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9月2日(ブルームバーグ):円高・株安が進む中、追加金融緩和に追い込まれたばかりの日本銀行に新たな難題が降りかかってきた。政府が円高加速時に円売り介入に踏み切った場合、市場に放出した円資金を日銀が放置(非不胎化)することで、量的な金融緩和効果も高めるべきだとの声が、市場や政府に広がっているからだ。中央銀行の独立性にも影響する問題だけに、介入実施時には日銀の対応も焦点となる。
日銀は8月30日、臨時の金融政策決定会合を開き、新型オペ(公開市場操作)の増額と供給期間延長を決めた。政府も追加経済対策の基本方針を前倒しでまとめた。しかし円高・株安は止まらず、円・ドル相場は1日に一時1ドル=83円67銭まで上昇。先月24日につけた1995年6月以来の高値83円60銭に迫った。戦後最高値は95年4月の79円75銭。日経平均株価も1日に一時8800円を割り込み、2009年4月以来の安値をつけた。
円高・ドル安の主因は、米景気の減速を受けた連邦準備制度理事会(FRB)による金融緩和観測や日米金利差の縮小。為替相場の需給に直接働き掛ける政府の円売り介入について、菅直人首相や野田佳彦財務相は「必要な時には断固たる措置をとる」と述べ、実施の可能性を示唆し始めた。野村証券の田中泰輔為替ストラテジストは、円・ドル相場が「82−83円まで上昇すれば、介入が視野に入る」と読む。
日銀で為替介入業務に従事した経験を持つバークレイズ銀行の山本雅文チーフFXストラテジストは、政府が円売り介入に踏み切った場合、日銀は「円資金の増加を放置する非不胎化をすべきだ。介入支援と金融緩和を市場に印象付けられる」と主張する。大和総研の亀岡裕次シニアエコノミストも、非不胎化があり得るとの見方だ。
非不胎化で円高抑止
政府が為替市場で円を売ってドルなどの外貨を買い入れる介入を実施した場合、放出された円を日銀がオペで吸収せず、資金量が増えたままにしておくと、円相場の直接的な上昇抑止と資金増加による金融緩和効果が同時に働き、円高抑止効果が強まるとされる。
池田元久財務副大臣は8月31日、「急激な為替変動には断固たる措置を取る」と述べ、円高抑止には「非不胎化をはっきりやってもらわなくてはいけない」との見解を示した。
非不胎化介入には、事実上の前例がある。小泉純一郎首相・福井俊彦日銀総裁の03年から04年3月にかけ、政府は過去最大となる約35兆円の円売り介入を実施。金融機関への資金供給量の目安となる当座預金残高を誘導目標とする「量的緩和政策」を採っていた日銀は03年3月から04年1月まで、介入規模の拡大と平仄を合わせるかのように、この誘導目標を段階的に引き上げる形で金融緩和を進めた。
介入と追加緩和
当時、日経平均株価は03年4月の底値から5割近く上昇。10−12月期の国内総生産(GDP)実質成長率は前期比年率5.7%と約4年ぶりの高成長だった。日銀は金融緩和は介入支援のためとはしなかったが、福井総裁は04年1月の記者会見で、円高進行は心理的な影響も含めると、日本経済の「下振れリスクになりかねない」と語った。
日銀が非不胎化で政府の円売り介入に協調すれば、主要国で唯一の長期デフレを克服するためという大義名分によって、米欧から介入の黙認を得る助けになる可能性もある。
実際、04年3月にかけての円売り介入に対し、同年4月の米財務省為替報告書は、長引くデフレ克服のため、ベースマネーの急拡大といった金融政策と同時に行われたと記述。介入による円資金供給はその不胎化が部分的にとどまったため、重要なベースマネー拡大の一要素となったと評価した。谷垣禎一財務相(当時)が同月、記者会見で述べた。
日銀の独立性に影響も
みずほ総合研究所の小野亮シニアエコノミストは、円売り介入で市場に放出された資金は後日、国庫短期証券の発行によって市場から吸収されるため、日銀が非不胎化しても中長期的には資金需給に中立だと指摘。しかし、介入規模に見合う資金を日銀が供給すれば、ベースマネーの恒久的な増加になると説明。当局の円高抑止姿勢が市場に伝わる点も含め、効果が大きいと主張する。03−04年にかけては、介入で放出された円資金の4割はしばらくの間、市場に滞留したという。
ただ、政府が円売り介入によって市場に放出した円を日銀が吸収せずに放置する非不胎化は、日銀の独立性をめぐる議論を引き起こす恐れもある。金融政策目標の実現を左右する金融調節に、為替政策を所管する財務省が結果的にせよ、深く関与する格好になるためだ。
バークレイズ銀の山本氏は「金融調節は中央銀行の所管だ。為替介入がもたらす資金余剰に黙々と従うのは、政府と中銀の通常の関係とは言い難いのも確かだ。日銀には抵抗感があるだろう」と語る。
円売り介入で大量の資金が短期金融市場に出回ると、金利の予期せぬ低下要因となる。しかし、日銀は世界的な金融危機下の08年10月末、金融機関が当座預金に積み立てる義務がある所要準備を超える額に対し、0.1%の利息を支払う制度(付利)を導入。介入時の円資金増加により、市場金利がゼロ近辺まで低下して市場機能が損なわれるという、非不胎化に伴う副作用を抑える効果が見込める。
金融機関は最も安全な取引相手である日銀が支払う利息を下回る金利で、他の金融機関に余剰資金を大量に貸し出すとは考えにくいためだ。白川方明総裁は付利導入当時の記者会見で「市場の下限金利は事実上0.1%」と話した。
UBS証券の会田卓司シニアエコノミストは、今や付利制度があるため「大量に流動性を供給しても無担保コールレート翌日物は誘導目標を大きく下回らない。日銀は為替介入によって生じた当座預金の増加を吸収する必要はなく、非不胎化は容易だ」と分析。資金量の増加で「金融緩和の効果も強くなる」と強調した。
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