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現状のままの消費税増税・法人税減税は、日本の産業をより一層弱体化し、社会の階層性をより一層強め、結果的にテロが横行する社会を作ることになる。多分、今、税制の論議をしている政治家の方は、そのことを意識的に無視しているようだ。 1. 1980年代前半までの日本の税制は、社会の階層性を弱め、産業基盤を強化するものだった。所得税の最高税率は8000万円以上の所得に対し75%で、住民税も累進性があり18%だったので、合計93%もの税率で税金がとられていた。つまり、あまり高額な給与をもらってもそのほとんどは税金となるだけなので、給与を高くするよりも設備投資や研究開発投資に回そうと言う動機づけになった。法人税についても同じことが言え、以前は利益を出しても半分近くが税金となるので、それならば、従業員の給与を上げたり、設備投資や研究開発に使うと言う判断になった。法人税が引き下げられれば、給与や設備投資を減らし、利益を増やして結果的に株の配当金を増やそうという判断が合理的になる。 *6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています。 <<12>>
消費税増税・法人税減税論議の背景にあるもの:1980年代から一貫して日本社会弱体化のための税制改定が行われてきた。
2. 現行の消費税制度は、簡易課税制度があり、これが益税・損税という問題を引き起こしている。消費税の基本的な仕組みは次のようなものだ。100万円で仕入れたものが仮に10万円でしか売れなかったとする。仕入れ時に100万円の5%、つまり、5万円を消費税として支払っている。販売時は10万円の5%、つまり、5千円を消費税として受け取っている。この場合、4万5千円の消費税の還付を受けることができる。しかし、その前提として、全ての取引をきちんと記録し、仕分けておく必要がある。そして、これは、大変な手間になってしまう。そのため、年間売上高が5000万円以下の場合、簡易課税制度を利用でき、仕入れ合計額から一定金額を控除したものの5%を仕入れ時に払った消費税とみなすことができる。例えば飲食店はみなし仕入れ率は40%なので、仮に5000万円の売り上げがあったとして、預かった消費税は5000万円の5%で250万円。仕入れは5000万円の40%なので、2000万円が仕入れにかかった計算になり、支払消費税は2000万円の5%で、100万円。結果的に納める消費税額は250万円−100万円で150万円となる。ところが、実際に仕入れにかかった費用が1500万円だとすると実際の支払消費税は1500万円の5%で75万円になる。これは簡易課税制度で100万円の支払消費税を見込むので、差額の25万円の益税が発生する。しかし、損税が発生することもある。例えば、急に設備を更新してその費用が2000万円以上になってしまった場合だ。設備更新に3000万円かけたとすると、その時に支払った消費税は3000万円の5%で、150万円になる。しかし、売り上げが5000万円のままなら、簡易課税制度の適用を受ける限り、支払消費税額は100万円にしかならい。ここで、損税が50万円発生してしまう。
3. 簡易課税制度は一度申請すると2年間は自動的に継続になるので、2.で述べた損税を避けるために、急な設備投資など大きな出費をしなくなる。これが、景気変動に合わせた柔軟な設備投資をためらわせるもとになっている。
4. 大手輸出企業などには、輸出品には消費税がかからないので支払消費税分だけの還付が生じる。大企業になるとその金額が1000億円を超えることもある。大企業の多くは、仕入れに際して価格競争力が強く、実質的に消費税額を納入業者負担にしていることも多いので、還付額が丸儲けとなっているとされる。
5. 正社員への給与は消費税のかかる経費とすることができないが、派遣労働者を使うと経費扱いになるので、支払消費税が増え、結果的に正社員よりも派遣社員を増やす効果を持っている。正社員を1000万円の人件費で雇っても、これはただの経費で支払消費税はゼロの計算になる。しかし、派遣労働にすれば、1000万円の5%で50万円を支払消費税として扱うことができる。つまり、この分を還付申請したり、売り上げに占める預かり消費税と相殺できる。
6. 消費税は、消費のたびにかかるので、必然的に消費を冷やす効果がある。更に、起業する場合、物品の購入時に消費税を支払うことになり、売り上げは当然物品の購入時よりも遅くなるので、税の先払いという負担が生じ、これが起業を妨げることになる。これが所得税だけなら、給与受け取り時、または所得の申告時のみに税が発生するので普段の買い物の時に税を意識して消費をためらうことがない。また、所得税は、利潤に対しての課税なので、税の先払いという負担がない。所得税は消費税のような起業者に対するブレーキとしての効果はない。
7. 一般的によく言われるが、食料品などの生活必需品は高所得者も低所得者も同程度かかるので、いわゆる所得への逆進性を消費税は持ってしまう。つまり、食料品などにもぜいたく品と同等の消費税をかけている日本の消費税制は低所得者の負担が大きい。これを解消するためには、食料品などの生活必需品の消費税率を軽減することがあるが、そのためにはインボイス方式が必要であり、これはただでさえ煩雑な会計処理をより煩雑なものにしてしまう。
8. 消費税は物価の変動と同時に変動するので、インフレになってもインフレ分だけ増税になる。一般の所得税なら、前年の実績に基づいての納税なのでインフレ分だけ実質目減りする。これが、行政当局にとって所得税制がインフレを起こさせない効果を持つことだが、逆に、消費税は行政当局にとってインフレが有利であると言う判断をさせることになる。つまり、財政運営の失敗を市民へ転嫁できるシステムが消費税制だと言うこと。
9. もともと、消費税導入前は物品税としてぜいたく品には30%の課税がされていた。これが、消費税導入とともに廃止され、消費税の5%課税になった。これも典型的な富裕層優遇の税制。
10. 消費税は当然、消費しなければ負担することがない。つまり、海外投資家などは、消費税を支払うことなく利益だけを得ることができる。所得税を下げて、消費税を上げることはこういった形で、投資家一般を優遇するものだ。
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