http://www.asyura2.com/10/hasan69/msg/317.html
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年次報告書 2009 JPモルガンチェース&Co
p37〜p57
il . 金融システム強化に向けた金融改革に対する弊社の支持
△ 必要なのは、事実と分析に基づく合理的な政策
最近の金融危機は、米同全体だけでなく全世界に大きなダメージを与えましたが、 これか ら進むべき道も示したといえます。
金融機関救済の時代は終わるべきで、
改革のなかでも特 にシステム全体のリスクの監視を強化する必要があります。「理性は情熱の奴隷である (..JJ とデーピッド ・ヒュームは言 っています。
しかしながら、怒りや人気取りのために銀行に対 する規制を変更すると、それは間違った解決となり、将来の経済成長を妨げることになりま す。 良い政策と金融改革は、事実と分析に基づくものでなければならず、包括的で、調整が重ねられており、 一貫性があり、妥当なものでなければなりません。
ニューヨーク ・タイムズ紙のコラムニスト、 トマス ・L ・フリードマンは本年早々、「リス クを取る姿勢を損なわずに、無謀な側面だけを減らす新しい銀行規制制度が必要だ。それこ そが、資本主義の鍵である 」 と指摘しました。
バランスのとれた規制にするためには、細部 が重要になります。私たちは、規制の強化や緩和を議論するのではなく、良い規制の構築に 注 力 す べ き で す 。 金融システム全般のリスクを縮小せず、ちぐはく、、なだけの規制強化につな がる政策はもっとも避けるべきものです。不要な規制や悪しき規制がもたらすコストを負担
する余裕はありません。
良い意思決定を行うには時聞が必要だと理解していますが、金融改革については今年中に 完( することが重要と考えます。規制が不明瞭なために、銀行と経済全体に問題が生じてい ます。 ビジネスの成長( および雇用の創出) には、自信と確信が必要です。理にかなった金 融改革案が可決されることで、金融分野が必要とする確実性が少し高まることになります。
この点を考慮して、今回のことから学んだ重要な教訓と、教訓が正しい規制改革にどのよう に重要か、検討し、たします。
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△危機 には多くの理由があった
2008 年の株主の皆様へのご挨拶のなかで、私は、金融危機の根本的な理由と要因について 検討いたしました。 ここで詳しく繰り返すことはしませんが 、大まかには次のようなものでした。
住宅ローン引受基準の不備、住宅ローン事業に対する規制の不備、見当違いの政策によ る大規模な住宅パフソレの崩壊
銀行 、投資銀行、へッジファンド、消費者、「影の銀行システム」を含む金融システムに 広がった過度なレバレッジ
構造的リスクの激増とそれが引き起こした予想外の損害( 短期金融市場ファンドや現先システムの欠陥) 。
- 36一
資本市場に「取り付け騒ぎ」が起きたことは記憶に新しいでしょう 。
規制の不備と誤り。
パーゼル資本ルールは、資本要件がほとんどなく、流動性に対する 考慮がなく 、格付け会社に過度に依存するものでした。
米国証券取引委員会は、米国の投 資銀行の過剰なレパレッジを認めました。
時代遅れで縦割りの金融規制の中でも特に、
フ ァニーメイとフレディマックに対する規制に不備がありました。
しかしながら、個々の会 社の破綻について、規制当局を責めるべきではないし、責めてもいません。
責任は各社の 経営陣にあります。
事実上すべての政策、対応、出来事( たとえば、貸倒引当金の計上、最低資本比率、市 場そのもの) が景気循環増幅型であったこと
巨額の貿易 ・金融の不均衡が金利、消費、投機に及ぼした影響、全分野にわたる問題の核心は、リスク管理の不備です。
多くの市場参加者がバリュー ・ア ット ・リスク (VaR) の測定を不適切に使用しており 、深刻な経済状況の可能性に備えたスト レステストを実施していませんでした。 さらに、多くの市場参加者が 、格付け会社に過度に
依存しており、当期利益の最大化にのみ注力していました。 また、市場が悪化したときに迅 速に対応していませんでした。
JP モルガン ・チエースでは、 VaR に過度に依存したことはありませんし、経済環境悪化に 備え、定期的にストレステストを実施していました。弊社の目標は、各阿半期に利益を計上 することでしたし、この姿勢は現在も変わりありません。
銀行、企業、政府または消費者などからスケープゴートを見つけようとしていますが、ど こかひとつに責任があるわけではなく、また誰もが責任から逃れられないことは明白です。
△過ちをおかしたのは確か
そのとおりです。 さらに、昨年の会長から皆様へのご挨拶でも 、過ちを特定し詳細に記述 しました。
弊社の最大の過ちは 2 つ、すなわち、あまりにも多くのレパレッジド ・ローンを 組成したことと、住宅ローン引受基準を緩和したことです。弊社の住宅ローン引受基準は他 社よりかなり整備されていましたが、実際に所得を確認せず申告だけで LTV 比率が若干高め の住宅ローンも引き受けていました。弊社がおかした 、またはおかしたかもしれない一切の過ちについては、全面的に弊社に責任があります。
- 37 -
