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今回は、ゴーストライターが執筆の代価として得るお金について解説したい。私の経験と知人のゴーストライター約20人、主要出版社の編集者30人ほどからの情報をベースにする。
まず、出版社がゴーストライターにお金を払う場合には、主に3つの方法がある。
1.出版社の原稿買い取り
2.印税払い
3.原稿料+印税払い
まず(1)だが、これはライターが著者(経営者、芸能人、政治家、コンサルタント、学者など)に代わりに書いた原稿を出版社が買い取ることを意味する。通常、その額は主要出版社で1冊(200ページ前後)80万円〜130万円前後。このくらいの幅があるのは、1冊を書き上げる時間(スパン)が影響している。
例えば、1カ月後に200ページ(1ページ600字〜1000字ほど)を書き終える場合、スケジュールは厳しい。ライターは、ほかの仕事をキャンセルするなどして書き上げなければならない。出版社としてはそのことに多少、後ろめたいものがあるのか、100万〜130万前後まで額を上げる傾向がある。
従業員規模が100人を切る中小出版社では、最高が110万円前後。下は80万円。ひどい場合は50万円まで下がる。最悪は40万円。私が調べたところ、例外として130万円というものがあった。これは、著者である経営者の会社(東証1部上場)の株主総会に本を配ることになり、突貫工事で間に合わせようとしたためだ。このライターは、約3週間で200ページを書いた。
通常、上記の額は、本が発売された数カ月以内に指定口座に振り込まれる。主要出版社は、本の発売日の当月末もしくは翌月末のパターンが多い。中小出版社は、本が発売された2カ月〜3カ月後の末となる。この差は、出版社の財務力の差ともいえるだろう。
●ゴーストライターの世界にも“格差”
率直なところ、ゴーストライターの多くは手元にさしたるお金がない。中小出版社の支払い時期は遅いので、生活が一段と苦しくなる。おのずと、主要出版社と仕事をしようとする。
だが、主要出版社の編集者は優秀なゴーストライターを5〜10人は確保している。これだけそろえれば、一定のペースでビジネス書が作れる。いまは、1人の編集者が年間で12冊〜20冊前後の本を作ることが求められているという。私の知り合いに最高で年間27冊の編集者がいるが、どこまで原稿の中身を確認できているのか疑わしい。
経営者、芸能人、政治家、コンサルタント、学者などの「素人」が本当に書いたら、締め切りを守ることは難しいだろう。原稿は当然、前回、説明したような「商業用日本語」で書かれてあることが前提となる。素人が書いたらその可能性は相当に低い。おのずと、年間12冊〜20冊のペースが破たんする。編集者はそれを恐れているので、ゴーストライターを使い続けるのだ。
新規参入しようとするライターからすると、主要出版社のハードルは高い。いったんその枠に入っても、し烈な競争が待ち受けている。そこで負けると、中小出版社と仕事をしていかざるを得ない。ここにも、メディアでは報じられない“格差”があるのだ。
なお、この買い取り方式は出版社が1冊分の原稿を「買い取る」ので、それが本になり大ベストセラーになったとしても、ライターはさらに原稿料を請求できない。その場合の出版社の言い分は、「支払済み」ということだ。
●アンフェアな印税方式
(2)の印税方式であるが、まず次の公式を紹介する。最近は、この方法が多いので詳しく解説する。
定価×部数×印税率=原稿料
この式に、ある本を当てはめて計算してみる。定価が1500円、初版部数が6000部、印税が10%とすると、以下のようになる。
定価(1500円)×部数(6000部)×印税(10%)=90万円
著者が本当に自分で書いているならば、この90万円がそのまま支払われる。ただし、源泉徴収をするので10%を差し引いて、実際は81万円。しかし、ビジネス書の多くはゴーストライターが書いている。そこで著者とライターの双方で“山分け”となる。
そのときの基準が、印税率。通常、10%のうち、著者が7〜8%、ライターが2〜3%のパターンが多い。ごく一部に例外もある。ある著者は「フェアでありたい。5%:5%にしよう」と言った。私もこの意見に賛成で、いまは政府の審議会委員として活躍するこの人に心から敬意を表したい。
