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2010年06月29日 02:25
ブブゼラの向こうで、「政府の再定義」が起きているブゥ〜ゥブゥ〜ゥ〜南アフリカのサッカースタジアムでは、ブブゼラが鳴り響きます。
永田町にある政治スタジアムの中では、参議院選挙で、消費税〜、消費税〜と、ほとんどの政党がブブゼラ鳴らしています。が、多くの若者はどのチームに合わせてブブゼラを鳴らしていいのか、分からないままです。
どの政党も、過去の政策の誤りや公約違反を繰り返す。政党もそれを選ぶ国民も、簡単にそれを忘れます。メディアも同じなので、多くの人々は何を判断基準に選んでいいのか、ますます分からなくなります。結局、「人」を変えることで、「責任」の形を整えようとします。その結果、日本の首相は1年任期になりました。そして、「気分」で支持率が大きく振れるようになったのです。それが無責任社会の政治の行き着く先でした。
この間も、その傾向は続いています。
菅直人新首相は、所信表明演説において、「強い経済、強い財政、強い社会保障」をスローガンに掲げ、「最小不幸社会」を目指すと表明しました。そして、増加する社会保障費の財源を確保するには消費税増税を含む税制改革が必要だと言い始めました。
もちろん、格差・貧困の増大、年金・医療・介護の不安が、デフレ経済を生み出す一因となっており、これから高齢化社会を迎えて、ニーズの高い医療や介護の分野で雇用を生むことは非常に大事になることは確かです。
しかし、増税だけをとったら、景気にとってマイナス要因になります。よほどしっかりした社会保障制度の改革案を練り上げて、セットで提案しない限り、増税は政治的に受け入れられないだろうし、経済的には景気の下支えにはならないでしょう。
たしかに、民主党は、衆議選マニフェストで、年金一元化、後期高齢者医療制度の廃止、介護従事者の報酬月額4万円引き上げ、子ども手当、職業訓練中の生活費支給など、自公政権の社会保障政策ではもたないとして、抜本的な社会保障改革を打ち出しました。ところが、この間、子ども手当の半額支給以外、これらの改革はほとんど実行してきませんでした。
おまけに、政府周辺で、これらの抜本的な社会保障改革を実施すると、現状ではどのくらいの財源が新たに必要になるのか、再計算した形跡もありません。しかも菅首相は、社会保障費の自然増を考えると、自民党が考えているのとほぼ同じだから、自民党案と同じ10%を消費税率の参考にしますよ、と言い出す始末。
これでは、菅政権は、自らマニフェストで掲げた社会保障改革なんてやる気がないんと表明したようなものです。どうみても、あ菅(アカン)です。
消費税増税を打ち出せば、それが参議院選挙の争点として浮かび上がり、普天間基地移設問題や政治とカネの問題に関する報道を一気に吹き飛ばしてしまうという読みでしょう。参議院選挙を前にして徹底的に争点をぼかす、あ菅(アカン)政権の狙いは、当面成功したかに見えます。しかし、これで自民党との違いも分からなくなりました。
一方で、自民党と公明党は、このような日本の閉塞状況を作り出した政策的失敗を全く反省していません。いつまでたっても、冷戦型オヤジ思考の「新自由主義」や「構造改革」論から抜け出られないのです。彼らが政権に戻っても、この国は死ぬだけです。
それにしても、小泉=竹中路線のツケはあまりに大きいです。格差や貧困の増大によってデフレ経済を定着させただけではありません。「構造改革」論者たちが進めた「金融立国」は完全に破綻し、新しい成長産業も生みませんでした。それどころか、『新興衰退国ニッポン』の後半でも書いたように、電気製品、スーパーコンピュータ、太陽電池、鉄鋼、半導体など、多くの産業分野で日本の国際競争力を著しく低下させてしまいました。まずは成長してから分配をと言いますが、成長力をどんどん落としたんです。そして、その最大の犠牲者が若者たちだったのです。
ところが、自民党は若手の河野太郎をはじめ小泉「構造改革」を推進してきた人たちを抱えているので、「構造改革」の誤りを総括できないのです。たくさんできた新党も、4月27日付けブログで書いたように、失敗した小泉「構造改革」論の焼き直しそのものです。
例によって、「改革が足りなかった」のオウム返し。結核なのに、風邪薬が効かないから、もっとたくさん風邪薬を飲めば治ると言っているのと同じです。信ずる者は救われるってことでしょうか。
犠牲者になったのに、多くの若者たちも刷り込みの結果、まだ規制緩和や法人税減税で企業が成長できると信じています。たぶん、原爆を2個落とされないかぎり敗戦を認めなかったように、秋葉原にサムソンやLGの製品で埋め尽くされないかぎり、負けは分からないのかもしれません。
こうなってくると、民主党はマニフェストを裏切って自民党に近づき、自民党は過去を反省せずに変われず、ずるずるとやっているうちに、財政赤字も年金もどうにもならなくなっていきます。そして、やがて民主・自民の大連立=挙国一致内閣で、消費税増税ってことになるのかもしれません。そもそも2大政党制を目指していたはずですが……その行き着く先が政党政治の終わり。何てシュールなんでしょうか。
菅首相の言う「第3の道」には、残念ながら中身がありません。なにせ国会で「乗数効果とは何か」を質問されて、何も答えられなかったくらいですから。
昨年末、菅首相(前国家戦略相)が中心になって出した「新成長戦略」も経産省官僚たちの文書です。今までの自公政権の政策はよかった。なかったのは政治のリーダーシップだと言っています。つまり福田政権や麻生政権が出した政策はよかったけれど、首相がダメだったということらしいです。
世界経済の現況を見れば、成長戦略の問題はそんなに簡単ではありません。社会保障改革と増税の組み合わせだけでは、国内市場を厚くするのに貢献できても、必ずしも「強い経済」を作れるとは限りません。