弊社が過ちをおかさなかった事柄も数多くあります。たとえば、ストラクチヤード ・イン ベストメント ・ビークル( lS IVJ) 、過度なレパレッジ、短期資金への過度な依存、仕組み担 保債務証券、デリパティブ帳簿の不適切な管理などです。
弊社の過ちのなかには、危機の要因になったと考えられるものもあります。
もちろん、こ のことについては、一般の方々にも株主の皆様にも申し訳なく思っています。
しかしながら、 こうした過ちが金融危機の原因そのものであったというのは言い過ぎのように思われます。
実際、弊社は、危機のまっただ中で、危機の影響を軽減し、安定化と回復に寄与すると考え た措置を積極的に行いました( たとえば、ベアー ・スターンズの買収とワシントン ・ミュー チュアノレの取得、銀行間融資( 銀行間で互いに直接行われる融資) など)。
△もちろん、政府の異例の措置には感謝しなければならない
昨年のご挨拶で述べたとおり、複雑で急激に変化する状況への対処に際し 、政府は大胆で 早急な対策を講じたと思います。 こうした対策がなければ、ずっと悪い結果になっていたか もしれないと考えます。財務省と連邦準備理事会が行った多くの対策は、直接 ・間接に、多くの金融機関を助け、多くが破綻や倒産を免れることができました。
△しかし、こうした対策がなくても、すべての銀行が破綻していたとは限らない。
政府の対策がなければすべての銀行が破綻していたという議論も間違っています。 こうし た議論は 、銀行に向けられる怒りや、銀行に対する懲罰的な政策提言の 一部に見え隠れして し、ます。
しかし、金融機関のなかで最も責められるべきものはすでに姿を消したことを確認
しておくべきです。
生き残った銀行の中には、木来なら生き残れなかったかもしれないもの もあるのも真実ですが、すべての銀行が破綻していたわけではありません。私は多くの銀行 の立場を代弁することを承知のうえで申し上げますが、不良資産救済プログラム (iTARPJ) による資本注入を受け入れた銀行の中には、生き残るためにそうした資金が必要だ、ったので はなく、国と経済の回復のために資本注入の受け入れが正しいことだと考えた銀行もあった のです。
政府は、健全な銀行に対し、すべての銀行に模範を示し、脆弱な金融機関も名誉を
傷つけられることなく資本注入を受けられる素地とするよう、 T A R P による資本注入の受け入 れを要請したと聞いています。JP モルガン ・チエースや他の多くの銀行は、支援する側にあ
り、政府の資本注入の受け入れもひとつの支援の方法だ、ったのです。
38 一
危機の最悪期においても、積極的に与信をおこなった。
金融危機の間、JP モノレガン ・チエースの四半期決算が赤字になったことはありませんでし た。
弊社は、預金者の安全な避難所としてサービスを提供し、連邦政府と緊密に協力し、 活 発な貸し出しを続けました。
盤石なバランスシートにより、
2008 年 3 月にはベアー ・スターンズを買収することができ、 資産が 2,890 億ドル増加しました。
そのわずか 6 カ月 後には、ワシントン ・ミューチュアノレの 資 産 を 取 得 し 、 資 産 は さ ら に 2 ,6 4 0 億 ド ル 増 加 し ま し た 。
そ の 間 一 貫 し て 、 J P モ ル ガ ン ・ チ エ ースは、個人向け ・法人向け与信の貸し倒れ増加のマイナス要因を吸収する一方で、高い流 動性と受入可能な資本の増加を維持しました。ワシントン ・ミューチュアルを取得したのは、 2 0 0 8 年 9 月 15 日 に リ ー マ ン ・ブ ラ ザ ー ズ が 破 綻 し たわずか10日の こ と で 、 盤 石 な バ ラ ン スシートを維持するために、翌朝直ちに普通株式 15億ドルの売り出しを行いました。ベア ー ・スターンズとワシントン ・ミューチュアルの買収により 、金融システムに欠かせない与 信と支援を提供し 、両社の破綻が引き起こすおそれのあった壊滅的な混乱を最小限に抑えました。
リーマンの破綻から数カ月後には、弊社の銀行間貸出残高は、ほぼゼロに近い状態か ら700億ドルの水準にまで跳ね上がり、 lカ月の貸出平均残高も過去の水準を大幅に上回る約 1,000億ドルとなりました。弊社はまた、市場が必要としていた流動性を高めるために、 2,500億ドル( 純額) の証券を一括購入しました。
弊社の 2008 年末時点の普通株ベースの Tier 1 自己資木比率は 7.0% ( 銀行ストレステストのために連邦準備理事会が用いていた厳しい基準による) 、
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2009 年末時
普通株ベースのTierI自己資 本比率は、普通株ベース Tierl 資本をリスク ・ウエイト資産 で除したものです。普通株ベ 一ス T ier I資本の大部分は、 TierI資本から優先株式、非 支配持分、信託優先資本扱い 証券を控除したものです 。普 通株ベースTierI資本は、損 失を吸収するうえで第一の資 本要素です. 詳細な説明につ いては、英文年次報告書90頁 の'"Regu'atory capita''"をご 参照ください (当該部分の日 本語訳については、関東財務 局に侵出した 2009年度有価値 券報告書第一部第 3 [ 事業の 状況」の [ 7 財政状態、経 営成績及びキャッシュ・フロ ーの状,兄の分析」中の「規制 資本」に記践しています。).
