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(回答先: 「CMより設備投資しろ!」ソフトバンクモバイル大規模通信障害でユーザー激怒中 投稿者 gikou89 日時 2010 年 7 月 18 日 07:00:21)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100708-00000301-fsight-bus_all
トヨタ自動車は2008年に販売台数で米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて世界最大の自動車メーカーになった。企業として絶頂に立ったわけだが、それ以降、急速にトヨタらしい強さを喪失していった。
米国でのブレーキペダルをめぐる大規模リコールは、トヨタを世界トップに押し上げた高品質が揺らいだことを示した。原因は部品を納入した米部品メーカーにあるが、結果的にいえば納入企業の選択、生産指導で従来のトヨタの能力が薄れたことは歴然としている。かつては傲慢なほど自信たっぷりだったトヨタの幹部も、記者会見で目が宙を泳ぐ場面が増え、グループを率いる豊田章男社長は、内輪の会合とはいえ、テレビカメラも入った公衆の面前で涙を流す失態を演じてしまった。
そうした下り坂のトヨタがまた不可思議な決断を下した。米電気自動車メーカー、テスラ・モーターズへの出資である。トヨタはテスラに5000万ドル(約44億円)を出資、電気自動車の開発に取り組むという。年内にもトヨタの既存車をベースにした試作車をつくる予定だ。
■見えなくなったトヨタの哲学
結論から先に言えば、テスラへの出資はトヨタにはほとんど意味がないだろう。
第1に、トヨタはハイブリッド車「プリウス」を世界で最初に開発したパイオニアである。言うまでもなくハイブリッド車にはバッテリーとモーターが積まれており、半分は電気自動車だ。モーター駆動だけで走行している時もある。電気自動車の技術の要となるバッテリーはパナソニックと合弁の電池会社を設立、ニッケル水素電池を量産してきたほか、今後のバッテリーの主流となるリチウムイオン電池の研究開発も進めている。制動をかけた際に失われるエネルギーを回収し、充電する回生技術もハイブリッド車で確立している。
1997年に発売された初代プリウスに積まれたモーターは、トヨタが自社で巻き線から手がけたオリジナルであるように、高度なモーター技術も持っている。そもそも電気自動車はハイブリッド車よりも構造が単純で開発、生産は容易だ。それは中国で電気自動車メーカーが雨後の筍のように数百社も現れ、見よう見真似で続々と商品を発表していることでもわかる。ハイブリッド車を世界で最初につくったメーカーが電気自動車を開発するのに米国のベンチャーと組む必要など存在しないのだ。
加えて、テスラの量産するスポーツカー「ロードスター」は1000万円前後の高級車で、トヨタでいえば「レクサス」ブランドに位置づけられるような商品だ。当初からレクサスのラインナップに電気自動車を付け加えるのなら理解しやすいが、「カローラ」など小型量販車で電気自動車を出して行くにはテスラは適当なパートナーとは言い難い。
第2の理由は自動車メーカーとして、より根源的な問題だ。トヨタは次世代の自動車の駆動を何で行なうつもりなのか、ということだ。もちろんひとつに絞る必要はない。世界最大のメーカーである以上、幅広い品揃えは必要だ。だがトヨタがメーカーとして、これが理想の自動車、理想の駆動力として第1に押すものは何か、という哲学がテスラ買収で不透明になった。
つまり、トヨタはハイブリッドこそ最高の駆動力の形と考え、突き進んできたのではなかったか。トヨタは内燃機関とモーターを兼ね備えることで、パワー、航続距離、環境性能、経済性など次世代の車に要求される条件を最も満たせるのがハイブリッド車であり、既存のガソリンエンジン、電気自動車、燃料電池車などよりも現時点ではハイブリッドの方が秀でていると暗黙の主張をしてきた、といってよい。
それに対し、テスラへの出資は電気自動車が主流になりかねない情勢になってきたので、技術力のあるベンチャーと提携し、電気自動車に関する技術開発の時間を節約しよう、という意図のように世間では理解されている。トヨタが駆動力に対する認識、哲学を大幅に変更したとの見方が生まれているのだ。
■日産の「リーフ」が脅威に?
