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株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu217.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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中国はGDPの成長は公表しても、その中身の金額は公開していません。
政府と企業の設備投資と(外資系が輸出の50%)輸出による経済です。
2010年6月9日 水曜日
◆北京観想 6月7日 ビジネス知識源 吉田繁治
http://archive.mag2.com/0000048497/index.html
▼中国元の安さが輸出成長の理由
1元は13.5円〜14円付近ですが、購買力平価(商品の購買力に換算した通貨価値)では28円〜30円でしょう。
このため、いつも「元切り上げの必要」が国際的な問題になる。(注)近々、元は、米国の要請から、5%の範囲での切り上げ調整はあると見ます。中国が元切り上げに抵抗するのは、輸出主導経済を維持するためです。
元は、米ドルに対し、固定レート(中東のようなドルペッグ制)です。海外からの元買いで上りそうになると、中国政府がその逆の「元売り・ドル買い」を発動し、相場を固定させています。民間の人民元からドルへの交換(ドル買い)は、今も厳重に制限されています。
そのため、中国政府にはドル債が貯まる。散布されるドル債を買いドル基軸通貨体制を支えているのは、1990年代までは日本でした。今は中国と言っていい。
以下は、GDPでほぼ同規模の日本と対照した中国のGDPです。中国は、GDPの成長は公表しても、その中身の金額は公開していません。このため各種データを集計し、推計してます。(1元=14円換算:中国のGDP比は2010年推計)
官民の 名目GDP
個人消費 設備投資 政府消費 純輸出 合計
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中国 165兆円 207兆円 61兆円 38兆円 470兆円
構成比 35% 44% 13% 8% 100%
1人当り 12万円 16万円 4.7万円 2.9万円 36万円
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日本 282兆円 98兆円 94兆円 1兆円 473兆円
構成比 60% 21% 20% 0.2% 100%
1人当り 222万円 77万円 74万円 − 372万円
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(注)日本の名目GDPは2009年(暦年):日本の官民設備投資は、民間住宅14兆円、企業の設備投資64兆円、政府公共投資20兆円:政府消費はほぼ政府の財政予算:純輸出は輸出−輸入で、貿易黒字。
一見して分かる特徴は、中国の1人当りの個人消費は1年12万円(1月1万円)で、日本(1人当り222万円:1月18.5万円)の20分の1くらいしかないことです。世帯の消費額の少なさを示します。
他方、設備投資のGDP比は44%と日本の2倍です。中国経済の特徴が分かるでしょう。政府と企業の設備投資と、(外資系が輸出の50%を占める)輸出による経済です。
このため中国のGDPは、政府の金融・経済対策の緊急増額で、容易に、上乗せができます。ここに他国と違う特徴がある。他方で、失業問題は、激しい。
中国には経済マスコミはありません。このため、政府発表による経済情報の提供です。共産党員は、民間企業でも「うちには3名の共産党員がいる・・・」と顔写真入りで壁に掲示するようなエリートです。
▼公表データと違う、膨大な失業数
リーマンショック後(08年9月15日〜)、中国も一瞬は貿易赤字に陥るくらい対米・対欧輸出が減りました。3億人が住む沿岸部の工場では、中国語で「下崗(シアカン)」と言われるリストラ(一時帰休や解雇)が、猖獗をきわめています。
ガイド嬢の旅行社で、最近、1人の欠員を募集したところ、普通なら旅行社には来ない一流の精華大学卒や博士コースを終えた人を含め3000人(!)もの応募があったという。こうした事実は、報じられることがない。