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ー39ー
2009 年 5 月に、米国政府は、銀行 19 行に対しストレス テストを実施しました。テストでは、 2 年間に失業率が 10.4% 、住宅価格がピーク時から 48% 急落したと想定されていました。テ ストの結果、 10 行が、ストレスシナリオ終了までに、 4% 以上の普通株ベースの Tier 1 自己資 本比率を維持するために普通株式持分を引き上げるよう要求されました。政府のテストでは、 JP モノレガン ・チエースの普通株主持分は常に、 4% の最低基準を追r;t 0 400 億ドルでした( 記 録のために申し添えますと 、弊社が取得した T A R P 資本 250 億ドルは優先株で、あったため、 この計算には算入されませんでした。)。最終的に、弊社はストレステストに見事に合格した
ことになります。
ー40 一
△非常に高い流動性を維持
大恐慌以来最も混乱した金融市場において、弊社には預金が流入 し (2 カ月で 1,500 億 ドル の預金が流入し、対応するのがやっとというほどでした。) 、「銀行の取り付け騒ぎ」と全く逆 のことが起きました。
預金は常に、銀行にとって最も安全な資金調達源のひとつと考えられ ていま したが、JP モルガン ・チエースでは、預金が常に貸出額を超える状態になりました。 平均的な銀行の場合、貸出金は概ね預金の 110% を超えています。JP モルガン・チエースでは、 貸出金は、預金の約 75% でした。実際、弊社では、貸出金を超える預金の流入により 、 リス クの高いホールセール市場で、資金調達をする必要が大幅に減りました。
長期ホールセール無担保市場で、は、平均 2,700 億ドルの借り入れを行いました。短期信用市 場での無担保借入額はわずか 400 億 ドルで、弊社のような規模の会社としては異例の少ない 額となりました。有担保市場で借り 入れを行うときは、危機発生時にはその調達額の全部で はなく 一部を調達するという 前提で借 り入れを行し、ます。
弊社の銀行持株会社では、常に余剰流動性を確保しています。弊社では、無担保信用市場 からの借り入れが全く行 えなくなった場合でも 、2 年以上資金を賄 うことができる 十分な現金 または現金等価物を手元資金として常に確保しており 、これからもこの姿勢に変わりありま せん。
△事態がさらに悪化した場合の備え
経済環境が過去最悪の水準まで悪化するなか、弊社は不本意ながら、米国内の失業率が 15% を超えるなど状況がさらに悪化した場合への備えをしていました。 このような環境の悪化に は、大規模な人員削減、マーケティングその他の投資の廃止、資本を維持するための貸し出 しの縮小など思い切った対策が必要になると考えられます。このような対策により、 120億ド ルを超える費用が節減され、かなりの追加資本が生じることになります。 しかしながら、
一 41 一
これは、多くの社員、取引先、顧客を非常につらい目に遭わせることにつながります。
幸いに も、弊社はこのような思い切った計画を実行しなくて済みました。 まさに政府もこのような 事態を避けようとしており、政府の対策のおかげで多くの金融機関がこのような措置を講じ
なくて済んだと考えています。
△良い面ばかりでない政府の計画
政府の対策により、金融システムも JP モルガン ・チエースも恩恵、を受けたのは明白で、そ の点については大いに評価していますが、良い面ばかりではありませんでした。
2009年6月に、弊社は、 TARPによる注入資本の全額を返済しました。250億ドルの8カ月 間の借り入れには、コストがかかりました。つまり 、この 250 億ドルは貸し出すこともでき ず、この優先株に支払っていた 5% のクーポンより高い金利を得ることができなかったからで す。加えて 、政府に対し 10 億ドル近い保証をつけたために、この分が株主の皆様の直接負担となってしまいました。
弊社は、連邦預金保険公社( lFDICJ) の保証プログラムに参加していましたので、同プロ グラムのもとで、 FD1C保証付債券400億ドルを発行しました。このプログラムを利用した多 くの銀行は、F D1C の保証がなければ資本市場を利用できなかったものと恩われます。JP モル ガン ・チエースにとっては、資金が必要な時にはいつでも市場を利用できる立場にあったた め、資本市場の利用や資本の必要性は問題ではありませんでした。
しかし、このプログラム のおかげで、資金を節約することができました。このプログラムの一環として、弊社は、 FD1C に 13 億ドルを支払っており、 FD1C への支払後は数年間にわたり多額の資金を節減すること ができます。
私たちは、 TARP 資本を受け入れ、 FDIC のプログラムを利用したことで大きな批判を受け ました。
2009 年 4 月 l 日以降、 F DIC プログラムの利用を継続する要件を満たしていたにもか かわらず、弊社はその利用を中止しました。 ほかにも、 (T A L F、PPIP など頭字語で表示され る) 多くの政府プログラムがあり、資本市場に有益であったと考えますが、弊社には不要な もので、利用しなかったため、利用者にかかる不名誉な評判を回避できました。 ( 政府支援に よる特別預金枠であるターム ・オークション ・ファシリティ (fTAFJ) は利用しましたが、そ れは、連邦準備理事会から他社の利用を促進するために要請されてしたことです。)
これらの政府プログラムがなかったらどうなっていたかは、誰にもわかりませんが、危機 発生時に最も強し、立場にあった会社が 、破綻した同業者の弱みに乗じて巨額の利益を得たの ではなし、かという批判もあります。 しかし、だからといって政府のプログラムが全くなかっ たほうがこの国のためになったと主張するのは難しいでしょう 。
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弊社は、T AR P による資本注入を受け入れたことで一般国民、政治家、メディアからこのよ うな怒りや反感が生じるとは予想していませんでした。
しかし、今になって考えてみても 、
T AR P による資本注入を受け入れは国の最良の利益に適うと判断し、同じ行動を取っていたと 思います。
私は、プログラムの成功を損なわずに健全な銀行と健全でない銀行を区別するこ とができていれば、すべての銀行が救済されたというような印象を一般国民に与えることは なかったのにと思っています。
最後に、私は、その必要がなかったのに FDIC の保証を利用し てしまったことを後悔しています。 そうしたことで、すべての銀行が救済されたという議論に荷担してしまい 、
銀行に向けられた怒りにさらに油を注いでしまう結果となりました。
△ FDIC は政府が運営しているが、その資金は銀行が負担している
FDIC は銀行預金を保証する政府機関ですが、破綻銀行の関連費用は納税者ではなく銀行が 全額負担していることを知っていただきたいと思います。
これは、全く適切だと考えます。
万一 FDlC の特別措置である暫定流動性保証プログラム(「TLGP」) が資金不足になるような
ことがあれば、その損失は現存している銀行の負担として跳ね返ることになります。
このよ うに、2008 年初以来の約 200 件の銀行破綻に伴う FDIC のコス トを負担しているのは、
破綻 していない銀行なのです。
銀行破綻のうち最大のものは、( 総資産が 2,600 億ドルを超えていた) ワシントン ・ミュー チュアルの破綻で、したが、 FDlC の負担はゼロでした。
その理由は、lP モルガン ・チエースが ワシン トン ・ミューチュアルを買い取ったからです。それ以外の破綻銀行の規模は、はるかに小 さいものでした
( ワシントン ・ミューチュアル)に次ぐ規模の破綻はインデイマックで、 その総資産は320億ドルした。
これらの破綻の全部を合わせても、FDlC が負担したコストは推計 550 億ドルでした。
預金保険と 2008 年及び 2009 年の T L GP の投入資金にさらに今後 3 年間の保険料に対する 弊社の負担分の推定額を加算すると 、破綻銀行のコストを補填するために 、lP モルガン ・チ エースだけで総額約 60 億ドルを FDlC に拠出したことになります。
△銀行は貸し付けを継続している- 貸付金額はやや減少しているものの責任をもった貸し付け をしている
最近、銀行が貸し付けを再開するために必要なことは何かという ことにメディアの関心が 集まっています。現実には、銀行が貸し付けを止めたことは一度もありません。
20 10 年 2 月 末現在、規制当局の最近の報告書データによると 、商業銀行が保有する貸出金債権合計は 6.5 兆ドルで、 2007 年 6 月末の水準を上回っており 、2004 年比では 30% 超も増加しています。
- 43ー
企業と個人は銀行与信を利用 しにくくなっていると感じているのに、銀行は貸し付けを継 続していると主張しています。これはどういうことでしょうか。こうした意識の掛け違いは、 次のように説明することができます。
l.
