレの原因の一つは、広範囲に及ぶ大きな借金の発生により消費に対する資金が減少することである。

市場に参加している多くの個人や、多くの企業、そし政府が大きな借金をした場合、個々人の所得や、各企業の利益額から、あるいは財源から、借金が差し引かれることになり、支出額が大きく制限される。

デフレが起こる要因は、この図のDF間(赤線)に借金が発生することである。普通の状態ならここに貯蓄があるのだが、貯蓄以上に借金が多くなった場合このような図になる。(http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/hunojyousuuzu2.htm負の乗数図参照)

ここに借金が発生すると、資金が市場から流出することになる。それにより消費額が少なくなり、生産されたものがすべて消費されず、国民所得が減少し
、生産量が過剰になる。これがデフレというものの姿である。

借金が発生すると、人々は先ず初めに借金を所得から返すことになる。借金の返済も、税金の納付や、保険料の天引きなどの国民負担も、ほぼ同じ現象である。

借金が1万円あるとする。その返済には貨幣で1万円返すことになる。この1万円を稼ぎ出すために私達は、原料や材料を仕入れ、人を使い、機械を動かし、電気やガスを消費し、加工し、製品にし、それを包装し、店に並べ、広告を出して販売する。

結局この1万円を返すために我々の市場では、5万円の経済活動をしなければならないものとする。5万円の経済活動をし、1万円の成果を上げ、それを借金の返済に当てることになる。

借金の返済は、資金の市場からの流出となり、消費に使われなかった借金分の消費は、生産物の不良在庫として市場に残ることになる。
この生産物の不良在庫をこしらえた経済活動が、市場の製造費用や、生産量を増やすのである。

その生産量やコストの増加が、供給過剰の正体であり、それが低価格競争を促し、付加価値を減じていく。
デフレ所得線(B)の下側にできる直角3角形(FEG)を眺めればデフレ状況を簡単に想像できるであろう。

それは借金の増加により資金が流出し、生産量が凝縮された3角形なのである。

借金はすべて貨幣量で換算されるため、資金の減少は、特に国民所得の名目GDPを減少させることになる。不良在庫の増加は実質GDPを増加させる。

このような資金が失われる過程で増加する生産量の増大だけをカウントし、実質GDPの伸長を見て、経済が成長していると喧伝するのは如何に愚かしいことであるかご理解頂けると思う。

借金が発生すると、どれだけ国民所得が減少するのであろうか。

これを類推する手掛かりとして乗数理論を利用するのがおもしろいと思う。

資産価格の下落などで、所得100億円のうち借金が20億発生したとする。その借金の返済のための資金は市場外に流出し、それまで市場で取引されていた生産物を20億分買えなくなったのである。

この時借金率は所得の5分の一、20%である。借金は負の貯蓄であり、限界貯蓄性向の逆数が乗数であるなら、借金率の逆数が負の乗数になる。それはー5
になり、20億×5の負の乗数=100億の所得の減少となる。

20億の借金は、100億の国民所得の減少を招く計算になる。はっきりとどれだけ減少するとは言えないが、借金の存在が国民所得を大幅に減少させることは明らかであろう。

「20億の借金の返済は、20億の不良在庫となる生産物を市場に残す。その前の循環では4億を返済し、16億の生産物を作っている。その前の循環では3、2億を返済し、12、8億の生産物を作っている。それが順繰りで生産物の増加が100億になる。その分国民所得が減少したのである。」


わたし自身は、価格弾力性を基礎にした乗数の方がより正しく、減少分を類推できるように思う。

このような借金の発生による国民所得の減少が所得線の角度を下げることになる。この所得線の角度の下降過程ががデフレスパイラルであり、ハートランドからの資金の流出が続き、所得が循環的に特に名目国民所得が波及的に減少する。

ではこのようなデフレ市場で従来型の経済対策を取ればどうなるであろうか。

従来型の経済対策は、公共投資、低金利、補助金などにより主に生産を刺激し、生産量の増大を図り、雇用の増加と共に所得の拡大を目指すものである。

従来型の投資により生産量が増大すると、消費額が変わらないため、一つ当たりにの付加価値が減少する。減少した付加価値の総和が投資した金額に等しくなるまで国民所得が下がりつづける。

例えば20億円の投資を生産量の増加に費やすと、余計な20億の生産量の増加となり、不良在庫となる。この不良在庫を生産するのに、負の乗数が5であるなら、100億の国民所得が必要になる。

購入できない在庫品が市場に残ると、そのために生産物一個辺りの付加価値が減じ、減じた付加価値の総和が20億になったところで、その投資効果が終わることになる。その間に100億の生産物かまたは製造コストが増えることになる。


ケインズの乗数理論では、借金が貯蓄を上回った状態を前提としていない。恐らく考えなかったのであろう。
またもう一つ乗数理論は45度線を前提としているため、生産量と資金量の方向があいまいになっていることだ。

乗数理論は、所得から一定の割合で貯蓄されることを前提としている。消費性向から貯蓄の割合を導き出し
、限界貯蓄性向の逆数を乗数としている。

これにより、投資に等しい貯蓄額を導くには、投資の乗数倍の国民所得が必要であることを論証している。

限界貯蓄性向が10分の1なら、その逆数の10倍が乗数であり、投資分の乗数倍、国民所得が拡大するという理論である。

言い換えると、投資に匹敵する貯蓄額を得るためには、その乗数倍の国民所得が必要ともい言い得る。

ここに借金が貯蓄を上回る事情ができ、代わりに借金が発生すると、例えば所得に対する借金率が10分の1なら、その10倍の国民所得が借金を返すために必要であることになる。

