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(回答先: 韓国サムスンに日本の電機メーカーが追い込まれた理由、黒幕にアメリカ国際金融資本有り 投稿者 sagakara 日時 2010 年 6 月 13 日 17:42:41)
日本の電子産業が束になったもかなわない理由は、謀略史観によるアメリカの陰謀ではなくて、フィードバックという日本的なやり方を乗り越え、前向きのフィードフォーワードを戦略として採用したことだと、世界の動きに密着して観察している藤原記者が見抜き、それをカリフォルニアからの対談で明らかにしている。こういう世界的な視野からの発想と議論がないために、日本人は自分たちの至らなさに気づいていないのではないか。同じことはトヨタの自動車についても言えるのであり、倒産したキアは日本人のアドバイスを生かして、アメリカの市場において現代自動車と共に追い上げていることに、日本人は気づかないで油断しているのではないかと思われる。現に東南アジアでのマーケットの争奪戦では、日本の自動車は韓国の車に追い上げられているらしい。そういったことを知るためには、次の対談は非常に役に立つと思うのである。
<貼り付け>
『財界 にっぽん』 2010.01月号
国際舞台で存在感を喪失し続ける日本
大局観とデコンストラクション思考
に欠けた日本の悲劇
坂田英雄(画家・リラ会長、ロサンゼルス在住)
vs.
藤原肇(慧智研究センター所長、台湾在住)
全体を直感的に捉える能力としての大局観
藤原 ここで議論したいのは大局観の重要性についてで、それは全体把握が日本の混迷を救う上での鍵だからです。画家には二種類のタイプがあると私は思うが、先ず描写力や筆さばきに優れた腕を持つ職人的な画家がいて、このタイプの人が全体の80%を占めている。また、全体の構図と配置を的確に描ける才能に恵まれた1%には、ラファエルやダヴィンチのような天才に属す人がいて、残りが普通の芸術家だというのが私の意見です。
坂田 冒頭からラファエルやダヴィンチの名前が出たのでは、私のようなありきたりの絵描きが出る幕などはとてもない感じです。確かに、偉大な画家は全体をピシッと捉えて作品に仕上げるが、その才能を持てば本質と永遠性が描けるし、何といっても全体を掌握することは最も重要な能力であり、これは芸術に限らず全ての分野に共通です。
藤原 カリフォルニアは人種のルツボと言われており、いろんな国の人が作るコミュニティがあるが、大局観を持つにはタコ壷にいたのではダメです。この多様なコミュニティと非常に緊密な関係を維持すると共に、各国に頻繁に出かけ現地人と接触する点で、坂田さんは日本人として例外的な存在です。あなたはロスに住む画家としての活躍だけでなく、世界的な規模の「メトロポリタン芸術協会」の一環であり、NPO(非営利組織) であるLELA(Lantern of the East, L.A)の会長として、世界中を飛び回って忙しく活躍している。そこで、先ずは坂田さんが会長をしているLELAの内容について、簡単に説明してもらうことから始めましょう。
坂田 芸術家が本当にやりたい芸術家同士の交流とか、地域社会の芸術活動に寄与できるかを考えて、 1985年に世界を結ぶネットワークを作りました。そして、198 8年のソウルでのオリンピック大会の時には催し物として、プランタン百貨店の三階の半分を借り切る形で、二十数力国の芸術家の作品を展示した。これを契機に今まで二十回ちかくLELA主催の展示会を続け、開催国はインド、韓国、日本、タイ、米国、メキシコ、アルメニアといった具合で、各国から十数名が参加するアートキャンプも続いています。芸術にとってアトリエでの伝統的な創作は大切だが、人目は慣れ親しんだ環境の中で満足すると、マンネリに陥って創造力を衰退させてしまう。これは芸術だけでなく産業活動や国力の場合でも同じであり、今の日本の混迷は政治や経済だけでなく、芸術活動も低迷で優れた作品が生まれなくなった原因なんです。
藤原 アジア主義者の坂田さんが行動している様子は、茨城と福島の県境の五浦に日本芸術院の研究所を作り、弟子の横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山などを引き連れて旗揚げした、岡倉天心の平成版のような感じがする。あなたがアトリエのキャンバスに向かう仕事は半ば放棄して、東奔西走して若い芸術家たちを組織しているのを見ると、アジアを舞台に新しい芸術の炎を燃え上がらせようとしている様子が、とても良く分かります。