米国内で供給されている与信の 65 %を占めるノンバンクによる貸し付けの流れは底をつ いています。多くのノンバンクの貸し手( 1 影の銀行システム)、SIV、資産担保コマーシ ヤノレペーパー、証券化市場のことを考えてみてください。) は、事実上破綻しました。保 険会社、年金、法人投資家 、外国人投資家がこれらノンバンクの貸し手に資金を提供して いましたが、ノンバンクの貸し手が市場に供与していた与信約 0.5 兆ドルが失われたこと になります。
2. 銀行貸し出しは、リーマン破綻直後に増加しましたが、 2009 年中に全体的に減少し始め ました。j p モルガン ・チエースを含む 100 以上の銀行は、事業を強化し、破綻銀行を買収 しましたが 、破綻銀行が供与して いた与信を全面的に肩代わりするのは無理であり、そう しませんでした。一例を挙げると、 jpモルガン・チエースは、ワシントン・ミューチュアルが供与していたサブプライム融資とオプション付 A R M を継続しませんでした。
3 さらに、多くの銀行が貸出金基準を厳格化したことにより 、新規貸し出しが減りました。
4. 以上に加えて、顧客の借入需要が、大企業と中小企業全体で、減少しました。事実、 jp モルガン ・チエースだけでも 、大企業向け貸し出しが 850 億 ドルから 500 億ドルに低下しまし た。これは、弊社が貸し出しに後ろ向きだったからではなく 、むしろ大企業側が、資本市 場の再開により市場から低金利 の資金調達ができるようになったことによるものです。
銀行は、健全な貸し出しを行う責任があります。健全でない貸し出しがそもそも今回のよ うな混乱を引き起こした原因のひとつとなりました。
そして 、あいにく、健全な貸し出しを 行うために 、健全な融資基準に達しないローンの申し込みを断ることもよくあります。 当時は当然と考えられていなかったかもしれませんが、融資基準を満たさない申込みを断ること は、弊社と弊社の顧客の双方の利益につながります。
弊社は、債務を適切に管理できる先だ けに貸し付けを行う責任があるのです。他業種と異なり、弊社は自社の顧客の一部にノーと 言い、嫌われ役になることもあるのです。
△銀行は規制と闘っているのではない
JP モルガン ・チエースも他行も、適正な規制改革の必要性を認識しています。私はこの点 について、 昨年のご挨拶でも非常に詳しく述べました。
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振り返ってみると 、最近の危機に 関連 した具体的な問題のほとんど
( 世界的な貿易不均衡、 住宅バブル 過度のレパレッジ、マネーマーケッ トファンドなど) が、すでに個々の問題と しては周知のことであり 、議論されて いたということに驚かされます。
しかし 、私の知る限り、 これらの要因のすべてを総合的に検討し 、そうした要因が結びつ いて有害な出来事が起 きる ことや、そうした要因が原因となって危機が起きることを予測した者は皆無でした。
今後状況を解決の方向に導くには何ができるでしょうか。そのためには問題を直視する必 要があります。
つま り、リスク管理の不備です。
リスク管理の不備は、金融機関の破綻の原 因となっただけでなく 、金融システムそのものの基本的な欠陥を露呈しました。 こうした欠 陥は、マクロレベルにもミクロレベルにも存在していました。
マクロレベルでは、多数の重 大な要因の相互作用が欠けていました。
ミクロレベルでは、たとえば、A IG がデ リパティブ 取引で一方的に過剰なポジションをとるのを阻止できなかったことや、住宅ローンを返済能 力のある家族に限らなかったこと 、L T V 比率をより合理的な 80% から 90% の水準に維持しな かったことなどです。
過去 50 年間、規制制度が危険なほど時代遅れなものになるのをただ放置してきました。規 制構造は旧態依然としていて 、制度には非常に大きな欠落があります。
今日のアメリカでは 、 銀行与信は与信残高の 3 分の l に過ぎず、あらゆる種類のノンバンクが、リ スクをとり 、リ スクを取引し 、金融システムに信用を供与して います。 ですから、銀行業務が預金保有機関 に限定されているという考えは、不正確であり誤解です。ベアー ・スターンズ、リーマン ・ ブラザーズ、インディマック、ワシントン・ミューチュアル、ファニーメイ、 フレディマッ ク、 A IG 、さらには地方の地域銀行のように規模も業種 もさまざまな多くの金融機関が破綻し た事実から分かるのは、規制が、法人別ではなく、商品や経済の実態別に管理される必要が あると い うことです。規制システムを簡素化し、強化するよい機会です。正しく行えば、私 たちが今日直面している複雑な課題に対処できるだけでなく、変化する世界の状況に常に対 応できる機動性をもって将来の課題にも対処できるようになるでしょう 。
△金融システム全体への監督を支持する
これからは、金融システム全体のスプレッドと リスク水準の効果的な監視の役割を担うシ ステムに対する監督当局が必要です。
「スーパー ・リスクJ 監督当局とでも言いましょうか。
そうした監督当局は、将来のあらゆる問題を排除するわけではありませんが、軽減する こと はできるでしょう。私たちが問題の一部でも排除していれば、危機が今回のように悪化する のを止めていたかもしれな いのです。議会は、このような監督当局の設置を進める方向のようであり 、それが成功することを希望しています。
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システム ・リスクの監督機関が留意すべきいくつかの課題は、次のようなものです。
◯リスク管理のプロセスに重点を置く 。 これは、政治的駆け引きのプロセスであってはな りません。 強力なリスク管理委員会のような機能を果たすべきです。
◯金融システムの隙間と重複を排除する 。 たとえば、住宅ローンは複数の機関の規制を受 けており 、その一部がひどい仕事をしたために、優良企業でさえも市場、シェアを維持する ために良くないことをし始めるような「谷底の目指し合い」のような状態を生み出してし まいました。