失業率は、政府発表では9.6%(日本の2倍)とされますが、とてもそんな数ではない。推計ですが、15%は超えているはずです。農家に帰れば、家族労働の農家では、工場とは違い失業という概念がない。実質的な失業数が15%とすれば、その総数は1億2000万人で、日本の全人口に匹敵します。
大卒ホワイトカラーの初任給は、今、北京や上海の大都市で4万円程度です。マネジャークラスで6〜10万円でしょう。現場労働の最低賃金は徐々に上がって、月1万5000円くらいです。
2000年代は、1年に内陸部(人口10億人)から、90年代よりは少なくなったとは言え、まだ500万人がほぼ5年の労働許可証を得て、沿岸の大都市の工場やサービス・建設業に、集まっています。
平均賃金は1年に10%上がっても、最低賃金のアンカー(錨のような重し)があるため、生産商品は安くなる。
2000年代は10年間で5000万人が、都市部に職を求めて集まり、4000万人が職を得て、1000万人が失業です。
日本の、全民間雇用に匹敵する数の労働者が、農村から都市部に出稼ぎをしています。出稼ぎという理由は、中国では居住地の自由はなく、労働許可には年限があるからです。
1994年以降の、日米欧の商品物価のデフレ傾向を作っている中国の輸出(工場出荷金額で100兆円水準)は、先進国では、平均すればFOBの2倍〜3倍の店頭価格で売られますから、200〜300兆円分でしょう。
(注)FOBは船荷渡しの価格で、海上運賃・保険・関税を含まない商品価格。CIFは、それらを含む商品価格。
わが国の工業出荷額が279兆円です。中国はその全額に匹敵する商品量を、世界に輸出しています。日本の総小売額(115兆円:07年)の2〜3倍で、米国の総小売額(360兆円)の60〜80%に匹敵する巨大量です。
▼1994年の元切り下げから高い経済成長
中国は1994年に人民元をドルに対し半分に切り下げています。ここから、中国産が半分の価格になって、輸出主導型の成長経済が始まった。
1994年以前は1元=30円でした。それ以後は1元=15円に、米中協調で下げたのです。今、この16年間の元安が、漸進的に修正されようとしています。
米国と中国が協調した元安が、中国を輸出大国にした主因です。現在、元は、事実上、ドルとの固定相場です。ドルが円に対しドル安(円高)になると、元安にもなる。
今、中国の輸出が、米国では360万人の失業を生んでいるという批判が強い。中国政府は「米国の失業360万人と、元高になったときの、中国の失業の可能性2億人のどちらが世界にとって重要か」と反駁はしています。
▼共産党政府が重んじる国民に対する面子
中国政府は、国民の手前、米国からの要求には応じられない。統治のための建前と、米国に裏で通じる本音がある。面子を立てれば、妥協も可能になるのです。
中国では、経済成長率が8%以上ないと、農村からの、1年500万人の労働者の移動を吸収できません。経済成長は、中国の現体制を守るために必須です。
言葉遣いからインテリ風に見える案内嬢は「会社では、たった1名の募集に、3000人の求職者が集まりました。一生懸命に仕事をしないと、自分も、うかうかできないと思いました。」と明るく言う。
失業率は、公式統計では10%弱ですが、実際は15%(推計)でしょう。全土の労働人口が8億6000万人ですから、失業が1億2900万人で、これは日本の総人口(1億2700万人)を超えています。
▼緊急対策が不動産バブルになった
中国政府は、
・2009年に4兆元(56兆円:GDPの12%)の公共事業対策を打ち、
・100兆円(GDPの21%)の銀行からの貸し付けを増加させて、急落していた株価と不動産価格をバブル含みで上げています。
合計で150兆円規模(GDPの33%)の、金融・経済対策費ですから、これは巨大です。このため不動産バブルが激しくなって、北京の不動産価格は東京並の高さです。上海では、北京の約1.5倍です。
今、GDPは8%〜10%の成長軌道に戻っています。8%成長が、中国で、失業者がこれ以上増えない下限ラインです。
失業保険はまだ1億2000万人(全労働者の15%の上位層:2010年)にしか完備していない。失業は流民化し、深刻です。各地での暴動の多さは報じられません。報道や情報発信の自由はない。グーグルともこれが争点になっています。インターネットの閲覧は厳重に制限されています。
(注)今、中国政府は、不動産バブル崩壊を怖れて、金融引き締め策に転じつつあります。北京都心部の住宅が8000万円(上海ではその北京の1億2000万円付近)という価格は、明らかにバブルです。3年で2倍くらいに上がっています。今年度中に、不動産価格の暴落が予想できます。