坂田 私には岡倉天心のような才能や指導性はないが、少なくとも長崎での原爆の被爆者としての立 場から、次の世代に芸術の素晴らしさと平和の心を伝えたい。今の世界には純粋無垢な魂を指し示して、真に価値ある手本が乏しい上にエゴが渦巻いており、自己の利益追求ばかりが横行しているので、そういう世相への反発なのかも知れません。だから、発表の機会に恵まれない発展途上国の若い芸術家たちが、もっと活躍できるような場を作りたいという希望を抱いて、忙しく世界を駆け回っているということです。
瞳の輝きと覇気を失った最近の日本人
藤原 ところで、ロスに住む坂田さんは世界を飛び回っているが、過去一年間にどれくらい海外に出かけているのですか。
坂田 おそらく年に六回か七回になると思うが、オランダ、タイ、ドイツ、メキシコ、コスタリカ、日本、アルメニアといった具合で す。
藤原 それだけの行動力を持つ坂田さんが世界を訪れた印象として、海外における日本の存在感についてどんなことを痛感しましたか。ビジネスマンやジャーナリストが感じた記録は、活字になって報告されたものも結構あるが、全体図を構想して作品にまとめる画家の視点と、芸術家が誇る直感の閃きは貴重なのでそれを知りたい。
坂田 日本の存在感が実に乏しいという一語です。下手な英語だが私も時によって講演をするが、どこの国に行っても若い人が目を輝かせて聞いてくれて、来て良かったし喋り甲斐があったと感じるのに、どういうわけか例外が日本人です。日本人が好奇心に欠けているわけではないが、全く反応がなくて張り合いがないので、「何か質問はありませんか」と問いかけてもレスポンスがない。特に若い人が無気力になってしまい、外国人に追い越されているのを見るのは悲しいことだが、こんな感じが世界に拡散しているのです。
藤原 デタラメで身勝手な政治が長期にわたって続き、日本中が不況の中で閉塞感に支配されているために、若い世代までが希望を失ってしらけている。日本の政治には大局観がないから戦略も生まれないのだが、挑戦の気が起きないのは老化現象であり、でき上がった秩序に捉われて進化しないのが老化で、日本人の覇気が沈滞して老衰している。
坂田 若者だけでなく産業界全体がチャレンジ精神を喪失し、敗北主義に陥って対応さえも出来ない事実をメキシコで見て、私は日本の不甲斐なさを痛感しました。サン・ディエゴの南百キロのエンセナダの町は建設ブームで、メキシコ人に連れられて町の新規開店した大型スーパーのコスコを訪れた時に、日本製品がなかったので背筋が寒くなった。特に電化製品の売り場で受けたショックは強烈でして、カメラのところにソニー製が一台あっただけで、後は韓国製や中国製が山積みになっており、テレビや携帯電話では韓国のサムスンが圧倒的でして、日本と台湾の製品はほぼ姿を消していました。
藤原 価格競争にはばまれて日本製が店頭から消えれば、顧客とのコンタクトが断たれて忘れられてしまうだけだし、存在感を与える機会を失ってジリ貧に陥り、それを取り戻す労力と時間は巨大で大変な損失になる。コスコは倉庫方式の大型スーパーで自己ブランドまで持つから、そこで市場を失ってしまうと影響は深刻です。
坂田 最近の日本製品の品質はとても良くなったが、高級品は伝統的にヨーロッパ製品が支配しており、一流品にはそれなりの独創性と思想性が必要だから、その分野で名声を簡単に確立できるとは思えません。中流の中から下流にかけては値段が勝負だから、そこは人件費の高い日本製品には手が出ないし、韓国製だって中国製にとてもかなわない。
藤原 でも、韓国製や中国製の多くは日本製の部品を使い、日本の会社が作っているケースが多いから、韓国などは対日貿易の赤字で苦しんでいるそうです。日本人は国内市場を開拓する代わりに、韓国や中国を手先に使って輸出攻勢を続け、ブランド力ではなく稼ぎ高の大きさが主体という作戦で、生き延びようというやり方をしています。
坂田 それもあるだろうが、日本が得意にしていた中流品の市場において、優位性を失った最大の原因は日本の高賃金だけではなく、日本人全体を包む覇気のなさだと思うのです。
日本のフィードバックと世界のフィードフォーワードの差