◯住宅ローン市場やその他消費者金融にかかる要素といった領域を分析し 、新しいルール が起草される時点で、健全かっ安全で、効率的な 、し かも消費者の視点に立った住宅ローン 市場が創設されるようにする。
◯新商品は多くの問題の原因であることが多いため、新商品を慎重に追跡する 。
◯高度なマネーマーケットファンドや S IV のような「隠れた」与信を含め、システム全体 の与信状況を精査する 。
◯金融市場と潜在的な過剰資金状態( すなわちバブル) を積極的に監視する。バブルを見 抜くのは難しく、見抜けた場合でもマクロ経済政策でバブルに直接影響を及ぼすのは得策 でないことがあります。
ただし 、バブルが引き起こす可能性のある副次的な被害を最小限 に抑えるようにするのは適切なことです。
金融政策によってではなく、特定の市場での与 信を制限することによって、バブルを管理しようとするのは適切です( すなわち、貸し手 に住宅ローンの LTV 比率を引き下げるよう要請することや、またはレポ市場で用いられ るレパレッジを縮小することにより金融市場で、の投機を最小限に抑 えるよう求めるのは 適切であったと思われます。)。
◯より広い経済( 財政赤字、貿易不均衡、構造的な国家予算の赤字) で進んでいる歪みを 認識し 、それによって起きる問題に政策機関を備えさせる 。
◯できるだけ国際協調を働きかける 。企業の公平な条件での競争のためだけでなく、危機 に国境はなし、からです。
以上は、システムの監督機関が規制体制の欠陥を修正し、常に状況に適合し改善するシ ステムを構築するのに寄与する方法のほんの一部です。
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△大きすぎてつぶせないといった事態をなくすにも、規制当局の清算権限強化を支持
破綻しないよう金融機関を規制するという 一義的な目標を達成したとしても、経営がうま くいかない金融機関の救済を政府任せにしないようにするという問題が残っています。
すべ ての金融機関は 、規模や他の金融機関との相互依存の状況に関わらず、破綻することを認め
られるべきです。
私たち JP モルガン ・チエースは、規制当局が経済上の損害を最小限に抑え、 納税者に負担をかけないよう管理された方法で、破綻金融機関を清算できるよう規制当局の 機能を強化すべきだと論じてきました。
「大きすぎてつぶせなしい問題を修正するだけでも、 危機の中心にある問題の多くの解決に向けて非常に有用と思われます。規制当局にこうした 権限を与えること自体が、もはやセイフテイネットがないと経営幹部と取締役会が認識する
ことにつながり 、破綻の可能性を減らすのです。 こうした整理方法の拡大は、金融機関にと っては「特殊な破綻」であるとお考えください。 この制度の原則は、次のようなものになる でしょう 。
◯破綻の判断は、その金融機関が事業運営に必要な資金を調達できなくなったときを基準 とすべきです。
◯規制当局( または特殊な破産裁判所) が、経営陣と取締役を解任することができるよう にすべきです。
◯銀行破綻時には、株主の権利は失効 される ベぎです。 これはちょうど破産の場合と同じ です。
◯監督当局は、当該金融機関の損害を最小限に抑え 、 さらに整理資金を保全するために、 当該金融機関を運営することができます。
◯監督当局は、適切と認めれば、資産を清算するか、資産の一部を売却することができま す。
◯無担保債権者は、破産の場合と同様、他の全員が支払いを受けた後ではじめて資金を回 収すベきです。( 実際、整理権限は、その業務に必要な資金を支払うために多額の回収金を保管し 、将来の整理資金を賄うことができるようにすべきです。)
◯基本的に、有担保債権者は、破産の場合と同様の扱いを受けるべきです。
◯整理資金は、 (FDlC が今日行っているように) 金融業界によって賄われるべきです。
◯この制度のもとに置かれるすべての金融機関は、全く同じルールに従って存続すべきで す。
- 47
◯規制当局は、整理資金が足りなくなるようなことがないよう各社が十分な株式と無担保 債券を保有しているかを確認すべきです。一例を挙げると、リーマンは 260 億ドルの株式 を保有していましたが、 1.280億ドルの無担保債券も保有していました。整理権限のある 規制当局が存在していれば、リーマンにその債務を履行させ、事業を縮小または売却させ ( あるいはその両方) 、無担保債権者に資金の一部を返還するために十分な資金を手元に 残させることができたと、私は考えます。賢明にもこうした対応が行われていれば、景気はもっと良くなっていたでしょう 。
◯金融機関が破綻した場合、その会社の金融、法務、税務に関する構造を明らかにすべき で、そうすれば、監督機関は、国際的な協調を通じて、管理された方法で事業を清算する ことができるはずです。 こうした方法を「リビング ・ウィル( 生前の意思表示) J と呼ぶ 向きもあります。
◯誰が整理資金を負担すべきかについては議論の余地はありませんが( 銀行が負担すべき ものだからです。) 、資金をどのように調達すべきかについては若干の技術的な問題が残っ ています。整理権限のある規制当局は、清算の過程にある金融機関に資金を提供できる必
要があります。 この点を適切に解決できる方法はたくさんあります。
どのような企業でも破綻できる仕組みが 一旦確立されれば、規模や形態にかかわらずすべ ての企業が成長を目指せるようになるはずです。
大きな会社だから本質的に危険だと考える のは、間違っています。銀行は、規模の維持のために規模を追求すべきではありませんが、 規模があれば、より良い商品がより迅速に低いコストで提供でき、株主の皆様や顧客のため に価値を創出することができます。
こうした,恩恵は、個人顧客だけでなく、銀行の顧客であ る企業( 特に事業規模の面でも地理的な広がりの面でもグローパルに展開している企業) や 経済全体にもおよぶのです。
