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米倉弘昌・日本経団連会長らが参加する日中経済協会の訪中代表団(団長・張富士夫トヨタ自動車会長)は2010年9月上旬、北京市内で李克強副首相ら政府幹部と相次いで会談し、省エネ・環境分野での協力を確認した。ただ、最大の懸案は、ハイブリッド車のモーターからパソコン、携帯電話などハイテク製品全般の性能向上に欠かせないレアアース(希土類)と呼ばれる素材を、中国が7月に輸出規制すると決めた問題。規制で輸出は前年比4割減になる見込み。
中国はレアアースの世界生産量の97%を占め、輸出規制は価格高騰などの波紋を広げている。このため米倉会長ら民間大手企業トップの訪中が問題打開の契機となることも期待されたが、成果をあげることはできなかった。
■会談相手は温首相でなく副首相
そもそも、今回の訪中団は当初、温家宝首相との会談を予定していたが、「中国西部・甘粛省の土石流災害の復旧活動などで多忙」として見送られる異例の事態となった。2009年秋の日中経済協会の訪中団も、2010年5月の御手洗冨士夫前経団連会長らが訪中した際も、温首相が会談相手になっているが、今回の最高位は李克強副首相。次期首相候補とはいえ「格下感」は否めず、日本側の参加者からは9月初めの会談相手内定時点で既に失望感も漂っていた。
そういうなかでもレアアースの輸出規制問題で日本側が焦点を当てていたのは、7日の工業情報省との協議。しかし、工業情報相は出席しなかったうえ、出席者では中国側トップの楊学山次官は基調報告を終えると早々に退席してしまい、駱鉄軍・同省原材料工業局副局長が事実上、会談相手になった。日本の財界トップも随分なめられたものである。
それはそれとして駱副局長は「カナダや豪州、米国でも生産しているので、日本は調達先を多角化してほしい」と述べ、政府として輸出規制をやめる考えのないことを改めて示した。レアアースをめぐる日中の協議は、8月末に北京で開かれた日中経済閣僚会議でも議論が平行線に終わっており、中国側の態度の硬さを再確認させた。
■技術支援をテコに中国から譲歩を引き出す方針
ただ、駱副局長は「日本以外の輸入国からも問い合わせがあるため、何らかの検討の場は設けたい」とも述べ、2011年以降に譲歩の余地がある可能性だけは残した。中国の決めた輸出規制は10年の措置ということになっており、今のところ11年以降は未定ということにはなってはいる。
一方、副団長の大橋光夫・昭和電工相談役が「資源の乱開発で生じる土壌汚染への対処が重要」として環境技術で支援する考えを示したことに対し、翌8日に会談した李克強副首相は「価値がある」と歓迎する考えを示した。こうした技術支援をテコに中国から譲歩を引き出す種まきだけは辛うじてできたと言えようか。ただ、張団長が直接、改めて懸念を伝えた輸出規制自体について、李副首相は会談中ついに触れずじまいだったといい、今回の訪中の「不発」ぶりを象徴するものとなった。
レアアースの9割を中国からの輸入に頼る日本側は「今後もあらゆるルートを通じて中国の見直しを迫る」(経団連幹部)という。ただ、中国側も簡単にこのカードを手放すとも見られず、日本企業はリサイクルや代替材料の開発などを急ぐ必要がありそうだ。
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