その一方で、コンプレックスの塊のような著者は、執拗(しつよう)に7〜8%にこだわる。いずれにしろ編集者は双方を合わせて、10%にする。ただし、一部の出版社は印税率を7〜8%にまで落としている。この場合も、ライターは2〜3%。ここまで落ちると、書き手からすると厳しいの極みである。
●多くの著者が作家気取り
さて、これでゴーストライターが得るお金を前述の本を例に計算してみよう。印税率は、3%とする。
定価(1500円)×部数(6000部)×印税(3%)=27万円
著者はこの場合7%となるので、63万円を受け取る。
ライターが得るこの27万円という数字をどう見るか。1カ月〜2カ月かけて、著者に取材(インタビューを計10時間ほど)をする。その後、2カ月ほどかけて200ページを書き終える。
今度は、著者がその原稿にあたかも自分が書いたかのように補筆する。観察していると、多くの著者が作家気取りである。実は、その大半が日本語としてめちゃくちゃだ。主要出版社Sの副編集長いわく、「読んでいると、気が狂いそうになる」。この補筆の期間が約3週間〜2カ月。さらに、出版社で1〜2カ月をかけて印刷や製本作業をする。
本が発売されるまでの間、ライターに収入はない。スタートして半年以上が経ち忘れたころに、ようやく27万円が入る。もちろん、これでは生活できない。だから、ライターは男が少なく、女性が多い。しかも、主婦が目立つ。男で家族を養う場合は、年間にゴースト本を少なくとも5冊は書かないと生きていけない。当然、ほかに雑誌やWebサイトでも書きまくる必要がある。経験論でいえば、この生活を続けるのは厳しい。
ただし、前述の27万円では到底、話にならない。そこで主要出版社と中小出版社の一部は、これに「原稿料」を加算する。多いときは60万円、少ないときは30万円。
先ほど述べたケース(定価1500円×部数6000部×印税3%=27万円)に例えば50万円を加えて、計77万円となる。ただし、手取りはここから源泉徴収の分を引いた額となる。
●運命の別れ目が「増刷」
ここで大きな分岐点を迎える。本が売れると、そのときは増刷になる。主要出版社は通常、増刷は1回(1刷)が2000冊、中小出版社は1000冊と2000冊のパターンに分かれる。なお、初版は主要出版社が6000〜1万部、中小出版社は3000〜7000部の間が多い。ごく一部に2000部というところもある。
ここで、先ほどのケースをもとに、2000部増刷ということで計算してみる。
定価(1500円)×部数(2000)×印税(3%)=9万円
まとめの計算をしてみよう。
定価1500円で、初版部数6000部、印税3%、原稿料50万円。そして増刷で5刷(5回増刷、1回の増刷で2000冊)の場合、次のようになる。
初版時:定価(1500円)×部数(6000部)×印税(3%)=27万円+原稿料50万円=77万円
増刷時:定価(1500円)×部数(2000)×印税(3%)=9万円×増刷回数5回=45万円
合計=122万円
ただし、いまの時代にこれだけ増刷をするビジネス書は相当に少ない。その多くは、増刷にならない。初版のみなら、2カ月ほどかけて書いた200ページの対価は、印税だけなら27万円、原稿料を追加しても77万円。ゴーストライターが1冊の本を書いて得られる収入は、この程度でしかないのだ。
出版社は、増刷にならないと利益がなかなか出ない。初版で終わる場合、売り上げがその8割は超えないと、編集者の人件費も出ていない。だから、日本語を書くことができなくとも、知名度やブランド力があり、売れる人を著者に起用する。仮に著者が「自分が書いたことにしたい。ライターの名前を本の後に書いたりするのをやめてほしい」と言うと、芯のない編集者はそれに従う。特に経営者やコンサルタント、芸能人に目立つという。
出版社には少数だが、良識派もいる。ある編集者が著者である経営者にこう言った。「ゴーストライターにも著作権がある。名前を消すなんて私はできない」。私は横で聞いていて、震えるように感動した。
私が知る数十人のゴーストライターの年収は、同世代の会社員(上場企業の管理職・課長級)のそれと比べると、かなり少ない。しかし、ごくまれに例外が現れる。それは、100万部以上売れたミリオンセラーの本のゴーストをする場合である。どのくらいの収入が入るかは……計算していただければ想像がつくだろう。【吉田典史】
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