多くの銀行は、その能力、規模、多様性のおかげで、危機に耐え、より強力な企業として 再び力を吹き返すことができました。 こうした強さがあったからこそ、多くの企業が政府の 要請に応えて弱し、企業を買収し、経済に対する損害を軽減するのに寄与することができたの です。
△規制に対する提言を終えるにあたって
私たちは、デリパティブ 、証券化、高度な消費者保護に関する規制強化の背景にある 一般 原則を支持しますが、提言 されている内容をあまねく支持するわけではありません。悪魔は 細部に潜んでいます。改革によって、金融システム全体の健全性を不必要に損なうことなく、 実際に重要な保護対策がもたらされることが重要なのです。
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さらに、システムを絶対確実なものにするのであれば、いくつかの重要な提言 に留意する 必要があると考えます。
◯レポ市場は、構造をさらに整備し、監視と管理を強化することができるはずである 。
◯貸し出しに対する引き当てと景気循環増幅効果との相関性を全くないものにすることが できるはずである 。
◯証券化市場については、組成者と販売者の両方が投資できるように改善できるはずであ る。
◯マネーマーケット資金の「取り付け騒ぎ」を未然に防止するシステムを実施することが できるはずである 。
◯有価証券を所有せず、有価証券の所有 ・引き受けリスクを取らずに、株主または債権者 の議決権を買い取るのは、完全に制限されるべきである 。投資家は、企業の破綻に賛成票 を投じ、買い持ちより売り持ちの方が多くの利益が得られる状態にある場合には、 実際に 所有する資本証券に対する議決権を行使できないようにされるべきである 。
◯最後に、いわゆる「ネイキッド ・ショー卜 ・セリング( 裏付けのない空売り)J に対する 管理の強化を支持する 。
昨年の規制当局と政治家の議論のなかで、ボルカー ・ルール、銀行への新たな課税、パー ゼル資本規制の変更など、多くの考えが提案または助言 されました。 これらの考えはすべて 発展段階にあり、ここで意見を述べることができるほど明確なものにはなっていません。
弊 社が規制当局と政治家にお願いしたいのは、明瞭さと目的をもって議論を進め、無謀な企業
も慎重な企業もひっくるめて、すべての企業に広く不利益をもたらすことのないようにして いただきたいということです。
N . 弊社の責任とアメリカの成功
私たちは、この国が直面している非常に影響力の大きな問題に取り組むにあたり、
私たち の強みを見失ってはなりません。
アメリカは、過去の危機( なかには、現在の危機よりもず っと大きなものもありました) に際しても、こうした強みをうまく発揮してきました。
私は、 今回も同様に対処できると楽観しています。
アメリカが国家として成功するには、強い右肩上がりの経済が必要です。強い右肩上がり の経済には、適正な政府の政策と、革新的で信頼できる民間セクターが必要です。信頼でき るビジネスは大企業でも小企業で、もどちらでもかまいません。 そしてグローパル経済におい
ー49ー
て、アメリカは、グローパルなステージで事業を展開する大規模な多国籍企業を有するべき です。 アメリカと他のすべてを互いに結ひ、つける文化を創出するには、共通の責任感を広げ る必要があります。
アメリカの成功は、神から与えられた権利ではなく、私たちが常に勤勉に努力して達成し なければならないものです。
△強い経済と良い政府の必要性
アメリカの成功は、良い政府( と圧倒的な軍事力) を含む多くのことに依存しています。
しかしながら、健全で活力のある経済を抜きにしての成功はあり得ません。
それこそが、私 たちが成功の見返りを共有し、国を防衛し、子供たちを教育し、より良い未来を築くことを
可能にするものだからです。
強い米国経済は、米国自身を継続的に改善 ・改革できる経済のことで、その実現は良い政 府次第です。官僚主義は致命的です。また、アメリカ市民、すなわち私たちがこれまで歓迎 してきた人々( その多くがアメリカに働きに来て、革新に貢献する人々) のエネルギ一、才 能、創造力、意欲、善意がこの国から失われることはありません。私たちの園、そして私たちの経済が繁栄するために必要なのは、次のようなものです。
◯法律の明確さと 一貫性
◯法原則の適正な運用と、確固たる施行
◯アメリカ経済と米国企業の国際競争力の増大に寄与する通商政策
◯国家としての成功に不可欠な要素である、世界で最も優秀な人々をアメリカに惹きつけ ることを可能にする移民政策
◯投資家と 一般国民を保護する賢明で実効性のある規制 強固で効率的な社会基盤( 高速道路や橋から配電網などまで) 経済成長と、米国資本の蓄積を助長するルールの積極的な推進
◯うかつにも雇用を難しくしてしまうような政策ではなく、雇用の拡大を円滑に進める政 策
( ほとんどの固と多くの市民は、貧困や苦難を減らしたいと考えていると私は信じていま すが、) 社会の価値や目標は、国によって異なることがあります。しかし、どの国も、価値や目標を強し、経済を維持することと混同すべきではありません。 健全で成長しつつある国は、それぞれの自国民のためにすばらしいことを行うことができ
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ます。 そして、健全な経済を築くことに失敗した国は、国民の苦痛や苦難を増やしてしまう ことがよくあります。 多くの国は、国民を支援する姿勢を明言していますが、反対に国内に ダメージを与え、自国民に苦痛を与えている国もあります。 おそらく、国民を支援したいと いう意思は真実だったのでしょうが、そうした意思があるだけでは 、必ずしも国民を支援で きるとは限らないのです。
成長支援政策をうまく用いて経済を拡大しながら 、そうした経済成長から得た富を重要な 社会プログラムの資金に充てている国の一例として、ブラジルがあります。過去 20 年間に、 ブラジルは、経済を劇的に強化する多くの政策を実施しました。
