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雇用確保は錦の御旗ではない。
景気対策と言えば誰しも雇用の確保、促進、増大を上げるが、これが常に正しい訳ではない。
デフレにおいては、やり方を間違えれば返って賃金が減少し雇用が損なわれる結果となる。
現在行われている日本の補助金による雇用対策は、返ってデフレを促進し、全体の経済を縮小させている。それは公務員を除く民間賃金の11年以上の所得の低下や、非正規雇用者の増大によりはっきり現れている。
これはデフレ経済では、労働生産曲線が右下がりになっていることを示している。右下がりの労働曲線では、労働量を増やせば増やすほど賃金が下がっていく。(生産量が増えても消費額が一定であるため1単位当りの付加価値が下がるため。)
この生産曲線が右下がりなのは、市場が生産量に比べ消費額が著しく少ないためである。所得線の角度が45度以下のデフレ下にあるためである。
インフレ経済では逆に労働生産曲線は右上がりになる。このようなインフレ時、労働投入量を増やせば所得が増えることになる。
それ故このようなインフレが前提であれば、労働量を増やし生産を増やすと所得が伸びるため、雇用量の確保が重要な経済政策になりそれ自体が景気を回復させる原動力になっている。
このため企業に対して、雇用調整金や促進のための補助金などを提供し雇用を増大することは理にかなっているのである。
しかしデフレではこのようなやり方が理不尽なものとなる。
例えば補助金を企業に支給し労働者を雇用するための利便を与えると、企業は過剰に労働者を雇用し、どうしても生産量を上げがちになります。その生産物が市場に供給されると、競争激化から低価格競争に拍車がかかり、付加価値が減少すりことになります。
これが、国全体で起こると内部留保の減少から、労働賃金の低下と非正規雇用の増大につながるのです。
個々の企業への補助金が、全体では付加価値の減少を促し、経済全体の雇用量が減少せざる負えなくなるのです。
またこのようなことは実際にあることですが、ある企業が補助金で労働者を意図的に雇い、製品価格を安くして販売する事が行われています。(簡単な例が研修と称して外国人労働者を雇うような場合)このようなことが何社かの企業で行われると、価格的に優位に立つため、他の企業も追随せざる負えなくなり、健全な企業も付加価値が減少し、低賃金に抑えざる負えなくなるのです。それが全体の付加価値を減少させることになります。
すなわち企業への雇用助成金や調整金と称するものが
、余計にデフレを促進しているのです。
結局このような企業への補助金が低価格のための原資にされるだけであり、景気拡大になることもなく、税収増となって返ってくることもありません。
このようにデフレ下で企業への補助金等による雇用確保は、全体から見ると返って雇用縮小政策になっているのです。
また雇用創出と称して新たな成長分野を探し、その分野に集中的に投資をして雇用を創出しようとする提案もよくなされますが、そのようなものは既になされ失敗して来たものです。経済の専門家や政治家のたわごと、又は美文に過ぎないでしょう。
環境分野、太陽光、グリーンニューディール等の口当たりのよい産業創成による雇用確保も、結局公共投資と性質がなんら変わるものでないため、借金の増大を招きます。新しい分野を国が創設する場合、それが軌道に乗るまで時間と労力がかかり、莫大な資金が必要です。
補助金と借金にまみれた雇用創出は、通常の需要と供給から生み出される雇用以上に不効率で、大きな不経済となるのです。
そこに投下された補助金浸けの労働量が、他の分野の正当な労働量減じることになる可能性が高く、緊急を要する今の日本の現状では受け入れられる能力はないだろう。
一つの産業の創成が他の産業の崩壊を産むのです。一つの産業の立ち上げが他の産業から労働力を奪う結果となり全体ではマイナスになるのがデフレの特徴です。
消費の減退に起因するデフレでは、産業創成そのものが、莫大な借金をなす公共投資となんら変わらないものになるため、公共投資という生産量の増加は、労働の投入増になるが、それが社会全体の名目付加価値(名目GDP)を減らしていくことになる。
日本ではその例として、IT産業に一時肩入れした時があったが、今やその面影もない。今提唱されている新分野への投資は恐らく同じ運命となろう。その時税金は借金となり税収増になることはない。
またデフレは内需の不振から過度の輸出偏重になり安いものだが、これも同じような理由で労働賃金が押さえられることになる。
政府が内需の不振を無視した政策を取り、輸出を偏重させるほど、輸出企業の国内生産は増加し、労働者を多く雇用することになる。しかし他の国内産業が疲弊するため、失業者や低所得労働者が非常に多いため、輸出企業は非常に有利な条件で雇用することができる。
これはトヨタなのどの大手が非常に高収益を上げている事実からわかるであろう。彼らの下に付く下請けが、低加工賃でやらざる負えなくなっているからである。
またたとえ輸出企業が高賃金で労働者を雇い入れても、他の産業からの雇用喪失が激しくなって、全体は縮小することになる。
このようにデフレ下で今行われているような政策ではデフレの解消に役立たず、それどころか全体の名目付加価値を減少させているのである。民間労働賃金の11年にもわたる低下や、非正規雇用の増大、名目GDPの一人当り分のランクが下がる理由である。
同じことをすれば同じように経済原理はその応答を正確にする。非正規社員を正規社員にするための補助金を企業に配れば、それは借金増になるどころか、全体の雇用を劣化させることになるのである。
労働運動の指導者が声高に雇用確保を叫んでも、政治家が正義ぶって声高に雇用確保のために財源を確保しても、それらは無駄である。
今までと同じような政策を唱えるのであれば、彼らは労働者を裏切った政策を取っていることになる。
精神論や、労働運動の活発さが雇用を確保するのではない。経営者を罵倒することや、非正規社員化を制限しても無意味な事である。派遣労働の法制を変えてもそれほど全体の雇用量に影響を与えないだろう。
経済原則に反する雇用確保は返って全体の雇用量、労働賃金を劣化させるであろう。
一刻も早くデフレを解消させるための労働政策を取らなければならないのである。
一言主
http://blog,so-net.ne.jp/siawaseninaerou/
http://www.eonet.ne.jp/~hitokonusiデフレ・インフレの一般理論
http://www.eonet.ne.jp~hitokotonusi/teraxBLG/07116.html民間賃金の減少9年連続の理由参照
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