それは、地球温暖化を防ぐべく、世界中の国々がエネルギー転換をベースにした新たな「産業革命」を引き起こす以外にないのです。しかし、それは冷戦時代とはまったく違った状況の下で実現しなければなりません。
結局のところ、冷戦型オヤジ思考を代表する自民党や新党はもちろんのこと、菅政権にも時代認識がないんですね。
私たちは、いま経験したことのない(つまり教科書に書いていない)世界に生きています。市場原理主義に基づく「新自由主義」は、「失われた20年」をもたらし世界金融危機を迎えたことで完全に破綻しました。しかし「新自由主義」の破産後に登場したのは、中国をはじめとする「国家資本主義」の台頭です。
いまや3兆ドルに達せんとする外貨準備高を持つ中国の資金なしに、欧米諸国の財政も金融ももたない状況が生まれています。資源では、世界の石油の埋蔵量や在庫の7〜8割が、ロシアのガスプロム、サウジアラビアのアラムコ、中国のペトロチャイナなど7社の国営企業が持っています。そして、世界金融危機によって欧米諸国の成長力が低下する中で、世界経済を牽引しているのは、中国、インド、ロシア、ブラジルなどの新興国の経済です。
これらの新興国の一部は、もともとは「社会主義」国家で、市場経済化を進めてきました。政府が大きな権限を持ち、市場を強くコントロールしています。そして、彼らは「国家資本主義」とも言える手法で、高い経済成長率を実現しています。
しかも中国・ロシアは、軍事外交上、米国中心の国際秩序に対抗して、しばしば権威主義的国家を支援したり支持したりします。これから少なくとも10年くらいは、国家資本主義が台頭する時代となります。世界は多極化と不安定化が進むでしょう。
この「国家資本主義」というモンスターと対抗するためには、否応なしに政府の役割が増してきます。市場任せでは、この国家資本主義には勝てないからです。それは何らかの既存理論に導かれたものではありません。
新しい政府の役割が次々と浮かび上がってきています。まず、発電所や新幹線や水などの官民一体による「インフラ輸出」やレアメタルなどの「資源確保」の動きが典型的です。「構造改革」路線を主張してきた財界も、利益なればと、これに乗っかっています。再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度を多くの国が導入していますが、これは官民一体による人為的な市場創出です。そのために発電は規制緩和されますが、売電は食管制度に近い強力な政府介入をとります。かつて1970年代のマスキー法のように、自動車や建物などの環境規制を強化することによって、環境技術開発投資やイノベーションを誘導する動きも強まっています。規制は経済活動を阻害するという新自由主義とは正反対です。新しいインフラ投資はもはや道路ではなく、スマートグリッドと双方向的なネットワーク型電線網、あるいは学校や病院の断熱化になります。公的部門の技術開発投資によってイノベーションを先導することも重要です。中国は、国家主導で有人宇宙飛行から再生可能エネルギーまで、3000億ドル近い技術開発投資をしています。IT化やデジタル化とともにソフトやコンテンツを創造する知識階級が重要になります。この人材育成と教育分野において政府の役割が大きく増してきています。
つまり新しいタイプの産業政策が求められているのです。
これら新しく登場した政府の機能は、「大きな政府」か「小さな政府」か、あるいは供給サイドか需要サイドかといった冷戦型オヤジ思考の座標軸には当てはまりません。それは進歩派でも同じ。平等と所得再分配を重視する社会民主主義も、高度成長時代に成立したので、経済成長のことは考えないでよかったのです。しかし、今は100年に1度と言われる経済危機に直面しており、産業構造の転換と若者の雇用創出を必要としています。
重要なのは、世界中で一斉に投資を引き起こす「産業革命」のリーダーシップを誰が握るのか、にあります。石炭を基礎とする第1次産業革命も、石油を基盤とする第2次産業革命も、アングロサクソンが主導しましたが、中国は、この再生可能エネルギーを基盤とする第3次産業革命を主導することを狙っています。日本にとってこれほどのチャンスはないはずですが、冷戦型オヤジ思考が日本を覆っています。あ菅政権も同じです。
「構造改革」路線の破綻と国家資本主義の台頭の中で、世界で起きている新しい政府の役割を見極めて、日本も本格的な産業戦略を立てなければ、世界からますます取り残されていくでしょう。そして、この否応なしの「政府の再定義」は、旧来の座標軸の上に成り立ってきた2大政党制の基盤を崩してしまいます。
それはさまざまな危険性と隣り合わせです。この政府の新しい役割は透明性を失えば、癒着と腐敗を生むでしょう。また、先に述べたような民主党と自民党の中身のない大連立になれば、大政翼賛会的状況を生み、政党政治の終焉をもたらすかもしれません。
「国家資本主義」との競争にとって大事なのは、世界で「価値」の争いに勝つことです。より自由で民主主義的な教育システムと技術開発投資を基盤として、世界の環境エネルギー革命をリードするイノベーションを創造する若い世代をいかに育てるか。『新・反グローバリズム』で書いたように、「ルールの共有」によっていかに平等と自由をいかに両立させるか。これらの問題に正面から取り組む必要があります。
この経験のない新しい挑戦は、若い世代に託すしかありません。若者こそが地球温暖化の最大の被害者であり、この挑戦の担い手だからです。仮に、2050年に地球が2℃のティッピングポイントを超えたとしても、ブブゼラも吹けない私はとっくに墓場に入っているはずです。それまで私は声を精一杯張り上げ続けしますが、ブブゼラにかき消されそう…。
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