しかし、人々は将来の高成長と、しばらくすれば他での復職できると期待しているため「明るい」。国民性の特徴は、ケンカをしているのかと思うくらい話し声が大きく、自分の言動への正当性の主張が強いことです。中国では「沈黙は金」ではない。
(私のコメント)
中国の高度成長は90年代の人民元の切り下げから始まっている。米中による協調政策で世界中に格安の中国製品があふれる事になりましたが、人民元はいまだにドルに固定されたままであり、これからも世界中に中国製品があふれる事になるのでしょう。アメリカは元の切り上げを求めるようになりましたが中国は応ずるつもりが無い。
中国経済にとっては吉田繁治氏の記事にもあるように、中国のGDPの中身は設備投資と輸出による経済であり、消費支出は非常に少ない。本来ならば賃金の上昇と人民元の上昇で消費支出も増えていかなければなりませんが、賃金の上昇も人民元の上昇も輸出にはマイナスになるから押さえられている。
中国は国民の犠牲の下に経済成長が続いていますが、一部の特権階級が経済成長の恩恵を独り占めして、多くの労働者階級は低賃金で搾取されながら働いています。しかしホンダの工場で賃上げストが起きたように、これからは労働者たちの賃上げストライキが頻発するようになって、外資系企業は立ち行かなくなっていくだろう。
中国は労働賃金と人民元の切り上げを少しづつ実施しなければ経済的な歪みが大きくなって来ています。為替相場も人為的に固定しておけば何処かに歪みが生じてきます。金本位制の頃は金との交換価値が通貨の価値を決めていましたが、今はドルと石油が通貨の価値を決めている。
人民元がいくらドルと固定していても石油の価格が上がって来ているから中国は割高の石油を買わされることになります。鉄鉱石や石炭なども高騰していますが人民元を切り上げなければ国内のインフレが収まらない。インフレが収まらなければ賃金はどんどん目減りしていくから工場では賃上げストライキが起きるようになります。
中国は外貨を日本の倍以上も貯めこんでいますが、切り上げをして輸入を有利にしていくべきだ。人民元は今は14円程度ですが実質的には30円程度だそうです。つまり中国の労働者は低賃金の上にさらに半値の水準で働かされている事になる。これは外資系企業にとってはそれだけ労賃が安く済んでいる。
中国はこれほどの経済成長が続きながら失業問題が慢性化している。いまでも10%近い失業率だそうですが、実質的には15%ぐらいの失業率だそうです。温家宝首相の言う2億人に失業者というのは嘘ではないのでしょう。しかし毎年二桁の経済成長が続きながら失業者が減らないというのも何かが原因があるのだろう。
日本においても60年代から70年代の高度成長で農家からの労働人口を吸収していきましたが、完全効用に近い状況が続いて80年代には外人労働者を受け入れるようにまでなっている。中国においても同じ事が起きているのですが、外資に依存する経済発展が続いている。日本の経済成長は自立的なものでしたが中国の経済成長は資本も技術も外資に依存したものだ。
自立的な経済成長なら円が値上がりしても企業が海外に逃げると言う事はあまりありませんが、中国のような外資に依存した経済だと人民元の切り上げや賃金の値上げは外資系企業は海外に逃げて行ってしまうだろう。中国の海外輸出の50%は外資系企業によるのもであり、だから人民元を切り上げたくても切り上げが出来ない状況なのだ。
中国経済は多くの矛盾と歪みを抱えているから、高度成長を続けば続けるほど矛盾や歪みが大きくなってくる。改革開放経済も文化大革命の反動ともいえるものですが、やがては改革開放経済を糾弾するような動きが出てくるのは明らかだろう。2億人もの失業者が反乱を起こせば中国中を巻き込んだものになるだろう。
北京や上海では億ションが販売されていると言う事ですが、明らかに不動産バブルだ。これは56兆円の財政出動が不動産バブルを引き起こしているともいえるものであり、中国政府は自分で自分の首を絞めているようなものだ。日本でも低金利と為替介入がバブルを大きくしましたが、中国は日本のバブルに学んでいないようだ。
中国では一人の社員募集に3000人の応募があるほどの就職難であり、大卒者も就職できずにいる。中国政府は毎年500万人もの就職口を作っていかなければなりませんが、13億人もの人口を農村から都市に移動させるには不可能だろう。農家にはまだ9億人の農業人口があり非常に貧しい生活を強いられている。
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