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ニュース争論:急浮上した「消費税10%」 神野直彦氏/大田弘子氏 - 毎日jp(毎日新聞)
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ニュース争論:急浮上した「消費税10%」 神野直彦氏/大田弘子氏(1/5ページ)巨額の財政赤字と社会保障費の膨張を背景に高まる消費税増税論。菅直人首相も前のめり姿勢だが、財政再建や社会保障の将来像は示されないままだ。【立会人・児玉平生論説副委員長】
◆税制改革全体の中で負担の公平性考えよ−−東京大名誉教授・神野直彦氏
◆首相の「増税・社会保障強化で成長」論は疑問−−政策研究大学院大副学長・大田弘子氏
◇参院選の争点に立会人 自民党が消費税を5%引き上げて10%にする方針を示し、菅直人首相も「10%を参考にする」と超党派の議論を呼びかけるなど、消費税増税が参院選の焦点に急浮上している。
神野 経済成長と財政再建を一緒にやることが重要だ。財政には、経済危機などのショックを吸収する役割が期待されており、政府が財政赤字そのものの解消に神経を注ぐ必要はない。ただ、今のように国債を大量発行して財源を賄う状況では、市場の急変で国債が暴落するリスクがあり、そうなれば国が財政出動に必要なお金を調達できなくなる恐れがある。そんな事態も想定し、政府は国民生活を支えることができる最低限の資金調達基盤をつくっておく必要があり、それには消費税も含めた増税が必要になる。
大田 これまで日本は歳出削減も「ノー」、増税も「ノー」という選択肢が許されてきた。これは、国内に個人など民間部門の貯蓄が豊富で、国債消化の受け皿になってきたからだ。しかし、少子高齢化で貯蓄残高が減る一方、国債発行額は増え続け、引き受け余力は徐々に乏しくなりつつある。税をどうするのか、歳出を今のまま増やしてよいのか、いよいよ選択を迫られつつある。
菅首相が政治のタブーを打ち破り、「消費税増税」を言い出した姿勢は評価するが、なぜ消費税増税が必要なのかが明確にされていない。政府が6月に策定した財政運営戦略でも財政再建プランは明示されず、20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標だけが掲げられている。増税して何に使うのか、具体案を示さないまま、いきなり消費税増税論が出てきて、肝心の税率についても、野党の自民党の主張に抱きついて「10%」を目安にするというのでは、国民は是非を判断できない。
◇逆進性をどう考える立会人 菅首相は、消費税増税の前提として、低所得者ほど負担感が重くなる逆進性対策にも言及している。
神野 逆進性緩和というが、食料品など生活必需品などの税率を低く抑える軽減税率の導入は、適用をめぐる業界との調整難航が必至だ。一方、低所得者に増税分を還付する方法を採ろうとすれば、個人所得を完全に把握する必要がある。国民一人一人に番号を割り当てる共通番号制度導入が不可欠だが、(国民の理解やシステム構築など)実現に非常に時間がかかる。
税には消費税のほか所得税や相続税など、それぞれの税目でメリットとデメリットがあり、合理的に組み合わせて増税を考えるべきだ。例えば、消費税は所得の多寡にかかわらず負担し合い、病気などで困窮している人に水平的に再分配する。同時に、所得税は高額所得者ほど税負担が多くなるよう累進性を高めれば、消費税増税の際に大掛かりな逆進性対策をしなくてもよくなるケースもあるのではないか。また、温室効果ガスの排出抑制を図る環境税のような「量」に対する課税も重要だ。全般的な税制改革の中で負担の公平性を考えるのが筋。消費税だけに特化して増税論を展開するのは賢明ではない。
大田 税制改革というと、すぐに「消費税増税」に焦点が当たるが、財政再建や社会保障の財源確保の万能薬とは必ずしも言えない。例えば、消費税率を10%に上げれば、税収は確かに増えるが、その際、国と地方の配分割合をどうするかという、やっかいな問題が出てくる。また、消費税増税は名目上、物価を引き上げるが、そうなれば、物価上昇を反映する年金の給付額も上がり、財政負担が増すことも考えられる。
安倍、福田政権で経済財政担当相を務めた際、一番やりたくてできなかったのが、包括的な税制改革。私が注目したのは消費税ではなく、相続税の見直し。相続税をもっと広く薄く負担してもらい、そのお金を社会保障の財源に回す。相続税で取られるくらいなら、消費しようという人も出てくるだろうが、そうなれば個人消費の活性化につながる。菅首相が「強い経済、強い財政、強い社会保障」を目指すなら、税制面のカギは消費税ではなく相続税ではないか。
◇二兎を追えるか立会人 菅首相は「強い経済、強い財政、強い社会保障」の一体的な実現で財政再建と経済成長の二兎(にと)を追うというが。
大田 スローガンは素晴らしく、実現できれば世界のお手本になるだろう。しかし、国の財政の実態は未曽有の高齢化で社会保障費が加速度的に膨らむ一方、経済成長の弱さもあって税収は回復せず、来年度予算さえ組めるかどうか危うい状況だ。社会保障を強化すれば将来不安が解消され、安心して消費が増えるというのはその通りだとしても、それで経済成長が底上げされるかは疑問だ。単純に介護や医療など社会保障関連の需要や雇用は増えるかもしれないが、新産業が起こり、新たな付加価値が生み出されなければ、成長力強化にはつながらない。大胆な規制改革が不可欠だ。
神野 菅首相が言う「強い経済」の本質は、社会保障の充実などに伴う直接的な雇用増ではなく、医療や環境などの分野で技術革新が起こり、新たな市場が創出される可能性だ。国の社会保障サービス増加が呼び水となって日本の医療技術が発展し、医療機械や材料分野でも新しい産業が生まれるシナリオだ。例えば、整形外科は現在、骨折などの治療に海外から高価な人工関節を輸入しているが、国の医療サービスの充実でニーズが増えれば、国内メーカーも参入できる。医療や環境分野では、国民が望むサービスや製品がまだまだたくさんあり、国の後押しで新産業が生まれ、成長力強化につながる余地は大きい。
■聞いて一言◇過度の国債依存体質、日本は危機感足りず
ためるばかりでは、経済は回らない。そのため、民間の過剰貯蓄を吸い上げて、政府が使う。しかし、今は国債という借金に偏り過ぎている。それを税金に振り替えようというのが、財政再建論議の一つのポイントだ。
しかし、増税は評判が悪い。そこで成長を阻害しない増税もあり得るとの論理が出てきた。菅直人首相が唱え、ケインズ経済学派を「ケインジアン」と呼ぶのにちなんで「カンジアン」と形容されている。その論理立てには疑問があるが、国債消化能力に限界があるのも確かだ。市場からの資金に過度に依存した財政は、市場の混乱によるリスクをもろにかぶる。その危機感が日本には足りないようだ。(児玉)
■人物略歴
◇じんの・なおひこ1946年生まれ。専攻は財政学。現在、地方財政審議会会長、政府税制調査会専門家委員会委員長を務める。
■人物略歴
◇おおた・ひろこ1954年生まれ。専攻は公共経済学、経済政策。安倍、福田政権で経済財政担当相を務めた。
「消費税も含めた増税が必要」とか「大胆な規制改革が不可欠」とか「医療や環境などの分野で技術革新」とか……、一体この人たちは、この国がデフレだということがわかっているのだろうか。供給力が過剰で、需要が足りないのだということを。幾らごちそうを並べられても、懐が寒ければどうしようもない。
菅首相ブレーンの神野直彦氏に期待した人もいたかもしれないが、やはりこれではデフレから脱却することは不可能だといわざるをえない。
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