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(回答先: 日本は”円高”から自力で脱出はできないのか!? −藤根 靖晃− 投稿者 gikou89 日時 2010 年 6 月 05 日 06:25:23)
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK041531020100602
ここ半年、円安期待が強かったが、円安そのものは進んでいない。進まない背景には、経済ショックと政治・政策混乱があろう。
<円安にならない経済要因>
経済ショックは、もちろん欧州問題が影響しているが、その他いくつかの経路がある。1つは政策金利期待。欧州ソブリン問題によって、先進国の債券市場から逆算する期待インフレ率は低下した。その結果、特に米連邦準備理事会(FRB)は景気指標の改善が順調に続いても、急いで利上げに走る必要はない。一方、日銀が、展望レポートで景気の改善を予想し、インフレ・ターゲットあるいは量的緩和に戻る確率は減少した。したがって予想金利格差は今まで期待したほど、拡大しないと思われる。少なくとも、その拡大は延期になった。当然、円安は進まない。
これに加えて、ポートフォリオの変化もあったようだ。欧州の混乱を目の当たりにした日本投資家は、ユーロ建ての運用資産を減らした。ユーロを売って、代金を円に戻す過程で、大幅なユーロ安/円高になるが、一方で円の対ドル・レートにも円高圧力がかかった。
ただ、面白いことに、対ドル円レートに関しては、大きな円高になってはいない。円相場はほとんど90円―94円のレンジで推移した。これは、海外投資家のお陰だろう。即ち、今の日本経済では「対ドルで円高になるファンダメンタルズではない」と思う海外投資家が圧倒的に多い。すると、かく乱要因で仮に円高になった場合、これは円売りチャンスと思われる。
とはいえ、このような運用に大きなお金を動かす投資家は少なく、海外投資家は円高を防ぐ力にはなっても、円安をもたらす力はない。もっと大きな動き、あるいは政策変更がない限り、本格的な円安は期待しにくい。
<円安にならない政治・政策要因>
この経済環境の中、日銀の動きは大きなポイントだが、海外投資家から一番頻繁に受ける質問は「日銀はなぜもっと果敢に動かないか」というものである。答えは若干、深く考えないといけないだろう。
金融政策と財政政策の担当者を分ける先進国では、中央銀行の行動はゲーム理論を用いて分析することができ、日銀も例外ではない。鍵は「ゲーム理論」だ。
ゲーム理論は、各参加者がそれぞれの目的達成のためにいくつかの行動を取ることができる。どの行動組み合わせが各参加者にとってどれだけの得点になるかをみる必要がある。いろいろな組み合わせから「相手が何をしても、私はこうする」行動(いわゆる「絶対優位戦略」)が存在するかがポイントである。
今の金融政策議論をこのように考えよう。政府がしっかりした生産性、財政再建戦略を組めば、日銀は安心して拡張的な政策をとることができる。だが、政府がそのようなしっかりした生産性、財政再建政策を組めない場合、日銀は躊躇(ちゅうちょ)する。即ち、日銀に絶対優位戦略はない。日銀の立場から見れば、延命策が最適である。
では、インフレ・ターゲットあるいは量的緩和に動くことが日銀にとって絶対優位戦略になるか。それは政治次第だ。そこでいくつかの点が大事になる。
1つは今の内閣。確かに菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は日銀に果敢な金融政策を呼びかけてきたが、最近は発言が少ない。菅財務相以外に、果敢な金融政策を採るべきだとする閣僚は、小沢環境相だけのようである。仙谷由人国家戦略担当相は反対だそうだ。
もう1つは、今後の民主党マニフェストだ。確かに民主党のデフレ脱却議連は100人を超える参加者がおり、マニフェストにデフレ脱却政策を入れたい。だが、内閣が必ずしも賛成しない。内閣支持率が下がっている中、具体策をマニフェストに入れることをためらうのは当然だろう。結局、消費税、財政再建に関する項目がはっきりしないマニフェストになれば、参院選後の政策ははっきりしないことになる。
さらに、普天間問題で不協和音が生じた政権には、選挙直前に日銀やデフレ問題へ目を向ける余地が狭まれていると言えるだろう。
これらの状況は、日銀の立場から見れば、大きな政策変更を決定する環境にはないということになる。結論として、選挙が終わり、政治が落ち着いて、財政再建、生産性政策が明確になって、初めて日銀が大きなステップを踏める。
従って、数カ月前にはやった「日銀が動いて、円安になる」説は遠のいた。
<円相場の展望>
では、このようなことを踏まえて、円安期待をあきらめたほうがいいのか。そうではない。1)欧州の問題は大きいが域内でおさまる、2)米景気の回復が続く、3)アジア成長が続く、4)国内投資家は海外運用を増やす、5)国内デフレが続き国内景気もパッとしない──という環境の中で、政治と日銀は動くであろう。
年末98円を弊社は公表している。さらに、2011年にさらなる円安(2011年末に109円)を予測する。
ロバート フェルドマン モルガン・スタンレーMUFG証券 経済調査部長
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