http://www.asyura2.com/10/hasan69/msg/280.html
Tweet |
(回答先: 市職員給与がオバマ大統領の2倍、米検察が高待遇を調査 投稿者 gikou89 日時 2010 年 7 月 23 日 03:10:06)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aZT2fHXVyDyo
7月22日(ブルームバーグ):オバマ大統領は21日、政財界の代表約400人が見守る中で、金融規制改革法案に署名。成立した21世紀の金融改革法について、消費者保護に向けた「史上最強の法律」と宣言した。同法は1930年代の大恐慌以来最も包括的と称されるが、1913年の連邦準備法の制定以来、米金融システムにとって最も画期的と捉えた方が理解しやすい。
大恐慌を受けて制定されたグラス・スティーガル法は20年代のバブル膨張に対する反省から銀行と証券業の兼営を禁止したものだった。一方、21世紀の金融法は、99年のグラス・スティーガル法撤廃による金融膨張とその破裂という失敗を、緩やかな規制強化によって二度と繰り返さないようにすることを狙っている。
この揺り戻しのため、規制を実行に移す連邦準備制度理事会(FRB)など監督当局の権限が大幅に強化された。同法は2300ページにも及ぶ大部なものとなり、上院銀行委員会の共和党指導者、シェルビー議員は「モンスター法」と呼ぶ。規制当局を肥大化させる怪物というわけだ。
シェルビー議員は、監督当局の肥大化で、民業が圧迫されると懸念しているが、FRBの成り立ちと過去の実績を振り返れば、むしろ金融界に優しすぎる対応をとる可能性の方が高いだろう。
オバマ大統領は消費者保護のための「史上最強」の法律と胸を張ったが、「銀行のための銀行」であるFRBが「消費者のための銀行」に脱皮するのは難しく、利益の相反に陥るリスクもある。
妥協の産物
下院が策定した法案では完全に独立した消費者金融保護局を創設するとされていたが、FRBと金融界のロビー活動の結果、FRB内に独立した形で消費者金融保護局を設けるという変則的なものになってしまった。オバマ大統領は妥協の産物を「史上最強」という言葉でお化粧しているに過ぎない。
そもそも、消費者のための金融改革法と謳うのであれば、貸し渋りを是正する法律の設定が先である。「消費者保護」の美名は、実は金融機関を保護するための隠れみのにすぎない。1世紀前の連邦準備法以来、米国の金融法は「金融機関のための法律」として機能してきた。
グラス・スティーガル法の撤廃で金融機関が暴走。米政府・FRBは破たんの危機に見舞われた金融機関を公的資金により救出。これに対して、金融暴発による住宅差し押さえや失業の長期化で苦しむ一般国民の怒りが高まったため、金融機関に対して「緩やかな」規制を導入することで、その怒りをかわすことを狙っている。
「100年に一度の好機」
1913年連邦準備法は1907年金融パニックへの反省から、それまで民間部門で共有されていた「準備」(資金)を連邦政府に移管。その名の通りの「連邦準備」システムが創設された。最大の狙いはバブル破裂後の銀行システムに準備資金を供給することにあった。
2010年金融改革法はそのFRBに対し、「大き過ぎてつぶせない」金融機関の肥大化を監視し、必要に応じて財務省とともに、その分割・清算を実行する権限を付与するものである。米国の金融システムはFRBを頂点に運営されており、そのFRBの権限の大幅強化は金融界にとって「1世紀に一度」の法律改正の重みがある。
FRBは1907年の金融パニックを契機に誕生。奇しくもその100年後に発生した「2007年サブプライム危機」を発火点とする金融動乱で権限を強化・膨張したわけである。正にグリーンスパン前FRB議長が名づけた「100年に一度の危機」ごとに、それを好機にして誕生、そして膨張を続けることになる。
FRBにとって「100年に一度の好機」はウォール街にとっても100年に一度のチャンスになる可能性を秘めている。FRBはもともとJPモルガン・カンパニー(現JPモルガン・チェース)中興の祖ジョン・ピアポント・モルガンが上院共和党幹事のネルソン・オルドリッジとともにその青写真を描いた。ウォール街とワシントンの政治権力が協働で生み出した半官半民のハイブリッド組織である。
