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日本の経常収支が赤字になるタイミング(KlugView)
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投稿者 そのまんま西 日時 2010 年 5 月 24 日 23:51:12: sypgvaaYz82Hc
 

日本の経常収支が赤字になるタイミング(KlugView)
2010/05/21 (金) 17:06

経済系の新聞・雑誌などで、簡単な特集として日本の経常収支が取り上げられることが増えてきたようです。内容は、どれもほぼ同じで、日本の経常収支が2010年代半ばに赤字になる、というものです。

日本の経常収支は、比較可能な1985年以降、一貫して黒字を続けています。このため、日本に住む多くの方は、日本=経常黒字国、というイメージをお持ちになっていると思います。その日本が、いずれ(2010年代半ばに)経常赤字国になる、という内容は、ある意味、衝撃的な印象を与えているのかもしれません。

日本の経常収支が赤字になる、というロジックの根底には、高齢化の進展を背景に日本の貯蓄率がマイナスになる可能性がある、という点にあります。

一般に、高齢者が増えると、過去の貯蓄を消費に回す動きが強まると言われていますので、貯蓄率は低下すると考えられます。過去のデータを見ると、1980年代には20%台だった日本の貯蓄率は、2008年には3.3%まで低下しています。今後も高齢化が進展するのであれば、日本の貯蓄率がさらに低下し、いずれマイナスになっても不思議ではありません。

貯蓄率がマイナスになると、なぜ経常赤字になるのか?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。これは、マクロ経済学の教科書に記載されている「貯蓄投資(IS)バランス」を使ったアイデアです。


貯蓄投資バランスは、国民総生産(Y)の定義から導き出されます。GDPは、消費(C)、投資(I)、経常収支(X)の3つから構成されます。つまり、

Y=C+I+X

となります。この式を以下のように変形します。

X=Y-C-I

ここで、Y-C(国民総生産から消費を差し引いた額)は、貯蓄(S)を意味します。つまり上の式は、

X=S-I

となります。この式を見れば分かるように、貯蓄(S)がマイナスになれば、経常収支(X)もマイナスになることが分かります。

高齢化が進展するから貯蓄率はマイナスになる、という説明は直感的で分かりやすいのですが、現実には、日本の貯蓄率が2010年代半ばまでにマイナスになるのか言い切れない部分があるように思えます。それは、日本の高齢者が、貯蓄を取り崩してまで消費をしない、ということではなく、たとえ日本の高齢者が、貯蓄を取り崩す形で消費を増やしたとしても、それをカバーするだけの所得が、海外で生ずる可能性があるからです。

経常収支は、主に、モノの輸出額から輸入額を差し引いた「貿易収支」、旅行や運輸と言ったサービスの輸出額から輸入額を差し引いた「サービス収支」、海外からの配当金・利子の受け払いの差額である「所得収支」で構成されます。日本の消費が増えれば、モノやサービスの輸入が増えますので、貿易収支やサービス収支が赤字になる可能性はあります。

一方、所得収支は、日本の消費動向ではなく、これまで蓄積してきた対外資産と、対外資産の運用利回りによって左右されます。日本の対外資産は、519兆円(2008年末)もあり、これから高齢化の進展によって貯蓄が取り崩されたとしても、今後10年程度は、日本の対外資産は高水準を維持すると思われます。また運用利回りも先進国を中心に金利が低水準にあるため、今後さらに金利が低下するよりも、(多少なりとも)金利が上昇すると考えた方が自然です。

こうした条件を考えると、日本の所得収支は、今後も大きく減ることはなく、経常収支を下支えすると思われます。あくまで目安でしかありませんが、円高と低金利が進んだ2009年ですら、日本の所得収支の黒字額は12.3兆円もありました。つまり、経常収支が赤字になるためには、貿易・サービス収支で10兆円以上の赤字を計上する必要があります。

世界的に不況色が強まった2009年の貿易・サービス収支は、2.1兆円の黒字でした。今後、世界経済が回復を続ければ、輸出の拡大を通じて貿易・サービス収支の黒字額も拡大する可能性が高まります。

つまり、高齢化の進展によって貯蓄率が低下し、経常収支が赤字化することは、いずれは生ずるとしても、2010年代半ばという短い期間では、ちょっと難しいように思われます。日本の経常収支が赤字化するのは、2020年に近いタイミングと考えた方が無難かもしれません。


村田雅志(むらた・まさし)

●●●●●●●●●●今日のクイズ●●●●●●●●●●

2009年の日本の所得収支はどれくらい?