ブラジルは、国内の諸制度を強化し、事業を民営化し、法原則を改善し、大量の資本配分を民間資本市場に任せ、世界 クラスの企業を築き上げました。8 年前に、ブラジルで、は左派系の大統領が選出されましたが、 同大統領は、経済を強化する政策を継続しました。 さらに、富の一部を用いて 、ブラジルで、 最も貧しい国民にワクチン接種、教育、月 80 ドルの食費を与える「ボルサ ・ファミリアJ と いうプログラムを開始しました。
ブラジルの例が示す教訓は明らかです。
良い政策と経済成長は、社会発展の敵ではなく、 発展を増幅させるのです。
△ビジネスは、健全で活力があり、信頼できるものである必要がある。
JP モルガン ・チエースでは、顧客、社員、株主の皆様、弊社が事業展開している世界中の 地域社会に利益をもたらす企業を築くという重大な責任があると考えています。最良の企業 は、短期的な利益のために意思決定を行いません。世論に反して、企業は、四半期利益を最 大限にするためだけに事業を行っているのではなく、顧客にサービスを提供し、顧客の長期 的な信頼を得るために事業を行い、そうする過程で公正な利益を得ているのです。 実際、ある l 年間の利益は、過去数十年間にどのような意思決定を行ってきたかを反映するものです。 私たちは常に、よき企業市民として、次の慣行を守ることに取り組んでいます。
◯顧客と社員に対し各人が受けるべき敬意をもって接する 。
◯ 安全で、有用な商品を構築する 。
◯ 倫理的で信頼できる取引慣行を維持する 。
◯株主に対する受託者責任を履行し、株主にとって真の価値を創造する 。
◯ いつの時代にも通用する企業を長期的な視点から築き上げる 。
◯地域社会を支援する慈善活動を通じて有意義な違いを生み出す
◯( 事業をする限り当然避けられなし、) 過りを認め、修正し、そこから教訓を学ぶ。
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雇用創出と適切な納税によって事業展開する地域の経済を支援する。JP モルガン ・チエ ースは、平均で年間 120億ドルを超える税金を世界中の政府に納めています。
卓越した企業を築くことで 、将来に向けての投資が可能となり、社員に機会を提供し、顧 客のためにより良い商品を作り、地域社会に貢献することができます。
こうしたことは、健 全で活力のない企業には不可能です。
△企業は、小企業から大企業まで、アメリカの 重要な強みである
健全な企業セクターは、わが国の力強し、経済の基盤です。米国で毎日働きに出る l億 3,000 万人の国民のうち、約 l 億 1,000 万人は民間企業に雇用されています。こうした民間企業は、 この国の雇用創出と革新の主な原動力で、あり、これまでもそうでした。
企業セクターの強みの根源は、起業まもない非常に小規模の会社や家族経営の会社から大 規模な多国籍企業まで、その多様性にあります。
実際、大企業と中小企業の関係は、共生的なものです。研究によると、大企業で l 人分の 雇用が創出されるごとに、大企業を支援する商品とサービスを提供する中小企業では 5 人分 の雇用が生まれることが指摘されています。
特に lP モルガン ・チエースでは、数百万人の社 員に職を提供している約 40,000 社の業者に年間 150 億ドルを超える支払いを行っています。
△銀行を含めグローバルな旗艦企業が必要
現在の政治環境では、ビジネス界の規模が非難されていますが、必要な投資を行い、きわ めて大きなリスクをとり、グローパルに活発な支援を提供するには規模を必要とする企業も あるというのが事実です。
アメリカの最大規模の企業は全世界で事業展開しており、何百万 人もの社員を雇用して います。
これには、年間 100 億ドルから 200 億ドルの巨額の投資を行 い、 50 カ国から 100 カ国の国で競争しアメリカの長期的な成功を約束する企業も含まれます。 大企業から小企業まで合わせると、年間 1.5 兆ドルの設備投資を行い、 3,000 億ドルの研究開 発資金を支出しています。設備投資の 70% 超が大企業により行われていると推定されていま す。
米国の労働者の生産性と( 何年にもわたる投資と革新による) 米国企業の巨大な規模の経 済は、最終的に米国経済と所得増加の原動力となっています。大企業の社員に共通している のは、その生産性です。大企業の社員の報酬と諸手当は、小企業を大幅に上回っています。※
米国内で活動している大企業と大規模な外資系多国籍企業は、1995 年以降の米国の生産性
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※ 米国労働統計局によると、大企業( 従業員数 500 人以上) の従業員の平均時給( 賃金 ・給与を含め、 l 時間 25 ト‘ノレ) は、小企 業( 従業員数 50 人未満) の従業員より 46% 多くなっています 同係に、大企業では従業員の 88% に医療費給付を行っています が、小企業では 55% です。
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向上の大半を占めていると推定されています。
フォード、ボーイング、ファイザ一、キャタピラ一、アップノレ、マイクロソフト 、グーグ ルのような企業は、世界でも先進的で革新的な取り組みをしている代表的な企業です。 ヒュ ーレット ・パッカードのような最先端の企業は、中小の取引先や業者をつなぐ活力のあるネットワークを支えています。 ある学術研究によると、国外でのこうした投資が実際に米国内 でさらなる雇用を創出することが指摘されています。
前記のような大企業は、世界各地での取引資金を十分に用意できる大きな財務基盤をもっ た銀行の提携先を必要としています。さらに、そうした規模に頼るのは多国籍企業だけでは ありません。
州政府や地方自治体も、JP モルガン・チエースのような企業が提供することが できる資本を頼っています。確かに、もっと規模の小さい銀行もわが国の経済において重要 な役割を果たしていますが、顧客が必要とする種類のサービス、資本、幅広い商品、取引実 行のスピードを常に提供することはできません。
