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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3974
(2010年7月13日付 )
本円の人気が衰える兆しはほとんど見られない。公的債務残高が先進国最大で、財政赤字もかなりの規模に上る国の通貨であるにもかかわらず、円は今年の外国為替市場で一番のパフォーマンスを見せている。
本紙(フィナンシャル・タイムズ)が入手したデータは、日本円の最大の買い手の1つがヘッジファンドであることを示している。また、各国の中央銀行が円建ての外貨保有を増やしている兆しもうかがえる。
【ヘッジファンドなどの買いで14年ぶりの高値】
円の実効レートは14年ぶりの高値水準をつけている〔AFPBB News〕
円は今年に入ってから対ドルで5%近く上昇しており、先週には1ドル=86.94円をつけて今年の高値を更新した。年初来の上昇率は対ユーロでほぼ20%、対ポンドでも12%に達している。
貿易比重ベースの「実効レート」で見ても、円は実に14年ぶりの高値に近づいている。
ヘッジファンドの活動状況の代理指標として使われることの多いシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のポジション統計によれば、日本円の買いポジションは54億ドルに達している。これは2009年12月以来の高水準で、ドルに対する買いポジションとしてはほかのどの通貨よりも大きい。
また、中国も、記録的な額の日本国債を購入して大きな波紋を呼んだ。中国は2010年1月から4月にかけて、日本国債を累計で5410億円買い越したうえに、5月単月で7352億円を買い越している。
このように投資家が日本円に熱を上げるのは、驚くべきことである。日本の公的債務残高はGDP(国内総生産)の2倍近くに達しており、財政赤字もGDP比10%前後に達することが少なくない。つまり日本の債務の水準は、ソブリン債務危機の渦中にある一部の欧州諸国のそれよりはるかに高いのだ。
【金融市場の混乱からの逃避先】
日本の金利は現在0.1%程度で、しばらくはこの低水準が続くと見られることから、利回り狙いの投資家にとって円には魅力などほとんどない。
この通貨の魅力は、避難所としての地位にある。まず、ユーロ圏で債務危機が発生し、次に世界の景気が二番底に陥るのではないかとの恐怖感が広がる中で、円は金融市場を飲み込む混乱から身を守る逃避先と見なされているのだ。
米国の冴えない経済指標も円の魅力を高める要因になっている。期待外れの統計発表を受けて、米国債の利回りが低下したためだ。米国債の利回り低下は、日本円と同様に混乱からの避難先とされているドルの人気の低下につながっている。
「円がほかの通貨をアウトパフォームしているのは、リスク回避の資金が流入しているためだ。ドルを除けば、円と同程度の流動性がある通貨は見当たらない」。クレディ・アグリコル銀行の外国為替部ディレクター、斉藤裕司氏(東京在勤)はこう指摘する。
「ドルの利回りが低くなりすぎれば、円に対する需要が増えてくる。両者の間には強い相関関係がある」
日本円は2008年のリーマン・ブラザーズ破綻の影響を受けて上昇した。株価の急落が大量のレバレッジ解消の引き金となり、投資家がいわゆるキャリートレード(低利回りの日本円を売って、リスクは大きいが利回りの高いほかの通貨建ての資産を買う取引)の解消を強いられたのだ。
今年の株価急落もこれと同様に日本円を押し上げた。キャリートレードの影響力は2年前ほど強くないが(円はもう、キャリートレードで最もよく利用される通貨ではなくなった)、ほかの要因が作用した。
【金利差の縮小や国債の国内消化率の高さも買い材料】
第1に、日本と諸外国(特に米国)との短期金利差が縮小し、日本の投資家が外国投資をヘッジするコストが低下している。このため、円の売り圧力が弱くなっている。
第2に、企業と家計が多額の貯蓄を抱えているため日本の公的債務の95%は国内で消化されており、経常収支が黒字に保たれている。そのため日本は、国債が外国人投資家に見放されてしまうのではないかという懸念を概ね免れている。
第3に、一部のエコノミストの間には、日本経済は米国や欧州に比べれば良好だとの見方がある。アジアの需要から利益を得ているうえに、アジアでの設備投資の増加からも恩恵が期待できるというのがその根拠だ。ソシエテ・ジェネラルのアジア担当チーフエコノミスト、グレン・マグワイア氏は、この点が円高に寄与したと述べている。
珍しいことに、先進国の中では比較的高い成長が見込めるという〔AFPBB News〕
「先進国の中では日本経済は比較的良好で、欧州や米国よりも高い成長率を実現しそうに見える。一般には、資本逃避が生じるリスクも低いと考えられている」。マグワイア氏はこう述べたうえで、4〜5年前であれば日本がそのように欧米をリードするという話は「前代未聞だったろう」と付け加えた。
最後に、これは非常に重要だと思われるが、円高が進行しているのは準備通貨としての存在感が強まってきたからだという指摘がある。中央銀行(特にアジアの中央銀行)が、ドル中心だった外貨準備の多角化を目指しているためだ。
【準備通貨としての存在感も増す】
もしそのようなシフトが進んでいるとすれば、昨今のトレンドは大きく転換することになるだろう。国際通貨基金(IMF)によれば、中央銀行の外貨準備に占める日本円のシェアは10年以上低下し続けている。しかしユーロ圏債券市場の崩壊により、準備通貨としてのユーロの地位は低下したと為替ストラテジストのコール氏は指摘している。
カナダドルやオーストラリアドルといった通貨は、自国の経済が天然資源に依存していることから恩恵を享受してきたが、準備通貨としてのユーロ離れからは予想されたほどの恩恵を受けていないようだ。
「カナダドルやオーストラリアドルへの多角化はどうしても、それらの通貨建てで発行された債券の市場規模によって制限される」とコール氏は言う。「もし中央銀行がユーロや米ドルを避けるとなれば、日本円が不戦勝を手にする可能性は十二分にある」
円高が一段と進めば、為替介入の可能性も出てくる(写真は日銀)〔AFPBB News〕
もちろん、このまま円高が進行すると考えるのは早計だろう。日銀が何らかの対応を取る可能性があるからだ。
昨年記録された1ドル=85円という14年ぶりの円高水準を超えて円が上昇すれば、1995年に記録された同79.70円という史上最高値が投資家の目標値として視野に入ってくる。
そうなれば日本の通貨当局が、輸出業者を支援して景気の回復基調を守るために為替市場に介入する恐れが出てくるだろう。
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