●●●●●●●●●●クイズの答え●●●●●●●●●●

12.3兆円


http://www.gci-klug.jp/klugview/2010/05/21/009486.php  

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コメント
 
01. 2010年5月25日 07:24:11: dKzYWTpBvM
大変興味深く思いました。
こういう話は大好きですので、対論をおいておきます。

一般にいわれる貯蓄率は家計貯蓄率。
家計部門のみのため、GDPの計算式に当てはめるのは不適です。
家計だけでなく国全体で考えた国民貯蓄率は充分な余裕があり、経常収支赤字はまずあり得ないかと。

見方を変えてみます。
近い将来でいえば、人数そのものには変化が無い以上Cに大きな変化は無く、
労働人口減少分は生産性の向上で補えていますので、Yも変化せず(むしろ、増加の余地あり)。
つまり、日本の少子高齢化はとりあえずのところ貯蓄(Y-C)や経常収支へのインパクトを持たないのでは?と、思わせます。
大きな影響があるとすれば、それは他の要因から来るはずです。
蛇足ですが、高齢者の貯蓄の取り崩しはGDPにはプラスであり国民貯蓄率を押し上げると思われます。


02. 2010年5月25日 08:03:40: tRXOk5l296
日本の対外資産のうち米国債もちゃんと売れるってことを前提としているようですが大丈夫なんでしょうか?

03. 2010年5月25日 08:35:26: eJpJR4SFmM
高齢者は金融取引の個人事業者みたいなもの。
実働はしていないが、ミニトレイダーとして立派に働いているとも言える。

ただ、金融収支に依存するのは危険。

国力と言うことからいえばやはり基本は、貿易収支。

そのためには、国民が勤勉でなければならない。

勤勉を維持するには、総中流意識を日本人が持ち続けられる政策をとることが重要だ。

なぜなら貧富の差が広がると働く意欲も低下するし、教育にお金をかけられなくなるからである。


04. 2010年5月25日 18:47:19: i0UbCXDkGg
ギリシャ破綻で日本も明日にでも破綻するような論調が
最近のマスゴミには多いが、この著者はなかなかまともだ。
この2、3日の為替大変動でも解るが今世界で一番強い通貨は円。
これがもう20年以上も続いているのだから驚異的である。
この源泉は何と言っても日本が経常黒字国である事。
黒字になってからもう40年以上ではないか。
まさに世界一の金持ち国だ。
その割に国民が貧しいのは国の施策が途上国並だったため。
しかしこの繁栄も著者の言うように2020年までだろう。

それまでに老人や勝組は大いに楽しむ事だな。
今でも地中海クルーズなどは勝組日本人で大盛況のようだ。
寄港地にギリシャが有るのも笑わせる。
札幌行きトワイライトエクスプレスもスウィートは半年待ちだそうだ。
日本が皆不景気というのはまったくのウソだ。
残りの負け組は中国同じでビックカップ麺でも食べて過ごすことだな。
そのうち中国のビックカップ麺も食べられなくなるしれない。
関口友宏の中国3万6千キロではビックカップ麺がうまそうだった。



05. 2011年7月03日 10:01:25: pdOp6X6P9M
きちんと、経済学を踏まえた論考ですね。

03.
>国力と言うことからいえばやはり基本は、貿易収支。
>そのためには、国民が勤勉でなければならない。

 でもこのように、一般的には貿易収支黒字=もうけと考えてしまっています。一般論の誤解は、解けないですね。残念ながら。

 ISバランスから言えば、国外投資(資本赤字)=貿易黒字なんですがね。

 また(S-I)=(G-T)+(EX-IM)だから、日本全体の貯蓄率が低下し、S−Iがゼロにあれば、公債赤字がこのままだと、EX-IMは赤字でないとバランスしませんね。

 貿易収支は、いずれ「赤」になることでしょう。


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