中国、インド、ブラジル、南アフリカ、ロ シアのような場所で世界中の市場を結びつけ 、多彩で大規模な取引を実行し、引き受けやリ スク管理から地域限定の与信枠まで多様な商品 ・サービスを提供し、数テラバイトの財務デ ータを処理し、数十億単位の資金を提供できる規模と資源を有するのは、大銀行だけです。
米国の銀行は実際に、世界の他の地域の銀行ほど統合されていませんし、米国の金融シス テムは、他のほとんどの国の金融システムほど大銀行に支配されていません。たとえば、2007 年当時、米国の大手銀行 3 行は、米圏内の銀行資産全体の 34% を保有していましたが、これ は、経済協力開発機構 ( O E C D)加盟諸国中 、ルクセンブルグに次いで 2 番目に低い水準でした。
他の O E C D 加盟国の平均は、その 2 倍を超える 6 9 % でした。米国の銀行システムが特 に集中していないだけでなく、米国の大銀行は米国経済の規模と比較しても相対的に大きい わけではありません。
「大きいことは悪い」や「統合されすぎるのは悪い 」 としづ議論は 、銀 行システムが大規模で統合されていても全く問題がない多数の国の例( たとえばカナダ) に よって否定されます。
アメリカの最大規模の銀行の規模を制限しても 、大企業のニーズが変わるわけではありま せん。それどころか、大企業は、そうした制限に服さなくてもいい外国銀行に取引先銀行を 変更するだけです。JPモルガン・チエースの能力、規模、多様性は、 2008年の金融危機に耐え、さらに強い企業として再浮上するうえで不可欠なものでした。
△誰でも 責任を負う必要がある
アメリカは、徹底した個人主義と自己責任の原則のうえに建国されました。私たちは引き 続き、経済のすべての参加者に責任感を育成する必要があります。
悪い結果が常に誰かのせ いということはありません。 消費者、貸し手、借り手、企業、投資家のすべてが自らの行動 に責任をもち 、他人のせいにしない環境を育む必要があります。私たちは 、不快なだけの責
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任追及や非難に陥るのを止めなければなりません。 そして、悪いことをする者は常に罰せら れるべきですが、苦境にある者全員が信頼できないのではないことにも注意すべきです。
た とえば、病状や失業などの不可抗力により多くの個人が厳しい状況にあることは、よくわか
っています。
こうした人々は、公正にそして丁重に扱われるべきです。
ここ数年の危機は、銀行と銀行員の 一般的なイメージの低下など、広範囲にわたって影響 を及ぼしています。
JP モルガン ・チエースが今回の激動の時代の過ちの一端を担っているのは確かですが、弊 社は常に 、銀行経営の原則と、私たちが顧客および地域社会を支援するために果たすことが できる役割を重要視する姿勢を維持してまいりました。
弊社の 22 万人の社員は、毎日出社し、 顧客のために意義のある仕事をしています。そしてその顧客からの信頼は何年もかけてやっと得られるものです。
社員、取引先、オベレーション、株主の皆様の大部分は、ウオールス トリートから遠く離れ、この国の事実上あらゆる地域の実体経済の日常生活の一部です。
そして、彼らは活発に活動し、世界中の地域社会の一員でもあります。
一般の人々や政治家は、私たちのような銀行に対し懲罰的な働きかけをするとき、上級幹 部だけを罰していると考えていることがよくありますが、実際には、 一般の株主の皆様をも 罰していることになるのです。
一般の認識に反して、実体経済が貯蓄や退職年金基金を通じ て最大の銀行や企業を所有しています。
弊社の株主の皆様は、教員、退職者、公務員をはじ め、アメリカの真の実態を象徴しています。
責任や規制に関する議論を実体経済対ウォール ストリート 、大企業対小企業または大銀行対小銀行のような安易で、間違った概念、にしてしまうと、善悪だけを見境なく非難することになります。
これは、単に無知と偏見のもう 一つの 形にすぎません。
ひいては、産業全体またはビジネスの世界すべてをけなすことになれば、自分自身やこの 国を成功に導いたもののほとんどを非難することになります。
さらに、私たちは、政治家や メディアを含むあらゆる集団の人々を無差別に非難することを避けるべきです。私たちは、 メディアの日常の報道や世論調査の結果から少し目を離し 、今回の危機が鎮まってから書か れることになる著作物にもっと目を向ける必要があります。私たちはみな、厳しかった時期 に、正しい理由のために正しい方法で正しいことをしたかどうか自問してみるべきです。
△終わりに
米国は、多くの課題に直面しています。短期的には、今回の経済危機を乗り越え、失業者 が職場に戻れるようにすることが、最も重要です。
長期的には、医療 ・教育制度に正面から 取り組み、真の実質的なエネルギ一政策を策定し、将来のための社会基盤を構築しなければ なりません。
私たちはまた、米国の巨額な赤字と向き合い、事実を正直に認め、財政責任を 負わなければなりません。 グローパル市場からの圧力でこうした試練に追い込まれるまで何
ー54 -
もしないのは危険です。 これらはすべて重大な課題ですが、互いに協力すれば解決できるも のです。
弊社は引き続き 、事業展開を行っているすべての地域社会で、できるだけ早く世界が以前 の状態に回復するのを支援するためにできることは何でもいたす所存です。
2009 年には、こ れまで何度もそうしてきたように、社員は、困難に立ち向かい、脆弱な経済 ・政治環境の中 非常に不安定な状態のなかで仕事をしてきました。社員はまた、金融サービス業界に向けら れた怒りにも立ち向かいました。そうしたなかでも、私たちはなぜ皆ここにいるかという理 由、すなわち、顧客、ひいては世界中の地域社会にサービスを提供するためということを見 失うことはありませんでした。JP モルガン ・チエースとその経営陣および株主の皆様に代わり、私は社員に心からの感謝を伝えます。私は、社員と 一緒に働けることを誇りに思います。
ジェームズ ・ダイモン 会長兼最高経営責任者
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