藤原 米国でもテレビやコンピュータの液晶モニターは、最近は韓国のサムスンが市場を制圧している感じで、かつて陳列の中心にあったソニー製は片隅で「昔の光いまいずこ」です。制度疲労で機能不全に陥った日本政治のせいで、世界の動きへの適応力をなくして国粋主義化したために、外に開く関心と挑戦への気概が衰えており、相対的にこれまでの優位を喪失しているのだが、国内にはそうした事態への危機感もないようです。
坂田 その代表が国際規格とは違う方式のために、国内市場を守るために孤立化した携帯電話のケースです。日本製の携帯はテレビ以上に存在感がなくて、世界の市場はフィンランドのノキアと韓国のサムスンが支配している。韓国人の話だとサムスンは電化事業の分野において、日本のエレクトロニクス業界全体より大きく、半導体メモリーの生産では世界一を誇っているそうで、そのうちソニーや松下も吸収されかねないし、三菱や日立だって乗っ取りかねない猛烈な鼻息です。
藤原 三菱や日立は造船や重工業を持っているから、サムスンが吸収できると考えたら思い上がりになるが、少なくとも売り上げ利益ではトヨタ級ですね。戦後の日本が製造工業を中心に発展した理由は、産業社会の中核が技術指向型だったからで、日本の企業は合理化とフィードバック・システムを武器に、目覚しい発展を遂げて経済大国になった。より良いハウトゥを求める点で日本人は優秀だから、その器用さで迅速にフィードバックを活用して成功したが、これは類型化による制御技術に頼る経営です。だが、決められた枠組みの中での成果に対処するフィードバック方式は、創造性や知的なチャレンジとは無縁なために、新しい状況に遭遇すると判断不能で無力を呈します。
坂田 昔から日本人は手本があればいい仕事をするが、創造的な仕事は得意ではないと言われているし、芸術の世界でも伝統への崇拝が支配的です。だが、変化と関係する独創とか創造性という面では、力夕を大事にする日本人の伝統へのこだわりは、規格品としての品質の良さだけで終わってしまうので、最終的にサムスンに追い抜かれてしまった。
藤原 裏金事件の責任をとってサムスンの会長を辞任した李健煕は、ジョージワシントン大学でMBA を取って経営革新したが、同時にオリンピックを利用して蓄財のために使い、最後には錬金術を糾弾されて晩年を汚した点で、コクドの堤義明と似た二代目総師の典型です。それでも、再訪日で三星重工業の東京支店を指揮した時に、日本が得意にしていたフィードバックのやり方に勝つには、フィードフォーワードが絶対だと確信したという。日本人好みで受動型のフィードバック方式に対して、フィードフォーワードは先読みして変化を積極的に取り込み、戦略的に目標を設定して挑戦するやり方です。李は情報革命を電子産業の事業化に役立てるのに、日本で学んだ現場主義を事業展開に生かし、フィードフォーワードを戦法として生かし成功した。それに対して、堤義明は国税庁や役人と組んだバブル紳士で終わっており、ホテル中心の土地転がしにフィードバックを活用し、節税で財産は作ったが情報革命嵐に吹き倒されたのです。
坂田 韓国人は日本人に比べるとえげつないほど積極的であり、石橋を叩く日本人と虎穴に入る韓国人の差になって、その代表がサムスンの李会長だったのです。また、ロスだけでなく世界各国における韓国人の進出は目覚しく、日本企業がどんどん撤退して行く後に入り込み、日本人が開拓した市場を奪い取るような形で、驚くべき勢いで勢力を拡大している点では、人の善い日本人にとって「油断大敵」の相手です。
藤原 新聞もソウルの五大新聞をロスで印刷しているし、ロス支局には新聞記者が何入もいて取材活動しており、コミュニティヘの影響力も絶大なものを持ち、それが米国の政治に大きな影響力を及ぼしている。だが、日本の三大新聞のロス支局は大抵が特派員は一人で、五つくらいの州を担当して地元での取材はしないし、二年か三年で転勤するので人脈も育ちません。それに、時事通信までがロス支局を閉鎖してしまい、情報を取材する能力が激減していることによって、情報時代に対しての準備が実にお粗末と言えます。
坂田 芸術の世界では画廊の存在が重要な意味を持つが、ロスには日系画廊は二つしかないのに対して、韓国系は10以上もあるという圧倒的な差があるし、中国系は専用の美術館までパサディナ市に持っています。
日本の海外拠点の放棄と総引き上げの進行
