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http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Heard-on-the-Street/node_144013
米国の中央銀行は、日を追うごとに地図にない領域へと突き進んでいる。
連邦準備理事会(FRB)は3日、長期国債6000億ドル(約48兆8000億円)を追加購入すると発表した。バランスシート縮小を防ぐための既存の購入計画分と合わせると、国債購入額は6月末までに合計で約8500億〜9000億ドルに達する。1カ月あたり約1100億ドルの計算になり、財政赤字を補填するための毎月の国債純増額と大差ない。
奇妙なことに、FRBが大胆な決断が下したのは、米景気指標が改善の兆しをみせ始めてからだった。製造業は10月に回復をみせ、小売売上高は驚異的な伸びを示し、民間部門の雇用すら徐々に勢いを増している。また、FRBの決定が景気と市場にゆがみを生じさせるリスクがあることは明白だ。
だがFRBの声明文にそのような認識は見当たらない。FRBは、9.7%で高止まりする失業率と、低すぎるコアインフレ率、当面改善しそうにない、さえない国内総生産(GDP)を大義名分にして、今回の措置に踏み切った。
FRBとしては、量的緩和の拡大を市場に広く織り込ませておいて、今さら見送ることはできない、ということだったのかもしれない。2日の中間選挙の結果、政府が追加の景気対策を実施する可能性はさらに低くなり、FRBは緩和拡大に動ける唯一の機関であるようにみえる。
投資家にとっての朗報は、当面、量的緩和の継続が期待できることだ。今回の措置が明確な効果をもたらしたり(その可能性はある)、意図せぬ悪影響がでれば、緩和打ち切りになるかもしれないが、そうならない限り、緩和が続くと考えられるからだ。結局、バーナンキ議長を含む多くの経済学者は、1990年代の日銀の政策について、デフレ対策が十分ではなかったとして、批判している。
FRBが慎重になるのはそれなりの理由がある。初回の資産購入プログラムが今年3月に終了すると、米国経済は「ソフトパッチ(一時的鈍化)」の局面に入った。それまで好調だった株価がその後、下落に転じたのも偶然ではないだろう。
とはいえ、これほどの規模の緩和策が実施されても、米国経済が6月までに目に見える形で回復する保証はない。それどころかFRBの緩和策はドル安を加速させる一方、株価ばかりか商品価格を押し上げる結果になっている。さらに米消費者の購買力を損なうリスクがある。特にコストの増加を賃金の上昇でまかなうことができず、資産効果の恩恵にあずかることのできない低所得世帯の買い控え傾向は顕著になるだろう。
FRBが緩和を続け、資産価値を押し上げようとすると考えられる根拠は多いが、量的緩和が安定した自律回復につながった過去の事例はほとんど見当たらない。浮かれ気分の投資家も、未踏の領域を進み続けるFRBのやり方に、一考の余地ありと感じるようになるかもしれない。
[ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく]
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