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菅新内閣、市場は「マニフェストの真逆」を評価−日本売りは回避か 6月7日
(ブルームバーグ):
8日に発足する菅直人新内閣の財政・金融・為替政策について、市場では民主党がマニフェスト(政権公約)などで示してきたのとは正反対で、巨額の公的債務に着目した「日本売り」の懸念が後退するとの評価が広がっている。財政再建と金融緩和・円高阻止でデフレ脱却を目指す政策は小泉純一郎政権に似ているものの、世界的な金融危機の下では円安誘導は難しいとの見方が多い。
新首相に指名された菅民主党代表は5日夜、官房長官に仙谷由人国家戦略担当相、民主党幹事長に枝野幸男行政刷新担当相を充てる人事を発表。共同通信は6日、財務相には野田佳彦財務副大臣が内定し、亀井静香金融・郵政改革担当相は続投の方向だと報じた。
大和総研の牧野潤一シニアエコノミストは、菅新内閣は「財政支出抑制と増税論議・金融緩和・円高阻止の政策だ。経済成長は財政主導ではなく、輸出頼みとなる」と予想する。「民主党がマニフェストなどで示してきた積極財政・日本銀行の独立性尊重・円高容認・消費主導の経済成長とは真逆だ」と指摘。必要に応じて政策を転換する「変わり身の早さ、柔軟性は市場に好まれる」と評価する。
牧野氏は、市場の関心は「財政赤字とソブリンリスク(国家の信用リスク)に集中している。巨額の公的債務残高を抱え、金融緩和の余地も乏しい日本は完全に丸裸の状態だ」と指摘。「歳出を抑制し、消費税率を20%程度へと引き上げていく構想・やる気を示さないと、市場の『日本売り』を誘発しかねない」と強調する。
巨額の債務、中期財政フレーム
日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)の約1.8倍と主要国で最悪。財務省によると、国債・借入金・政府短期証券を合わせた国の債務残高は2010年3月末に過去最大の882兆9235億円に達した。日本銀行の統計では、家計の純金融資産は1086兆8868億円。公的債務を国内の貯蓄で消化できる余地は徐々に縮小している。政府は6月中に「中期財政フレーム」と「財政運営戦略」をまとめる予定だ。
ギリシャの財政危機に端を発した欧州債務不安は先週末、ユーロ未導入の周辺国ハンガリーにも飛び火。同国のデフォルト(債務不履行)に備えた保険料を示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドは過去最悪の4.16%に達し、ポルトガルやスペインといったユーロ圏内の重債務国を上回った。ユーロ相場は対ドルで7日早朝に一時1ユーロ=1.1889ドルと、2006年3月以来の安値をつけた。
菅新首相は財務相だった5月11日、来年度予算では新規国債発行を10年度の44.3兆円以下に抑える意向を表明した。4月20日の衆院財務金融委員会では、中央銀行が目標とする物価上昇率を示して金融政策を運営する「インフレターゲットは魅力的な政策だ」と発言。「プラス1%か、もう少し上のプラス2%程度」を実質的な目標とし、達成するまでは政府・日銀がともに努力を続けるのが望ましいと述べた。
緊縮財政・金融緩和
バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの藤井知子シニアFXストラテジストは「鳩山由紀夫内閣は国債増発に流れがちな面があったが、菅新内閣では主要な経済閣僚が財政再建で一致しそうだ」と分析。「市場の『日本売り』を誘発しにくい布陣になった」と評価する。
日銀に対し「金融緩和圧力をかけて円高を阻止することで、企業収益・景気の下押しを防ぎ、デフレ脱却を実現する作戦だろう」と予想。日銀は「金融緩和の継続では協調するが、インフレターゲットや国債買い入れ増額は極力回避しようとする」と読む。
4日の債券市場では、菅新内閣での国債増発抑制と日銀への金融緩和圧力を見越して、新発5年物国債利回りが0.385%と03年8月以来の水準に低下(価格は上昇)。円の対ドル相場は一時、約3週間ぶりに1ドル=92円89銭まで下落した。
「緊縮財政・金融緩和・円安志向の組み合わせは、かつての自民党の小泉純一郎政権と同じだ」と、藤井氏は指摘。「民主党が昨夏のマニフェストなどで掲げた政策とは正反対だが、次の世代に借金の山を残さないことのほうがはるかに重要だ」と強調する。
デフレ下の財政再建
財政再建については、行き過ぎを懸念する声もある。ドイツ証券の安達誠司シニアエコノミストは「財政再建はデフレを悪化させる恐れもある。過ぎたるは及ばざるがごとしだ」と指摘。「政府・日銀が名目GDP成長率の目標値を共有し、期待成長率や期待インフレ率の上昇を促すべきだ」と主張する。
菅新首相は1月に財務相に就任した際、円・ドル相場について、経済界からは「やはり90円台、できれば半ばあたりが適切」との見方が多いと発言。市場では円安論者と目されている。ただ、政府・日銀が04年3月を最後に実施していない円売りの単独介入再開は難しく、円相場は米国など海外経済・金利情勢によって決まるとの見方が多い。
みずほコーポレート銀行の唐鎌大輔マーケットエコノミストは「経済大国の円安誘導は国際的にも許されない。5年間で輸出倍増を掲げるオバマ米政権も11月に中間選挙を控えている」と指摘。HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストも「金融危機後、各国とも輸出増につながる通貨安を望んでおり、相互けん制が働く」と指摘する。
みずほコーポ銀の唐鎌氏は「今はまだ、皆が円を握りしめている状態だ。6月中は87円程度までの円高もあり得る」と分析。7−9月期以降は徐々に円安・ドル高が進むと見る。BOAメリルの藤井氏は今年末に97円、11年末には106円と緩やかな円安を予想している。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aW_qP6yYUclg
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