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<新銀行規制>「バーゼル3」合意 自己資本の質・量強化
毎日新聞 9月13日(月)22時14分配信
主要国の銀行監督当局でつくるバーゼル銀行監督委員会は12日、国際展開する主要銀行に対する新たな自己資本規制「バーゼル3」について合意した。新規制の柱となる「狭義の中核的自己資本」の最低比率については、不況に備えるための上積みを含めて7%以上を求めた。13年から段階的に導入し、経過期間を6年とし、19年1月に全面適用する。11月にソウルで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に提案し、最終決定する。【中井正裕、清水憲司、ロンドン会川晴之】
◇19年完全実施
バーゼル3は08年秋の世界的な金融危機の再発防止を目的に、09年のG20サミットで導入に合意。現行規制は、資産全体に占める自己資本の比率を8%以上、そのうち普通株や優先株で構成する「中核的自己資本」は4%以上の確保を求めている。しかし、金融危機を抑止できなかった反省から、新規制では自己資本の「質と量」の強化を図った。
まず国際業務を行える最低水準は8%で変えない。配当を減らせる普通株式と利益剰余金で構成する狭義の中核的自己資本の規制を新設し、「資本の質」の向上を図る。最低水準を4.5%に設定し、下回ると金融当局が行政処分を発動する。
不況時に多額の損失が発生した場合に備え、2.5%の上乗せ分を要請。割り込むと報酬や配当が制限されることから、事実上の強制適用といえ、新規制は実質7%の達成を銀行に求めることになる。また景気過熱時にはさらに最大2.5%の上積みを求める。
バーゼル委の協議では、実質7%となった狭義の中核的自己資本を、どの程度の比率にするかが焦点だった。銀行救済に多額の公的資金を投入し、国民の批判を浴びる米英は厳しい規制を求め、「9%以上」との声まで出ていた。日本は「過剰な規制は貸し渋りなどで景気に悪影響を与える」として「6%」程度を主張、対立が続いた。
だが、協議難航に業を煮やした一部の国が、合意をG20サミットに先送りする動きを見せたことで「これ以上交渉が長引くと、政治に協議の場を奪われかねない」(交渉筋)との危機感が生じた。徹底した規制強化を求めていた米英も世界経済の減速懸念が強まる中、歩み寄りを見せた。金融庁幹部は合意について「規制と景気への配慮のバランスが取れた内容」と評価している。
世界の主要行が新規制に対応するには資本増強が必要になるため、新規制は段階的に導入される。狭義の中核的自己資本は13年に導入、15年に4.5%まで引き上げる。
景気悪化に備えた上乗せ分は、16年から4年間で段階的に2.5%に引き上げる。この結果、19年には自己資本比率(8%)と上乗せの合算で実質的に10.5%が求められることになり、各行は増資や利益剰余金の積み増しを迫られる。
◇邦銀、収益力向上が必須
新規制の完全実施まで現在からは8年強の猶予があり、リーマン・ショック後、新規制に向けて大規模な普通株増資を実施した国内の3メガバンクにとって「経営努力をすれば十分対応できる水準」(金融庁幹部)で決着した。だが、新規制の達成には利益の確実な積み上げが必須。景気の先行きが不透明な中、邦銀は欧米勢に比べて劣る収益力の向上を一段と求められそうだ。
新規制の合意を受け、市場では「事前予測より緩やかな内容。メガバンクが追加増資を迫られる事態はひとまずなくなった」(シティグループ証券の野崎浩成氏)と安心感が広がった。野崎氏によると、狭義の中核的自己資本比率は新規制の導入が始まる13年3月期末時点で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)8.6%▽みずほFG6.15%▽三井住友FG7.9%−−と推計され、最低基準の4.5%はクリアできる見通し。16年以降に景気悪化に備えた上乗せ分(2.5%)が導入されても、現行の利益水準が確保できれば、計7%の水準を上回るとの見方が多い。
ただ、景気が悪化すれば収益が減ったり、不良債権処理に追われる事態も予想され、邦銀や当局の計算は狂いかねない。保有株の価格変動も自己資本比率に響くため、持ち合い株などの削減も急務となりそうだ。
欧米勢も一部を除けば、狭義の中核的自己資本比率がメガバンクと比べて格段に高いわけではない。ただ、欧米勢は収益力がメガバンクより高いうえ、ドイツ銀行は約98億ユーロ(約1兆500億円)の資本増強を表明。信用不安がくすぶる欧州勢を中心に増資合戦が始まれば、メガバンクも「市場から早期の7%達成を迫られる」懸念もある。
さらに、バーゼル3とは別に、バーゼル銀行監督委が国際的な大規模銀行に追加で自己資本確保を求める議論を続けており、メガバンクは「規制強化の全体像が見えるまでは安心できない」(幹部)と動向を注視している。
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