トヨタの決断の背景で、ひとつ考えられるのは、日産自動車の動きだろう。日産は小型車をベースにした電気自動車「リーフ」の開発でわかるように、電気自動車に軸足を置き、ハイブリッド・システムの自社開発を「フーガ」など高級車に限定している。リーフに関しては、リチウムイオン電池を自社で開発するなど研究開発への取り組みは本格的で、カギとなる技術はほぼカバーできている。それがトヨタにとって脅威となっている可能性はある。
世界では08年以降、エコカーブームに乗ってハイブリッド車が売れているが、話題性は明らかに電気自動車に傾いている。電気自動車は太陽光発電、風力など再生可能エネルギーとの組み合わせでスマートグリッドにつながるといった先走った意見すらある。いずれにせよ、電気自動車で話題を作れなければ自動車メーカーとして地盤沈下しかねないとの判断がトヨタにあり、テスラへの出資を決断したのかもしれない。
もちろん穿った見方としては、米国で唯一、元気のいい自動車メーカーであるテスラをトヨタが後見役として支えることで、一連のリコール騒ぎで米国内に盛り上がったトヨタ・バッシングを収めようという狙いを指摘する声もある。テスラはトヨタからの資金注入もあって、トヨタとGMが合弁でカリフォルニア州に設立し、現在は閉鎖されている完成車工場、NUMMIの一部を買収、量産に使う。当然、雇用や地場の部品メーカーへの発注など地元への経済効果も期待されている。こうした純政治的判断での出資であれば理解はできるが、政治としっかりした距離感を保ってきた「トヨタ・ウエイ」からははずれる。世界のトップメーカーとなったことで安易に政治的取引にのるようでは、とんがったトヨタらしさは摩耗するだろう。
■巻き返す「ガソリンエンジン派」
世界の自動車メーカーの駆動力に対する取り組みは大きく3つに分かれる。
ハイブリッド派のトヨタ、ホンダ。電気自動車派の日産、三菱自動車、富士重工。ガソリンエンジンの進化を狙う独フォルクスワーゲン(VW)、独ダイムラー、マツダなどだ。
それぞれが技術基盤や自動車に対する理念、経営体力によって方向を定めているが、今、密かに力を蓄えているのはガソリンエンジンの進化を目指すグループだ。方式は違うが、ハイブリッド以上の燃費をガソリンエンジン単体で実現しつつある。マツダは信号などで停車した時に自動的にエンジンを切り、発車する際にはエンジンのシリンダー内に燃料を噴射して再起動させる「アイ・ストップ」や軽量化などで独自の燃費向上に取り組んでいる。ガソリンエンジンの巻き返しは十分に可能性のある話だ。
トヨタは「短距離は電気自動車、中距離はハイブリッド、長距離は燃料電池」という棲み分けを考えているといわれるが、実際の商品でそんな切り分けができるわけはない。すべてのレンジをカバーでき、駆動性能、環境性能、経済性が高い駆動力が競争を勝ち抜く。
トヨタはハイブリッド車ながら電気自動車に一歩近づいた、プラグインハイブリッドを勝ち馬にしようと考えている節があるが、エンジンも積み、バッテリーもそれなりに大きいという中途半端なプラグインハイブリッド車が競争を勝ち抜く技術かどうかは疑問だ。
駆動力をめぐって様々な要素に手を出し、保険をかけようとするトヨタの姿は、要素技術だけはたくさん抱えていながら、なにひとつ勝ち組技術を出せなかった、かつてのGMを彷彿とさせる。トヨタの漂流はこれからも続く恐れがあるだろう。
筆者/ジャーナリスト・新田賢吾
フォーサイト・ウェブサイトより
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