http://www.asyura2.com/10/hasan68/msg/873.html
Tweet |
出典 朝日新聞 6月30日 朝刊
記事の概要
中国と台湾が29日、中台経済協力枠組み協定(ECFA)を結んだ。
関税引き下げなど貿易・投資の障壁をなくす一歩を踏み出し、順調に発展すれば自由貿易圏が出現する。
日本を含む周辺国諸国は、この巨大経済体との付き合い方が問われている。
29日の会談では、中国側の陳雲林・海峡両岸関係協会会長が「両岸(中台)の同胞が期待を寄せ、双方が心血を注いだ協定が早く利益と幸せをもたらすように願う」とあいさつ。台湾側の江丙坤・海峡交流基金会理事長は「協定の署名は互いに利益をもたらすウイン・ウインの成果」と応じた。
台湾は国際社会で孤立し、東アジアで進む自由貿易協定(FTA)の議論に加われなかった。東南アジア6か国と中国の間では今年、関税がほぼゼロになり、貿易額(1〜5月)は前年同期比で6割伸びた。
このままでは不利になるという判断が馬英九総統にあり、事実上のFTAにあたるECFAの締結にかりたてた。
今回、台湾産の冷凍魚、バナナなどが関税引き下げに入った。野党・民進党の地盤である台湾中南部の産品を対象にすることで、中国と馬英九政権の思惑が一致したとみられる。
しかし台湾側が関税引き下げを強く希望した液晶パネルなどは、中国側の産業育成戦略のため、受け入れられなかった。
中台の経済関係はすでに強い結びつきがある。担ってきたのは中国に進出した台湾企業だ。89年の天安門事件後、主要国が中国に経済制裁をしていた頃から投資が始まり、沿海部を中心に現在7万社以上を数え、台湾ビジネスマン120万人が活躍する。
「中国の発展を支えているのは台湾」(台湾行政院幹部)という自負もある。
こうした活力を取り込み、中国経済の底上げを図り、台湾を不可分の関係にするのが中国の狙いだ。
中国の胡錦涛主席は、台湾の世論を刺激しないで、焦らず、現状を容認しながら馬政権との対話を深め、着実に緊密化を図る戦略だ。
17日に台北を訪れた戴相竜・前中国人民銀行総裁は講演で、「大陸、台湾、香港、マカオの中華経済全体が協力を強め、世界市場に進出すべきだ」。
台湾側は中国の政治的な意図を承知の上で、利益の最大化を図ろうとしている。
コメント
いつか中国と台湾の間で、自由貿易協定(FTA)が結ばれる日が来ると思っていたが、それが昨日のECFA協定調印だった。
それも蒋介石(国民党)と毛沢東(共産党)が、内戦回避を話し合った(1945年10月)地の重慶で行われるとは、この協定が中台一体化を示す政治的な意味を示している。
台湾はさらなる経済発展という実を採り、中国は台湾関係の深化という政治的な成果を得た。
もう30年も前になるが、私は渋谷区であった勉強会に初めて呼ばれたことがあった。その会は日本に住む台湾経済人の集まりで、私が書いた「日本の最も危険な日」の一部について、詳しく聞きたいと呼ばれた。
その一部とは、私は著書の中で中台戦争を否定し、中国は台湾の経済を実らせて、それを軍事力で奪うことなく、自国の経済圏に組み込む形で外交を仕掛けてくると説明した。
まだ当時は、中台軍事危機が続いており、台湾のスパイが中国で何人も摘発されていた時代だった。
意外だったのは、その会の参加者には若い人は皆無で、比較的年をとった方が多かったと憶えている。狭い会場に60人ぐらいの人が集まっていた。
話は、当時としてはかなりショックなことを話したが、参加者からの感情的な反論はなかった。
具体的には「中国は椰子の実が熟れて落ちてくるように待つだろう」と台湾を見ていると説明した。
また、中国軍には台湾に軍事侵攻する力はないとも説明した。
私のような軍事専門家という立場の者が、当時、中台戦争を否定することが珍しい時代だった。
最近、在沖海兵隊の存続理由として、中台軍事危機に有効と説明する者があるが、今回の中台のECFA調印にどのように答えるか、知りたいものだ。
さてここで日本として最も注意が必要なのは、今まで、中国軍の中で台湾に指向していた部隊が、北上してくることの警戒である。
北朝鮮が不安定したことを理由に、北朝鮮に接する瀋陽軍管区に移動・増強されれば、朝鮮半島の不安定化はさらに強まる。
特に第2砲兵(戦略核ミサイル部隊)がどのように再編されるか、日本の非核政策にも強く影響するので看過できない。
今後、このあたりの動きに注目していきたい。
所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamiura Motoaki
Military Analyst
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。