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為替ディーラーの間では、ミセス・ワタナベの行動が注目されていた。ミセス・ワタナベが、日本政府の円売りドル買い介入の発動を期待して、このところドル買いのポジションを積み上げていたのだ。
ミセス・ワタナベ――円金利が低いことを利用してFX取引を活発に行っている日本の主婦のイメージから個人投資家をそう呼んでいる。
実際、公設取引所である「クリック365」の売買動向を見るとそのようになっている。
ミセス・ワタナベはドル買い、豪ドル買い、ニュージーランドドル買いなどのポジションを積み上げていたが、昨日の介入により為替が3円円安に動いたところで、売却、利益を上げた。
「クリック365」では一夜にして、9.7億ドル、4.5億豪ドル、5.8億ドルのポジションの解消売りをしている。1ドルを85円、1豪ドルを79円、1ニュージーランドドルを61円で計算すると、この3つの通貨合計で、約1530億円になる(利益は35億円程度)。
「クリック365」のFX取引シェアは1割とのことなので、たとえば、同様のポジションの動きが他のFX公設・私設市場でも展開されていたとみると、一夜にしてミセス・ワタナベは米ドルだけで約8000億円強の規模を売って利益を上げていると見ることができる。
過去の介入は1日1兆円規模だったが、今回2兆円を用意したのは、こうした個人投資家の参戦も含めて市場が拡大していために、巨額の資金を必要としたからと見てよい。
昨日から、グリーンスパン前FRB議長、ユーログループのユンケル議長、米下院歳入委員会のレビン委員長などが相次いで、日本の単独行動を批判する声が出ている。この中で、注目すべきは、ユンケル議長の「単独での行動は世界の不均衡に対処するうえで適切ではない」との発言だろう。
リーマン・ショック以降の動きは、円高というよりも、円安の是正である。1995年の米ルービン財務長官就任以来の「強いドル政策」による国際収支の不均衡の修正だ。こうした大きな構造転換に独りで逆走したのが、日本政府の単独介入である。
世界のマーケットを相手に、独りで円キャリートレードを仕掛ける日本政府に対して、海外からは批判の声が高まるばかりか、カネばかりかかって効果は限定的ということになるだろう。
(大崎 明子 =東洋経済オンライン)
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