藤原 米国各地に日本人街や日本人地区が存在していたが、今ではそれが解体したり融解したりして姿を消し、そこに韓国人やメキシコ人が進出しており、それは坂田さんが住むガーデナの町を見れば一目瞭然ですね。
坂田 その通り。ガーデナは戦前に日本から来た農民や庭師が住み、ほとんど日本人一色のコミュニティだったが今は違う。ロスの町の中心近くには「リトル東京」が存在し、日本人の存在感は昔から結構あったし、80年代のバブル景気の頃のロスのダウンタウンは、高層ビルの八割を日系資本が買ったと言われた。そして、リトル東京も日本の経済界がシンジケートを作って、都市計画に協力して地域開発に投資したので、ホテルニューオオタニを中心にして賑わっていたが、今はホテルや書店は撤退して閑古鳥が鳴いている。しかも、リトル東京地区は外国の投資ファンドが買ってしまい、日本語の看板をつけた商店の大半は日本人の経営ではなく韓国系で、経済面での日本の衰退がはっきりしています。
藤原 最近の新聞記事からの受け売り情報だが、1970年にホテルとショッピングセンターを作る計画が始まって、鹿島インターナショナルを世話人代表として東西開発会社を設立した。そして、当時ロスに進出していた40社の銀行、商社、メーカーなどの日系企業が出資し、「ウェラi・コート」と「ジャパニーズ・ビレッジ」の二つのショッピングセンターを作り、日米文化会館、日本国領事館、引退者高層ホームなどを中心にして、それがロスの「リトル東京」として賑わっていた。ところが、20 07年にホテルを含むリトル東京の施設は売却され、テナントに通知しなかったので大騒ぎになって、「日本の敗退」と新聞に書き立てられました。
坂田 日本軍が転進と形容するところの総退却です。しかも、リトル東京から一番先に逃げ出したのが日本国総領事館で、ガラス張りの高層ビルに移転してしまったが、役人は自分本位で日本とか住民のことは二の次でした。
藤原 商店街の「ウェラー・コート」は3D投資会社に売却され、「ジャパニーズ・ビレッジ」はアメリカ商業財産会社が新所有者になり、東西開発会社は事業を中止して解散してしまった。最大の理由は日本における経済活動の停滞に加え、米国でのビジネスの低迷だといわれているが、原因は日本国内での経済政策の破綻のせいです。
坂田 リトル東京を買収した陰のオウナーは、韓国系の資本だというのは公然の秘密です。それだけでなくコリアタウンの発展は目覚しく、ここに来て建築ラッシュの中で開発計画が次々に推進されており、韓国人社会と日本人社会の違いが好対照です。
藤原 サンフランシスコの「日本人町」も同じ時期に売却されており、買ったのは「ウェラー・コート」を買収した3D投資会社で、二つのホテルを含む日本人町は日本人の手を離れた。この慌しい日系企業による資産処分の売り逃げは、満州における関東軍の敵前逃亡に似ていますよ。
坂田 後に残された日本人町の商店の経営者は、皆が当惑して町の将来を心配しているそうです。アメリカは多民族国家でエスニック共同体が共生するから、別に日本の資本にこだわる必要は無いと思うが、日本人は団体行動をするといわれているのに、共同で長期目標を支える経営は情けないが三流なんです。
自動車産業の隆盛に見る日本の幻影
藤原 日本の国際収支は巨大黒字で外貨準備は豊かで、不況でも経済的には大丈夫だといわれて来た。また、自動車を始めとした日本の機械工業界は、技術集約の威力を発揮して外貨を稼ぎ出しているが、長期展望による大局観に基づく投資は下手です。
坂田 カリフォルニアに見る限り日本車の優位は圧倒的で、どこを見てもトヨタやホンダを見かけて愛国者の私は嬉しくなるが、ここに来て韓国のヒュンダイやキアが目立っており、サムスンの二のまえにならないかと心配です。それでも、かつては最高の自動車だといわれたベンツを追い抜いて、レクサスが米国でトップブランドの栄誉を勝ち取り、技術力において大いに評価を得ているのは嬉しいが、日本車を愛用するのはアジア人が圧倒的です。トヨタは名古屋の田舎大名だと言われたのに、世界に「レクサスここにあり」と印象付けるのに成功して、日本の技術力を示した点で実に大きなヒットでした。