言い換えると投資に匹敵する借金額を得るためには、その乗数倍の国民所得の減少が必要であるといえる。

生産量側への投資を20億円するとそれに匹敵する借金が20億円できるまで、その乗数倍の国民所得が減少するのである。

20億の生産物の増加は、ここの生産物辺りの付加価値を下げる。その下がった付加価値の総和が借金20億円になるまで、国民所得が減少するのである。


貯蓄と借金の違いは、貯蓄は、所得から消費を差し引いた残りの分であるが、借金は、初めに所得から差し引かれるものであり、欠落した分である。

それ故貯蓄は貨幣(名目値)で市場に残るが、借金は貨幣(名目値)で市場から放出されるものである。
それ故貯蓄がプラス部分であれば借金はマイナス部分である。借金率の逆数は負の乗数といえるであろう。


デフレに陥って20年間これまで日本は、成長戦略と称しながら、間違った投資を行い、膨大な借金を作ったことが分かるであろう。

{政府は、デフレ下で、例えば10兆円の投資を生産増のために行えば、国民は10兆円の借金を返すために、50兆円の生産活動を行わなければならないのである。(借金率が20%の前提条件で)}

これで日本人は働けば働くほど貧乏になったのである。そして多くの人が、燃え尽き症候群から、鬱病を発生し自殺者が増えたことも当然であろう。


補正予算など組んで財政出動による投資が行われる場合、1、生産量を刺激して生産の拡大により景気回復を図るのと、2、消費を直接刺激して消費の拡大を通じて景気回復を図る場合の二通りがあるはずである。

しかし現在主要な政策はほとんどが公共投資や、補助金、低金利などによる生産刺激策である。これはケインズの乗数理論が45度線を対象にしており、生産側を刺激するのか、消費者側を刺激するのか曖昧になっているからである。

もし正常な経済において、消費者側に直接投資をして、消費額を増やしたなら、生産量が伸びず、資金だけが伸びバブルになるであろう。それ故乗数理論では、生産者側への投資を重視したのである。

しかしデフレ所得線は、45度以下の角度になっており、この場合、生産量を増やしても、付加価値が減少するばかりで国民所得が減少するのが自明である。
それ故デフレの場合直接消費を増やす方向に資金を投資すれば、所得が拡大することが分かる。

このことから45度線のケインズの乗数理論の場合、借金がある場合には、生産量の増大を図る投資をすると、その投資の負の乗数倍の所得が減少する。

ケインズの乗数理論が正しければ、負の乗数も正しいであろう。
それ故、デフレの場合、経済成長政策と言われる生産刺激策や、公共投資は、経済を著しく縮小させることになる。

このことは、日本政府がこれまで如何に馬鹿げたことをしてきたかを明らかにしている。この20年の間、何度も莫大な投資を国民所得を減少させる方向に使って来たのである。それも波及的循環(デフレスパイラル)に減少させたのであった。


小泉政権時代のいざ凪を越えたと言われたあの長い低成長も、外需を引けば、内需は波及的循環に減少していたのであろう。

ここで今まで私の論文をお読み下さった方々におわびして置かなければならないことがあります。今まで私の主張では、100億の投資が、少なくとも借金率が20%あったとすれば、80億は成長するものとして書いて来たことです。それは間違いでした。

今回の考察で分かったことは、デフレでの生産者側への投資は、それ以上の、あるいはその数倍の国民所得の減少をもたらしているということです。

なんら経済の成長に貢献しておらず、製造コストを引き上げ、利益率の非常に悪い市場を形成していだけだったのです。

これ以後の論文は、これを前提にして考察していくことになります。申し訳ございませんでした。まだまだ発展途上の理論ですので、なにとぞご容赦いただきますようお願い致します。

それでは、私達に、日本になんら明るい未来はないのでしょうか。

今回の考察でより明るい未来がはっきりと見えたのではないでしょうか。

逆に消費者側に直接投資をすれば、その負の乗数倍の国民所得が増え、借金が投資分返済することができるのである。

これまでハートランド理論で、消費者側に直接投資をし、消費を増やし生活を豊かにすることがデフレを解消する方法だと書いて来ました。

今回の負の乗数理論は、それをさらに補強するものです。生産者側への投資は無意味な縮小を招くが、逆に消費者側への資金投入は、その数倍の所得増を招くことが分かります。

私達は、今や、理論的にデフレ解消の方法を知っています。その方法も手段も可能なものであることが分かっています。
後はそれを実践する政治家や政府を作ることだけでしょう。

1、子供手当かそれとも保育所の増設か
2、ガソリン税の軽減か高速道路の建築か

子供手当は直接消費者への資金投入です。保育所の増設は生産量の増大です。デフレでは、子供手当を増やすことが正しい政策になります。

ガソリン税の軽減は間接的な消費への投資です。高速道路の建設は、生産量の増大です。デフレではガソリン税の軽減の方が正しいのです。

このような消費への投資を集中的にすれば確実にデフレが解消します。

しかし今多くの分野で間違った世論が形成されています。この世論の正しい方向への誘導がなされ、消費者への集中投資を実現できる政党や、政府が必要です。

現在の日本の状況は最悪です。間違った経済理論の横行、新聞やテレビ、マスメディヤによって形成された間違った世論により、いよいよ崩落の危機が迫って来ました。

一刻も早く態勢を整え正しいデフレ解消法をする必要があるでしょう。皆様も頑張って下さい。

一言主
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
 

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