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http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201009150491.html
政府・日本銀行が円高を是正するため、ようやく「伝家の宝刀」を抜いた。とはいえ、通貨安を容認する米欧との協調介入はならず、日本単独で巨大な為替市場と向き合わなければならない。介入の効果を高め、円高を抑え込むことができるのか。さらなる追加緩和を含めた日本銀行の対応がカギを握る。
政府が円売りドル買いの為替介入をする場合、ドルを買うための円資金は、政府が「政府短期証券」という3カ月満期を中心とした短期国債を発行し、調達している。
為替介入に使える政府短期証券の発行限度額は2010年度予算で145兆円に設定されている。10年3月末時点では105兆円が発行済みになっているが、これは、過去の介入時に発行した短期証券を借り換えるために発行し直しているからだ。
このため、10年度は残っている40兆円規模で、新たに円売りドル買い介入をすることができる。これは03年1月〜04年3月に介入した過去最大の35兆円よりも多い。今回、政府は「勝ちに行くために介入している」(政府関係者)としており、円高を抑えるための介入が長期化する可能性もある。その場合、介入の規模は大きく膨らみそうだ。
ただ、国際決済銀行の調べでは、1日当たりの円とドルの取引の規模は、04年の1.7倍の5680億ドル(約50兆円)。04年時点と同規模の介入でも、当時に比べて効果は少ない可能性がある。今後、どれだけの円安誘導を続けられるかは未知数だ。
将来的な課題もある。介入して買った外貨は「外国為替資金特別会計」で管理されており、過去の介入で購入した約100兆円の外貨資産が積み上がっている。ほとんどが米国債など。これまで円高が進んできたことで購入時よりも大幅に評価額が減少し、評価損は最近の1ドル=80円台前半では30兆円余りに達した。
一方、評価損に備えるために外為特会に用意された積立金は20兆円。評価損は、すべての外貨建て資産を売却して穴埋めしない限り、実際の損失にはならないが、仮にすべて解消しようと思えば10兆円ほど足りない計算だ。
今回、政府が新たに円売りドル買い介入に踏み切ったことで外貨資産の額は増える。円安誘導が成功したとしても将来再び円高が進んだ場合、評価損は30兆円よりも膨らむ恐れがあり、政府は損がでる危険を内包することになる。
■市場に円が大量に出回れば円安効果も
為替介入によって円高の流れが小休止した外国為替市場。再び円高に向かって投資資金が動き出さないためにも日銀による追加の金融緩和が「不可欠」との指摘が多い。
日銀は15日、円売りドル買いの為替介入で金融市場に投入される円資金の一部を回収せず、市場に出回る円資金の量を増やす「非不胎化」に踏み切る方針を決めた。2003〜04年の介入以来で、市場では、介入の効果が高まる条件の一つとして見られてきた。
円売り介入では、金融機関からドルを買って円資金を支払うため、金融市場に出回る円の量が大量に増える。市場の円がじゃぶじゃぶになれば、金利低下が促され、円の魅力が下がるので、円安効果を高めることが期待できる。
ただ、介入資金で市場に必要以上のお金が出回れば、景気の過熱やバブルを引き起こすことにもつながる。このため、日銀を含む世界の主な中央銀行は、介入で投じられた資金とほぼ同額の資金を、手形などを売却して市場から吸収する「不胎化」をするのが基本だ。だが、日銀は今回、今後の景気が下向く可能性が高まっているため、景気過熱の心配は少ないと判断したとみられる。
さらに、介入の効果を高める方策として市場の注目を集めるのが日銀の追加緩和だ。
日銀が追加緩和に踏み切れば、市場への資金供給量が増え、更に金利の低下を促すことになる。非不胎化による円安効果に、追加緩和の効果が加われば、円安の流れを一層強めることが期待できる。
米欧との協調介入に至らず、日本の単独介入にとどまったことで、市場には「力不足」との見方も多い。こうした状況では、日銀のサポートで介入効果を最大限高める策が最も有力と見られている。(福田直之、大日向寛文)
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