FRBの政治力
連邦準備制度の市場操作を担うニューヨーク連銀のストロング初代総裁はジョン・ピアポント・モルガンの懐刀。そしてダドリー現総裁はゴールドマン・サックスで調査部長の後、アドバイザリーディレクターを務めたベテラン投資銀行マンである。今回の金融規制改革法案の審議過程では、ニューヨーク連銀総裁の指名権を現在の同連銀理事会から大統領に変更するという、一般国民から見ればごくまっとうな修正案すら葬り去られてしまった。連邦準備制度の政治力の強さを裏付けるエピソードの一つである。
FRBは史上最悪のバブル放置と監督体制の緩みで未曾有の金融危機を引き起こした。これに対して、バーナンキFRB議長は緊急資金供与や事実上のゼロ金利政策の継続で米国経済を断崖の淵から救ったという論理を展開。この見解はオバマ政権、与党民主党や一部共和党議員の支持を得ており、FRBの政治力を維持、強化している。
ウォール街の大手銀行は公的支援を受けて、金融機関の吸収合併が可能になり、資本の集中を進めた。米銀首位のバンク・オブ・アメメカの資産規模は危機前の1兆7000億ドルから今年第1四半期には2兆3000億ドルへと35%も拡大。2位のJPモルガン・チェースは25%拡大して2兆ドルに達した。
問題は監督当局の度量
巨大金融資本は「100年に一度の危機」を好機として、着実に勢力を拡大している。そのコストとして、高リスク取引への規制が強化されるが、その影響は監督当局のサジ加減によるところが大きい。創立当初から「銀行のための銀行」として出発したFRBはこの点、ウォール街にとって強い味方となり得る。
リチャード・ブリーデン元米証券取引委員会(SEC)委員長はブルームバーグ・ニュースが6月に主催した会合で、「法律を制定し続けることはできるが、監督当局に法を執行し、現実と向き合う度量がなければ、そのことこそ問題だ」と指摘した。
同氏はバブル膨張過程を振り返り、「金融システム内に過度のレバレッジが存在していた。監督当局はそれを制御する権限を持っていた」と指摘し、いくら法律を制定しても、監督当局がそれを的確に使用しなければ、問題はさらに悪化するとの認識を示した。
100年に一度の危機を「好機」として勢力を拡大するFRBは銀行システムを再度バブル化させかねないということだ。しかし、今回のバブル破裂の後遺症で銀行は不良債権をなお多く抱えており、バブルを生成する力は相当の期間にわたり失われている。むしろ巨大化する中央銀行システムが自らバブル化するリスクの方が高いだろう。
究極の「大き過ぎてつぶせない」米中央銀行
FRBは基軸通貨ドルを発行する世界の中央銀行でもあり、そのバブル化の影響は計り知れない。シェルビー議員が21世紀の金融規制改革法を「モンスター」と呼ぶのは、何か計り知れない恐怖を感じるからだろう。
FRBは住宅ローン担保証券(MBS)だけでも1兆1300億ドル抱え込んでおり、巨大なヘッジファンドの様相を呈している。さらに、事実上のゼロ金利で「長期間にわたり」資金の供給を続けると約束することで、基軸通貨ドルの垂れ流しを続行。グローバルバブルの生成に関与している。
歴史は同じパターンを繰り返しても、同じ形を取ることはない。21世紀のグローバルバブル破裂では、「大き過ぎてつぶせない」のは民間金融機関ではなく米連邦準備制度そのものになるかも知れない。それはFRBの際限のない超緩和策により、基軸通貨ドルが危機の中心に躍り出る可能性が高まるからである。
禍福はあざなえる縄のごとし。「100年に一度の危機」が「好機」になり、再び危機に転じるのを避けることはできないだろう。そして、危機が繰り返されるたびに、その破壊力は増していく。
(FRBウオッチの内容は記者個人の見解です)
記事に関する記者へ の問い合わせ先:ワシントン 山広恒夫 Tsuneo Yamahiro tyamahiro@bloomberg.net記事に関するエディタ ーへの問い合わせ先:東京 大久保義人 Yoshito Okubo yokubo1@bloomberg.net
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。