藤原 レクサスを作ったのはトヨタという自動車会社だが、レクサスを構想して米国市場で成功させたのは本社の経営陣ではなかった。セスナを操縦して全米を飛び回りトヨタの売り込みの大活躍した、米国トヨタで名物社長だった東郷行泰さんの手柄です。詳しいことは彼の『アメリカに夢を売った男」 (ごま書房)に書いてあるが、東郷さんは日本人離れの傑物で「レクサス旋風」の仕掛け人です。タイのバンコクの支店長時代には托鉢僧侶の生活を実践し、米国トヨタ社長を引退して72歳の時には、セスナで単独世界一周飛行を実現している。この東郷さんが技術のプロの豊田英二会長と二人三脚で、現在の世界のトヨタを生み出す上での貢献者です。1980年頃の日本人には大局観を持つトップがいて、日本を経済大国にする上で大活躍しているが、今は経済界にも政界にも人物がいなくなり、その功績と遺産を後継者たちが手柄にしただけです。
坂田 日本人が小粒になった点は、政治家を見れば貧困さが良く分かりますね。経験不足で小粒な世襲代議士が大臣になり、目先の利益 と既得権維持だけしか考えなくなったために、そんな人物の動きを見慣れている限りは、日本人の意識が萎縮するのは当たり前です。その間に隣近所の国は着実に実力をつけて、手本の日本に追いついて追い越しかねない。
藤原 四半世紀前と今では時代がすっかり変わって、過去30年の韓国の追い上げは強烈だったが、それを中国は15年でやってのけたのに、日本人は過去の夢にしがみついたままで、相変わらず経済大国だと思い込んでいる。確かに、国内だけを見れば技術革新が実現しており、電子財布のユビキタスが普及したり、携帯のコンテンツが豊かになったりしたが、国際基準との整合性という点で見れば、タコ壷の中の異常な発達が目立っており、日本の携帯電話がたどっているように、「カラバゴス島症候群」が広がっています。
坂田 韓国に行くとインターネットの高速化が普及し、情報産業へ国を挙げて遭進している様子が分かるが、国が小さいだけに結束力がとても強い。だから、何事もばらばらの日本人に較べて軍隊調にまとまって、団体行動で突進する性格を持つ点では、韓国も北朝鮮も中国以上に強烈な民族意識を持ち、日本に対しての競争意識が強いのに驚く。
藤原 80年代前半の韓国は軍人が支配する独裁国家であり、民族意識が強く反日感情が高い状況が支配していた中で、韓国としては国産車を生産していたが、ガラクタでとても自慢できる製品ではなかった。アメリカの排気ガス規制をパスできないから、輸出で稼ぐためには仕方がないという鬱積した気持ちで、ヒュンダイは三菱製でキアはマツダ製のモーターを搭載していたが、こんな状態が永久に続くはずはない。だから、私はキアの社長に「モーターが作れずに米国に輸出したらダメだ」とアドバイスしたし、車のモーターくらいは誰でも作れるようになると励ました。だが、失われた二十年で日本が低迷していたら、自分でまともなモーターを作る技術が無かった韓国が、最近では自前のモーターを搭載するまでになり、それを武器に輸出攻勢を展開するに至っている。しかも、自動車の決め手はスタイルではなくて、ボルトとナットを作る鉄の品質の良さだが、どこの国にも値段の安さが魅力で車を選ぶ人はおり、それで韓国車はここに来て良く売れています。
坂田 韓国はその後に日本からの技術を導入して、自動車を世界中に輸出する国になっただけでなく、サムスン電子のように日本の日立やソニーを追い抜いて、世界のトップに発展するまでになっています。だから、前向きに積極攻勢をかける威力は絶大で、挑戦の姿勢は何千億円もの価値を持っていました。また、米国では韓国製は日本製の二割から三割安いし、製造コストの面で中国製は半値以下という値段は、人件費の安さがもたらせた成果は絶大です。人件費が安いことが勝負の決め手になるから、ソニーやキャノンにしてもメド・イン・ジャパンではなく、よく見ると韓国や中国での組み立てが圧倒的です。
藤原 それが経済におけるグローバリゼーションの実態であり、トヨタやニッサンの多くはカナダや米国で作っているし、国民国家の枠組みの意味が崩れています。だが、自動車を商品レベルでなく輸送手段の一つだと考えて、その側面から議論するのが正当であるのに、日本入は大局を見ないで部分にこだわります。そして、面子のせいで東京本社の指令に従うために、真の意味での世界企業を育てるのが苦手だが、それには全体的な把握による文明の次元の把握に基づく、大局的な産業論の展開が必要になります。(次号に続く)
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